平成30年11月定例県議会 発言内容(寺沢功希議員)


寺沢功希

   

おはようございます。質問に入らせていただきます。
 平成29年度の県税収入のうち14%を占め、約318億円となっている自動車税。4月1日現在の自動車所有者が納めるものですが、以前は年度途中に名義変更が行われた場合は月割りで未経過分が還付されておりましたが、現在は一時抹消及び抹消手続が行われないと還付はされません。したがって、自動車の下取り及び売却時の名義変更の場合は、年度途中であっても還付はされません。中には、取引の際、下取り及び買い取り価格に未経過分相当額を含めて支払わないにもかかわらず、次の購入者から残りの月割り自動車税を受け取るなどする業者もあり、自動車税を利益に利用している事例もあると聞きますが、県ではこのような行為を把握されておりますでしょうか。また、そもそもこの行為に問題はないのでしょうか。
 業者が下取り及び買い取り価格に未経過分の自動車税を含めていると説明したとしても、例えば排気量2.5リッターから3リッター、自動車税額5万1,000円の自動車を所有し、7月に手放した場合、本来は3万4,000円還付されるにもかかわらず、下取り、買い取り価格が1万円では疑問を持たざるを得ません。
 業者から消費者に対し十分な説明が必要ですが、中には一切説明しない業者もあれば、契約書に明記してあるだけの業者もあるのが現状であります。県としては、業者に対し、今後どのように対応していくのか。例えば、条例等で説明を義務づけることも必要ではないかと考えますが、いかがでしょうか。
 一方で、県としても、納税者に対し、自動車税の還付について仕組みを周知することが必要だと思いますが、いかがでしょうか。
 以上、県民文化部長にお聞きします。
      

◎県民文化部長(角田道夫)

 

 中古車自動車取引における自動車税の取り扱いの問題点等についての御質問でございます。
 自動車を下取りに出した際に自動車税相当額が月割りで返金されなかったなどの相談は、県の消費生活センターに対し年に一、二件程度寄せられている状況でございます。
 自動車を年度途中で売買する場合、自動車税の取り扱いは、自動車を抹消登録する場合と名義変更登録する場合で変わってまいります。
 抹消登録する場合は、登録した翌月以降の自動車税の還付金が発生し、4月1日現在の登録名義人に還付されます。この際、還付金の受け取りを旧名義人から自動車の買い取り者に委任する事例も見受けられ、この場合は買い取り者に還付されます。この還付金受領の委任行為について、旧名義人がその内容を詳しく理解しないまま委任状を作成した場合に問題が発生しているのではないかというふうに考えております。
 また、名義変更登録する場合でありますけれども、税法上、新たな課税や還付金は発生いたしません。この際、買い取り人が登録した翌月以降の自動車税に相当する額を買い取り価格に含めて旧名義人に支払った上で、新名義人への販売価格に含めて請求することが一般的でございます。しかし、買い取り価格に含めるか否かは商取引上の慣習によるものでして、こうした取引の仕組みに関する消費者への説明不足がトラブルの一因となっているというふうに考えております。
 次に、業者への対応、消費者に対する制度の周知についての御質問でございます。
 県といたしましては、自動車を抹消登録した場合に生ずる還付金は自動車登録名義人に還付されることが委任行為を理解しないまま行われることがあるということ、そして、名義変更登録の場合、買い取り価格に自動車税を含むか否かは商取引上の慣習を踏まえた契約上の問題でもあるということから、販売業者に説明義務を課すことを条例等で定めることは難しいのではないかというふうに考えております。
 しかしながら、取引の仕組みを理解した上での契約行為が当然求められますので、関係団体である一般社団法人自動車公正取引協議会を通じまして制度や手続の流れを消費者に丁寧に説明するよう求めてまいります。
 また、県といたしましても、県民の皆様に自動車税の仕組みを御理解いただき、取引の内容をよく確認した上で、不明な点については販売業者にしっかり確認するよう関係各課と連携して周知に努めるとともに、消費者大学や各種出前講座などでもテーマとして取り上げるよう検討してまいります。
      

◆寺沢功希

 

