平成29年11月定例県議会 発言内容(依田明善議員)


◆依田明善

   

 本日最後の質問となりました。早速始めさせていただきたいと思います。

 昔はと言いましてもわずか数十年前の話ですが、人間同士のつながりを顧みますと、家族や親戚はもちろんのこと、地域のつながりというのもかなり濃密であったと記憶しております。例えば、中小企業の社長さんが社員を喜ばせるために慰安旅行に精を出したり、学校の家庭訪問ともなれば子供そっちのけで親と先生が夜遅くまで熱く語り合ったり、村や町においても運動会や文化祭が盛んに行われ、青年団や消防団では多くの若者たちが青春を謳歌し、カップルも次々と誕生していった、そんな場面を懐かしく思い出します。
 ところが、現代の日本は、満ち足りた物やサービスの弊害の一つなのか、個人主義の浸透、他人への無関心などもあり、リアルな人と人とのつながりが極めて薄くなってしまいました。そして、これらは、昨今の人目もはばからないような事件やスキャンダルなどとも決して無関係ではないというふうに思うわけであります。最大の防犯対策は地域の健全なるコミュニティーであるといった指摘もございます。やはりここは今の時代に合った新たなるコミュニティーを構築することが大切なことだというふうに思います。
 そして、その中で、一つ注目するのが、地域おこし協力隊であります。地域おこし協力隊が存在感を示すようになってきたという報道も先日ありましたが、長野県においても、本年4月1日現在で283名、前年度比で2割増しということであり、大変結構なことだと思います。ただし、任期終了後の定着率やその人数はどうなのか、また、県内で結婚された隊員はどのぐらいおられるのか、企画振興部長にお伺いをいたします。
 この地域おこし協力隊ですが、最初は雑用係としてスタートするケースも多いようであります。ところが、中には、いつまでたっても雑用係から抜け出せない、あるいは、いろいろとアイデアを提案するんだけれどもいざとなるとなかなか受け入れてもらえないという不満を抱く隊員も少なくないようであります。わずか3年契約という中で、さまざまなハードルやリスクを覚悟の上で地方に移り住んできた人々ですから、何とか早い段階で地域の役に立ちたいという熱い思いやプレッシャーを感じている隊員も多いことでしょう。
 県では、隊員の交流会や元隊員らのトークセッションなども開催されておりますが、3年間の任期を終えた彼らは、みずからの成果をどう見ておられるのか。また、失敗談や本音の部分もかいま見えると思いますが、それらの分析も踏まえ、県として地域おこし協力隊というのはどのような存在であり、彼らの思いを今後どう受けとめていかれるのか、企画振興部長にお尋ねをいたします。
 また、地域おこし協力隊にとって、対応する行政マンは直接の窓口であり、心のよりどころにもなり得る存在だと思います。しかしながら、中には、心を通わせてこない、いわゆる事務的な対応に終始する職員、あるいは、隊員のほうから何か提案しても、逆に否定的な態度に終始する職員なども少なくないようであります。この制度の趣旨からいきますと問題ありだというふうに思いますが、今の時代、何か気に召さないことがありますと、すぐ自治体の実名がネット上にさらされる時代であります。ですから、さすがは長野県だと褒めていただけるような受け入れる側の体制づくりは必要だと思います。地域おこし協力隊と自治体職員双方においてよりよい連携のとり方を学べるような仕組みを考えるべきだと思いますが、企画振興部長の御見解をお聞かせください。
 また、地域おこし協力隊に対する地域住民の思いはさまざまであります。中には、地元の若者の就職先を考えるのが先決だろうといった考えの方もおり、制度に対する誤解や偏見があるのも確かです。地域住民による誤解や偏見を払拭し、隊員が持てる能力を存分に発揮できるよう、県としても市町村に対して何らかの対策をとるべきだと思いますが、企画振興部長にお尋ねをいたします。
 次に、地域おこし協力隊の活躍する場所を行政や住民側で明確に示すというのは重要なことだと思いますが、その中の一つとして、持続可能な地域社会を構築するというテーマがあります。これにつきましては、本年2月定例会の代表質問において、小島県議が千葉大学の倉阪秀史教授について触れております。端的に言いますと、地域が外から稼いでくることのできる成長部門の成果を、地域を維持していく持続部門に投入していく仕組みが重要だということであります。
 これに対して、知事は、本県の経済活動の柱となっている産業イノベーションの推進、グローバル経済への対応、地消地産の推進は倉阪教授の考え方に似ているとおっしゃいました。この倉阪教授の取り組みの中には、地域資源によって住民の方々がどのぐらい住み続けられるか。つまり、食料生産力や自然エネルギーのポテンシャルなどを数値化し、いわゆる地域ごとの自給率を明確にするというものがあります。こうすることにより、自分の住む地域が思った以上に食料を生産し、自然エネルギーも豊富であることに初めて気がつく住民も多いと言います。
 例えば、大手の電力会社による水力発電所が目と鼻の先にあっても、幼いころから見なれていれば全く気にもとめない。しかしながら、冷静に考えれば、それだけ自然エネルギーのポテンシャルは高いということであり、地域として小水力発電などに力を入れる意義は高いということになります。
 この持続可能な地域社会の構築というのは、産業を興し運営するという点で考えればハード面であります。そして、新たなるコミュニティーの構築というのは、地域住民の心のありようという点ではソフト面だとも言えます。したがいまして、ともに密接に関係しているテーマだと私は思います。逆に言えば、どちらかが欠けても地方の生き残りは難しくなると思いますが、県としてどのように取り組んでいかれるのか、企画振興部長の御見解をお聞かせください。
 また、こういった持続可能な地域社会を実現させるための取り組みに対し、やる気のある方が地域おこし協力隊として参加していただければ、目的が明確な分、隊員と自治体双方にとってよい結果をもたらすのではないかと考えます。2月定例会の荒井議員からの質問に対し、協力隊募集時における業務の明確化や受け入れ態勢づくりが課題だとの答弁でしたが、その後の進捗状況について企画振興部長にお伺いをいたします。
      

