平成29年11月定例県議会 発言内容(小林東一郎議員)


◆小林東一郎

 

 当初10月に示されるはずであった学びの改革実施方針案は、提示が来年3月に先延ばしとなる一方、先月15日に、今後の進め方を含む県教育委員会の考え方を示す「県立高校「学びの改革実施方針」策定に向けて」が決定されました。その中の、「高校改革~夢に挑戦する学び~実施方針(案)」たたき台の冒頭に、本県の高校教育が目指すべき方向性3項目が掲げられましたが、それについて、以下3点、教育長にお聞きします。

 1点目、方向性の①、「みずから立てた問いに対し、チームとして協働しながら解を見つけ、新しい価値を主体的に創造していくことができる資質・能力の育成」について、いかなる学びを通して問いを立てる力を養うのでしょうか。言いかえれば、問いを立てられるのに必要な力とは具体的にどのような力なのでしょうか。お示しをいただきます。また、新しい価値の創造とは、高校を卒業した全ての個人に可能なのでしょうか。
 2点目、方向性の③、「信州に根ざした確かなアイデンティティと世界に通じる広い視野、資質・能力の育成」について、信州に根ざした確かなアイデンティティとは、幼児期から高校に至るまでのさまざまな体験や学びを通し、発達段階に従って形成されていくもののはずですが、教育の連続性を踏まえての位置づけなのでしょうか。
 3点目、新たな時代においては、多様な人々と協力しながら主体性を持って人生を切り開いていくことが重要で、知識の量だけではなく、混沌の中から問題点を発見し、答えを生み出し、新たな価値を創造していくための資質、能力が求められています。
 このような時代背景のもと、教育改革を進めるに当たり、1、十分な知識・技能、2、それらを基盤にして答えが一つに定まらない問題にみずから解を見出していく思考力・判断力・表現力等の能力、3、これらのもとになる主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度の学力の3要素の重視が言われていますが、現状では、高校教育において、この3要素を踏まえた指導が十分浸透していないことが課題となっています。
 県教育委員会が掲げた本県の高校教育が目指すべき方向性は、学力の3要素をバランスよく育成するという観点に沿ったものであるとは思うものの、より高みを狙ったもので、力みが感じられてなりません。
 「堀川の奇跡」で知られる京都市立堀川高校の元校長、荒瀬克己大谷大学教授が提示している高校の教育課程や在学中のさまざまな体験を通し、知識や技能を身につけるだけでなく、深く考えて行動できるようになること、社会の中で人や物事とかかわって一人の人間として生きていく力を養うことのような平易な言葉で県民の理解が得られるようにはできないものなのでしょうか。
      

◎教育長(原山隆一)

 

 学びの改革についての御質問でございます。
 本県の高校教育が目指すべき方向性の3点についての質問でございます。まず、問いを立てる力と新たな価値の創造についてということであります。
 これからの先行きの不透明な時代にあっては、正解のない問いに対して自分の意見を根拠を持って言える力が重要であり、そのためにこそ問いを立てる力そのものを身につけることが必要だというふうに考えています。問いを立てる力を身につけるためには、日常生活で本物と出会ったり、多様な人々と協働したりすることが不可欠であり、こうした豊かな体験を通して感性や学びに向かう力が高まり、問いを立てる力が養われていくものというふうに考えております。
 探究的な学びは、問題の発見から解決策の提案、自主性に至る一連のプロセスからなる学習でありまして、この繰り返し、積み重ねの中で問いを立てる力もより高まっていくものであるというふうに思っております。こうした学びを通して、全ての生徒が、仲間と協働して課題の解決を目指す中で、人生を豊かにする新たな価値を主体的に創造していくことができるというふうに考えております。
 信州に根ざした確かなアイデンティティと教育の連続性のお話でございます。
 信州に根ざした確かなアイデンティティについては、議員御指摘のとおり、幼児教育段階から小中高に至る教育の連続性を踏まえて形成を図っていくものであります。具体的には、幼児期において、信州の豊かな自然の中で伸び伸びと遊びに浸ること。小中学校において、身近な地域を対象としたふるさと学習を通して生まれ育った地域のよさを知ったり、ふるさとへの愛着を持ったりすること。そうした体験を踏まえて、高等学校において信州学に取り組むことにより、地域が抱える課題を発見し、その解決を目指したり地域づくりに参画したりすること。こうした学びの連続性を持って信州に根ざした確かなアイデンティティの形成が実現されるものというふうに思っております。
 3点目、平易な言葉で表現できないかというお話であります。
 目指すべき方向性の内容については、議員御指摘のとおり、国がうたっております新たな社会を生き抜くために必要な学力の3要素を踏まえ、さらに本県独自の視点として、「信州に根ざした確かなアイデンティティと世界に通じる広い視野、資質・能力の育成」を加えたものであります。
 今回お示ししたのは、実施方針案のたたき台ということでありますので、議員御指摘の点も含め、今後地域懇談会等さまざまな機会を捉えて多くの御意見をいただきながら実施方針案の策定につなげていきたいというふうに思っております。
      