 取引の際トラブルがないよう、仕組みの周知をぜひお願いいたします。
 次に、長野県を代表する農産物の一つ、ワサビ。平成29年産の水ワサビ、畑ワサビを合わせた全国主産県の状況は、栽培面積では、全国1位である静岡県の120ヘクタールに対し42ヘクタールで全国4位ではありますが、生産量は、岩手県541トン、静岡県511トンの約1.5倍、809トンで全国1位となっております。
 県内生産量の多くは安曇野で栽培されており、安曇野ブランドとして産出されております。しかし、近年、安曇野ワサビは不作が続いており、その原因は特定されていませんが、さまざまな要因が考えられる中でも、湧水の減少が大きく影響していると考えられており、特にことしは過去最悪の渇水状態でありました。
 安曇野ワサビは、静岡県、岩手県とは栽培環境が異なり、豊富な湧水により育まれているのが特徴です。冬はマイナス10度以下の極寒、夏は35度を超える猛暑であっても、湧水が豊富にあるためワサビは育ち、この厳しい気候により生育を抑制されるため味が濃厚になると言われています。逆に言えば、安曇野ワサビは豊富な湧水がなければ育たず、生育には10アール当たり毎秒20リッター以上の湧水が必要であり、湧水量が1割減少すれば生育不良に、2割も減少すると生育ができなくなったりするようです。ことしはひどい作柄不良で、観光客が来てくださっても売るものがない。これから年末年始で需要が高まる中、出荷するものがないなど、苗代も回収できないような状況のようであります。
 そこで、以下の点についてお聞きします。
 こうしたワサビの不作、湧水減少に対して、県としての見解、また対応状況はいかがでしょうか。また、特に塔ノ原地区の一部のエリアでの湧水減少が大きく、生育が不良傾向であり、信州山葵農業協同組合では犀川の河床低下の影響が大きいと考えているようです。過去に国土交通省千曲川河川事務所がこのエリアの河床が深く掘れている部分の埋め戻しを実施したところ、湧水量に改善が見られたと組合では評価をしているようであります。今回、この一部のエリアにおいて埋め戻し工事が再度行われる予定と聞いておりますが、県としては詳しい工事内容を承知しておりますでしょうか。また、埋め戻し工事による湧水量改善の効果についてどのように把握、また検証していくお考えでしょうか。
 平成29年3月に、静岡県の五つの栽培地域が日本農業遺産に、そのうち二つの栽培地域が、ことし3月、世界農業遺産に「静岡水わさびの伝統栽培」として認定され、ブランド力強化事業、生産振興対策事業や農林技術研究所内にわさび生産技術科を設けるなど、静岡ワサビに対しての取り組みに力を入れているようです。そうした静岡県と比べると、先ほども申しましたとおり、生産量は長野県のほうが1.5倍も多いのですが、産出額は静岡県の40億円に対し長野県は8億円とわずか5分の1の額になっております。これはどういった理由からでしょうか。
 安曇野で栽培されているワサビも、実際は苗を県外から購入している場合がほとんどであります。苗からいわば100%県内産とできれば理想ではありますが、長野県の環境では難しいようであります。地域を代表する農産物に対し県として支援をし、よりブランド力を高め、全国へ、そして世界へと発信していくと同時にその生産を守っていくことが必要であると思います。
 県のワサビに特化した支援については、現状では、毎年開催されるわさび共進会での知事賞交付や審査員の派遣等の連携、登録農薬の安全使用への対応にとどまっております。現状では、不作原因は特定されているわけではなく、今後の生産安定、さらに生産拡大をさせるためには、静岡県のように、不作原因の究明や対策、また養苗や優良種苗の研究等を行うワサビに特化した研究機関の設置や事業費の確保が必要と思いますが、いかがでしょうか。
 以上、農政部長にお聞きします。
      

◎農政部長(山本智章)

 

