平成29年9月定例県議会 発言内容(埋橋茂人議員)


◆埋橋茂人

   

 信州・新風・みらいの埋橋茂人でございます。私からは、地域の生活基盤の維持対策について、企画振興部長に伺います。

 1点目、産経新聞論説委員の河合雅司氏の著書「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」は、増田寛也氏の「地方消滅」に並ぶ衝撃本ですが、この中で、国土交通省の2014年の国土のグランドデザイン2050を引用し、サービス施設が存在確率50%で立地するために必要な人口として、次のような数字を挙げています。
 介護老人福祉施設500人、病院5,500人、訪問介護事業8,500人、有料老人ホーム4万2,500人、銀行6,500人、飲食料品事業500人、ハンバーガー店3万2,500人、大学は12万5,000人となっています。これ以下の人口になれば事業として継続していくのは困難になるということですが、県内市町村では、既に喫水線を割り込んでいるところが少なくありません。
 この指標とも密接に関連する地方創生の重要施策であるコンパクトシティーや小さな拠点について、進捗状況や今後の展望を伺います。
 2点目、続いて産業労働部長に、今の問題とも関連する暮らしに不可欠な燃料の問題に絞って伺います。
 ガソリン給油等のサービスステーション、以下SSと申しますが、の数が急速に減っています。ちなみに、SS数は、全国でピークだった平成6年度末の6万421店から平成27年度末には3万2,333と46.5%も減っています。また、長野県におけるピークは平成8年度末の1,511ですが、平成27年度末には903と40.2%減っています。
 原因は、中山間地の人口減少による販売量の低下や、低燃費・ハイブリッド車の普及等がありますが、更新費用に多額の資金を要し、継続が困難になっている事例も多数あります。消防法により、地下タンクは最長50年、基本40年プラスライニング補修で10年で更新しなければならず、その所要額は、1タンクで数百万円にもなります。
 そこで伺います。
 一つとして、県内のSSが3カ所以下のいわゆるSS過疎地の市町村数と、そこに暮らす人口と世帯数を伺います。
 二つとして、SSの維持対策をどう考えているのかお聞かせください。
 以上、大きく2点、お願いいたします。
      

◎企画振興部長(小岩正貴)

 

コンパクトシティーと小さな拠点の進捗状況及び今後の展望についてお答え申し上げます。
 信州創生戦略では、コンパクトなまちづくりへの誘導を図るための立地適正化計画を、平成31年度までに七つの市町村が策定することをKPIとして設定をしております。これまでに、長野市、佐久市、千曲市の3市が計画を策定し、公表済みでございます。今後、30年度には9市が、31年度には1市がこの計画を策定し、公表する見込みでございます。
 計画策定後は、それぞれの市において、計画に沿ったコンパクトシティーづくりの具体的な取り組みが実施されていくこととなります。
 また、小さな拠点につきましては、平成31年度までに40カ所で拠点が形成されることをKPIに設定しております。
 これに対しまして、本年5月に国が行った調査によりますと、県内では既に20市町村、48カ所で形成されているところでございます。
 ただ、小さな拠点は、拠点をつくることよりも、住民主体の取り組みを続けていくことのほうが重要であります。そのための担い手となる地域運営組織を、いかに機能させていくかが問題でございます。
 今後は、形成された小さな拠点が機能を発揮、継続していけるよう、県として必要な支援策を検討してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
      

◎産業政策監兼産業労働部長(土屋智則)

 

 SSの維持対策について2点御質問を頂戴いたしました。初めに、SS過疎地市町村の状況についてでございます。
 県内におけるサービスステーションが3カ所以下のSS過疎地市町村数は32町村でございます。このうち、1カ所もない町村というのはありませんけれども、1カ所というところが10村、2カ所が11町村、3カ所が11町村となってございます。この32町村の人口の合計は、本年3月末現在で4万9,017世帯、13万6,727人となっております。
 次に、SSの維持対策についてでございます。
 SSの減少は、とりわけ中山間地域においては、自家用車や農業機械への給油、移動手段を持たない高齢者等への灯油配達など、地域住民の生活維持の面であったり、また、災害時等における燃料供給への不安などにつながる課題であるというふうに認識をしているところでございまして、県としてもその維持対策に取り組んでおります。
 維持するための一つのハードルとなっている地下タンクの更新につきましては、県制度資金に低利の融資メニューを設けるなど、支援措置を講じているところでございます。
 一方、地域的に厳しい経営環境にあって事業者の経営努力のみでは維持が困難であるようなSSがあるのもまた現実でございます。これらを地域でどのように維持していくかということが大きな課題となっております。
 これに対する対応につきまして、国が作成したSS過疎地対策ハンドブックによりますと、住民が株主となり存続に至ったという高知県四万十市の例などのほか、県内にも、観光協会が運営を引き継いだという売木村の例、村が財政支援したという阿智村の例など、存続のための具体的な事例が掲げられているところでございます。
 過日、事業者団体との間で、SSをめぐる実情や対策等について情報交換や議論を行った際には、こうした事例を何とか普及促進できないかという御意見をいただいたところでございまして、これを受けまして、現場における実態把握と意識啓発のため、まずは手始めとして、市町村へのアンケート調査を行ったところでございます。今後、その結果も参考にしつつ、地域ぐるみのSS存続に向けて市町村や地域の皆様と一緒に考えてまいりたいというふうに思っているところでございます。
 以上でございます。
      

