平成30年9月定例県議会 発言内容(山岸喜昭議員)


◆山岸喜昭

   

 介護分野における人材確保についてお聞きします。

 厚労省は、第7次介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について公開しました。これによりますと、団塊の世代が全て75歳以上に達する2025年度には、国全体で約245万人の介護人材が必要になると推計され、2016年度の介護職員数約190万人に加え、約55万人の介護人材を新たに確保する必要があるとされております。その需給ギャップは30万人とされており、将来の介護人材の確保が喫緊の課題であることは明らかであります。
 そこで、長野県において将来的に必要となる介護人材の必要数とその供給見込みについてどのように認識しているか。国では、外国人労働者の受け入れ拡大に向け、単純労働分野で就労を可能とする新たな在留資格を創設し、来年4月の運用開始を目指していると報道されています。従来は、高度な専門人材に限っていた外国人労働者の受け入れ政策を単純労働分野にまで拡大するものであり、これは、少子・高齢化や深刻な人手不足を背景に、対象業種の一つとして介護分野も盛り込まれています。
 また、厚労省の平成31年度の概算要求が示されましたが、その中で、新たに外国人介護人材受け入れ環境整備事業を創設し、介護施設等が行う外国人介護人材の日本語、介護分野の専門知識の学習支援等にかかる補助制度を要求しております。国においても、総合的な介護人材確保対策の一つとして、今後増加することが見込まれる外国人材の受け入れ環境整備を積極的に進めようとしているところであります。
 地元小諸にあります管理団体が、先月、インドネシアから技能実習生19名を研修施設に受け入れました。将来的に介護人材の不足が懸念され、国でも外国人看護人材の受け入れ、環境の整備について動いている中、長野県では、介護分野における人材確保は外国人人材も含めて今後どのように対応をするのか。外国人労働者の受け入れが拡大する中、社会生活などのフォローが必要と思われるが、どのように考えているのか、健康福祉部長にお聞きします。
      

◎健康福祉部長(大月良則)

 

 介護分野における人材確保につきまして3点お答え申し上げます。
 まず、介護人材の必要数及び供給見込みについてでございますが、厚生労働省が取りまとめた第7次介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数では、長野県で2025年において必要とされる介護職員数は4万4,747人と推計されており、2016年の介護職員数3万4,525人と比較しますと約1万人の確保が必要とされております。現状の介護職員数の推移どおり介護職員がこれからも新たに増加するとしたシナリオでも、約6,800人の職員が不足すると推計されており、歳を重ねても安心して暮らせる社会をつくっていくためには、介護人材の確保育成が喫緊の課題であると認識をしております。
 次に、介護分野における人材確保についてでございますが、将来にわたって質の高い介護サービスを提供するためには、まずは日本人を中心とした人材確保にしっかりと取り組む必要があると考えております。
 1番目としては、介護現場における中枢を担う若年世代の介護職への参入支援、2番目としては、他産業、他分野からの入職の促進、3番目として、離職者等を中心とした潜在的人材の復職支援などを行ってまいります。同時に、今後の介護需要の伸びを踏まえると、介護人材の不足が予想されますことから、技能実習生等を海外からの介護人材確保についてもあわせて取り組んでいく必要があると考えております。
 介護施設等からは、外国人の受け入れ経験がないことへの不安、日本語や介護知識の習得や生活全般の支援に多大なコストがかかる等の声をお聞きしており、外国人人材の受け入れが進まない理由と考えております。
 今後、外国人材受け入れのための説明会の開催や地域コンソーシアムの立ち上げ等、市町村とともに受け入れ態勢の構築を進めるとともに、国の動きも注視し、介護施設等が行う外国人介護人材の受け入れに係る県としての支援策についても検討してまいります。
 外国人人材の社会生活のフォローについての御質問でございますが、外国人人材の受け入れ及び受け入れた者の定着を図るためには、住居や食事、病気の際のサポートなど、社会生活の利便性を高め、地域コミュニティーの一員として受け入れることが必要であります。特に、介護人材に関しては、他業種に比べ高いレベルの日本語能力や専門的知識が必要とされるため、安心して学習や生活ができる環境の整備が必要と考えております。
 そのため、今年度中に、県、市町村、関係機関、管理団体等の関係者が協力し、地域コミュニティーでの受け入れを支援する地域コンソーシアム立ち上げのための研究会を発足するなど、今後本格化する外国人介護人材の受け入れに向け、関係者とともに受け入れ環境の整備をしっかりと進めてまいります。
 以上でございます。
      