 4点御質問をいただきました。順次お答えをいたします。
 ワサビの不作、湧水減少の見解と対応状況についてでございますが、安曇野地域を中心とした本県のワサビの生産量は平成18年をピークに減少しており、最近5年間では約7%の減少となっております。
 ワサビの栽培は豊富な湧水が必要不可欠でございますが、安曇野市の塔ノ原地域では、冬期間を中心に湧水が減少しており、近年では、生育期でもある夏場にも減少している状況とのことで、生産への影響が大きくなってきていると認識をしております。このため、安曇野市を初め松本地域振興局など関係団体からなる安曇野市水資源対策協議会が地下水を含めた水循環保全のための調査研究に取り組んでおります。
 なお、湧水減少の原因は、関係機関に意見を伺う中では、現在のところ原因は特定されていない状況でございます。信州特産のワサビの生産振興を図る上で豊富な湧水は極めて重要ですので、この協議会と連携し、信州山葵農業協同組合、安曇野市役所とワサビの生育状況や湧水状況等について引き続き情報共有を進め、必要な対応の検討を進めてまいります。
 次に、千曲川河川事務所による河床埋め戻し工事の内容とその効果の把握についてでございます。
 本年7月に、県と千曲川河川事務所の打ち合わせの中で、湧水量が減少している地域に近接する犀川流域の河床の深く掘れた部分へ土砂投入などの工事を実施する予定との説明をいただいております。その後の打ち合わせでは、本年は7月、10月の洪水の影響もあり、最深部で2メートル程度河床が上昇しているものの、依然として堤防付近で河床が深く掘れている部分があることから、堤防保護の観点からブロック投入などを検討していると聞いております。工事の詳細につきましては12月中に関係者への説明会が行われることとなっておりまして、その後、地元の了解が得られれば、来年1月から工事予定とのことでございます。
 また、その効果につきましては、千曲川河川事務所及び安曇野市がそれぞれ管理する観測井戸の水位データを調査するとともに、信州山葵農業協同組合でも定点での水位状況を記録することとしておりますので、それらのデータを情報共有しながら把握をしていくこととなります。
 続きまして、長野県と静岡県のワサビの生産量、産出額の差についてでございますが、ワサビの利用部位は、一般にすりおろして使われる根の部分と地上部の茎の部分がございます。静岡県におきましては、この根の部分を主体として生産し、出荷されておりますけれども、本県では、根に加えまして、地域特産として人気の高いワサビ漬けに利用される茎の生産出荷が多いことから、生産量では全国1位となっております。
 産出額につきましては、静岡県では高級飲食店向けの太く大きな根の部分の出荷が中心で、高価格で取引をされておりますけれども、本県ではワサビの生産者みずからが漬物などに加工し、付加価値を高めるための原料生産が中心であることから、農産物としての産出額の差が生じているところでございます。
 最後に、ワサビに特化した研究機関の設置等についてでございます。
 本県主力の水ワサビは、多量の湧き水と冷涼な気候といった独特の地勢的環境を生かして、大正初期より現在の安曇野市地域を中心に栽培が本格化し、先人の努力により独自の栽培技術が蓄積されて今日の産地に至っております。
 県では、こうした生産者みずからの技術に加えまして、野菜花き試験場が平成8年に穂高産の優良系統からウイルスフリー化した品種を育種し、現在でも長野県原種センターを経由して毎年1万数千本の苗が安曇野のワサビ農家に供給されております。
 また、近年では、栽培用パイプハウスの設置を補助事業で支援しておりますけれども、共同育苗施設などにつきましても要望に基づき補助事業での支援を検討するなど、野菜花き試験場、地域振興局、農業改良普及センター等関係機関が連携して支援をしてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
      

◆寺沢功希

 

 組合の皆さんも現状にかなりの危機感を持たれておりまして、地理的表示保護制度、GIに登録を申請するなど新たな取り組みに力を入れているところでございます。情報共有をしながら県としてもぜひ積極的な支援をこれからもよろしくお願いいたします。
 最後に、長野市若里にあります県の現地機関、長野県精神保健福祉センターや長野県福祉協議会等多くの福祉団体が集まる長野県社会福祉総合センターですが、9月の下旬に、ここに入居する長野翔和学園の関係者から、建物の老朽化や耐震性能不足のため移転先を探すことを打診されているとお聞きしました。また、6月定例会健康福祉委員会でも、建物の老朽化、耐震に問題があり、今後あり方について検討していくと答弁されております。
 同様に、県内唯一の機能訓練から生活訓練まで切れ目ない支援ができる総合リハビリテーションセンターもあり方の検討がされてきております。
 ことし6月定例会一般質問において、県が主体となるあらゆる分野を網羅した、ワンストップで県内どこからも利用しやすい立地での県の拠点となる総合支援センターの整備の可能性についてお聞きした際、圏域ごとに地域の社会福祉法人等の施設による総合支援センターを設置し、各圏域ごとに障害者を支える体制づくりを進めていると答弁がありましたが、現状では県の主体性を余り感じることができません。
 さらに、専門性が高く各圏域での提供が難しいものは総合リハビリテーションセンターで集約化して実施していると答弁がありましたが、総合リハビリテーションセンターの地域別利用者数、社会福祉総合センター内の長野翔和学園に通う生徒の地域を見ますと、長野市にあるという立地条件から、当然に北信地域に集中しており、決して全県からの利便性がよいとは言えません。総合リハビリテーションセンター、社会福祉総合センター、両施設のあり方を検討する今、改めて県全域を考え、福祉を担う総合的な施設を整備するべきであると思います。
 今回、知事選において県内旧市町村全てを訪れ、長野県の広さを実感された知事としては、今後、全体の利便性、有益性から見て、総合的な福祉及び障害者支援施設整備については十分に地域性に配慮をするお考えがあると思いますが、知事にお聞きします。
      

◎知事(阿部守一)

 

