◆小島康晴

 

 信州・新風・みらいの小島康晴でございます。会派を代表しまして質問をいたします。
 かつて、フランスがくしゃみをすればヨーロッパが風邪を引くということわざのようなものがありました。今や国際化、情報化が進んで、どこかの国がくしゃみをすれば世界中が風邪を引くような状況です。ましてや、世界一の国民総生産を誇るアメリカのくしゃみとなれば、風邪どころでは済みません。
 トランプに明け、トランプに暮れる毎日で、一国のリーダーの一挙手一投足に世界の耳目が集まっています。このトランプ新大統領の誕生につきましては、単にポピュリズム政治として片づけるのではなく、アメリカ社会がそこまで深刻な構造的問題を抱えており、その意思表示を市民が選挙を通じて具体化した結果だと見るべきとの見解がございます。
 世界は、行き過ぎた新自由主義と過度なグローバル化によって疲弊し、行き詰まっており、欧米先進諸国でも不満が高まり、それが市民の大きなうねりをつくっている。その結果であるというわけです。
 長野県文化振興事業団理事長の近藤誠一先生も、一昨日、同じような趣旨の御発言をしておられました。長い国際経験を持つ近藤先生の御指摘も傾聴すべきものと思いました。自由は大事ですし、自由競争はもちろん尊重されるべきです。しかし、全ての人が自由競争を勝ち抜けるわけではなく、むしろそれはごく一部の人です。残りの大多数の人が社会の一員として社会全体で一定の生活を守っていける、そういう仕組みを構築していかなければなりません。そして、そのためにこそ政治があるのではないかということを申し上げて、順次質問いたします。
 新年度予算案に関してお尋ねいたします。
 国内の景気はなかなか好転せず、国民の実質所得は下がっています。それに伴い、低所得者の割合を示す指標と言える貧困率がどんどん高くなっています。6人に1人が相対的貧困層に分類されるような社会となっており、国民生活は急速に悪化してきています。
 県内を見ましても、子供の貧困率や生活保護数は増加傾向にあり、非正規雇用率は全国ワースト2位です。自殺者も、減少傾向とはいえ、平成27年で378人、平均で1日1人を超えています。
 知事の冒頭の議案説明では、県内経済は緩やかな回復基調にある。しあわせ信州創造プランのプロジェクトの達成目標43項目のうち25項目がおおむね目標達成したとの分析でありますが、まず、県民の皆さんの生活の現状等をどう捉えているか伺います。
 そして、この現状に対して、しあわせ信州創造プランの約4年間、人口定着・確かな暮らし実現総合戦略の約2年間の取り組みとその成果や課題など、評価を伺います。
 また、なかなか地方にその効果が及んでいないとも言われるアベノミクスあるいはローカルアベノミクスについて、県民や県内経済への成果と課題など、評価について伺います。
 しあわせ信州創造プランの総仕上げ、あわせて次期総合計画への準備を進めるべき新年度当初予算案の特徴、特に、知事が思いを込め、県民の皆さんに一番訴えたいことは何か、伺います。
 厳しい財政状況とはいえ、真に県民生活の向上を考え、県内経済の好循環を目指すならば、たとえ1.5%でも前年度比で減額ということにはならないのではないかと思います。後で提案する道路や県有建物の維持修繕、3年もかけてやるという高校のトイレの洋式化など、必要と考える事業やもっと早くできないかと思う事業はまだまだたくさんあります。その仕事が地域の業者の仕事になり、回り回って税収に返ってくる。そういう発想は持てないものでしょうか、伺います。
 予算編成に当たっての会派の提案書で10月に申し上げましたが、地方交付税制度の堅持、一般財源の確保、臨時財政対策債の廃止や償還財源の確保を国へ求めるよう申し上げましたが、新年度予算案への影響はどうであるのか。また、この間の国への対応や今後の取り組みについて伺います。
 関連して、地方創生に対する国の財政支援の仕組みそのもののあり方についてどのように評価しているか、伺います。
 さきの議会でも問題になった地方創生にかかわる交付金の交付決定などを見ておりますと、国が自治体の施策を差配するような形になっており、地方分権の流れに反するのではと懸念されます。どのように感じておられるか。
 以上7点、新年度予算案にかかわって知事に伺います。
 大きな2点目に、地域振興局に関して伺います。
 地域振興局は、知事の公約でもあったかと思いますが、新年度から地域振興局が設置されることついて地元でお話をしていても、地域の期待は大きいものと感じています。そこで、改めて、地域振興局設置の大前提として知事の考える地域の振興とは何か。あるいは、どういう状況であれば地域が振興できている、振興されているとお考えか。知事に伺います。
 新しく地域振興費総額1億円が創設されます。その配分についてはいろいろ工夫されていると思いますが、県庁から各振興局への時間、距離を指標に加えていただきたいと思います。例えば、1時間の会合や陳情に長野の県庁に赴くだけでも、飯田、下伊那からは一日仕事になってしまいます。例えば、町村長さんが長野に1日来れば、それだけ町村長は地元で仕事ができないわけでございます。この時間的ロスは地域間格差の一因ともなっておるところでございまして、その点について企画振興部長の所見を伺います。
 地域振興局になることによって、例えば私の地域であれば、飯田市追手町、県の合同庁舎にあたかも県庁があるかのようになることが私の希望です。権限、財源、人材をさらに配分、分権化して、ぜひ引き続きそのような方向に進んでいただきたいと思いますが、知事の御所見を伺います。
 地域発元気づくり支援金は、3年間の取り組みを検証して新年度から一部見直し、再見直しがされますが、地域振興局になって何か変わることはあるのでしょうか。また、支援金制度が10年ほど定着してきた一方で、1年ごとに成果が求められているやに見受けられます。地域への有効な投資として長期的な視野で地域づくり、まちづくりに生かされることが望まれますが、知事はどのように現状を捉えておられるか、伺います。
 3点目として、リニア中央新幹線と地域活性化に関連して伺います。
 会派としては、リニア中央新幹線の建設に向けて、環境影響等への県民の不安を払拭するよう適切に対応すること、県が先頭に立って関連道路等の整備やリニアを活用した中南信地域の振興に積極的に取り組むことを10月に提案、要望しております。
 昨年11月、南アルプストンネル長野工区の工事が着工され、いよいよ10年先に向かって動き出したなと感じるところでございますが、それだけ沿線県民の皆さんの不安も具体化していきます。特に、発生土の運搬への対応は喫緊の課題です。例えば、飯田文化会館の上の非常口からの発生土がそのまま中心市街地を通り抜けていくのだろうか。あるいは、飯田松川上流の現場からのダンプがたくさん未改良部分のある飯田南木曽線を通っていって大丈夫なんだろうか等々です。
 知事がJR東海社長とトップ会談を行うなど、積極的に取り組んでいただいていることを評価するところですが、このような沿線住民の皆さんの不安の声に、県としても引き続き真摯に向き合い、JR東海と対応していただきたいと思いますが、知事の御所見を伺います。
 リニアを生かしていくためには、県民の皆さん、とりわけ伊那谷の皆さん、住民の皆さんに、自分事として受けとめていただくことが欠かせないと思います。品川から飯田まで45分ほどで来るリニアの駅は、駅というより空港のようなものとも言われています。普通の鉄道の駅の駅前であれば、駅から歩いて数分くらいの範囲が駅前と言われるでしょうが、リニアでは、早く着いた分、駅前の広さも広がると考えたい。そして、伊那谷が丸ごとリニア駅前であるような発想で取り組むことが肝要と思います。そのことにより、自分の生活や自分の地域とリニアとの関連づけができ、それぞれの活性化の取り組みにも拍車がかかるものと考えます。県としてどのように県民の皆さんを巻き込んで地域活性化に取り組むのか、知事に伺います。
 リニア基本構想にもございますが、リニアの効果を全県的なものにするには、篠ノ井線や中央線の輸送力の強化や利便性の向上が欠かせません。また、例えば特急あずさの伊那谷への乗り入れなども考えていただきたい。これらの取り組みの推進につきまして企画振興部長に伺います。
 地元の広域連合が策定しました基本構想においては、リニア中央新幹線開業に向けて望まれるインフラについて、研究開発機能の拠点施設、高等教育機関、コンベンションセンター、スポーツ施設の四つを掲げております。
 例えば、スポーツ関係者からは、三大都市圏等との時間、距離が大幅に短縮されること、また、豊かな自然や文化に加え温泉などの保養・休養施設を最大限に生かし、スポーツの国際的大会の招致や、一流アスリートを初めとしてさまざまな人々が集う合宿地となるにふさわしい施設を整備することが要望されています。
 リニア時代を見据えたこれらの広域的な施設整備に関して、県としてもともに考え、協力、支援いただきたいと考えますが、知事の御所見を伺います。
 リニアにかかわりましては、リニアの本線、駅周辺、国道153号の整備やスマートインターから駅までの道路等々工事が重なりまして、膨大な用地買収や代替地のあっせんなど、短期間に集中いたします。飯田市では、かつて、国と県、市そして中部電力が連携して天竜川治水対策事業を行った経験がありますが、リニア関連工事はこれに匹敵する、あるいはそれ以上の大事業であり、県と市、JRの緊密な連携が期待されます。大量の住宅や事業所等の移転をスムーズに進めるためにも、代替地の確保提供も含め、一層の県と市の連携が重要と考えますが、建設部長に伺います。
      

◎知事(阿部守一)

 