◆山岸喜昭

 

 続いて、活火山の規制緩和についてお聞きします。
 浅間山の噴火警戒レベルが2から1に引き下げられました。また、木曽の御嶽山も噴火警戒レベルが引き下げられ、登山の規制が解除されました。災害に遭われた遺族会からは、規制解除を待ち望んでいたが、行方不明者もまだ5人おり、複雑な意味での緩和でもあります。
 また、それぞれの周辺観光関係者も、秋の紅葉シーズンを迎え、次はいつ登れるかわからない。生きている山に登ろうと称し、誘客に取り組んでいるところであります。しかし、不安が完全に払拭されたわけではないことも事実であります。
 浅間山、御嶽山は長野県を象徴する活火山であるとともに、共生していくには、活火山であることを隠さず、山頂まで安全に登山できる山として多くの登山者に楽しんでもらうしかありません。そのためには、二度と登山者の犠牲を出してはならない。国、県の覚悟も問われるが、気象庁が噴火警戒レベルを適切に運用すること、火山監視体制のさらなる強化を図り、観測施設の維持管理や火山の予兆現象を的確に把握できるよう大学などの基礎的な研究や観測が重要となります。
 地元の浅間山においては、国による浅間山直轄火山砂防事業により、砂防工事のハード整備が着実に進められていることに、国、県に対しましては大変感謝をしているところであります。
 浅間山は、過去に大きな噴火を経験しており、大規模噴火が発生したときには、市町村を超えて広域的に避難することが考えられますが、現在、群馬県、長野県の関係市町村などでどのような検討が行われているのか。また、浅間山火山ハザードマップに基づき、市町村では防災マップを作成し、住民へハザードの周知や避難計画の普及啓発を行っていくことになりますが、火山防災協議会の対応を含め今後の見込みについてお伺いいたします。危機管理部長にお伺いいたします。
 山が与えてくれるさまざまな恵みは、私たちの生活にはなくてはならない貴重な財産であるが、子供や若者たちが山や自然と触れ合う機会の減少も懸念され、余り身近にあるため、意識が希薄になっているのではないでしょうか。地元の山に登ることは、人生の中で、地域への愛着と愛郷の心を持つことが期待されております。信濃の国や県内の学校校歌には、ふるさとの山と川が歌詞の中で歌われ、信州の自然教育、野外教育の魅力を高め、県外への発信をするとともに、信州の自然や山岳、高原について学ぶことは、ふるさとへの愛、定着を推進する郷学郷就につなげる取り組みとして大きな意義があると考えるが、いかがか。
 また、登山を取り入れている学校はどのくらいあるのか。本県は、学びの力で未来を開き、夢を実現する人づくりを目指しているが、子供たちが日々目にする地元の山やジオに親しんだり、信州が誇る豊かな自然体験を学ぶ取り組みはどのようにされているのか、教育長にお聞きします。
 ことしの夏、7月から8月は、登山ブームに加え、好天気が続き登山者がふえたことが影響して、県内夏山遭難事故は117件と増加しています。一向に減らない山岳登山は、登山ブームを支える中高年の遭難が目立ち、救助活動で県警ヘリは74件出動し、警察官700名を含む延べ1,116名が従事しました。
 また、日本の山岳を目指して外国人登山者も増加し、山岳遭難も、昨年は韓国、オーストリア、中国などから登山者が27名も救助されました。夏山などでルートを外れて遭難する外国人登山者がいることから、今後、道迷いなどによる遭難防止をしていくためにも、英語など明確な登山道標識の整備が早急に求められるが、いかがか。環境部長にお聞きします。
 また、登山道標識の整備のほか、ふえる外国人登山者等が、言葉の壁を気にせずに安心して登山やスキーができるよう、情報発信を含め環境整備が求められているが、いかがか。本県も、条例で登山届の提出を義務づけているが、登山の際に提出する登山計画書の認識や提出状況、遭難捜索には多額の費用が発生するが、山岳保険についてはどのように考えるか。観光部長にお聞きします。
      