◆小林東一郎

 

 たたき台の方針1では、全ての高校が、それぞれの特色を持ちながら新たな学びに転換するために、1、生徒育成方針、ディプロマ・ポリシー、2、教育課程編成・実施方針、カリキュラム・ポリシー、3、生徒受入れ方針、アドミッション・ポリシーの三つの方針を策定することで、各校の育てたい人物像、学校目標に向けての教育活動を体系化するとしていますが、高大接続システム改革でも、高校生を多面的に評価することが促されており、カリキュラム・マネジメントが重要となってくるのは論をまちません。どのように生徒の力を伸ばすのかの計画がつくられることでよろしいでしょうか。
 また、生徒受け入れ方針を示すということなら、学力をはかる方法として、単独選抜の実施や、中学生の多面的な力を評価する選抜方法など、各校が方針に沿った選抜方法を実施していく必要が出てくるのではないでしょうか。
 次に、方針2においては、多様な学びの場の整備が掲げられています。みずからの進路を考えながら普通教科や専門教科から幅広く科目選択が可能で、キャリア形成を図ることができる特徴を有する総合学科高校の教育内容充実がうたわれていますが、そのためには、多様な系列の中に多くの選択科目が用意されなければならず、教員確保も欠かせないはずです。総合学科高校の特徴は、子供が減るからそれに応じて学校規模を小さくしますに最もなじまないと思うのです。総合学科高校の学校規模はどうあるべきとお考えでしょうか。
 また、多部制・単位制を含めた定時制教育、通信制教育の学びの充実もうたわれています。そこで学んでいる生徒の実情は、いじめ、不登校を義務教育で体験するなどさまざまな困難を抱えるものであり、そのような生徒の学びの場であることを基本に充実を図っていくことの重要性を、10月に中野市で開催された定時制通信制生徒生活体験発表大会に御出席いただいた教育長には理解を深められたことと思います。困難を抱えながら学ぶ個々の生徒のニーズに対応した学びの全県における保障についてのお考えをお聞きします。
 基本構想においては、探究的な学びをさらに深める学科を都市部存立普通校に設置し、探究的な学びを牽引するとしていましたが、たたき台では、モデル校方式による新たな学びの場の創造により改革の先導役を担うと一歩踏み込んだ表現となりました。
 そこでお聞きいたします。
 たたき台で示されたモデル校例は、探究的な学びをさらに深める学科をより具体的に示したということでしょうか。
 また、モデル校の指定については、地理的なバランスを考慮するものの、必ずしも都市部存立普通高校に設置ということではなく、地域の考え方も反映していくというお考えですか。
 高校における特別支援教育の充実も掲げられています。来年度から通級指導教室を順次設置していくとの対応が示されていますが、検討とされた専門性のある特別支援学校教員による高校への巡回相談、支援の実施は、支援が必要な生徒が多数高校で学んでいる状況を考えれば、支援の輪を進めていく観点からも早急に行うべきです。特別支援学校の自立活動担当教員が法定数より不足していることの解消とあわせて考えていくべきではありませんか。
 次に、県立高校の再編整備計画においては、再編を個々の学校の問題として捉えるのではなく、実質的な生活、通学圏域である旧12通学区単位を基本とするとされています。それでは、各区の生徒の減少数に応じ、各区で完結することを基本に進められていることでよろしいですか。
 以上、教育長にお聞きします。
      

