平成30年2月定例県議会 発言内容(下沢順一郎議員)


下沢順一郎

 

 地域共生社会の実現に向けて質問してまいります。

 まず、交通事故による脳損傷で重度の障害を負った患者を治療する病床対策についてお聞きします。
 財務大臣と国土交通大臣との折衝の結果、国交省の特別会計から一般会計への貸付金が来年度予算でも一部返還されることになりました。これらは、自賠責保険料の運用益であり、2017年の当初の段階で運用益は6,169億円ありました。国交省は、NASVA、自動車事故対策機構の被害者援護事業について、療護施設の空白地域となっている地方を中心に小規模な委託病床を展開し、適切かつ質の高い治療、看護を提供するとして、23億2,000万円の繰り戻しを入れて、74億円余りの予算を確保しています。
 NASVAでは、これまで、自動車事故による重度の意識障害者が先進的かつ高度な治療を集中的に受けることができる病床群を二つのパターンで運用しています。一つは、50から80床の療護センターを、宮城、千葉、岐阜、岡山の4県で運営、もう一つは、センターに準じた治療を行う12から20床を一般病院に委託する委託病院方式で、これは北海道、神奈川、大阪、福岡の4道府県で運営しています。
 長野県は、こうした病床群の空白地であり、幾つかの医療機関が任意で短期入院協力病院の指定を受けていたのみであります。一方で、これまでの実績が評価され、今回の小規模委託病床の展開に関して既にNASVAによるヒアリングが県内の病院にも実施されているとの情報もあります。
 そもそも、NASVAの被害者援護事業の原資は自賠責保険であることから、等しく徴収された原資は公平に還流されるべきであります。そして、本来、療護センターのある地域の住民と長野県民との間に、援護水準、治療水準の格差があってはならないのではないでしょうか。とすれば、病床群の整備を図り、格差解消の努力をすることは、県として負うべきものであります。
 そこでお聞きします。
 遷延性意識障害者を含めた重度後遺障害者は全国では毎年2,000人ふえていると言われています。県内でも遷延性意識障害者の調査が必要であります。この機会にしっかりと調査をすべきだと考えますが、いかがでしょうか。
 また、国土交通省では、5床程度の小規模委託病床を空白地域で順次運営する方向です。新規の事業展開が予算化されているこの絶好の機会を逃さず、県としてもNASVAによる選定の候補に挙がる病院の把握、意向の確認をし、交通事故による脳損傷患者を治療する病床を県内にも整備するように支援すべきだと思われますが、お聞きいたします。
 また、私は、この問題に対し、平成20年以来何度か質問させていただきました。大変残念なのは、平成18年に長野県で行われた脳損傷による後遺障害に関する実態調査の結果が十分に施策に反映されていないという点です。
 今回の国の事業では、遷延性意識障害者に限定されていますが、実態調査から見える人々は、医療、福祉業界を初め、患者、障害者、交通被害者など、県の担当課が複数にわたる状態となり、それゆえに施策展開の深刻さがさらに浮き彫りとなっています。
 このような状況を打開するためには横のつながりを持つ担当課が必要だと思われますが、以上、健康福祉部長の考えをお聞きいたします。
      

◎健康福祉部長(山本英紀)

 

 交通事故による脳障害で重度の障害を負った患者支援について順次お答えさせていただきます。
 まず初めに、遷延性意識障害者の調査についてのお尋ねがありました。
 遷延性意識障害を含めた重度後遺障害者は、身体の状況に応じて身体障害者手帳の取得が可能となっており、障害者に対する支援が受けられるようになっております。
 一方で、障害者福祉等の支援制度の対象になるまでの遷延性意識障害者と患者家族の経済的な負担の軽減等のため、県では、その治療に係る医療費の自己負担分を給付する制度を設けているところであります。
 このような状況の中、県内における交通事故による遷延性意識障害者の調査の実施につきましては今後研究してまいりたいと考えております。
 重度後遺障害者向けの小規模委託病床の整備についてのお尋ねであります。
 交通事故による脳損傷で最重度の障害を負った患者のため、国土交通省所管の独立行政法人自動車事故対策機構が全国8カ所で専門病院の運営または事業の委託をしているとともに、重度後遺障害者の在宅介護生活を支えるため、短期入院協力事業を実施しております。県内においては、平成29年3月末現在、六つの医療機関が短期入院協力病院として指定を受けております。
 今回、国土交通省が患者の治療体制の強化に乗り出したことは大変意義があると認識しており、専門病院の空白地域である当県に小規模委託病床が整備されるよう、県内の医療機関の受託意向を把握するとともに、必要に応じて国や関係機関に働きかけを行ってまいりたいと考えております。
 脳損傷患者を支援するための横断的担当課の設置についてのお尋ねであります。
 交通事故など後天的な事由により脳に重い障害を負った方に対しては、それぞれの症状に応じた医療的ケアや障害認定を踏まえた生活支援等が各種制度に基づき実施されております。
 脳に重い障害を負った方々は、その状態や御家族の状況に応じた幅広い支援が必要であることは十分認識しており、障がい者支援課が中心となって庁内関係課との連携を密にして対応してまいりたいと考えております。
 以上であります。
      