◆埋橋茂

 

 お答えを頂戴しました。県内では32町村ということですが、市町村合併の陰に隠れ、実質はさらにあるのではないかというのが実感であります。
 今、部長から答弁いただきましたように、必要不可欠の生活インフラが事業として維持できない状況が生じています。自助、共助が限界に来ており、必要最小限の公助が必要ではないでしょうか。
 元来、相反するミッションであるコンパクトシティーや小さな拠点の具体像と実行策を、地域振興局の機能を活用してできるだけ速やかに示すよう要望して、次の質問に移ります。
 高校再編について教育長に伺います。
 少子化が進展する中で、新たな高校づくり、将来の子供たちが安心してそれぞれが学べる場をつくっていくという理念には共感をするところです。
 しかし、新たな高校づくりを進める上での再編整備の理念がなかなか伝わってこない。削減ありきではないかという声も聞こえてまいります。
 また、今回の再編基準は、いわゆる人気校、すなわち進学校は基準を大きくクリアしており、今後、再編の俎上にはのらず、既に聖域があるのでないかとの意見も寄せられています。
 時代にマッチした新しい高校づくりという観点から言えば、在籍生徒数の多寡でくくるのではなく、全ての高校を枠組みの中に入れて考えるべきではないでしょうか。単なる削減ありきの議論に対し、危惧するところでございます。発展的で前向きな議論が展開されることを望んでおります。
 そこで、4点伺います。
 1点目、都市部存立普通校の再編基準について、在籍生徒数520人以下が2年続いた場合、他校との統合か募集停止としています。
 一つとして、再編整備を進める上での最低基準としていますが、これ以上の基準を設けることがあるのか。
 二つとして、現在、旧3区には該当校はありませんが、旧4区内の4校では、1校が既に520人以下の募集定員となっています。そもそも、募集定員を決めているのは県教委です。整合性はいかがでしょうか。また、ほか3校については、既に再編基準を満たしており、今回の学びの改革では再編対象ではないと考えてよいのか伺います。
 2点目、募集学級数6学級以上が望ましいとされていますが、旧4区内では、4校中5学級が1校、3学級が1校で、望ましい募集学級数以下です。今後の募集学級数をどうお考えか伺います。特に、来春に受験を控える中学3年生や、目標を定めようとしている中学生に与える影響は決して少なくなく、あの高校は将来再編される、またはなくなってしまうかもしれないという情報がさらに志願者減につながることを強く危惧しています。まずは、平成30年度、31年度は現行でお考えなのか。現行であるとすれば明確に示していくべきではないかと思いますが、いかがですか。
 3点目、12カ所での地域懇談会を踏まえ、今回の基本構想から実施方針案の内容、特に再編基準について変更があり得るのか、また、複数の高校で独自の案を公表していますが、どう受けとめているのか伺います。
 4点目、平成30年度以降、旧通学区ごとに具体的な検討を進め、まとまった地区から個別の再編計画を策定とされていますが、一つとして、隣接する旧通学区との流出入や県外、私立への進学者もいる中で、何ゆえ旧通学区を再編のベースとし、現在の通学区での議論を行うのか伺います。
 二つとして、県全体で約5,300名の生徒数、約130の学級分減少が不可避であれば、明確に130学級分縮減する方向で高校を統廃合なり募集停止と明確にすればさらに議論が深まるのではないかと思いますが、いかがですか。
 三つとして、例えば旧3、4区について、具体的に旧3、4区全体としての必要総学級数、また高校設置数について、現段階では仮とはしてありますが、募集学級数の予測では、旧3区で12、旧4区で8学級減となっています。「6学級が望ましい」から逆算して何校体制にしますよという論理だと思いますが、高校設置基準を満たしているにもかかわらず再編を進めるのか伺います。
 以上です。
      