 小島議員の代表質問に順次お答えを申し上げたいと思います。
 県民生活の現状と新年度予算案についてということで御質問をいただきました。
 まず、県民生活の現状についてということでございます。
 さまざまな統計指標がある中で、多面的に県民の皆様方の暮らしというものを捉えていかなければいけないというふうに思っております。
 去る1月27日に県として公表いたしました長野県の県民経済計算の中で、県民1人当たり家計可処分所得というものを公表しております。これは、5年連続で増加をしておりまして、47都道府県の中での順位も全国11位ということでございます。全国平均値を16年連続で上回っている状況でありまして、このデータから見る限り、県民生活全体として見ると、全国的に見た場合、比較的高い水準にあるのではないかというふうに考えています。
 ただ、一方で、御指摘がありましたように、生活保護率あるいは非正規雇用の割合、こうしたものを見ますと、全国に比べて長野県の生活保護率は非常に低い水準ではありますが、過去の長野県の状況から比べると高いレベルで推移してきておりますし、また、御指摘ありましたように、非正規雇用の割合も高い現状にあります。そういう意味で、県としても、この格差の問題や貧困の問題にしっかりと向き合っていくということが重要だというふうに考えております。
 そういう中で、これまでの4年間のしあわせ信州創造プラン、この格差や貧困という観点だけに絞って取り組んできたわけではありませんが、そうした視点もしっかり持ちながら施策を構築し、推進をしてまいってきたところでございます。
 例えば、県民所得の向上を図ろうということで、さまざまな経済の活性化、雇用の創出策に取り組んでまいりました。その結果、4年間で有効求人倍率は0.73ポイント上昇しております。業種によっては、むしろ人手不足の状況が出てきているという状況であります。
 また、雇用の関係で申し上げれば、正規雇用の促進につきましても、労働局と連携しての企業への働きかけ、あるいはジョブカフェ信州での就労サポート、こうしたことを通じて正規雇用の促進を図ってきております。
 また、以前のパーソナルサポートセンター、今、生活就労支援センター「まいさぽ」を県と全19市において県内23カ所に設置をしております。これまで、さまざまな課題を抱える皆様方の支援を行い、平成27年度で843人の方々の就労、増収に結びつく取り組みも行ってきております。
 また、子供の貧困ということが言われる中で、子育てに係る経済的負担の軽減を図ろうという観点で、平成27年度から子供の医療費助成の対象を拡大させていただきましたし、また、保育料負担についても県としての助成を導入し、市町村にも働きかけて、全て77の市町村で第3子以降の保育料軽減について行っていただいているところでございます。また、給付型の奨学金制度の創設を含めて、この格差あるいは貧困という問題に私どもとしてもしっかり向き合ってきたところでございます。
 新年度予算の中でも、私立の小中学校の児童生徒に対する授業料支援でありますとか、あるいは生活困窮家庭のお子さんに対する学習支援、こうしたものを新たに取り組むことといたしましたし、また、高校生等に対する奨学給付金の拡充も行っていきたいと考えております。
 こうしたさまざまな施策でありますけれども、まだまだお一人お一人の家庭の状況からすると不十分な部分も多いのではないかというふうに思います。県民の皆様方の暮らしの状況というものについてしっかりと私どもも把握をしながら、貧困の問題あるいは貧困の連鎖ということが引き続き起きてくることのないように取り組みを行っていきたいというふうに思っています。特に、子供たちが将来に夢と希望を持って暮らせる長野県づくりに向けて、さらに取り組みを充実させていきたいと考えております。
 それから、アベノミクスとローカルアベノミクスの成果と課題という御質問でございます。
 我が国経済は、リーマンショック以降、東日本大震災、欧州の経済危機等で後退局面が続きました。アベノミクスによります円安、株高の影響を受けまして、大手企業を中心に収益や雇用環境が改善し、緩やかな回復基調が継続してきております。本県経済も、円安基調の中、輸出関連企業を中心に業績が改善するなど、緩やかな回復基調にあるというふうに考えております。
 また、先ほど申し上げましたように、雇用情勢も、有効求人倍率が一貫して上昇してきております。そういう意味で、アベノミクスの効果は本県にも波及してきているというふうに考えております。
 ただ、他方で、個人消費でありますとか民間の設備投資は力強さを欠いておりますし、人材不足等の課題というものも新たに生じてきております。こうしたことから、私ども長野県といたしましては、国の経済対策も最大限活用していきたいと思いますし、新たな産業の創出、イノベーションの促進にも取り組んでいきたいというふうに思っています。あわせまして、県内企業の魅力発信あるいはインターンシップ支援を通じて、優秀な人材が確保される、県内に定着するような取り組みも進めていきたいと考えております。
 それから、新年度予算案の特徴、県民に一番訴えたいことということでございます。
 新年度当初予算案は、最終年度を迎えるしあわせ信州創造プランの総仕上げということで、人口減少対策、地域経済の活性化、多様な働き方・暮らし方の創造、個性豊かな地域づくり、安全・安心な社会の実現の五つを重点テーマに編成しました。これは、あらかじめ予算編成方針に明記することによって、部局横断的な政策検討を行い、そして、効果的、効率的な予算編成にも結びつけたところであります。
 特に、県民の皆様方には私ども広くお伝えをしていかなければいけないと思っておりますが、先ほど垣内議員の御答弁の中で申し上げましたが、私は、県民参加と協働ということが県政の重要なテーマだというふうに思っております。そういう中で、今回の予算の中でも、県民の皆様あるいは企業の皆様方とともに取り組む施策がかなりございます。こうしたものについては、重点的に県民の皆様方にお伝えをして一緒に取り組んでいただくことが重要というふうに思っております。
 例えば、信州ACEプロジェクト、健康づくり県民運動、これは、県民の皆さんと一緒に取り組まなければいけません。また、子供の居場所づくり、これも県民の皆さん、地域の皆さんの力なしには県の力だけでは望ましい形は実現でき得ないというふうに思っています。また、しあわせバイ信州運動のような地域経済の循環を促すような取り組みであったり、あるいは働き方改革、あるいは新しい暮らし方の創造といったようなものについても、これは県だけではなくて、企業の皆さんあるいは働いている皆様方と思いを共有して取り組んでいかなければいけません。こうした取り組みは、今回の予算の中でかなり盛りだくさんに含まれておりますので、こうした部分を中心に、今後、予算成立の暁には、県民の皆様方にしっかりとお伝えをし、そして、ともにその実現に向けて取り組んでいただけるよう働きかけをしていきたいというふうに思っております。
 それから、当初予算の減少についての考え方ということでございます。
 御指摘いただきましたように、今回の平成29年度当初予算は、総額については確かに減少しております。しかしながら、中身をごらんいただきますと、例えば公債費で37億円のマイナス、あるいは災害復旧費で29億円のマイナスということでございます。他方で、社会保障関係費あるいは災害復旧を除いた投資的経費、さらには補助費であったり物件費、こうしたものについては増加させております。そういう意味で、政策を進める上での実質的な経費については増額をさせている、必要な所要額についてはでき得る限り確保させていただいているというふうに考えております。
 例えば、社会資本整備について申し上げれば、長寿命化あるいは老朽化した施設の改修を重点的に進めようということで取り組みます。経済対策基金事業が終了していく中ではありますが、前年度より増額をさせております。また、お話の中にありました維持修繕は、私もかねてから、これからは新設から維持修繕に事業をシフトしていく時代じゃないかと思っておりますし、また、地域経済の循環という観点からも、こうした事業は、地元の事業者の皆様方が受注されることが多い事業であります。そういう観点で、公共事業の維持補修費についてはこれまでもウエートを高める努力をしてきました。新年度予算案におきましても、前年度より約14億円増額をさせていただいているところでございます。
 また、かねてから県民の皆様方からも御指摘いただいております高校、特別支援学校の修繕、これは28年度に3倍に増額をさせていただき、28年度、29年度、30年度、この3カ年かけて計画的に取り組んでいこうということで、平成29年度は2年目に当たります。引き続き、27年度水準に比べれば相当増加した金額で修繕事業を行っていきたいというふうに思っています。
 また、しあわせ信州創造プラン総仕上げということもありますので、プロジェクト関連事業費につきましても約311億円ということで前年度比約59億円増加ということで、プランの着実な推進に向けて関連事業の予算づけをさせていただいています。
 このように、総額は減少という形になっておりますけれども、政策についてはしっかりと進めていくことができる予算になったのではないかというふうに考えております。
 それから、一般財源確保など国への要望状況と当初予算編成への影響ということでございます。
 国に対する要望、議員からお話があった点につきましては、12月の上旬に長野県独自で財務省、総務省、関係国会議員等を訪問させていただいて、一般財源総額についての確保、それから地方交付税総額の確保、臨時財政対策債の廃止、臨時財政対策債の償還財源の確実な確保、こうした点について要望をさせていただいております。また、全国知事会あるいは関東地方知事会等も通じて同様の要請を行っております。この結果、地方財政計画におきましては、一般財源総額は確保されましたが、臨時財政対策債は増額という形になっております。
 本県への影響といたしましては、地方交付税59億円の減ということで見込んでおりますが、反面、臨時財政対策債の発行額を24億円の増加ということで予算計上させていただいております。今後も、地方財政基盤の確立に向け、地方交付税の法定率の引き上げ等も含めて制度の抜本的な見直しを国に求めていきたいと考えています。
 それから、地方創生に対する国の支援の仕組みについての御質問でございます。
 地方創生関連予算について確保されたということについては評価したいと思いますが、しかしながら、使い勝手のよさ等については、これは議員からも御指摘がありましたが、大きな視点で見ると課題もあるのかなというふうには思っています。
 今回の地方創生、まち・ひと・しごと創生本部では、地方側の相談に非常に丁寧に乗っていただいておりますので、そうした点は今までの国の補助金の配分に比べると各段の進歩だなというふうに私はいい意味で受けとめております。しかしながら、あくまでもこれは国の予算ということでありますので、そういう意味では、どうしても国の考え方とか国の意思が入ってこざるを得ないということで、地方の主体性を生かすということについての一定の限界があるというのも、これはこの制度上に内在している課題だというふうに思っております。
 先ほど申し上げましたように、地方税財源の充実確保ということは、これは私どもの長年来の希望でありますし、本当に地域住民の皆様方の期待する政策を行っていく上では、補助事業ではなく地方財源の形で地方に渡してもらったほうがいい仕事ができるんではないかというふうに考えております。そういう意味では、これからも、国に対して、地方税源、地方財政の充実、こうしたものについてはしっかりと要請を行っていきたいと考えております。
 それから、地域の振興についての考え方でございます。
 地域の振興は、それぞれの地域の特色、個性というものがあるわけでありますので、決して画一的に語られるものではないというふうに考えております。長野県内でも、例えば製造業で豊かな地域、あるいは観光業で頑張っている地域、こうしたところもあれば、豊かな文化や伝統、例えば飯田のお練りまつり、東野大獅子舞、小島議員も参画されていますけれども、こうした文化や伝統を支えに地域の皆様方のきずなが強固な地域もあります。
 いずれにしても、共通して言えることは、それぞれの地域に暮らされている方々が地域への愛着、誇り、こうしたものを持つとともに、将来に向けてその地域における夢や希望を持ち続けることができる、こうした方向づけをしていくということが地域振興の本来のあるべき姿だろうというふうに私は思っています。そういう意味で、まずは地域の皆様方の思い、考え、こうしたものがどんどん発揮され、そして、県としてはそうしたものを積極的に支援していくということが重要だというふうに思っております。
 長野県は、伝統や文化あるいは長寿県を築いてきた取り組み、あるいは災害時にあらわれる人と人とのきずな、コミュニティーの強さ、こうした個性や強みを持っているわけでありますので、そうしたそれぞれの地域が持つ強みを最大限生かした地域づくりを市町村初め関係団体の皆さんと一緒にしっかりと応援をしていきたい、そのことによって元気な地域をつくっていきたいというふうに考えています。
 それから、地域振興局設置に伴う地域分権についてということでございます。権限、財源、人材、さらに配分、分権化すべきではないかという御質問でございます。
 まずは地域振興局の設置をさせていただき、一歩前進をさせたというふうには思っております。ただ、例えば権限の話につきましても、市町村との関係も含めて、より住民に身近なところでしっかりと仕事ができる体制をどうつくるかということについてはこれからも引き続き考えていかなければいけない課題だというふうに思っています。特に、情報化が進み、さまざまな技術革新が行われる中で、そうしたものを活用していく効率化の観点と、それから、やはり人でなければ行えないサービスをできるだけ現場で対話をしながら進めていくやり方、こうした両面を視野に入れて権限配分のあり方を考えていく必要があるだろうと思います。
 また、お金の問題についても、今回1億円の地域振興推進費を新設したいと考えておりますが、こうした財源のあり方についても、まずはその成果を見きわめながら今後しっかり考えていかなければいけないというふうに思います。
 それから、今回、新年度から市町村との人事交流の対象を管理監督職員にも広げていきたいというふうに考えておりますが、こうした人の配置のあり方もしっかり考える必要があると思います。試験研究機関のあり方等も含めて、県の現地機関のあり方については県としてもまだまだ検討すべき論点があるというふうに思っております。引き続き県民の皆様方から親しまれる、そして利用しやすい現地機関の体制となるように今後とも意を用いていきたいというふうに考えております。
 それから、元気づくり支援金の見直しと地域振興局設置との関係ということでございます。
 地域発元気づくり支援金につきましては、これまで以上に地域の主体性が発揮できるように、今回、地域ごとの重点テーマを地域振興局長が設定できるという形にしております。また、地域振興局におきましては、重点テーマを設定して、市町村、公共的団体の取り組みを支援するということとあわせまして、新たに地域振興推進費を設けました。これは、みずから事業を行っていただくことによりまして、一定の目的に向けて、物によっては相乗効果を期待できる部分もあるのかなというふうに思っております。
 また、元気づくり支援金の長期的な視点での活用という御質問でございますが、確かに、年度ごとに事業採択ということでありますので、1年間の事業成果をまとめさせていただいております。ただ、採択に当たりましては、事業の発展性、継続性につきましても審査基準の一つとさせていただいておりますし、3年間継続して支援するということも可能になっております。 これまでも、例えば子育て支援や移住定住促進を初めとする人口減少対策であったり、あるいは創業・就業支援、特産品開発といった地域の経済・雇用対策など、継続的な取り組みを前提とした事業も採択をいたしているところであります。元気づくり支援金は、地域の将来を見据えた地域づくりに活用できるものと考えておりますし、今後ともそうした視点をしっかり持ちながら運用していきたいと考えております。
 それから、リニア中央新幹線と地域の活性化についてでございます。
 まず、沿線住民の皆様方の不安の声への対応という御質問でございます。
 県としては、リニア工事に伴って生ずるさまざまな課題につきまして、地域住民の皆様方の理解を得ながら事業が進むように、地元とJR東海との間の調整に努めてきたところでございます。これまでも、関係市町村の首長の方々あるいは地域住民の皆様方との意見交換を行わせていただきましたし、地域の切実な声をお伺いし、さまざまな機会を捉える中で、JR東海に地域の声というものもお伝えさせてきていただいております。
 先月23日にJR東海柘植社長と会談をさせていただく中で、地域の要望を踏まえた要請を私から直接行わせていただきました。発生土置き場の管理責任に関する方針転換や観光振興については、JR東海全社を挙げて協力するということを御表明いただきました。一定の成果が得られたものというふうに思っております。
 今後、工事の進捗に伴い、さらに課題も具体化してくるものというふうに思っております。発生土の運搬ルートの選定等、生活環境に与える影響が大きい課題に対しまして、引き続き県といたしましても市町村とともに真摯に向き合い、JR東海に対応していきたいと考えております。
 それから、リニア駅を活用した地域活性化への県の取り組みについてという御質問でございます。
 御指摘のとおり、これは地域の皆様方のお考えというものがまず起点として重要だと思っております。これまでも、リニアバレー構想の勉強会あるいはリニア開通を見据えたまちづくりの講演会を開催してきております。こうしたことを通じて、リニア新幹線の整備を地域の皆様方の御自身の問題として考えていただく機会を設けてきたところでございます。リニア整備を生かして地域振興を図っていく上では、とりわけ、中心となっていただく必要がある市町村が、住民の皆様方の意向を十分反映した中で地域の将来像を具体化していただくということも重要だというふうに考えております。そういった考え方で、地域主体で、県としてもそうした皆さんの思いに寄り添ってしっかりと対応していきたいと思っておりますので、こうした考えを共有するため、私自身も、関係地域に出向いて、市町村長の方々あるいは地元の経済団体の皆様方と率直に意見交換を行っていきたいと考えております。その上で、地域において住民の皆さんと一体となった取り組みが進捗するよう、県も一緒になって考えていきたいと思っております。
 それから、リニア駅周辺の施設整備に対する県の協力支援についてということでございます。
 県内唯一のリニア中央新幹線の駅となります飯田に設置される予定の長野県駅、これは、設置される飯田市のみならず伊那谷全体の地域振興、あるいは、場合によっては長野県全体の南の玄関口という位置づけになってくるものというふうに考えております。そういう意味で、駅周辺そして伊那谷全体の地域づくりのビジョンを関係市町村の皆様方と私ども長野県とが共有していくということが重要だというふうに思っております。
 今、伊那谷自治体会議を設置して、未来を先取りしたリニア時代のまちづくりについて検討を進めているところでございますが、まちづくりは、やはり地域の皆様方の思いが基本だというふうに考えております。まず関係市町村の皆様方が中心となって将来像を明確にしていただくということが必要だというふうに思っております。そうしたものを伊那谷自治体会議で広域的な視点で議論を重ねる中で、御指摘があったような伊那谷における施設整備のあり方の検討にもつなげていく必要があるというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、県としては、リニア中央新幹線を伊那谷の発展、そして長野県全体の発展につなげていくということが私どもの責務だというふうに思っていますので、関係市町村の皆様方としっかりと対話を行いながらこの問題に正面から向き合って取り組んでいきたいというふうに考えております。
 私に対する御質問は以上でございます。
      