◎企画振興部長(小岩正貴)

 

 地域おこし協力隊に関連しまして全部で6問御質問いただきました。順次お答え申し上げます。
 まず、隊員の定着についてでございます。
 県の調査では、平成28年度末までの8年間で、任期が終了しました185人のうち126人が県内に定着をしております。その数は北海道に次ぎ全国第2位でございまして、定着率にいたしますと68.1%となります。隊員の中には、地域活動を通じて住民の方と結婚した方や、隊員同士で結婚した方もいると伺っておりますけれども、県内で結婚された隊員の総数については把握はしておりません。
 次に、隊員の思いの受けとめについてでございます。
 任期を終え、定住した隊員からは、個人で始めた活動を地域全体の取り組みにつなげることができた、地域に溶け込み、地域の一員として認められたなど、みずからの活動の成果を肯定的に捉える声を聞くことができます。その一方で、希望する業務と従事する業務のミスマッチがあった。住民や市町村職員とのコミュニケーションの円滑化に時間を要した。任期終了後、活動を引き継ぐ者がなく、取り組みが継続されなかったなどの課題も上げられているところでございます。
 このように、地域への溶け込みに苦心しながらも、活動を通じて着実に地域の一員として認められてきている地域おこし協力隊員が、地域の新たな担い手として今後さらに活躍の場を広げていけるよう、県としてもしっかりとサポートを充実させていきたいと考えております。
 隊員と自治体職員の連携についてでございます。
 隊員が市町村において円滑に活動するためには、隊員と市町村職員がお互いの課題を共有し、相談や助言を交わせる関係づくりが不可欠でございます。県では、今年度から、地域振興局ごとに隊員と市町村職員から成るネットワークを構築することとしております。このネットワークを活用しまして、隊員OBがアドバイザーとなって相談に応じるほか、他の市町村の事例も踏まえつつ、相互の情報交換や交流を図っていくこととしております。
 続いて、隊員に対する誤解や偏見の払拭についてでございます。
 地域住民との関係につきまして、隊員からは、最初から地域に溶け込むことは難しい。スムーズに活動が進むために地域のキーパーソンとのつながりが欲しい。活動地域の住民に役割が十分に認識されていないなどの声がございます。県としましても、これまで、制度の趣旨や県内における隊員の活躍を積極的に発信し、地域住民の理解が得られるよう周知に努めているところでございます。
 一方で、隊員が地域で受け入れられて活動していくためには、市町村職員が地域と隊員をつなぐ役割を果たすことが求められているものと認識をしております。このため、隊員受け入れに当たっての好事例やノウハウを市町村間で共有できるよう、研修などを通じて市町村に周知してまいりたいと考えております。
 5点目、持続可能な地域社会の構築についての認識と取り組みについてでございます。
 人口減少時代における持続可能な地域づくりのためには、コミュニティーのつながりや文化、風土を守ることと地域における経済活動の活性化を図ることの両立が必要であると認識をしております。
 次期総合5カ年計画に関する総合計画審議会からの答申におきましても、学びと自治の力を発揮して、これからの時代に適合した新しい社会システムや社会資本を創造し、未来を切り開いていくという方向性が示されております。地域おこし協力隊などの新たな地域の担い手がコミュニティーに積極的に参画し、農業、観光などの産業振興、高齢者の生活支援や伝統文化の復興など、幅広い分野で活躍することで持続可能な地域づくりが図られるよう、県としても支援してまいります。
 最後に、課題への対応の進捗状況についてでございます。
 募集時の業務の明確化や隊員の地域への溶け込みといった課題をサポートするため、先ほども述べましたとおり、今年度、地域振興局ごとに、隊員、市町村職員、隊員OB、地域振興局職員で構成されるネットワーク会議を構築することとしたところでございます。現在、アドバイザーとなる隊員OBの選定、委嘱をおおむね終えまして、年内には10局全てにおいて立ち上げが完了する予定でございます。今後は、このネットワーク会議を通じ、課題の共有や解決方法の検討を進めてまいります。
 以上でございます。
      