◎教育長(原山隆一)

 

 学びの改革に関して引き続きの御質問でございます。
 まず、カリキュラム・マネジメントについてであります。
 高校教育においてもカリキュラム・マネジメントは非常に重要だというふうに思っています。議員御指摘のように、学校教育目標の実現に向けて教育課程を編成し、それを実施、評価し、改善するために、各校がディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、そしてアドミッション・ポリシーを策定し、生徒の力を伸ばす計画をつくるということであります。
 それから、アドミッション・ポリシーに沿った入学者選抜でありますが、高等学校の入学者選抜については、現在、入学者選抜制度等検討委員会で議論しているところであります。その委員会の議論の中では、学力検査だけではなく、他の視点での検査も必要であるといった意見や、学校独自の特色ある選抜などを望む意見等も出されているところであります。今後さらに具体的な検討を進め、来年2月には報告書を提出していただく予定になっております。
 それから、総合学科高校の学校規模であります。中野立志館高校を初めとする県内の総合学科高校では、キャリア教育を重要視するとともに、普通科目や専門科目など柔軟な科目選択を可能とする教育課程を編成しているところであります。議員御指摘のように、幅広い科目選択が可能となるよう一定の学校規模を有していることが望ましいというふうに思っております。
 さらには、幅広い科目選択を可能とする環境を整えることが重要でありまして、例えば高校間でICTを活用した遠隔授業等を進めていくことも大事かなというふうに思っております。今後も、さまざまな観点から総合学科高校の充実、発展に努めてまいる所存でございます。
 次に、定時制・通信制教育における個々の生徒のニーズに対応した学びの保障であります。 定時制・通信制教育は、従来からの勤労青少年に加えて、多様な生活歴、学習歴を持つ生徒の学びの場となっているわけであります。御紹介いただきました定時制通信制生徒生活体験発表大会では、発表した生徒の皆さんが悩みながらさまざまな困難に立ち向かっていく経験を聞かせていただきました。定時制・通信制教育を通して生徒の皆さんが成長する姿を見させていただきまして、強く心を打たれたところであります。
 夢に挑戦できる多様な学びの場、学びの仕組みを整備、充実するという方針を掲げまして、多部制・単位制の充実、あるいは通信制の改革について示しているところであります。多部制・単位制については、未設置の北信地区の設置への検討を含め、定時制教育全体の充実を図っていきたいと思っておりますし、また、通信制については、地理的に離れたところに住む生徒のためにサテライト校を導入するなど、個々の生徒のニーズに対応した学びのさらなる充実を図っていきたいというふうに思っております。
 モデル校の位置づけと指定についてであります。
 今回お示ししたモデル校の例は、基本的に、議員御指摘のとおり、探究的な学びをさらに深める学科をより具体的に示したものでありますが、それに加えて、少人数学級等新たな考え方もモデルとして提示したところであります。この「策定に向けて」において、モデル校の指定については、それぞれの学校の特性と全県のバランスを考慮して検討するという方針を示させてもらいました。中山間地においても、魅力的な学びの場の創造が必要と考えておりますので、モデル校の指定については、都市部存立普通校に限るものではないというふうに考えております。今後開催する地域懇談会や高校の将来像を考える地域の協議会等の御意見もお聞きして検討してまいりたいというふうに思っております。
 高校への特別支援学校教員による巡回相談支援についてであります。
 高校において発達障害等の特別な支援を必要とする生徒は年々増加する傾向にあり、小中学校と同様に専門的知見を持つ特別支援学校の教員による高校への巡回相談支援が必要であるというふうに考えております。
 また、特別支援学校の自立活動担当教員は、今年度まで4年間で80人増員してきたところであります。新たに高校への巡回相談支援を行うことも含め、定数の計画的改善については検討してまいりたいというふうに思っています。
 再編整備計画を旧12通学区単位で検討することについてでありますが、再編整備計画については、実質的な生活通学圏域である旧12通学区単位で協議、検討するとともに、総合学科高校や多部制・単位制高校は現状の4通学区を単位として検討するなど、学校の種別によっては、より広範囲、広域で検討することも必要であるというふうにしております。高校の配置については、旧通学区の流出入も考慮しつつ、全県的視野に立って総合的に検討していく必要があるというふうに考えております。
      