◎企画振興部長(小岩正貴)

 

 私にいただきました御質問につきましてお答えいたします。
 まず、地域振興局のあり方に関連して、地域振興推進費についての御質問でございます。
 地域振興局設置の初年度であります来年度の地域振興推進費につきましては、総額の半分を人口や面積、市町村数等の客観的指標に基づき配分しつつ、各地域振興局が一定の事業量を確保できるよう配慮しまして、残りの半分を各局に均等に配分することといたしまして局ごとの活用可能額を設定したところでございます。また、その上で、実際の執行状況に応じ、地域振興局間での配分変更も可能とするような運用も考えているところでございます。平成30年度以降につきましては、来年度の事業実績や地域の要望等も踏まえまして、各地域振興局が必要な事業を効果的に実施できるよう、よりよい配分のあり方を引き続き検討してまいりたいと考えております。
 次に、リニア中央新幹線と地域活性化に関連しまして、JR在来線の利便性向上等についての御質問でございます。
 現状、御指摘の特急あずさにつきましては、その構造上、最短でも4両編成での運行となる一方、飯田線は、駅などの鉄道施設が3両編成の列車までしか対応できない構造となっております。そのため、今のままでは特急あずさがそのまま飯田線に乗り入れることについてはハードルが高いとJR東日本からは説明を受けているところでございます。しかしながら、県内交通ネットワークを考える上で、南北の円滑な移動環境の確保は極めて重要な課題でございます。そこで、現在、豊橋―飯田間で運行されています特急ワイドビュー伊那路の飯田以北への運行や、長野―飯田間で運行されております快速みすずの増便など、これまでも連絡調整会議の場などでJRに対し繰り返し要望してきているところでございます。
 10年後のリニア中央新幹線の開業を見据えましては、こうした従来の対応に加えまして、御質問にありましたような特急あずさの飯田線乗り入れに向けた技術的な課題の解決や篠ノ井線や中央本線など在来線の輸送力強化、また、利便性の向上等につきましてJR東海やJR東日本へ働きかけるなど、取り組みを進めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
      

◎建設部長(奥村康博)

 

 リニア中央新幹線及び関連事業に係る用地買収についてのお尋ねでございます。
 リニア中央新幹線の長野県駅周辺では、リニア本線、駅周辺整備及び関連道路整備事業によりまして約300軒の家屋や事業所の移転が見込まれております。異なる事業主体が用地買収を行うため、昨年12月にJR東海、飯田市、長野県の三者合同で、飯田市上郷及び座光寺地区で用地補償説明会を延べ6回開催し、約500名の皆様に御出席いただきました。その中で、代替地確保、あっせんについて、事業主体ごとに不公平と思われるようなことが生じないように窓口を飯田市に一元化し、三者が協力して進めていくことを御説明いたしました。JR東海、飯田市及び県でなお一層連携協力し、一体となって代替地の確保に努め、地権者の皆様の御理解を得て円滑に事業を進めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
      

◆小島康晴

 