◎教育長(原山隆一)

 

 学びの改革につきまして大きく4点御質問がございました。
 まず、都市部存立普通校の再編についての関係でございます。このうち、再編基準については、後ほどの質問にもありますので、そちらのほうでお答えをさせていただきます。
 募集定員決定との整合性という御質問ですが、公立高校の募集定員は、中学卒業予定者数、地域からの要望、当該校の意向等を総合的に判断して毎年度決定するものでありまして、その結果が今の状態であるというふうに認識しております。
 それから、再編の検討対象でございますが、定員が減少し、基準に該当した高校がある場合、その高校だけをどうこうするという考え方はとっておりません。今回の学びの改革では、少子化の進行にどのように対応するかという点から再編基準を設け、地域の全ての高校を検討対象とするとともに、特に都市部存立校については、学校群として一体的に将来像を検討することが望ましいというふうにしているところでございます。
 募集学級数についての御質問ですが、先々の募集定員を公表する、明らかにすることで受験生の不安をなくせるのではないかという趣旨の御質問だというふうに受けとめさせていただきますが、例えば第1期再編の例をとりますと、新校がスタートするまでに、校舎改築も含めると少なくとも5年から6年を要している状況であります。今後、たとえ特定の学校の再編が決まったとしても、その学校が新校、新しい学校に移行するまでの間に入学してくる子供たちに充実した学びを保障するというのは当然だというふうに思っています。したがって、公立高校の募集定員は、各通学区及び全県的な将来の生徒数を鑑み、今後も年度ごとに慎重に決定していきたいというふうに思っております。
 次に、大きな3点目ですが、再編基準の変更についてであります。
 地域懇談会等を踏まえますと、生徒の絶対数が確実に減少する中で高校再編が必要であること、中山間地については、都市部とは異なる基準を設けたり中山間地存立特定校を設けたりしてしっかり維持していこうとする点、どの学校を都市部存立校とし、どの学校を中山間地存立校とするかということについての考え方、これらの点についてはおおむね県民コンセンサスが得られてきているのではないかというふうには考えておりますが、一方で、都市部存立普通高校の再編基準については、今後さらなる理解を得ていく必要があると考えております。
 都市部存立校の再編基準をもう少し小さな規模にしたらどうかという御意見もありますが、仮に、クラス数を減らしたり、同じクラス数でも1クラス当たりの生徒数を減らしたりしても、生徒の絶対数が確実に減少する中、基準に該当する時期がおくれるだけで、いずれ判断が必要となってまいります。
 県教育委員会としては、できるだけ早く新しい時代にふさわしい新しい学校をつくっていくことが将来の子供たちの学びの環境を整える上で重要であり、大事な責任だというふうに考えているところであります。
 それから、地域懇談会における提案の受けとめについてでありますが、地域懇談会では、複数の高校関係者からその高校の再編に係る提案をいただいたところです。いずれの提案からも、将来の子供たちのために新しい学校をつくっていこうという強い思いを感じたところであります。提案につきましては、地域全体及び県全体の高校の将来像を考える中で検討してまいりたいというふうに思っております。 
 それから、旧通学区ごとに再編を検討することについてですが、県土の広い長野県において、生徒の通学可能範囲や地域の生活圏ごとに高校の多様な学びを整えようとした場合に、これまでの歴史的な経緯からも、まずは旧通学区単位で検討することが適当だというふうに考えております。
 一方で、交通の利便性が増し、生徒の流動性が高まったことから、広域的、全県的な視点での検討も必要だというふうに思っています。
 それから、大きな4点目で、二つ御質問がありましたが、いずれも県立高校は何校体制が望ましいかという観点からの御質問だというふうに受けとめております。
 地域懇談会から見えてきた課題の一つとして、地域全体及び県全体の高校の将来像をさらに議論する必要があるというふうに整理したところであります。本年11月に公表予定の「「学びの改革実施方針」策定に向けて」において、どのような高校をどのように配置するのが望ましいかについての県教育委員会の考え方を示し、それに基づいて、今後、地域懇談会等で議論を深めてまいりたいというふうに考えております。
      

◆埋橋茂

 

 御答弁をいただきました。懇談会は私も出ましたが、各学校の存続を切々と訴える内容のものが多く、大変胸を打たれました。その一方で、なかなか次代の新たな高校像を論議する場となっているとは言いがたい状況だと感じたところです。
 今後の予定を半年延期することについては懇談会の意見等を踏まえたものとして評価します。ぜひ実のある論議をするために、具体像を示していただくように要望して、私の一切の質問を終わります。