◆小林東一郎

 

 特別支援学校の自立活動担当教員については、乖離数が323人ということでありまして、今、教育長の答弁のとおり、80名の乖離が解消されたわけであります。いまだに240名を超える乖離があるわけでありまして、これは、きちんと計画をつくって、順次乖離の解消をお願いをしておきたいと思います。
 次に、高大連携の推進については、大学との連携で高度な専門的な講義を受講できるようにする単位認定も検討する程度の記述にとどまっています。しかも、探究的な学びを可能にする学科としてモデル校例に挙げられているスーパー探究科設置校のみが高大連携の対象なのかとの危惧すらたたき台を読んでいて感じておるところであります。
 先月、教育学部の一部を改組し、グローバル人材と地域創生のための人材の両方の育成を一体化させた教育プログラムを展開する国際地域学部を2016年にスタートさせ、それ以前から米国のアイビーリーグ流授業改革を進めている福井大学を訪れ、寺岡英男副学長から同大の取り組みとその成果を伺ってまいりました。
 国際地域学部では、高大接続型のAO入試を実施、それは、高校での取り組みや自由研究、社会活動などで得られた成果についてのレポート提出等で、多面的な能力、意欲、資質等を評価する仕組みですが、高校と大学とが連携した課題探求活動への参加も出願条件となり、取り組みと成果に関するレポートの対象となっており、専門学科高校からの合格にもつながっているとお聞きしました。
 本県では、来春、県立大学が開学します。全ての県立高校を対象として県立大学との連携を進めていただきたい。福井大学での課題探求活動のような高校生を対象とした講座開設や、学生とともに実習に参加するといった大学での学びの体験により、高校生の探究的な学びが深まるはずです。県立大学との連携をいかに進めていかれるお考えですか、教育長に伺います。
 県立大学では、既に学校長推薦選抜が始まっていますが、AO入試は行われていません。ともすると、高校生は学力や部活動だけで評価されがちですが、問いかけ、話し合い、向き合うことで育まれる能力を評価することが大学入学後の次につながるはずです。高校長推薦選抜での検証を行っていくとともに、高大連携の取り組みを進め、プレゼミナールに参加してミニレポートを作成する一次選考と、文系は図書館入試、理系は実験室入試の二次選考による新たな形式のAO入試であり、お茶の水女子大学の新フンボルト入試のようなAO入試導入を検討すべきです。県立大学設立担当部長に御所見をお伺いします。
 2020年から大学入試共通テストが始まります。新テストは、高校の学びと大学の学びをつなげる高大接続改革の一環として導入されるものです。高校では、生徒が大学で学ぶための基礎を養う教育をすることが求められます。数学の苦手な高校生が入試で数学を課さない経済学部の受験を希望したとすると、それを後押しするような指導がもはや通用せず、数学のできない生徒が大学に入学したら講義についていけるだろうかと立ちどまらなければならなくなるのです。このような変革が待ち受けているのですから、高校教員の研修を含め、高大連携が欠かせないことになります。県内大学との連携について、総合教育会議でしっかりと議論し、施策の一層の推進を図るべきです。知事の御見解をお聞きします。
      

◎教育長(原山隆一)

 

 県立大学との連携についてのお尋ねでございます。
 高校生がみずからの夢の実現を目指す上で、また、探究的な学びを深める上でも、より専門的、実践的な大学での学びに触れる機会を持つことは大変重要であると思っておりまして、議員御指摘のとおり、高大連携についてはさらに拡充していく必要があるというふうに思っております。
 県立大学とも協議しながら、どんな範囲で、どういう連携が可能なのか、その連携のあり方について積極的に検討してまいりたいというふうに思っております。
      