 代表質問でございますのであえて再質問はいたしませんが、引き続き国から県、県から市町村、あるいは本庁から現場というような分権の流れが高まっていくように知事にはお取り組みをお願いしたいと思います。
 それから、元気づくり支援金につきましては、支援金が終わったら事業が終わりということがないように、例えば、3年かかっても、事業が定着したり拡大するような方向で、新しい振興局のもと、引き続きしっかりきめ細かな支援をいただくようにお願いしておきたいと思います。
 続きまして、大きな4点目として、持続可能な地域社会の構築に向けて何点かお尋ねいたします。
 県議会の実行委員会が主催して毎年開催しております地方自治政策課題研修会でもお招きしたことがあります千葉大学の倉阪秀史教授は、今後の経済について、域外に顧客を持ち外部から収入をもたらすような産業部門を成長部門、資本基盤の手入れを行う産業部門を持続部門とし、資本基盤を維持更新するための経済の活力が確保されていること、すなわち、成長部門の成果が持続部門に投入される仕組みができている、そういう社会が持続可能な社会であると提言しておられます。
 もう少し申し上げますと、成長部門は、特産品の開発とか観光、貿易など、競争に勝ったときには大きくもうけることができるようなもので、主としてこれは国の施策として支援するようなもの。一方、持続部門は、人、もの、自然などの基盤を手入れするような部門で、介護とか医療、保育や教育、農地の管理や道路・建物維持補修、修繕など地域密着型、労働集約型で、市場原理では回りにくく、身近な自治体、行政がお金を回す仕組みが必要であるとするものです。したがって、こうした成長部門と持続部門への支援の仕方はおのずと異なりまして、めり張りをつけて取り組むことが求められます。
 例えば、農業の支援であれば、世界に打って出るような先進的な攻めの農業と、中山間地域でおばあちゃんが細々と畑を守っている農業では、おのずと支援の仕方が異なってまいります。現に、そのような取り組みをされているとは思いますが、このように成長部門では民間の稼ぐ力を側面から支援する。一方、持続的な部門では、市町村とともに県も前に出て主体的に経済政策を行い、その役割を果たしていくことが必要とされております。
 当面は続きます少子化、人口減少状況下のもとで、限られた資源、財源、労力でどう地域を元気にしていくか、ストックマネジメントの重要性が強調されています。持続可能な地域づくりに向け、県の施策の推進に当たりまして、こうした考え方をぜひ参考にしていただきたいと思いますが、知事に伺います。
 財政的にも大きな負担を伴います県立大学の設立、信濃美術館の建てかえ、県立武道館の建設と、大型事業が続いてまいります。それぞれに経過があり、手順を踏んで進められていることではありますが、広い長野県県土にあって、特に当該圏域以外の県民の皆さんにとって、波及効果も含め、理解、納得を得ながら推進されることが肝要と思われます。どのように取り組んでいかれるか、知事に伺います。
 寿命が伸びていくことは大変すばらしいことですが、高齢化社会となり、高齢となっても自動車を運転しなければならない人や地域が本県にはたくさんございます。高齢者が交通事故の被害者にも加害者にもなることは本当に悲しいことであります。
 長野県新総合交通ビジョンでは、「地域における移動手段の確保にあたっては、元気な高齢者の活用を検討する必要があります。」、あるいは「高齢者等が自動車に頼らずに移動できる生活の足の確保とともに、誰もが安全に安心して移動するため、公共交通におけるバリアフリー化やユニバーサルデザイン化を進める必要があります。」、さらには「高齢者の自動車運転によるリスク軽減に向け、運転免許証の自主返納制度を効果的に機能させる取組等を促進します。」とビジョンにはあります。買い物や通院あるいは農作業などに高齢者の方が自分で運転しなくてもよい暮らし方を模索しなければなりません。
 先ほど申し上げた持続部門の支援の考え方でいえば、ある程度の損益を度外視しても地域公共交通機関の立て直しが必要です。あるいは、インターネットなど新しい技術を生かした買い物や移動販売、医師の往診や遠隔地診療の仕組みづくり、あるいは自動運転車の開発とその活用など、早急に取り組まなければならないと考えますが、企画振興部長の所見を伺います。
 また、高齢者の方に免許返納を勧めることもこの地域ではなかなか容易なことではないと思いますが、運転免許返納の現状や今後の取り組みについて、県警本部長に伺います。
 中国に抜かれたとはいえ世界第3位の国民総生産を持つ経済大国である我が国で、子供の貧困が課題となり、子供食堂を必要とする家庭があるということは大変残念なことです。6人に1人が貧困といっても、6人に5人の人にはなかなかイメージが湧かないかもしれません。
 子供の貧困の要因に、ひとり親家庭があります。私は、小学校4年で父を失い、母子家庭、今でいうひとり親家庭となりました。当時はクラスにもう一人いたかどうかの状況だったと思います。突然大黒柱を失いまして、しばらくして母は臨時の仕事に出かけ、子供のいない親戚に生活費を援助してもらい、私自身も、大学はもとより、高校も奨学金を借りて行かせてもらいました。決して、振り返って楽ではなかったけれども、不幸のどん底というほどのことはなかった気がします。思い返せば、そのときはやはり親戚とか御近所とか、あるいは親の職場の同僚とか、今でいうセーフティーネットがあったのだと思います。そう思いますと、先ほど知事のお話がありましたように、直接的な子育て支援策がさまざま展開されておりますけれども、さらにこれと並行しまして、もう一度地域のセーフティーネットを張り直すような必要があるのではないかと考えます。それは、まずは身近な市町村の責務かもしれませんが、県としてもこのような取り組みをすべきではないか。知事に伺います。
 使っていない部屋やあいている自動車を融通し合う新しい商売が広がっています。シェアリングとかシェアリングエコノミーとか言われておりますが、持続可能な社会をつくるための一つの方策として有効な面もあるのではないかと思われます。
 一方、これまで地域公共交通を担ってきたバスやタクシーとの競合や、厳しい規制のもとで営業されてきた旅館やホテルへの影響も心配されるところです。県として、県内のこのようないわゆるシェアリングの状況をどのように把握しておられるか。あるいは、今後どのようなスタンスで対応していかれるのか。産業労働部長に伺います。
 持続可能な地域社会の一番の基本、基礎は、平和な社会であることだと考えます。満蒙開拓平和記念館の建設に当たりましては、県議会も建設促進議員連盟をつくって側面支援し、阿部知事には英断を持って建設費を補助していただき、平成25年4月に開館いたしました。
 昨年11月に天皇皇后両陛下にこの満蒙開拓平和記念館を御訪問いただきました。関係した者として大変ありがたく、光栄に存ずるところでございます。そのおかげもありまして、開館3年半余りで来館者が10万人を超えるという状況になっております。
 両陛下は、記念館の展示の御見学の後、3人の元開拓団員の皆さんと懇談されました。その際、両陛下からは、このような歴史をこれからも語り継いでいってください。天皇陛下からは、さらに、こういった皆さんの御苦労により戦後の日本が築かれてきた。この平和を大切にとの趣旨のお言葉をいただいたとのことであります。
 満蒙開拓の関係者も毎年高齢化してまいります。将来に語り伝えていくためにも、県としても、いわゆるソフト面での継続的な支援を検討いただきたいと思いますが、両陛下御訪問の感想も含めて知事の御所見を伺います。
 集落の再構築について何点か伺います。
 先日、飯田市の上久堅地区というところの新春フォーラムに参加してまいりました。上久堅地区は、昭和39年に飯田市に合併し、その当時の人口は約3,000人でありましたが、現在は約1,400人の典型的な中山間地域、過疎の地区です。しかし、早くから地域づくりや村おこしに取り組み、13ある集落を、十三の里と書いて「とさのさと」として、集落ごとにそこを象徴する花を決めて活性化を図ったり、商店街に来て農産物の市を開いたり、大学の学園祭に模擬店を出したり、ユニークなさまざまな取り組みをしております。JICAの国際研修生も毎年のように研修に訪れております。こんな里の一つに、関西方面からIターンし、農業にチャレンジして結婚し子育てもしている若者がおりまして、この新春フォーラムの中で、Iターン者がキャンセル待ちになるような里づくりをしようと発言いたしました。こんないいところはないから、次々と移住希望者が出てきて、順番を待たなければならないくらいの里にしようじゃないかという呼びかけでありました。大変うれしく、勇気が湧いてきたわけでございます。
 ふるさと回帰とか田園回帰とか言われていますが、島根県など先進的なところを見ても、やはり集落がしっかりしていてこそIターンやUターンの人を温かく迎えることができているということです。地域活性化のためには、地域の基本となる集落、町場では町内会の単位から再構築していくことが必要ではないでしょうか。200万の長野県とか10万の飯田市というふうに大きく一からげにするのではなくて、顔が見える、声が届く範囲、身近な自治の範囲で集落、町内会からの再構築が重要と考えます。集落の再構築は、まずは身近な市町村が担うべきこととは思いますが、情報の収集とか提供を初めとしまして、県としてもその専門性や組織力を生かしてできること、すべきことはたくさんあるはずと考えますが、いかがでしょうか。知事に伺います。
 以下、具体的に何点かお尋ねいたします。
 集落再熱実施モデル地区支援事業でございます。これにつきましては、これまでの成果を参考にしながら、住民と協働した地域集落の維持活性化の取り組みに対する役割や支援策等について市町村等とともに研究することとし、本事業は廃止するとのことですが、この事業のこれまでの成果はどのようであったか。また、廃止するということですが、今後の取り組みは具体的にどうしていくのか。企画振興部長に伺います。
 かつて検討いたしました地域自治組織は、平成の合併をにらんで、昭和の大合併前のいわゆる旧村単位を想定しておりました。地方自治法にも地域自治区として取り入れられましたが、現在の県内の市町村における設置状況はいかがでしょうか。また、合併の動きが当面はなさそうな中で、自治体間の連携に県としてどのような姿勢でかかわっていくのか。企画振興部長に伺います。
 内閣官房の「地域の課題解決のための地域運営組織に関する有識者会議」が12月13日に最終報告をなさいまして、地域運営組織の量的拡大、質的向上に向けた方策を示しました。国のまち・ひと・しごと創生総合戦略では、小さな拠点の形成1,000カ所、地域運営組織の形成3,000カ所を目標としているとのことですが、県としてこれをどう受けとめ、どう取り組んでいくのか。これも企画振興部長に伺います。
 田園回帰という言葉が示すとおり、Iターン、Uターンの方々について見ますと、いわゆる半農半Xが重要なポイントとなっています。林業県を目指す長野県としては、半林半Xも考えなければならないと思いますが、春、夏、秋は農業に挑戦し、冬はアルバイト等で収入を補っていくというケースが多いようです。農政部として、このようなことについてどのように取り組んでいかれるか、北原農政部長に伺います。
 大きな6点目として、次期総合計画策定に関連して伺います。
 会派として、次期総合計画策定に当たっては、十分な検討期間を確保するとともに、県議会はもちろん、県政モニターを初め、県民各層の意見や要望の把握に努めること、総合計画策定の根拠を定める条例を制定することを求めたところでございます。県議会といたしましても、研究会を設置して積極的にかかわってまいりますが、来年のこの2月議会には成案が示される、その前段の11月議会には素案が示されるというような日程とすれば、残り検討期間は実質的にはあと半年余りと思われます。そこで、この場でも少し議論しておきたいと思います。
 まず、知事としては、現在のしあわせ信州創造プランの進捗も踏まえながら、次期総合計画ではどういう長野県を目指されるのか、知事のお考えを伺います。
 私は、以前から、広大な長野県は、ブドウの房のように一粒一粒が輝き、そして大きく一つの房になって全体も輝く県土の均衡ある発展を目指しつつ、一方で、地域の個性を磨き、時には地域同士で競い合う、そんな信州・長野県を目指したいと申してまいりました。知事はどのようにお考えでしょうか。
 以下、この間の計画行政に関する私の思いを申し上げます。御答弁は結構でありますので、参考までにお聞き取り願いたいと思います。
 現行の計画は、附属資料を除いてもA4判で200ページに及ぶ大部なものであります。とても県民の共有財産とは言えません。計画を何のためにつくるかといえば、県民生活の向上のためということではないでしょうか。県民が、計画書を見て、自分の居場所と出番がわかるようなコンパクトでわかりやすいものでなくてはなりません。県の全体目標は掲げるとしても、身近な地域編にもっと重点を置いて、地域ごとに、地域振興局、市町村、地域住民が協働して目標に向かっていけることが大切と考えます。
 かつては、総合計画や基本計画に項目出しをしておかないと毎年の予算もつかないということで、まさにあれもこれもと基本計画に詰め込むということがありました。その結果、総花的などこにでもあるような計画となり、実際には毎年の予算編成の中で動いていくという流れでした。今や、そんな時代ではなくなっているという認識を県民の皆さんとともに共有しなければならないと考えます。その意味で、計画自身の中に推進体制を明確にし、県、県職員、市町村、県民の皆さんの役割分担を示すことが必要ではないかと思います。
 そして、長野県らしい特徴をどうあらわしていくかも大切です。例えば、京都市の創生戦略では、まち・ひと・しごとの次に「こころ」を掲げ、京都らしさを示したいとしています。日本の心の中心は京都だという意気込みということで承りました。このように、長野県にしかないものをみんなで掲げたいものです。よく言われるように、長野県総合計画の「長野県」のところを岩手県とか鹿児島県と入れかえても通ずるようなプランでは残念だと思います。ぜひそんなことを念頭に置いていただきたいと思います。
 私は、かねてより計画行政の重要性を訴え、計画、実践、評価、改善のPDCAをしっかり回そうと言ってまいりました。間違っていたとは思いませんが、最近、企業などでは、新しい方式としてOODA、ウゥーダと言うそうですが、へシフトしていく動きがあるようです。PDCAのP、計画づくりのところに力が入り過ぎて、しかもその計画に拘束されて実践が不十分になる、そしてチェックも不十分になって次の改善につながらない、そういう反省があるということだそうです。また、最近KPIなどということが重視されますが、数値目標のひとり歩きということも心配されます。現行総合計画でも、最後に計画の見直し条項がありますが、変化に応じ、修正はもちろんですが、思い切って撤退する仕組みをセットで組み込んでいくことが必要と考えます。
 そこでお尋ねしますが、新たな行政経営方針では数値目標を掲げないということですが、10月の会派の提言の際、口頭で申し上げた先ほどのOODAなどの動きも参考にしてのことか、その理由を総務部長に伺います。
 また、次期総合計画にもその数値目標を掲げないような考え方がつながっていくのか、企画振興部長に伺います。
 最後に、総合計画策定の根拠を定める条例の制定につきまして、その後研究等をなされているか、知事に伺います。
      