◆依田明善

 

 次に、PTAというコミュニティーについて触れておきたいと思います。
このPTAという言葉を調べてみますと、次のような解説がありました。保護者と教員が学び合うことで教養を高め、その成果を家庭や学校や地域に還元することにより、児童生徒の健全な発達に寄与する団体ということだそうです。果たしてこれらの目的が達成されているPTAが全国にどれぐらいあるでしょうか。
 PTAの実態を語るのによく引き合いに出されるのが役員選びであります。経験された方はおわかりだと思いますが、改選期ともなれば、お互いに悩みの種となり、選考過程において公平さや公正さを欠いたりすれば方々から不平不満が噴出します。また、何とかして役員が決まったとしても、運営していく中で親同士の誹謗中傷がエスカレートすることもあり、中には子供同士のいじめにまで発展してしまったなどという話もあるくらいです。こうなれば、児童生徒の健全な発達に寄与するどころの話ではありません。荒れてしまったPTAは、逆に子供たちの心の中に暗い影を落としてしまうということで、最近はPTA不要論まで出てくるありさまです。
 PTAというコミュニティーも、昔は自営業者や専業主婦など時間に余り縛られない方々が役員になるケースが多かったですが、今は共働きは当たり前、シングルマザーも多い時代となりました。やはり、これからのPTAは、保護者の皆さんの働き方やライフスタイルにマッチした運営を模索していく必要があるのではと思います。
 さらには、俗に言うモンスターペアレントといった自己中心的な保護者らに毅然とした態度で臨めるような組織づくり、あるいは情報網を整備し、子供たちの異変やトラブルをいち早く察知できるような機能を兼ね備えることができればと考えます。そうすることにより、先生方も本来の仕事がやりやすくなり、余計な長時間労働や余計なストレスの軽減にもつながるのではないでしょうか。
 先日、学校における働き方改革推進のための基本方針も発表されましたが、学校ばかり改革しても、PTAや親が変わらなければ、先生方の働き方改革は期待するほど進まないと私は思います。そこで、現代のPTAの実績や問題点をどう捉え、分析しておられるのか、教育長の御見解をお伺いいたします。
 あわせて、これからのPTAのあり方や改革について、県民に向けた教育長の率直なる御提言をお聞かせいただきたいと思います。
 最後になりますが、今後も長野県には多様な考え方や文化をお持ちの人々が数多く移住してくることでしょう。したがいまして、長野県としては、ライフスタイルの多様化や多文化共生社会などにしっかりと対応できる新たなるコミュニティー先進県として成長していかなければなりません。その点につきまして知事の御見解と決意をお伺いし、一切の質問とさせていただきます。
      