◎危機管理監兼危機管理部長(池田秀幸)

 

 活火山の規制緩和に関して2問御質問いただきました。順次お答えを申し上げたいと思います。
 最初に、浅間山の大規模噴火時の広域避難の検討状況に関する御質問でございます。
 浅間山の大規模噴火を想定したハザードマップは、この3月に、群馬県、長野県、関係市町村、火山専門家などで組織する浅間山火山防災協議会が作成し、公表をしております。このハザードマップによりますと、火山灰、火砕流、溶岩流などの影響範囲が広域にわたることも想定され、噴火の規模によっては、一つの市町村内で住民の方の避難対応を行うことは非常に難しいものとなります。県では、8月に、佐久地域の市町村、気象庁、中部電力、地域振興局などで構成される佐久地域防災対策連絡協議会におきましてハザードマップの説明を行い、広域避難や防災対応の必要性について認識を共有しております。
 また、県、小諸市、佐久市、軽井沢町、御代田町の担当者が集まり、境界を越えた広域的な避難が行えるよう、課題整理や避難範囲、避難方法などの検討を始めているところでございます。今後、火山防災協議会の場などを活用し、群馬県内、長野県内での広域的な避難や県境を越えた避難が必要な場合の受け入れ先の調整など、連携して検討を行ってまいります。
 次に、住民へのハザードマップなどの周知や避難計画の普及啓発に関する御質問でございます。
 今回作成いたしましたハザードマップの住民説明会は、市町村において順次実施をされており、8月に御代田町、軽井沢町においても県も参加いたしまして住民の方への周知を行っております。佐久市、小諸市においても、今後、住民説明会を予定しておりますので、市町村と協力しながらハザードマップの周知並びに火山防災意識の向上に努めてまいります。
 また、本年度、浅間山火山防災協議会においては、火山現象の説明などを統一した市町村ごとの防災マップ原案の作成を行っております。この防災マップ完成後は、各市町村においてこのマップを活用し、避難場所や避難方法などの周知や住民の皆様の防災意識の向上に努めていくことになりますので、県といたしましても市町村と連携して普及啓発にしっかりと努めてまいります。
 以上でございます。
      

◎教育長(原山隆一)

 

 郷学郷就につながる取り組みとしての信州の自然を学ぶ意義について、これに対しては議員と全く同じ思いを抱いております。信州では、里山で耳にする鳥のさえずり、高原で目にするさまざまな植物など、身の回りにある自然を改めて見直すだけで自然の美しさを再認識することができます。また、苦労して山に登り、その頂きから足元に広がる世界を見下ろしたときに、日常生活では気づかなかったふるさとの美しい風景を再発見して驚いたり、感動したりすることができます。こうした自然の不思議さやすばらしさを体験できる学びが、学校ばかりではなく、子供たちが生活する地域においても行われており、その多様な学びがあることで、ふるさとが好きだ、あるいはふるさとを大切にしたいといった心情、好奇心や探求心といったものが育まれていくというふうに思っております。
 学校登山をしている学校数につきましては、現在、学校行事として登山を行っておりますのは、小学校が120校で全体の33.3%、中学校は118校で全体の63.4%、高校は3校という状況であります。
 最後に、自然を体験して学ぶ取り組みについてであります。
 信州の豊かな自然を体験する取り組みは、学校行事としての登山以外にも、遠足やスキー教室、集団キャンプ等数多く行われております。また、コミュニティースクールの学校支援ボランティアの力をかりて探鳥会や自然観察会等も行われているところであります。しかし、子供たちの遊びの変化や保護者の生活様式の変化の流れの中で、自然体験の機会が少しずつ失われつつあるのも現実です。教育委員会では、自然教育・野外教育推進会議を設置しまして、自然教育、野外教育プログラムを検討しているところであります。豊かな自然環境を生かした信州やまほいくを含めて、信州ならではの自然を学ぶ教育を今後とも推進してまいりたいというふうに考えております。
      

