平成29年6月定例県議会 発言内容(花岡賢一議員)


◆花岡賢一

   

 本年2月定例会において、私たちの会派の代表質問で小島議員が取り上げた運転免許の自主返納が全国的にふえている現状と、昨日の丸山栄一議員も取り上げられておりましたが、高齢者が関係した悲惨な事故の発生は社会として取り組まなければならないことであり、年齢を問わず、他人事では済まされない状況を生んでおります。自動車技術の進歩により、自動運転やそれに準ずる技術の革新が多くの事故の減少に期待されているわけではありますが、時代が進むにつれ、持続可能な地域社会のキーワードのもと、対策を検討することは急務と考えます。

 そのような中、私の地元、佐久警察署で、自主返納について、佐久警察署では運転免許の返納は受け付けていないので望月の東信免許センターに向かってくださいと言われた事案が発生いたしました。一つの事案を取り上げるわけではございますが、その返納希望の高齢者は御代田町の方で、佐久平駅周辺へ家族と買い物目的で訪れた際に通り道である佐久警察署での自主返納を考えられたそうです。その先10キロメートル以上離れた望月にあります免許センターに向かうというのは、御自身もそうですが、免許の自主返納とその後の生活の足の観点で協力が不可欠な家族の方にも理解がいただける状況ではなかったそうです。免許センターを管轄する警察署では自主返納を行っていない状況で、県下の免許業務の取り扱い部署について、どのように行われているのでしょうか。
 また、東信運転免許センター設置に当たり、佐久警察署では免許業務を行わないことについて、当時地元への説明を行ったのでしょうか。
 また、冒頭で申し上げました2月議会の県警本部長の答弁でもありましたが、自主返納には家族の方々の協力がなくてはならない状況で、全警察署に自主返納の相談窓口を設置する旨と、代理人による返納申請の受け付けも本年2月から開始されている状況がありました。今後も進むであろう自主返納の制度について対応をどのように行っていくのでしょうか、御所見をお伺いいたします。
 また、平成14年から交付が開始されております運転経歴証明書について申し上げますが、交付に手数料はかかるものの、運転免許証とほとんど見た目、形が同じであることなど、長年所有していた運転免許証を手放すことに寂しさが伴うといった話を聞いたことがある中で、身分証明書として使えることなど非常にすばらしいものであると考えています。現在までの取得状況とその周知方法を制度とあわせてお答えください。
 ここまでを警察本部長にお伺いいたします。
 また、地域交通が充実していない状況で、運転免許の自主返納を全国的な広がりを背景に強く推進してしまうと、後に生活の足を奪われたと言われてしまう可能性を感じるのですが、昨日の丸山栄一議員の質問に対する答弁で確認させていただきましたが、高齢者の交通手段の確保など地域交通のさらなる整備が必要な中、地域における移動手段の確保・補完に関する検討会が設置され、先月、第1回検討会が実施されました。自主返納を推進することと地域交通の充実は両輪として双方欠くことのできない急務と言われる中で、年4回から5回開催される検討会は注目を集めることは必然であると思われますが、どのような議論がされたのでしょうか。
 また、先ほどの検討会で、さらなる議論、交通手段の支援を含め、高齢化が進む社会の中で今後行政として行うべき施策について企画振興部長にお伺いいたします。
      

◎警察本部長(尾﨑徹)

 

 運転免許証自主返納について御質問をいただきました。順次お答えいたします。
 まず、県下における運転免許業務の取り扱い部署と東信運転免許センター設置に伴う地元説明についてお答えいたします。
 運転免許業務につきましては、県下3カ所の運転免許センターと、運転免許センターを管轄している長野南警察署、塩尻警察署及び佐久警察署を除いた19の警察署などで実施しております。
 東信運転免許センターは、平成24年から運用を開始しておりますが、センター設置に先立ち、佐久市を初め周辺の自治体や関係機関、団体の皆様に佐久警察署における運転免許業務を東信運転免許センターで行うことなどに関する説明を行い、それぞれ御理解をいただいたところでございます。
 次に、運転免許証の自主返納への対応についてお答えいたします。
 運転に不安を覚える方や運転をする必要のない方の運転免許証を返納しやすい環境づくりとして、警察署、運転免許センターにおける免許返納相談窓口の設置、運転免許センターにおける日曜日窓口での自主返納の申請受理を開始したところでございまして、今後も相談窓口において親身に相談に乗り、高齢者に寄り添った対応に努めてまいります。
 次に、運転経歴証明書の制度と取得状況、周知方法についてお答えいたします。
 運転経歴証明書は、運転免許証の有効期間内に申請者の意思に基づいて免許証を返納していただいた場合、返納後5年以内に申請すれば運転経歴証明書の交付を受けることができ、これは金融機関の窓口などで本人確認書類として使用することができるものでございます。
 運転経歴証明書は、年々取得者及びその割合が増加しており、5年前に運転免許証を自主返納した方は1,592人で、そのうち約64%、1,017人の方が運転経歴証明書を取得していたところ、昨年、平成28年は運転免許証を自主返納した方は5,210人に上り、このうち約80%、4,147人の方が運転経歴証明書を取得しております。
 県警では、ホームページ、交番、駐在所が発行しているミニ広報紙への掲載、さらに高齢者に対する交通安全教育や運転免許更新時における高齢者講習の機会を活用するなどして広く周知を図っているところでございます。
 以上でございます。
      