◎教育長(原山隆一)

 

 PTAについての御質問でございます。
 PTAの活動は、保護者と教員が協力して子供たちの健全な育成を支援する上で重要な役割を果たしてきていただいているものというふうに考えております。一方で、共働き世帯の増加など、時代の変化により役員の選出が困難であることや、活動の参加者が一部の役員のみであるなどの実態もありまして、PTAも時代の変化に応じて変わっていくことが必要だというふうに思っております。
 しかしながら、直面するさまざまな教育課題に対応していくためには、保護者と学校が1対1でつながるだけでなく、保護者同士が教員を交えて学び合うことが不可欠だというふうに思っております。学校の働き方改革、いじめ、不登校対策、性被害防止、発達障害の子供たちの増加等々、教員、保護者同士がこうした課題について学び合い、高め合う中で、みんなの力で子供たちを育んでいくことが絶対的に必要だというふうに感じております。
 PTAは自主的組織であり、そのあり方や改革については、自主的、主体的に取り組んでいただくものというふうに考えておりますが、長野県PTA連合会では、長野県PTA憲章を昨年度改定し、改革に取り組んでいるというふうに承知しております。来月には、長野県PTA連合会の皆さんと懇談する機会が予定されているところであります。PTAの本来の姿は、まさに学びと自治を体現するものだというふうに思っております。PTAに期待するそうした私の思いも含め、率直な意見交換を行ってまいりたいというふうに考えております。
      

◎知事(阿部守一)

 

 新たなるコミュニティー先進県として成長していかなければいけないと考えるが、私の見解はどうかと、その決意はどうかという御質問でございます。
 PTA、そして地域おこし協力隊の御質問を拝聴しておりましたが、新たなるコミュニティーの構築について、まさに基本的な考え方は共感するものでありますし、今回の総合計画で自治の力みなぎる県づくり、学びの県と自治、両面を政策推進エンジンにしていきたいと思っていますけれども、まさにそうした自治の力みなぎる県づくりの一つの目指すべき方向性だというふうに感じてお話を伺っておりました。
 信州創生戦略の前文に私が書いた文章の中に、都市経済学者のリチャード・フロリダ氏の経済成長の3つのTという話について言及させていただいております。地域の創造性を高めていく上では、技術、そして才能、寛容性、この三つのT、テクノロジー、タレント、トレランス、この三つのTが重要だと、地域で真のイノベーションと持続的な経済成長のための条件だというふうに言われております。
 そういう意味で、先進技術を我々もどんどん取り入れていかなければいけませんし、学びの県づくりを通じて一人一人の能力をしっかり高めていく、才能を上げていくということが重要であります。
 それと、最後のもう1点、この寛容性という点がまさに重要なポイントだというふうに思っております。地域おこし協力隊等移住されてこられる方の受け入れであったり、あるいはPTA等昔ながらのコミュニティーも、いろいろ創意工夫しながらいろんな方を巻き込んで新しい形をつくっていくということも重要だと思います。そういう意味で、この三つのTというものについては、これからも意識しながら我々が取り組んでいくことが必要だというふうに思っております。
 創造的な人材が集まり、そして創造的な組織や集団が地域でイノベーションを起こせるような地域社会をぜひつくっていきたいと。そういう意味で、新しいコミュニティー、地域レベルではなかなか市町村の皆さんの御協力なしには進められないところがありますけれども、多くの皆様方と問題意識を共有して、新しい地域社会のあり方をつくるべく、県としてもしっかり取り組んでいきたいというふうに思っております。
 以上です。