◎短期大学事務局長兼県立大学設立担当部長(玉井裕司)

 

 長野県立大学でのAO入試についてお尋ねいただきました。
 長野県立大学の理念に沿った学生を受け入れるため、アドミッション・ポリシー、入学者受け入れ方針を策定し、その方針に従って入学者選抜の制度設計を行い、既に開始をしているところでございます。11月25、26日には、学校長推薦選抜を皮切りにして、今後、自己推薦選抜、特別選抜、一般選抜を実施する予定でございます。
 その中で、自己推薦選抜につきましては、受験生が高校時代において取り組んできた活動の内容やプレゼンテーション、面接により、その受験生の資質を入学者受け入れ方針に従って総合的に判断することとしております。名称こそ異なるものの、大学側の求める人物に合うのか判断をしていくAO入試に相当するものと認識しております。
 特に、プレゼンテーションについては、当日与えられたテーマに沿って自分の考えをまとめて発表する試験でありまして、日ごろから広く社会的な課題に関心を持ち、自分で考え、判断し、意見を発表する能力を身につけているか判定をするものでございます。
 御指摘のありましたお茶の水女子大学の新フンボルト入試については、大変ユニークで丁寧な入試と認識をしているところでございます。
 長野県立大学の理念にふさわしい学生を受け入れていくため、学生の資質を丁寧に見きわめていくよう今後とも適切な入学者選抜の制度設計、運用に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
      

◎知事(阿部守一)

 

 高大連携について総合教育会議で議論してはどうかという御質問でございます。
 高大接続改革におきましては、知識・技能、思考力・判断力・表現力、そして主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度、この学力の3要素をしっかり身につけていかなければいけないわけでありますが、これをどう具現化していくかということについては、高校も大学も双方で、あるいは協働で考えていくということも必要だというふうに思っております。
 来年県立大学が開学するわけでありますが、例えば、県立大学の生徒募集の一環で、高校生向けの模擬授業等もこれまでもやってきていただいていますけれども、開学後も、県立大学の先生方には、大学の中にとどまらずに、地域や高校等にも出かけていただくということも私は必要ではないかと思います。
 そうした観点で、金田一学長予定者あるいは安藤理事長予定者ともこれから話をしていきたいと思いますし、御指摘のありましたように、高大連携、これは学びの県づくりにとっても極めて重要な要素になってくるというふうに思いますので、総合教育会議におきましても十分議論を行うようにしていきたいと考えております。
 以上です。
      

◆小林東一郎

 

 次に、大町市と白馬村の森林整備協議会の事務手続で不適切な対応がされていた問題について伺います。
 職員が協議会の事務代行を行う場合には職務に専念する義務の免除を申請する必要がありますが、本県では、どのような制度のもと、職務に専念する義務の免除の運用がされていますか。また、この手続の必要性についてこれまでどのような周知を図ってこられたのですか。総務部長に伺います。
 林務部長には、不適切な事務処理をしていた職員が職務に専念する義務の免除の手続を踏んでいたのかをお聞きします。
      

◎総務部長(小林透)

 

 県組織のコンプライアンス確立についての御質問にお答えをいたします。
 職務専念義務の免除の運用及び周知についてでございますが、本県では、地方公務員法第35条の規定により、職務に専念する義務の特例に関する条例を定めており、その中で、行政運営上必要と認められる団体等の事務を行う場合や、職務に関連ある国の審議会委員として事務を行う場合などについては職務に専念する義務の免除が認められてございます。
 具体的な手続といたしましては、県の職務規程等に基づき、該当する事務に従事しようとする職員はあらかじめ申請し、所属長等の承認を受けることとされてございます。
 県では、毎年度、全所属からこの承認状況の報告を求めておりますが、それに加え、現地機関については、人事課などの担当職員が定期的に訪問し、免除の状況を確認するとともに、適正な運用について周知してきたところでございます。
 また、これまでも、各種会議や研修、通知などにおきまして周知徹底に努めてきたところでございますが、本年7月に発出した「団体等会計事務の適正な執行について」の通知の中でも、職務専念義務の免除の取り扱いに適正を期するよう改めて注意喚起を行ったところでございます。
 以上であります。
      