◎知事(阿部守一)

 

 まず、持続可能な地域社会についての御質問についてお答え申し上げます。
 持続可能な地域社会に向けた取り組み、千葉大学の倉阪先生のお考えを引用して御質問いただきました。倉阪先生のお話を私は直接伺っておりませんので、もしかしたら少しばかりピントがずれるかもしれませんけれども、長野県の目指している方向というのは、日本国内あるいは長野県内、人口減少で市場が縮小していく中、やはり経済活動を維持していく上では、地域外から稼ぐ。それから地域内で経済循環をしっかり行っていく。この両面が重要だという観点でこれまでも県としての取り組みを進めてきております。
 今回の当初予算案、地域経済の活性化のところも、産業イノベーションの推進、グローバル経済への対応、地消地産の推進ということで、大きく三つ柱立てをしておりますけれども、前2者はどちらかというとしっかり域外から稼いでくることに視点を置いて、そして地消地産あるいはしあわせバイ信州運動で県域内で経済を回していくと、この両面を見据えて、経済振興、産業振興を行っていきたいというふうに考えております。
 そういう意味で、発想としては似ているのではないかなというふうに思ってお話を伺っておりましたが、今後とも、倉阪先生を初めさまざまな地域経済活性化の手法について検討されている方がいらっしゃいますので、そうした皆様方のお考え等も踏まえながら、長野県がさらに経済的に発展する地域になるように取り組んでいきたいというふうに考えております。
 それから、県立大学、信濃美術館、武道館等、広い県土の中で、立地する圏域以外の県民の皆様方の理解、納得を得ながら進めていく必要があるのではないかという御質問でございます。私も全くそのとおりだというふうに思います。広い長野県、私としての悩みもまさにそこにあると言っても過言ではないなというふうに思っています。こうした事業を進めていく上では、これまでも構想の段階から県内各地で意見交換会を開催するなど、広く県民の皆様方に御理解をいただきながら取り組みを進めてきています。いずれも、県立の施設ということになりますので、その建設、改築等に当たりましては、県内全域にお住まいの県民の皆様方にいささかなりとも効果が及ぶよう考慮しながら検討を進めてきております。
 具体的には、例えば県立大学におきましては、もちろん県内各地域から入学してもらおうというふうに思っているわけでありますし、また、それぞれの地域において卒業生がリーダーとなっていくことができるような人材育成を行っていきたいと思っています。また、県内10カ所の地域振興局あるいは市町村等とも連携して、創業支援あるいは地域づくりに貢献できるよう、例えばソーシャルイノベーションセンター等を通じて、地域社会の発展にも貢献できる大学にしていきたいというふうに思っております。
 また、信濃美術館、これは、県内各地の美術館と連携、協働した巡回展の開催であるとか、あるいは地域、学校に学芸員が出向いていくアウトリーチ活動の充実について検討しているところでございます。
 武道館においては、全県から選手や指導者が参加をいただけるハイレベルな大会や講習会等の開催を計画しております。武道振興の集客的拠点として、県営飯田弓道場における活動等ともあわせて、県内全域にわたる武道の一層の振興を図っていきたいと考えております。
 今後も、それぞれ進捗度合いが違いますけれども、さまざまな説明会、意見交換会あるいはワークショップ、こうしたことを通じて幅広い県民の皆様方の意見の反映を行い、そして、この施設の検討あるいは施設建設後の運営についてもできる限り県民の皆様方と協働を図りながら、県民全体の財産として愛される施設となるように取り組みを進めていきたいと考えています。
 それから、持続可能な地域社会で、地域のセーフティーネットについてのお尋ねをいただきました。
 私も、本来、未来に夢や希望をたくさん持たなきゃいけない子供たちが非常に困難な状況に置かれているという状況を、行政としてもしっかり向き合って改善をしていかなければいけないというふうに思っております。そういう中で、先ほど申し上げたような、例えば医療費助成とか保育料の助成等を加えて御指摘のありました地域のセーフティーネットを構築していくということは、私も大変重要な取り組みだと思っております。子供さんあるいは御家庭が孤立することなく地域の皆さんと一緒に支えていく、こうしたセーフティーネットの再構築が大変重要だと思っております。
 子どもの貧困対策推進計画におきましては、地域資源を活用した家庭支援の仕組みづくりということを重点的な取り組みに置いています。今年度は、学習支援、食事提供、悩み相談等、複数の機能を持つ信州子どもカフェをモデル事業として実施をし、担い手の確保や育成、ネットワークの重要性等の課題、継続するための方策等を把握をしてきたところでございます。
 このモデル事業の取り組みも踏まえて、地域全体の参画によりますカフェを推進するため、過日、推進フォーラムを開催いたしました。NPO等100団体、そして29の市町村など、合わせて約280名もの方の御参加をいただきました。大変関心が高いイベントになったと思っております。積極的な意見交換が行われ、地域のネットワークづくりあるいは子供の居場所づくりに向けた機運が高まってきているというふうに考えております。
 こうした動きを確かなものとするために、平成29年度、県全体のネットワークとして、将来世代応援県民会議(仮称)を立ち上げて、また、地域振興局ごとに地域のNPO、民間団体、青少年サポーター等のボランティアや行政等の多様な主体で構成する地域プラットフォームを構築していきたいと考えております。こうしたことを通じて、地域全体で子供の成長を支えていく取り組みが長野県全体に広がるように取り組んでいきたいというふうに思っております。
 それから、満蒙開拓平和記念館への両陛下の行幸啓についてのお尋ねでございます。
 今回の御訪問は、両陛下の大変強い御希望により実現したものというふうに伺っております。満蒙開拓の苦難の歴史にお心を寄せていただいているお姿は、この満蒙開拓平和記念館に携わってこられた方々、そして元開拓団員の方々、全ての関係者の皆様方にとって大変な励みになったものというふうに考えております。また、両陛下の御訪問によりまして、満蒙開拓の歴史あるいは満蒙開拓平和記念館自身について多くの方々が関心を持っていただくことにもつながったわけで、歴史を語り継いでいく上で大変大きな力にもなったんだというふうに考えております。私としても、大変光栄なことと受けとめているところでございます。
 県としては、記念館の建設を補助し、また、元開拓団員等の皆様方の証言映像の制作についても支援してきたところであります。今後も、引き続き関係の皆様方とも連携、協力し合いながら、満蒙開拓の歴史を通じて平和のとうとさが次世代に今後ともしっかりと語り継がれていくことができるように取り組んでいきたいと考えております。
 それから、集落からの再構築という観点で、集落再構築についての所見という御質問でございます。
 集落の再構築について、地域を元気にしていく上では、御指摘のとおり、その全体を漠然と捉えるのではなくて、その地域の核として存在している集落であったり自治会であったり、こうした単位で捉えていくということが大変重要だというふうに思っています。私どもも、島根県中山間地域研究センターに学ぼうということで、藤山浩氏を招いて勉強会を開催するなどいたしましたが、やはり集落ごとの状況をしっかり把握していくことが次のステップにつながるものだという考え方を私も教えていただいたところでございます。
 中山間地域の振興、集落のあり方を考えていく上では、中心となる存在はやはり市町村だというふうに思いますので、来年度、市町村の皆様方とも一緒に研究会を設置して、中山間地域の維持活性化に向けた支援策について、これまで以上に検討を深めていきたいと考えております。
 それから、次期総合5カ年計画で目指す長野県の姿についてという御質問でございます。
 ブドウの房のような、それぞれの地域が輝く長野県という御指摘がありました。私は、そうした観点も大変重要だというふうに思っております。
 先ほど、垣内議員の御質問に対して私なりの思いを申し上げました。暮らしの安心あるいは充実した学習機会の提供といったようなことを申し上げたわけでありますけれども、長野県の姿、先ほど申し上げた私の思いも一つの思いとして、夢として入れていただきながら、県民の皆様方としっかり夢の対話を行いながら構築をしていきたいというふうに思っております。特に私は、長野県としての強み、個性、こうしたものを認識して、それをしっかり生かしていくということが重要だと思っております。
 先日、ライフスタイルデザイン国際会議という会議を開催いたしました。人生100年時代への新しい生き方の創造ということで開催したわけでありますけれども、世界で最も長寿の地域である長野県が、まさに人生100年時代をどう生きるか、どう暮らすのか、どう働くのか、こうしたことをしっかり問題提起をしていくということも一つ重要な視点ではないかというふうに考えております。こうした県全体の視点と、それから小島議員から御指摘がありました地域それぞれの個性を磨いて発展させていく、その両方の視点を持ちながら総合5カ年計画策定に当たっていきたいと思っております。
 なお、次期計画に向けてのさまざまな御提言をいただき、大変ありがたい御指摘だと思って受けとめております。特に私から一言だけ申し上げれば、地域編についてはこれまで以上に充実したものにしていきたいというふうに思っております。次期5カ年計画の策定を通じても、地域重視の県政という観点をぜひ明確にしていくように取り組んでいきたいと考えております。
 それから、総合計画策定の根拠を定める条例について御質問をいただきました。
 このことにつきましては、昨年の6月定例会におきまして、竹内議員からの御質問に対しまして、現行の長野県基本計画の議決等に関する条例が議会発議であることを念頭に置いて考えてまいりたいというふうにお答えをしているところでございます。その後、9月定例会におきましては、私からは、次期総合5カ年計画を策定する旨を表明させていただき、続く11月定例会におきまして、長野県議会総合5か年計画研究会も御設置をいただいたところでございます。私としては、この研究会での御議論等を十分に踏まえながら、しっかりとした次期計画を策定していきたいというふうに考えております。
 私に対する質問は以上でございます。
      