 総合的な福祉及び障害者支援施設の配置のあり方についての御質問でございます。
 長野県は、北海道を除けば全国3番目に県土面積が広い県であります。そういう意味では、さまざまな施設の整備に当たっては、県全体の利便性、有益性、地域性、こうしたものに配慮していくということは極めて重要だというふうに私も思っております。
 ただ、広い県でありますので、逆に言うと、どこか1カ所にすばらしい施設をつくればそれで県民の皆様方に理解していただけるかというと、そうはならないというふうにも思っております。特に、福祉分野や障害者分野は、利用者の方々の利便性ということを考えると、1カ所の拠点施設が全県をカバーして何でもやりますというものはなかなか難しいだろうというふうに思っております。
 御質問にもありましたけれども、長野県は、障害者支援の分野では、平成16年に全国に先駆けて圏域ごとに障害者や御家族の総合相談窓口としての障害者総合支援センターを設置して、できるだけ身近な地域で相談できる体制を整備してきました。
 また、他方で、専門性が高い部分、機能訓練等については、県立の総合リハビリテーションセンターで集約化して実施してきております。
 ただ、こうした専門性が高い分野においても、例えば高次脳機能障害の方への支援については、現時点では、このリハビリテーションセンターだけではなく、ほかに県内の三つの病院を支援拠点病院ということで位置づけさせていただいて、できる限り身近なところで支援、相談を行うことができるような体制をつくってきております。
 今後とも、この広い長野県のできるだけ身近なところで相談、支援を受けられる体制をつくっていくということが、福祉、障害者支援の分野では極めて重要だというふうに思っております。どこに暮らされる方であっても、できる限り安心して暮らすことができるような体制となるように県として引き続き努力をしていきたいと考えております。
 以上です。
      

◆寺沢功希

 

 ただいま答弁をいただきましたが、先ほども申しましたとおり、県精神保健福祉センターを含む多くの福祉団体が集まる社会福祉総合センター、県総合リハビリテーションセンター、県障害者福祉センター「サンアップル」は、いずれも長野市にあります。総合リハビリテーションセンターの利用状況を見れば、障害者支援施設では、東信15.5%、南信10.7%、中信4.9%に対し、北信63.1%。病院の入院患者では、実に北信が93.4%を占めております。また、長野翔和学園に通う生徒さんも、23人中、東信3人、南信1人、中信3人、北信16人という状況であります。
 先ほど、知事から、県土が広い、それゆえに1カ所で理解をしていただけるかという答弁がございました。現在のように拠点を長野市で整備するのであれば、サテライト方式で各地域の利便性を考えた施設整備をしていただきたいと思いますし、また、拠点をどこかに移すのであれば、全県どこからでもアクセスしやすい地域への施設整備を考えていただきたいというふうに思います。
 中南信地域の利用者からは、長野市に集中していて利用がしにくいのでほかの地域にも利用できる施設が欲しいとの声を多くいただいております。施設の地域差も、また障害のある人が感じる生きづらさの一つであるのではないでしょうか。
 一昨日の一般質問において、清水議員から、全ての人に漏れなく光が当たる長野県という発言がありましたが、まさにそのとおりだと思います。知事も、障害のある人もない人もともに生きる長野県の実現とおっしゃっております。専門家だけでなく、県民の声を聞き、障害を持つ多くの方々が利用できる環境づくりについてこの際しっかりと見直すことを提案いたしますが、再度知事にお考えを確認いたします。
      

◎知事(阿部守一)

 

 私は、広い県内を回って、福祉関係の皆様方ともさまざまな対話をさせていただいております。例えば、先日、中信地域の施設にお伺いしたときは、ぜひ中信地域にちゃんとした施設をつくってくれないかといったような御要請も伺っています。それぞれの地域の皆様方が同じような思いを持たれているというふうに思っております。
 先ほど、サテライト的な話や、建てかえるのであればもっと違う場所にという御指摘がありました。私も、基本的には今いただいたような御意見は決して否定するものではありませんし、むしろ広い県内を視野に入れたときにはそうした視点を我々も持ちながら取り組まなければいけないというふうに思っています。ただ、今は巨大な施設をどんどんつくるという時代では必ずしもない状況でありますので、できるだけ身近なところでサービスを受けられるようにという思いでおります。今後、いろいろな施設の整備を検討する際には、今申し上げたように、サテライトの設置や、県内広い地域からできるだけ利便性が高い場所を検討するとか、そうした視点は我々もしっかり持ちながら取り組んでいきたいというふうに思っております。
 以上です。
      

◆寺沢功希

 

 ぜひそのお考えをもとに施設整備を進めていただきたいというふうに思います。
 ことし3月に策定された長野県障がい者プラン2018は大変すばらしい内容であると思います。しかし、ハード面、施設の立地や規模等については明記されておりません。ぜひこの充実したプランに合った施設整備を進めていただくことをお願いいたしまして、一切の質問を終わります。