◆下沢順一郎

 

 連携を密にしてやっていただけるということなのでよろしくお願いいたします。
 続いて、地域福祉支援計画についてお聞きいたします。
 少子高齢化、人口減少が進み、地域の持続可能性の危機が叫ばれる中で、福祉ニーズは多様化、複雑化し、高齢、障害、児童などといった制度、分野ごとの縦割りでは解決できない課題が顕在化しています。
 このような状況を受け、国は、「我が事・丸ごと」をキャッチフレーズに、地域共生社会の実現を福祉改革のコンセプトに据えて動き始めています。ところが、この地域共生社会の実現に向けた取り組みを進める県内市町村の地域福祉計画の策定状況が問題です。地域福祉を推進するための方策として、市町村地域福祉計画が社会福祉法第107条に、都道府県地域福祉支援計画が同法第108条にそれぞれ規定され、策定が求められています。しかし、地域福祉計画には策定義務がありません。今回改正された社会福祉法でも、相変わらず義務化に至っていません。
 そうした中、県内の市町村の地域福祉計画の策定率は全国的に低いと言われています。そこで、県内市町村の地域福祉計画の策定状況、また、取り組み中の状況や市町村からの課題などについて健康福祉部長にお聞きいたします。
 次に、県は地域福祉支援計画を立てることが要点となるわけですが、このほど、県の新年度予算要求に支援計画の策定費用86万円余りが盛り込まれています。遅きに失した感もありますが、高く評価するものであります。この支援計画策定を契機に、市町村や県民に広く地域共生社会の実現に向けた取り組みをPRし、参画を促していくべきです。我が事と言われる身近な地域で多様な福祉問題を受けとめる自治力の強化については、住民活動の基盤整備やコーディネーターの配置、養成が重要だと国でも提言されています。
 本県においても、高齢者の社会参加、介護保険の地域支援事業、障害者支援、子供支援などの各分野のさまざまな財源を活用して住民活動のコーディネーターが配置されるようになっていますが、これらの機能が縦割りに陥らないように県として共通の研修や横の連携に力を入れるべきでしょう。
 縦割りによる事業の重複や不合理性は福祉現場が一番感じていることであり、地域福祉計画によってそれらの整理統合を行い、地域特性に応じて合理的に事業を推進することができれば、財政面での効率化も図られ、市民の理解も得られやすいと思います。何よりも、分野別にそれぞれの各計画に振り回されてきた民生委員や地域の福祉関係者の活動が今以上に活性化することが期待されます。
 また、認知症等判断能力が十分でない高齢者や障害者が地域の中で安心して生活できるためには、成年後見制度の利用促進が求められています。国においては、成年後見制度利用促進法に基づく制度利用促進基本計画が策定され、市町村計画策定の支援を県に求めています。これらも地域福祉支援計画に明文化する必要があります。
 そこで、これらの状況を踏まえ、県としては今回の地域福祉支援計画策定の趣旨は何か、特に注力すべき点はどこにあるのか、また、それを具体化するためにどのような施策を進めていくのか、健康福祉部長にお聞きいたします。
 また、知事は、次期総合5カ年計画においても国の地域共生社会の実現と軌を一にした取り組みを多く掲げていることから、市町村の地域福祉計画策定を支援し、地域共生社会づくりの第一歩を踏み出すことは極めて重要と考えます。長野県における地域共生社会の実現に向けた取り組みに対して、その意気込みを知事にお聞きいたします。
      

◎健康福祉部長(山本英紀)

 

 地域福祉支援計画に関連して、私には2点御質問をいただきました。
 まず初めに、市町村の地域福祉計画の策定状況についてであります。
 地域福祉計画を策定済みの市町村は平成29年4月時点で38市町村、策定率は49.3%となっております。計画は、地域住民の意見を十分反映し、地域における社会福祉を総合的に推進するために重要であり、全市町村で策定されることが望ましいと考えております。
 しかしながら、法制度上は努力義務であることや、小規模な市町村では計画策定に係る人材やノウハウの不足などの理由により計画策定が進んでいない状況があると認識しております。
 次に、県の地域福祉支援計画の策定状況、課題についてのお尋ねがありました。
 県の支援計画は、高齢者、障害者、子供など全ての住民が役割を持ち、支え合い、活躍することができる地域共生社会の実現を目指し、地域福祉の基本的な方向性を示すとともに、市町村を初めさまざまな主体の取り組みを支援していくことを目的として策定するものであります。
 その際、現在の市町村における策定状況を踏まえ、市町村が地域福祉計画の策定を円滑に進めることができるよう、計画に関する基本的な考え方、策定の方法、見込まれる効果等について記載した市町村計画策定指針を盛り込むことを予定しております。
 特に、注力すべき点として、住民が主体的に地域生活課題を解決する地域力強化への支援と、複合的な課題を抱えた世帯を包括的に支援する体制づくりを計画に位置づけるとともに、来年度からモデル圏域において保健、医療、福祉を初めとした多機関の協働による包括的相談支援体制の構築に取り組むこととしております。
 以上であります。
      