◎企画振興部長(小岩正貴)

 

 私には2点御質問をいただきました。
 まず、検討会での議論の内容についてでございます。
 去る5月11日に、事業者や専門家の出席を得て第1回目の検討会を開催いたしました。この場では、まず事務局から、公共交通機関の利用者数がピーク時の2割程度であることや、市町村の財政負担がここ10年間で約1.5倍となっていること、また、県内の運転免許保有者数と返納者数が増加傾向であること等の現状を御説明し、委員の皆さんから自由な御意見をいただいたところでございます。
 委員からは、行政からの補助金には限りがあり、安定的な利用者の存在が必要であるといったバス事業者の意見や、少人数輸送は得意分野であり活躍の場があると考えているといったタクシー事業者の意見、ICT、IoTを使った輸送の解決策を考えていけるはずであるといったICT専門家の意見などが出されたところでございます。
 公共交通に対する重要性や危機感は出席者全員共通の認識であり、今後も各方面の御意見をいただきながら検討を進めてまいる予定でございます。
 次に、今後行うべき施策についてでございます。
 人口減少と高齢化が進む社会において、市町村の個別対応だけでは公共交通を維持していくことは困難でございます。県といたしましても、地域の事情をよく知る市町村と連携し、その役割を果たしていくことが重要と認識をしております。
 具体的には、地域振興局などエリア単位での広域的な調整、鉄道やバスなど従来の交通事業者以外も含めた関係者間の横の連携の促進、ICT、IoT、自動運転といった新しい技術の活用の促進などの観点から取り組んでいくことが求められるところでございます。また、自家用車を保有することで要するコストとの比較など、利用者の側に立って公共交通を利用することへのインセンティブを示していくことも必要でございます。
 今後、検討会での議論を進めていく中で、これらの視点をもとに実際の取り組みにつなげていきたいと考えております。
 以上でございます。
      

◆花岡賢一

 