◎企画振興部長(小岩正貴)

 

 持続可能な地域社会に関連いたしまして、高齢者が自動車運転に依存し過ぎなくて済む暮らし方という観点からの御質問をいただきました。
 人口減少や高齢化が進む中、地域における移動手段の確保はますます切実な課題となってくるものと認識をしております。地域における移動手段を確保していくためには、従来の交通事業という視点にとどまらず、福祉や地域づくりといった幅広い視点と、また、行政、NPO、住民組織なども加えました多様な主体がかかわり合いながら解決策を見出していく必要があると考えております。こうした視点を持ちながら、来年度立ち上げます地域における移動手段の確保・補完に関する検討会におきまして具体的な検討を行ってまいりたいと考えております。
 あわせて、議員御指摘のようなIoTや自動運転車を初めとした新しい技術につきましても、最新の情報を積極的に収集しながら、暮らしの基盤の維持への具体的な活用方策について考えてまいりたいと考えております。
 続いて、集落からの再構築に関連いたしました御質問に順次お答えをいたします。
 初めに、集落再熱実施モデル地区支援事業の成果と今後の取り組みについてでございます。
 本事業の成果といたしましては、採択されました9地区全てにおきまして、地域の住民みずからが地域ビジョンを策定し、その実現に向け主体的な取り組みが始められたことが挙げられます。例えば、阿智村清内路地区では清内路カボチャを活用した商品開発が行われておりますし、伊那市新山地区ではモデルハウスを使った移住体験が実施されております。今後も、こうした取り組みにつきましては、地域振興局を中心に引き続き支援をし、その成果の普及を図ってまいりたいと考えております。
 加えて、集落の維持活性化に向けまして住民による継続的な取り組みがなされるためには、地域資源を活用した持続的な経済構造をつくり出していくことが重要と考えております。このため、先ほど知事からも答弁がありましたように、平成29年度におきましては、中山間地域の振興に向け、いわゆるソーシャルビジネスの取り組みに関する支援策などについて市町村や地域振興局とともに研究会を設け、検討を深めてまいりたいと考えております。
 次に、地域自治組織と自治体間連携についての御質問、まず、合併市町村における地域自治組織の状況についてでございます。
 県内では、飯田市及び伊那市に地方自治法に基づく地域自治区が、また、長野市、松本市など他の合併市町村におきましても自治法の制度によらない形での地域自治組織が設置をされております。このうち、例えば地域自治区を設置しております飯田市では、多くの地域自治区が地区基本構想を策定し、公共施設の管理などさまざまな取り組みを進めております。また、住民自治協議会を設置している長野市では、都市内分権を掲げまして、河川敷の美化や中山間地と市街地との交流の取り組みに対しまして市が財政的な支援を行うなど、市民との協働によるまちづくりが進められているものと承知をしております。
 次に、自治体間連携に対する県の姿勢についてでございます。
 合併により規模が大きくなった市町村がある一方で、小規模な町村が一定程度存在しているのが本県の現在の姿でございます。今後、行政サービスを持続的かつ効果的に提供していくためには、自治体間の連携をより強化していくことが不可欠でございます。県といたしましては、定住自立圏や連携中枢都市圏、あるいは独自の枠組みに基づく市町村間連携の取り組みを人的、財政的に支援をしてまいります。
 また、県による補完など、県と市町村の事務連携の方策につきましても、今月設置いたしました県市町村事務連携作業チームを中心にさらに検討を進めてまいりたいと考えております。
 続いて、小さな拠点及び地域運営組織についての受けとめと今後の取り組みについてでございます。
 小さな拠点は、地域運営組織が中心となり、必要な生活サービスの集約や生活交通の整備などの取り組みを積み重ねていくことにより形成されていくものでございます。信州創生戦略では、平成31年度までに県内40カ所でこうした小さな拠点が形成されることをKPIとして設定してございます。
 昨年11月に国が行いました調査では、既に県内には小さな拠点の形成と呼べる取り組みが38カ所で見られるとされているところでございます。ただ、一方で、こうした県内の状況につきましては、地域的な偏りがあるのが課題であると受けとめております。そこで、県では、地域運営組織が中心となった小さな拠点の形成につきまして理解と関心を深めていただくため、市町村や住民を対象としたセミナーを平成27年度、28年度に開催いたしました。今後は、取り組み事例や支援制度などをまとめて広く市町村に情報提供するとともに、各地域振興局を核として、市町村や地域住民の取り組みをさらに支援してまいります。
 最後に、次期総合5カ年計画の策定に関しまして、新たな行政経営方針で数値目標を掲げない理由や、考え方が次期5カ年計画にもつながっていくのかという御質問をいただきました。
 御質問前段の行政経営方針の考え方につきましては、後ほど総務部長から答弁いたしますが、次期総合5カ年計画では、その方向性や進捗状況を県民と共有するため、できるだけ客観的な数値目標は設定する予定でございます。その上で、政策の推進に当たりましては、常にアンテナを高くして県民ニーズや環境変化等を見きわめ、庁内での情報連絡を密にいたしまして、臨機応変かつ迅速に対応してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
      

◎警察本部長(尾﨑徹)

 

 高齢者の免許返納についての御質問にお答えいたします。
 運転免許証の自主返納制度は、身体機能の低下などを自覚した方がみずからの申請によって運転免許証を返納していただくもので、道路交通法の一部改正により平成10年に導入されたものでございます。その後、平成14年から、返納された方には運転免許証にかわる身分証明書の機能を備えた運転経歴証明書が交付されることとなり、返納件数も年々増加しております。
 返納件数につきましては、平成28年中、65歳以上の高齢運転者の返納件数は5,013件で、前年より1,096件増加しております。統計をとり始めた平成12年は46件でございましたが、平成20年には1,000件を、平成25年には2,000件を超えて、年々増加しております。
 こうした実情を踏まえ、高齢運転者の方が運転免許を返納しやすい環境をつくるために、全警察署における免許返納相談窓口の設置や運転免許センターにおける日曜日窓口での自主返納等の申請受理を開始したところでございます。また、本年2月から代理人による返納申請の受理も開始したところでございます。
 なお、自主返納者に対しましては、本年の1月15日現在で、県下31の自治体等において、デマンド交通の割引やバスの無料乗車券の発行、県タクシー協会加盟会社による料金の割引などの御支援をいただいております。
 今後、さらに自治体等と連携し、運転免許自主返納後の高齢者の移動手段の確保など、今後も関係機関、団体等と連携を図りながら、さらなる高齢者支援対策を推進してまいります。
      

◎産業政策監兼産業労働部長(石原秀樹)

 