◎知事(阿部守一)

 

 地域共生社会の実現に向けた取り組みについての意気込みという御質問でございます。
 地域共生社会をつくっていくということは、まさにこの自治の基盤をしっかりつくっていくということにも通じるわけでありまして、地域福祉の充実は私も極めて重要なテーマだというふうに思います。
 これまで、高齢者、障害者、子供、あるいは生活困窮者等、対象者ごとの縦割りでいろんな政策が展開されてきたわけですが、これからは、こうしたものに総合的、複合的に対応していかなければいけないというふうに思いますし、また、人口減少社会の中で、人的、社会的資源には限りがある中で、こうした資源をより効果的、効率的に運用する、活用することによってより豊かな社会をつくっていくということが大変重要だというふうに思っております。
 今後、例えば、子供の居場所のみならず、高齢者、生活困窮者等多くの方々が集える居場所づくりであったり、あるいは障害児をお持ちの母子家庭への支援等、複合的な課題を抱えた世帯に対する包括的な支援相談の窓口の設置であったり、こうした多機能、多機関協働の取り組みがますます重要になってきているというふうに思っております。
 こうした問題意識を持ちながら、地域福祉支援計画の策定に当たりましては、まずは地域福祉計画策定をされます市町村の御意見も十分にお伺いをしながら、また、庁内でも、健康福祉部だけではなく、県民文化部あるいは教育委員会等幅広い部局が連携し、検討をしていきたいというふうに思っております。
 そうしたことを通じて、誰にでも居場所と出番がある県づくりを掲げる本県としてふさわしい、充実した地域福祉支援計画にしていきたいというふうに思っておりますし、そうした計画策定等を通じて地域共生社会の実現に全力を傾けていきたいというふうに思っております。
 以上です。
      

◆下沢順一郎

 

 最後に、信州まつもと空港についてお聞きします。
 平成30年度予算案として、空港活性化事業費として4,644万9,000円、空港管理費として2億5,553万8,000円が計上されています。
 政府が訪日誘客支援空港として信州まつもと空港の育成支援を決めたのが昨年の7月です。その際の条件として、ターミナルの改修等の計画が確認できたものとあります。平成30年度予算案にはそれらを進捗させるハード面の予算が計上されておりませんが、東京オリンピックまでが勝負です。時間切れとならないように、一日も早い施策展開を期待いたします。
 さて、育成支援型に選出されたのは、松本空港と、沖縄宮古島の隣にある下地島空港でした。先日、その下地島空港を視察する機会がありました。ここは、現在、海上保安庁などのパイロットの訓練空港として利用されています。空港の利活用案が平成24年度より検討されて、平成29年3月には民間事業者である三菱地所などの2社で国際線等旅客施設運営及びプライベート機受け入れ事業で基本合意を締結しています。
 その事業概要は、旅客ターミナル施設の整備、プライベートジェットを代表とするジェネラルアビエーションの受け入れ態勢構築を行い、下地島空港を利用し、国際線、国内線定期便を初め多様な航空機を受け入れるとのことで、宮古圏域の観光振興への貢献を目指すというものです。
 さらに、県では、空港及び周辺用地の利活用事業の提案募集をかけており、この3月にも審査結果が公表されると、下地島全体が土地利用される計画が完成します。私が視察した際は、平成31年3月の開業に向けての空港ターミナルの地盤改良の工事中でありました。
 そこでお聞きします。
 このように、同じ育成支援型として認定されている下地島空港は、平成37年には57万人を目標とし、世界から多くの富裕層を中心とした観光客が訪れる空港となるであろうと思われます。そこで、美しい山岳資源を持つ信州まつもと空港と将来性豊かな海上空港である下地島空港とが育成支援型つながりでお互いの利点を提供し合い、将来、就航も視野に入れた姉妹空港のような関係ができないか、企画部長にお聞きいたします。
      

◎企画振興部長(小岩正貴)

 

 松本空港と沖縄の下地島空港との連携についての御質問にお答えをいたします。
 下地島空港は、現在、国際線機能を有した空港施設の建設に着手するなど、国際的なリゾート地へのさらなる発展を目指した取り組みが進められているものと承知をしております。
 世界水準の山岳高原リゾートを目指す本県とビーチリゾートとしての認知度が高い沖縄県とが空路で結ばれることとなりますと、国内外の観光客流動の観点からも、今後両地域の一層の活性化に資するものと期待をしております。
 昨年7月に下地島空港が松本空港と並んで訪日誘客支援空港の育成支援型に認定されましたことは、両空港の連携のきっかけとして非常によい機会と受けとめており、現在、下地島空港側に対しまして連携の呼びかけを行っているところでございます。
 御提案いただきました姉妹空港のアイデアも頭に置きながら、新たな超広域観光ルートの結節点として両空港の具体的な連携が実現できますよう取り組んでまいります。
 以上でございます。
      

◆下沢順一郎

 

 せっかくです。積極的な展開をお願いいたしまして、一切の質問とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。