 お答えいただきましたけれども、運転経歴証明書を返納者の80%の方が取得しているということは、代理人を立てて取得されることを鑑みると、返納された方のほとんどが取得している状況かなというふうに思うところであります。今回は、県内でも特殊な地域になってしまうのでしょうか、佐久警察署の例を挙げましたけれども、距離が離れていても、住民益を考えると、よりよい方策、その検討をいただけますことを御期待させていただきます。
 また、お答えもいただきましたけれども、自動車の技術は、人工知能や電気自動車、自動運転の専用レーンなど、技術が日々進化しております。地域交通に対しても時代の変遷に乗れる状況の期待を込めまして、質問を移ります。
 更生保護についてお伺いいたします。
 一昨年、長野県議会更生保護を考える議員連盟が設立され、佐久市議会でも同様の議員連盟が昨年立ち上がっています。約3割の再犯者によって約6割の犯罪が発生してしまっている現状で、超党派の国会議員による議員立法で提出された再犯防止等の推進に関する法律が成立し、昨年12月に公布、施行となっています。その内容には、国が策定した再犯防止計画を勘案して、それぞれの地域に応じた再犯防止計画を定めることが努力義務で盛り込まれています。現在までの進捗状況はどのようであるのでしょうか。お伺いします。
 また、犯罪、非行の前歴のために定職につくことが容易でない刑務所出所者などを、その事情を理解した上で雇用し、改善、更生に協力する民間の事業主の方々を協力雇用主と呼びますが、その協力雇用主が連携を組む協力事業主会が県内15ブロックに存在しています。建設業の割合が多いこともありますが、競争入札にあって加点が行われるなどの取り組みはあるものの、そのほかの業種については国からの奨励金にとどまっている状況があります。補助などについても課題として今後検討されていくことは当然ですけれども、業種とのミスマッチが起こってしまうことを考えると、協力雇用主の増加が求められることが予想されますが、拡大の施策はあるのでしょうか。また、協力事業主会との連携はどのように進められているのでしょうか。
 そして、就労について、法務省が運営する矯正就労支援情報センター、いわゆるコレワークでは、雇用主が犯罪を犯した者を雇用する際のサポートをしているのですが、このことについて県はどのようなスタンスで臨んでいるのかをお示しください。
 刑務所出所者などのうち、頼るべき人がいないなどの理由で帰るべき場所がない人に対して、一定期間、宿泊場所や食事を提供する民間の施設で、更生保護施設があります。そちらとの連携はとれているのでしょうか。お伺いいたします。
 また、薬物犯罪は、その再犯率の高さから、依存症すなわち病気であることを自分自身が自覚することから始まります。県内にも薬物依存症回復施設としてダルクがあり、その中で重要とされていることにミーティングがあります。みずからの経験を同じ薬物依存者と共有する中で、自分が薬物依存症といった病気であることへの意識の改革が行われるのです。また、ダルクは、薬物犯罪者だけでなく、広く薬物依存に対して寄り添う体制がとられておりますことを紹介いたします。
 再犯率が8割を超える薬物犯罪の中で、ダルクとの連携はどのようにされているのでしょうか。また、高校生に対して薬物乱用防止対策等の講習や講演会を行っているとのことでありましたけれども、現在継続されているのでしょうか。
 薬物依存症について、平成24年に長野県と長野県薬物依存症対策推進会議とでまとめられた薬物依存症支援者のための相談対応ハンドブックを見ると、県立の医療機関として長野県こころの医療センター駒ケ根が薬物治療の中心的役割を担っていくことが期待されるとありますが、設立されてから5年以上が経過した現状はどのように運営されているのでしょうか。また、その後、同様の施設は設置されたのでしょうか。
 以上、健康福祉部長にお伺いいたします。
 最後に、犯罪を犯した者などの社会復帰に対しては、その性質上、秘匿とされてきた時代が長くありました。しかし、法律として施行された状況を考えても、社会が一丸となって理解し、寄り添う意識の重要性が求められている時代が来ていることは間違いありません。社会を明るくする運動長野県推進委員会委員長として取り組まれていらっしゃいます、また、行政の長とての阿部知事の考えをお伺いいたします。
      

◎健康福祉部長(山本英紀)

 

 更生保護についての御質問に順次回答をさせていただきます。
 まず、再犯防止計画の進捗状況については、再犯の防止等を推進するために昨年12月に公布、施行された再犯防止法に基づき、現在月1回のペースで法務省の検討会において国の再犯防止推進計画の策定に向けた検討が行われており、本年度中に閣議決定される予定と承知をしております。
 再犯防止法では、地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえ、地域の実情に応じた施策を推進するため、地方再犯防止推進計画を策定するよう努めなければならないとされております。
 県といたしましては、再犯防止についての従来の取り組みを継続するとともに、国における検討の経過を注視しつつ、罪を犯した人が社会において孤立することなく円滑に社会復帰することができるよう、まずは関係者と意見交換を行うなど、本県の実情に応じた計画の策定について検討を進めてまいりたいと考えております。
 協力事業主会との連携についてのお尋ねがございました。
 法務省によると、保護観察終了時に無職であった人の再犯率は、有職者の再犯率の約4倍に上り、再犯防止には就労が重要であります。
 定職につくことが容易ではない出所者等の事情を理解した上で雇用し、自立更生に協力する協力雇用主については、県内では約800社が登録していると承知をしております。協力雇用主の登録は長野保護観察所で行っておりますが、県としても保護観察所と連携し、刑務所出所者等就労奨励金の制度の周知などにより協力雇用主の増加に取り組んでまいります。
 また、更生保護協力雇用主会とは、社会を明るくする運動の街頭啓発活動を協力して行うなど、連携を図っているところでございます。
 矯正就労支援情報センター、コレワークについてのお尋ねがございました。
 矯正施設の出所予定者と雇用を希望する事業主のマッチング支援や相談については、これまで各地のハローワークが行っていたところでございますが、出所後の居住地が全国に展開するケースが多いことから、より広域的に実施するため、昨年11月に矯正就労支援情報センター、コレワークが埼玉県と大阪府の2カ所に開設されております。
 県といたしましては、出所者等の自立更生と再犯防止を推進する上では事業主の受け入れに関する理解の促進が重要であると考えており、事業主等へのコレワークの紹介についても、保護観察所など関係機関と連携して取り組んでまいります。
 更生保護施設との連携についてのお尋ねがございました。
 県内には、裾花寮、みすず寮の2施設の更生保護施設があり、出所者や保護観察中の人を対象に就労指導や生活指導を行い、円滑な社会復帰を支援しております。
 県では、長野県社会福祉会に委託して運営している地域生活定着支援センターにおいて、福祉的支援を必要とする矯正施設出所予定者だけでなく、更生保護施設職員や入所者からの相談を受け、福祉サービス等の利用に関する助言や申請支援、関係機関への橋渡し等を行っております。また、更生保護施設の老朽化による改築に際し、入所者の生活環境を改善するための施設整備についても財政的な支援を行っております。
 薬物依存回復施設、ダルクとの連携については、県では、高校生が薬物依存経験者の体験談を直接聞き、ともに話し合うことにより薬物乱用防止の意識啓発を図る事業を平成13年度からダルクへ委託して実施をしております。これまで、延べ380校で事業を実施し、10万4,348人が参加をしております。ダルクでは、県の委託事業のほかにも、高校からの求めに応じて薬物乱用防止に関する講演会を継続して実施をしております。
 薬物依存症治療の現状については、県立こころの医療センター駒ケ根は、県内の精神科医療の中核的病院としての機能を有し、薬物依存症治療においても中心的な役割を担っていただいております。
 具体的には、平成23年1月から、病気の正しい理解と回復に必要な知識を習得しながら健全な生活習慣を身につける独自の薬物依存症治療プログラム「コマープ」を導入し、1カ月の入院治療とその後の外来治療を多職種チームで行っております。また、依存症は家族を巻き込む病気でもあるため、家族会を開催し、家族支援にも力を入れております。
 なお、そのほかに薬物依存症治療に特化をした県有施設はない状況でございます。
 以上でございます。
      