 シェアリングエコノミーについての御質問でございます。
 シェアリングエコノミーとは、個人が所有する遊休資産をインターネットを介してほかの人でも利用できるサービスと言われ、世界的には自家用車の相乗りのウーバーや、空き部屋提供のエアビーアンドビーなどが急成長していると聞いております。
 県内での取り組み状況については、統計的に整理したものはございませんけれども、昨年、川上村におきまして、家事や育児などの家庭内労働を地域内の相互扶助によって補うことを目的にシェアリングエコノミーシステムの実証実験が始まるなど、県内でも徐々に動きが出てまいりました。
 これらシェアリングエコノミーの国内市場規模は、民間調査機関の推計によりますと、平成26年には233億円でありましたが、30年には462億円と、約2倍まで拡大すると予測されております。また、その導入には、関連法令の整備が必要なことから、安倍首相は、国家戦略特区諮問会議で規制緩和の検討をするよう指示したところでございます。しかしながら、都市部と異なり、人口減少が進む地方におきましては、地域交通の維持確保や地域の宿泊施設の稼働率などの課題があり、その制度設計に当たっては特に慎重な検討が必要と考えております。
 一方、京都府の京丹後市では、公共交通機関の空白地域でウーバーの技術を活用し、現行の自家用有償旅客制度に基づく取り組みを稼働させるなど、地域や対象を限定した導入事例もございます。
 県といたしましては、国における各種規制緩和の動向に注視するとともに、地域活性化の中でシェアリングシステムを活用した長野県らしい取り組みについても今後研究してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
      

◎農政部長(北原富裕)

 

 Iターン、Uターン者への取り組みについての御質問にお答えをいたします。
 県外からのIターン、Uターン者は近年増加しておりまして、地域農業の担い手として期待されておりますので、新規就農里親支援制度や市町村等と連携した農地確保などにより、農業者としての定着を図っております。しかし、就農初期の経営が不安定な数年間については、冬期間のアルバイトなどによる収入確保が必要な方もおりまして、青年就農給付金の活用などによる支援を進めているところでございます。今後は、これら支援に加えまして、新規就農者が早期に経営安定ができるよう、県による経営研修や普及センターの技術指導の充実を図ってまいります。
 一方、半農半Xなど一人多役の暮らし方の中で農ある暮らしを求める方々に対しましては、農機具や農業資材などの購入に対する無利子資金を今年度創設したところでありまして、今後、その一層の活用に取り組んでまいりたいと考えております。
 以上でございます。
      

◎総務部長(小林透)

 

 行政経営方針における数値目標についての御質問にお答えをいたします。
 現行の行政・財政改革方針は、平成28年度までの5年間の推進期間を設け、定員適正化や財政改革など具体的な数値目標を定め、行政サービスの質の向上に取り組んできたところでございます。
 新たな方針は、行政経営理念に掲げている県の組織としてのミッション、すなわち使命、目的及びビジョン、すなわち目指す姿を実現していくための取り組み方針であり、職員一人一人が日ごろから常にこれを意識し業務に取り組む必要があるものと考えております。そのため、方針の策定に当たっては、取り組みの方向性をシンプルに取りまとめて、従前のような特定の推進期間や数値目標を定めないこととして検討を進めてまいりました。この方針につきましては、現在、パブリックコメントを実施し、県民の皆様の御意見をお聞きしているところでございまして、年度内に決定したいと考えております。また、方針に基づく毎年度の具体的な取り組み内容についても、年度ごとに県民の皆様にお示しすることとしてございます。
 以上でございます。
      

◆小島康晴

 

 先ごろ発表されました長野県世論調査協会の調査の結果によりますと、県内77市町村が策定した人口減少対策を盛った総合戦略の認知度につきまして、「策定したことを知らない」が74%とのことでした。そうすると、多分県の戦略も似たようなものではないかと思われます。新しい総合計画が、知事がおっしゃったように県民参加で県民協働のものになるように、いい計画をつくられたいというふうに思います。
 大きな7番目として、信州教育にかかわってお尋ねいたします。
 10年ぶりに学習指導要領が改訂されまして、平成30年度から順次実施されるとのことであります。例えば、小学校の英語の先生など準備は間に合うのか、大丈夫かと気になります。学習指導要領改訂に県教育委員会としてどのように対応しているか伺います。
 また、昨年9月ごろ、文科省より意見募集、パブリックコメントが実施されたと思いますが、これに対して、信州教育の立場から、県教育委員会として国に対し何か意見具申等をしたのか、教育長に伺います。
 人間と動物の違いは、労働する、働くことだと考えております。若い皆さんが、比較的簡単に職をかえたり、ひきこもりなど働かなくなったりするのが心配です。小さいころから働くことの大切さあるいは楽しさを学ぶ、教えることが大切ではないでしょうか。現状の取り組みや教育長のお考えを伺います。
 自助、共助、公助と言われる中で、自助の基本は家族、家庭だと思います。昨年亡くなられた私の恩師、毛涯章平先生が折に触れて強調されたことの一つは、子供のお手伝いです。小さなことでも子供にお手伝いをさせ、終わったら必ずお礼を言って褒めてあげる。そのことによって、子供が家族の一員であることを身をもって感じ、家族の中で成長することができるという教えでございました。3年前の代表質問でも御紹介いたしましたけれども、毛涯章平先生の教師の十戒を改めて御紹介したいと思います。
  一、子どもをこばかにするな。教師は無意識のうちに子どもを目下の者と見てしまう。子 どもは、一個の人格として対等である。
  二、規則や権威で、子どもを四方から塞いでしまうな。必ず一方を開けてやれ。さもない と、子どもの心が窒息し、枯渇する。
  三、近くに来て、自分を取り巻く子たちの、その輪の外にいる子に目を向けてやれ。
  四、ほめることばも、叱ることばも真の「愛語」であれ。愛語は、必ず子どもの心にしみ る。
  五、暇をつくって、子どもと遊んでやれ。そこに、本当の子どもが見えてくる。
  六、成果を急ぐな。裏切られても、なお信じて待て。教育は根くらべである。
  七、教師の力以上には、子どもは伸びない。精進を怠るな。
  八、教師は「清明」の心を失うな。ときには、ほっとする笑いと、安堵の気持ちをおこさ せる心やりを忘れるな。不機嫌、無愛想は、子どもの心を暗くする。
  九、子どもに、素直にあやまれる教師であれ。過ちはこちらにもある。
  十、外傷は赤チンで治る。教師の与えた心の傷は、どうやって治すつもりか。
以上です。
 当時の伊藤教育長は、「教員が資質を高めていくとともに、学校や家庭、地域と一体となって、子供のことを第一に考え、深い愛情をもって子供を育てていくことが何よりも重要であると考えてございます。」と御答弁いただきましたが、原山教育長はいかがでしょうか。お尋ねいたします。
 子供とインターネットの関係も喫緊の課題です。お聞きした中の一例だけ挙げれば、女子中学生が自分の体の写真を撮って友達の男子中学生に送ったら、近隣の中学中にその写真が拡散してしまった。一歩間違えますと、犯罪にもなりかねません。さらには、インターネットとかスマホで、いじめ、仲間外れ、誹謗中傷など、こんなことが県内各地の子供の世界でたくさん起こっています。県民文化部、教育委員会、警察本部でそれぞれ取り組んでいただいておりますが、野放し状態と言っても過言ではありません。もちろん家庭や学校、市町村教育委員会の責務もあるでしょうが、未来の信州の子供たちをインターネット被害から守るための阿部知事の決意を伺いたいと思います。
 県政運営の基本について申し上げます。
 少し古い話ですが、東京都町田市の大下勝正市長が、「車椅子で歩けるまちづくり」をスローガンに道路整備など進めたところ、車椅子の方はもちろんですが、ベビーカーを押す若いお母さんたちから一番喜ばれたという話が強く印象に残っています。政は、一番弱いところ、低いところ、遠いところ、困っているところに光を当てる、そうすることにより、そこより手前にあるところにはおのずから光が当たっていく、私はそんな思いで仕事や地域活動、そして議員活動に取り組んでまいりました。
 大北森林組合の問題等から、コンプライアンス、コンプライアンスと言われるようになりました。横文字だからと否定はしませんが、何のことだか、言葉が躍っているだけではないでしょうか。行政経営理念では県民起点と掲げていますが、本当にそうなっているのでしょうか。知事の提案説明の中に「寄り添う」という言葉が何カ所も出てまいりました。私だけかもしれませんが、上から目線と違和感を感じざるを得ません。
 別の言い方をすれば、月並みですが、相手の立場に立つということだと思います。県の職員の皆さんも県民の一員です。受付の係の方ならカウンターの反対側に立ってみる、そんな発想を醸成してもらいたいものです。
 現地機関の見直しの検討の際の図では、地域課題が一番上にありまして、それを受けとめる地域振興局を初めとした現地機関があり、その下に本庁があるという絵が示されました。地域課題とは、まさに県民生活、県民そのものであり、それを上位に持っていくということは評価したところでございます。逆に言えば、それまでは地域課題イコール県民が一番下にある図がまかり通っていたということでございます。地域の課題に県職員の皆さんが緊張感を持って真摯に向き合い、県民の期待に応える、そのような組織を目指していただきたいと切に願うところですが、県政運営の基本である新たな行政経営理念につきまして、基本的な考えを知事に伺います。
 ただいま紹介しました教師の十戒につきまして、3年前の代表質問では、「知事におかれましては、県政運営の気持ちの一つにこの「教師十戒」をお読み取りいただきまして参考にしていただきたい」と申し上げました。
 「教師」と「子供」を「上司」と「部下」、「県職員」と「県民」などと置きかえてみると、通用する点も多いと思います。先ほどの、「一、県民をこばかにするな。職員は無意識のうちに県民を目下の者と見てしまう。県民は、一個の人格として対等である。」、あるいは、「成果を急ぐな。裏切られても、なお信じて待て。仕事は根くらべである。」、あるいは、「上司の力以上には、部下は伸びない。精進を怠るな。」というふうに読みかえることができるのではないかと思います。ぜひ座右の銘、県政運営の心がけとしていただきたいと思いますが、知事の所見を伺います。
      

◎教育長(原山隆一)

 