◎環境部長(高田真由美)

 

 登山道標識の整備についてのお尋ねでございます。
 県では、増加するインバウンドを踏まえ、英語表記のほか、形状や色彩が統一されたわかりやすい登山道標識の整備を推進するため、各山域の行政関係者や山小屋事業者等と調整し、デザインの統一を進めております。既に北アルプス、中央アルプス、南アルプスの山域では、英語表記された統一道標の整備が市町村等により進められており、県では、民間企業からの寄附金等を活用し、こうした山岳環境の整備を支援しています。
 また、安全登山に向けた先進的な取り組みとして、浅間山では、昨年から、国内山岳関係団体でつくる全国山の日協議会がスマートフォンと交信機能を備えた道標によって登山者の位置情報を把握し、遭難時の救助に役立てるスマート山岳道標の実用化に向けた実証実験を行っております。こうした先進技術も参考にし、外国人を含めたより多くの方が信州の山を安全に楽しめる山岳環境の整備を引き続き推進してまいります。
      

◎観光部長(熊谷晃)

 

 まず、外国人登山者の遭難防止のための環境整備についてであります。 外国人登山者の対策としては、これまで三つの柱により対応を進めてきております。
 一つ目は、県の観光外国語サイト、GO!NAGANOによる情報発信、4カ国語による山のグレーディングや山のルール、マナーを掲載したパンフレットの配布など外国語による事前の情報提供。
 二つ目は、登山口への多言語看板の設置や携帯会社等と連携した不感地域の解消など山岳における環境整備。
 三つ目は、全国に先駆け、外国人登山者を専門にガイドする特例通訳案内士の養成など人材育成であります。
 今年度から、国とも連携して、通訳案内士などを対象としたガイド技術や救命救急法などを現地において習得する実技研修を導入したところであります。現在、県内の全山小屋に対して、外国人登山者の現状や受け入れの課題についてアンケート調査を実施しておりまして、その結果を踏まえながら、これまで以上に外国人登山者が安心して楽しめることができる環境整備を進めてまいります。
 次に、登山計画書及び山岳保険についてです。
 登山計画書の届け出状況の把握については、義務化の当初からアンケート調査を行っておりまして、その結果によりますと、届け出した登山者の割合は、初年度の平成28年度は69.3%、2年目の昨年度には81.8%と12.5ポイント上昇しております。これは、山岳専門誌や登山用品店等を通じた情報提供やウエブを活用した届け出しやすい環境の整備に加えまして、各地区遭対協などによる啓発もあり、登山者に届け出の義務化が認知されてきているあらわれと考えております。
 また、山岳保険への加入は、登山安全条例にも登山者の努力義務として規定されておりますので、登山計画書には保険加入の有無を御記入いただくようにするとともに、山岳遭難により捜索救助を行った場合には費用請求される場合がある旨、注意喚起しております。
 加えて、安全登山のための啓発用パンフレットやチラシ等での加入促進の呼びかけも行っているところでございます。山岳保険は、万が一遭難した場合の備えとして非常に重要でありますので、今後もさまざまな機会を捉えてしっかりと周知を図ってまいります。
 以上でございます。
      

◆山岸喜昭

 

 国民の祝日「山の日」が制定され、本県の「信州の山の日」は、山の恵みに親しむ、学ぶ、守る取り組みを充実するよう制定されたが、山を守りながら有効利用していくことを県民全体で考えていくときであります。長野県に暮らす私たちは、これから長野県の未来を考えるとき、信州の山に学ぶこと、特に子供や若者たちに親しむ機会を充実していくことを期待いたしまして、質問を終わります。