◎知事(阿部守一)

 

 犯罪を犯した方たちの社会復帰について、社会を明るくする運動長野県推進委員長として、また、行政の長としての考えという御質問でございます。
 罪を犯した人の社会復帰につきましては、立ち直りへの意欲を持つ人が孤立をすることがないように地域社会における理解と協力が不可欠だというふうに考えております。
 社会を明るくする運動として、全ての人たちがそれぞれの立場で力を合わせて明るい社会を築くため、街頭啓発活動や小中学生の作文コンテスト等を実施しております。罪を犯した人たちの更生についての理解を深めるとともに、犯罪や非行のない明るい社会を築くための取り組みを進めているところであります。
 また、県としても、更生保護に関する普及啓発のほか、平成26年度からは、長野保護観察所、そして保護司会連合会と三者協定を締結をさせていただき、都道府県レベルでは全国で3番目となります保護観察中の少年を雇用する事業も実施をしてきております。また、本年度からは、社会復帰を目指す人の仕事の確保に資するため、建設工事の入札参加資格審査における協力雇用主に対する優遇措置も導入をしているところでございます。
 今後とも、関係機関、関係団体の皆様方と連携し、誰にでも居場所と出番がある社会の実現に努めてまいります。
 以上です。
      

◆花岡賢一

 

 お答えいただきましたけれども、従来、更生保護の分野は、法務大臣から直接地域に委嘱が届いて地域の方が行ってきたということがあります。そこにこういった形での法律が施行されているということは、よりきめの細やかな更生保護に対してのアプローチができる、そういう時代が来ているんだなというふうに思うところでございます。よりよい施策推進をお願いできればと思います。
 先日、精神科病棟の看護師さんを中心とした懇談会が安曇野で三つの病院をまたぎ開催された中、講師として元タレントの田代まさしさんの講演を聞いた方からのお話をお伺いしました。田代氏は、新宿ダルクのダルク本部に通っている方です。
 その方の御意見は、偏見を持っていたというわけではないにしても、薬物犯罪、薬物依存症について考え方が変わったとのことでした。私も、田代氏が書いた「マーシーの薬物リハビリ日記」を読んでみました。この内容は、壮絶というにはほど遠い、一部には反省の色が見られないとの意見もあったようですが、理想や誇張のない、生の現状を知ることができました。現実は、薬物をやめる努力をするというよりも、きょう1日薬物に手を伸ばさない、その毎日を続けている現状でありました。犯罪を犯してしまった者にとって、再び罪を犯してしまうこととは、まさに自分との闘いであり、恐怖でもあります。そんなときに寄り添う社会が形成され、社会が明るくなることを強く願うと同時に、再犯の防止等の推進に関する法律の第6条において、来月7月が再犯防止啓発月間であることをお伝えいたしまして、質問を終わります。