 3点御質問をいただきました。順次お答えを申し上げます。
 まず、学習指導要領改訂に対する県教育委員会としての対応についてでございます。
 今回の改訂の特徴は、従来の知識、技能の習得に軸足を置いた教育から、学んだ知識、技能を生かし、みずから課題を設定し解決していく探究的な学びを中心とした教育への転換を明確に示したことでございます。この方向は、先ごろ私どもが発表した学びの改革基本構想案で示している小中高等学校の学びを探究的な学びで貫く方向とも一致しているというふうに考えております。今回の学習指導要領改訂は、学びの改革を推し進める長野県にとって力強い後押しであり、大きなチャンスであるというふうに受けとめております。
 探究的な学びは、変化の激しい社会を生き抜いていく子供たちに未来を切り開いていく力を育んでいく実践的な学びでありますが、幸い、長野県にはこの学びの土壌がありますので、いま一度その本質を掘り起こしていくことが大切だというふうに思っています。
 一方、この改革は、学校現場の教員の創意工夫だけでは到底成し遂げられるものではなく、学校全体の教育力の向上のため、さらなる人的、物的な条件整備が不可欠であるというふうにも認識しております。県教育委員会では、例えばICT環境の充実、地域や家庭との連携、協働、さらには働き方改革などを着実に進め、改革の実現を目指してまいりたいというふうに思っております。
 なお、文部科学省へは、全国教育長会議等の機会に、学習指導要領改訂の基本的な考え方に賛同するとともに、その理念をよりよく実現していくために必要となる教育環境の整備について意見を伝えてきたところでございます。
 次に、働くことの大切さを学んだり教えたりすることについてであります。
 働くということは、他者と協働しながら人の役に立つということでありまして、小さいころから人の役に立つという感覚を身につけられるようにすることが重要であるというふうに考えています。
 この点について、本県の状況を全国学力・学習状況調査における児童生徒質問紙調査の結果から見ますと、家庭で手伝いをしたり地域行事へ参加している子供たちの割合が全国と比較して高くなっておりまして、小さいころから家庭や地域の中で役割を感じられる機会が与えられているものというふうに考えています。
 日々の学校生活においても、学級活動や児童・生徒会活動などを通じて、子供たちが自分の役割を見つけ、それを果たす意欲を持てるようにするとともに、教師による声がけや子供同士の認め合いにより、自分のよさや可能性を感じられるよう取り組まれているものというふうにも考えております。新しい学習指導要領の案におきましても、習得した知識や技能を活用し、他者と協働しながら社会とかかわっていく力が重視されておりまして、その趣旨の実現を通じて子供たちが働くことの大切さを実感できるよう努めてまいりたいというふうに考えております。
 最後に、教師の十戒に対する所見についてでございますが、伊藤前教育長と同様の感想を持っているということをまず申し上げておきたいと思います。その上で、これからの子供たちに求められるものが、単なる知識の習得ではなく、主体的、対話的で深い学びであるということであるならば、教師自身がそうした探究的な学びができる人間でなくてはならないというふうに思います。こうした視点に立つと、教師の十戒で述べられている教師と子供との関係性についても、さまざまな問いの中から教師自身が自分の教訓を見出していくことも大事ではないかというふうに思っています。
 AI、人工知能の進化などテクノロジーが発達し、グローバル化が進展するなど変化していく社会にあって、教育においてもその影響を大きく受け、教師の役割や教師と子供の関係性も変容していくものがあるのではないか。例えば、教師の役割は教える立場からどのように広がっていくのか、集団で学ぶ意義は何か、学習形態はどう変わっていくか、地域における学校の役割はどうかなど、さまざまな問いが生まれてまいります。教員一人一人がこうした問いと向き合い、実践を通じて自身の教訓を導き出していくことが教員にとっての探究的な学びと言えるのではないかというふうに思っています。こんな点を含めて、毛涯先生が御存命のときにぜひお話を伺ってみたかったというのが一番の私の思いであります。
      

◎知事(阿部守一)

 

 私に、さらに3点御質問を頂戴いたしました。
 まず、子供たちをインターネット被害から守るための決意についてということでございます。
 子供たちが、インターネットを介して、いじめあるいは性被害等さまざまな深刻なトラブルに巻き込まれている状況にあるというふうに認識をしております。昨年7月に子どもを性被害から守るための条例を議決いただきましたが、その条例の中にも、インターネットの適正な利用の推進ということを規定しております。この条例を推進する上からも、インターネットの適正利用を関係機関、教育委員会や県警等ともしっかり連携して進めていかなければいけないと思っております。
 これまでもさまざまな取り組みを進めてきておりますが、例えば、今回の条例の制定を契機に啓発用リーフレットをつくりました。不審なサイトにアクセスしない、ネット上に個人情報を書き込まない、こうしたトラブルに巻き込まれないよう注意喚起をしておりますし、また、性被害防止教育キャラバン隊を全ての県立高校等に派遣するほか、セーフネット講座の実施であったり、あるいはインターネット適正利用推進協議会での取り組みであったり、さまざまな取り組みを行ってきております。
 来年度、経費を支援している地域住民等による性教育等の研修会がありますが、そのメニューに新たに情報モラル教育を追加をしていきたいというふうに思っていますし、また、子ども支援センターや学校生活相談センターなどに相談があったネットトラブルを専門家の方の支援に結びつける取り組みも始めてまいります。
 今後とも、教育委員会、県警はもとより、事業者、団体等さまざまな関係者の皆様方と連携、協力して、子供たちをインターネットトラブルから守るよう全力を尽くしていきたいと考えております。
 それから、県政運営につきまして2点、まず、新たな行政経営理念についての考え方ということでございます。
 行政経営理念、県行政が果たすべき使命、目的、目指す姿、こうしたものを掲げております。今回、見直しに当たりましては、できるだけ職員の意見を反映させようという思いで取り組みました。その結果、実はバリュー、価値観・行動の指針のところの見直しを考えてきたわけでありますけれども、職員の共通項として、「県民起点」というのは全てに共通のものだと。今までバリューの1項目に「県民起点」を入れていましたが、私も、対話をしたり県職員同士が話し合いをする中で、県民起点というのは県行政の全ての基本だという共通認識が出てきました。そういう意味で、今回ビジョンに県民起点ということをしっかり位置づけし直しました。 小島議員が先ほど御指摘をされた地域課題とは、まさに県民生活、県民そのものではないかということと方向性が同じではないかというふうに思っているところでございます。もとより、行政経営理念をつくっただけでは実効性はありません。これはしっかりと県職員の中に徹底していかなければいけないというふうに思っています。
 私が公務員になったときに最初に先輩に言われたのは、そのうち床の間に座らされるようになるが、おまえ、いい気になるんじゃないよということを言われました。それは、私という人間に対してではなくて、私の肩書、ポジションに対して、そういう場を与えられているだけだということをしっかり認識せよということを言われ、私も、今でもそう思っております。いろんな権限を持つと、ともするとそういうことを見失いがちでありますけれども、私も含めて一人一人の県職員は、県民の皆さんのために仕事をしているんだということを常に意識しながら県政を進めていくよう心がけていきたいというふうに思っております。
 それから、最後に、毛涯章平先生の「教師十戒」についての所見という御質問でございます。
 私も県民の皆様方の代表であり、かつ、県組織の代表という立場で、いろんな方々、県職員とも上司、部下の関係でありますし、県民の皆様方ともいろいろな対話を通じて、全ての方々と人間的な触れ合い、接し方をしてきているわけであります。もちろん、組織で仕事をするときには、時には泣いて馬謖を切るという厳しい姿勢で臨まなければいけないこともありますが、ただ、私は、人と人との対応においては、それがどんな人であっても、毛涯先生のおっしゃっている「教師十戒」にあらわれているような、例えば一個の人格として対等であるとか、精進を怠るなとか、清明の心を失うなと。こうしたものについては、子供たちだけではなくて、全ての人間関係に共通する基本的な重要な視点だというふうに思っております。
 そういう意味で、これは、前回、議場で小島先生がお話しされたときから私の頭の中に入っておりますし、今回改めてこれをしっかり踏まえて考えるということでございます。毛涯先生の足元にも及ばない、まだ人間的な精進が足らない部分がたくさんあると思っておりますけれども、しかしながら、人と接するときにはこうした姿勢をしっかり持って、多くの人たちの理解と協力、支援を得ながら、県政が県民のために進むように努力をしていきたいというふうに思っております。
 以上でございます。
      

◆小島康晴

 

 ことしは、昭和に直しますと92年です。ちょうど70年前の昭和22年4月20日、飯田市は大火に見舞われ、市街地の大半を焼失しました。そして、その困難な復興の過程で、地元飯田東中学校の生徒の発案からリンゴ並木が生まれました。以来六十有余年、代々の生徒によって手入れが受け継がれ、飯田の町のシンボルとされてきました。
 そのリンゴ並木に天皇皇后両陛下を11月にお迎えいたしました。まことに感無量、思い出深い一日でございました。その後の天皇陛下のお誕生日の会見で、このことにさらに触れていただき、昭和20年代という戦後間もないその時期に、災害復興を機に、前よりさらによいものをつくるという、近年でいうビルド・バック・ベターが既に実行されていたことを知りましたとお話しいただきました。この天皇陛下のお言葉にも勇気を得まして、私どもはリンゴ並木を町の宝物として将来に向かっていかなければなりませんが、人口減少、中心市街地空洞化の波が押し寄せ、最大で12クラス、私のときでも7クラスあった東中も、今や3クラス維持できない状況です。合い言葉「夢と希望」も先行き不安となっております。
 そんな折、先週の日曜日に、第54回飯田市公民館大会が開催されまして、先ほど知事からもお話しがありました島根県中山間地域研究センターの藤山浩さんの基調講演を伺いました。それぞれの地域を集落ごとによく分析して、毎年1%の人口を呼び込む。そのために、食べ物やエネルギーの一部を地元のものにかえて1%の所得を取り戻す。そうすれば、必ず地元はつくり直すことができるという示唆に富んだお話でございました。今回、少し地域、集落にこだわって何点か議論をさせていただきました。県民の皆さんが、それぞれの地域で、夢と希望を持って安全に安心して暮らす、そして、それを県の組織が一丸となり忠恕の心を持って支える、そんな県政運営を心から願うものです。
 暦が一回り回りまして還暦となりまして、さらにそこから丸1年無事に過ごしまして、きょうこの日を迎えることができ、代表質問をさせていただいたこと、全ての皆さんに感謝して、私の質問を終わります。