◎林務部長(山﨑明)

 

 職員の手続についてのお尋ねでございます。
 当時の北安曇地方事務所の職務専念義務免除等承認手続の文書につきましては、保存期間が経過しているため書類上の確認はできませんでした。
 そこで、この問題に関与した複数の職員に聞き取り調査を行いましたが、手続を行ったことを記憶している職員がおらず、残念ながら必要な手続がとられていなかったものと考えます。
 なお、現在では当該事務は行われておりませんが、団体の事務を行う場合は適切な事務を行うよう徹底してまいりたいと考えております。
      

◆小林東一郎

 

 県事業の推進に当たり、協議会方式を取り入れてきたのは、何も林務部に限ったことではありません。今回明らかになった事態を踏まえ、今後いかに職務に専念する義務の免除の周知徹底を図っていかれるか、総務部長に伺います。
 森林整備を進めるための協議会方式は、当時、北安曇地方事務所管内における先進事例として他県にも紹介されましたし、職員の懸命な取り組みとして評価もされました。しかし、その内実は、無理の積み重ねで、法令順守がおろそかにされていた実態があります。補助金交付上問題なしとの法的見解が得られたからオーケーだ、不適正な事務手続の改善については林務部コンプライアンス推進行動計画に基づき適切な事務執行を徹底しているの一点張りでは、県民は納得しません。かかる事態をいかに総括し、林務部の再生につなげるのですか。林務部長にお聞きします。
 また、職員が事務代行をしていたにもかかわらず、二つの協議会は補助金不適正受給に該当し、返還を求められています。申請事務を代行していた林務課が協議会との調整を怠り、協議会が申請区域と考えていた区域と異なる区域を申請していたとか、にわかには信じられないことが行われていました。このような奇妙な事態が引き起こされた原因はどこにあったのですか。これも林務部長にお聞きします。
      

◎総務部長(小林透)

 

 今後の周知徹底に対する御質問についてお答えをいたします。
 今回の事案によりまして、改めて制度の運用や制度そのものに対する理解、そうしたものの周知徹底とコンプライアンスの推進の重要性を痛感しているところでございます。
 今後の対応といたしましては、各所属において職務専念義務の免除が適切に運用されるよう、先ほど申し上げました本年7月の周知徹底の通知に加えまして、団体等の業務に従事する場合の具体的な留意事項に関し注意喚起を促す通知を改めて発出すること、また、各所属の服務担当職員を対象とした会議などの場において、具体的な事案を示した上で適正な運用を求める説明を行うこと、あるいは現地機関に訪問する巡回職員相談において、承認の漏れや誤りがないか確認するなど、機会を捉えて周知徹底を図ってまいりたいと考えているところでございます。
 以上であります。
      

◎林務部長(山﨑明

 

 御質問に順次お答えします。
 初めに、順番を逆にして、原因のほうからお答えさせていただきます。
 この里山集約化事業は、森林整備を進めるため、所有者の同意を得る活動に対して支援を行うものですが、いわゆる事後要件として、集約事務の実施の翌年度までに間伐等森林整備を行う必要がございます。返還を求めた二つの協議会では、申請事務を代行した林務課が協議会との調整を怠り、協議会が申請区域と考えていた区域と異なる区域を申請したこと、林務課が同課に提出された一部の同意書を協議会へ送付することを怠ったため、当該区域の森林整備の同意が得られなかったものとして森林整備が行われなかったことから返還につながったものでございます。
 原因ですが、この協議会方式は、森林整備に向けた基盤を固めるのに効果的ではございましたが、職員の事務作業量が多く、限られた人員の中で負担も大きなものであったことが一因になったと認識しているところでございます。
 こうした中で、林務部の再生に向けては、林務部コンプライアンス推進行動計画に基づき、業務の適正化や職員の意識改革に徹底して取り組むことはもとより、職員のモチベーションの向上や各所属の実情に応じた人員配置の適正化、しごと改革による業務の改善、効率化に現在取り組んでいるところでありますが、引き続き林務部改革推進委員会の有識者の御指導、御助言を賜りつつ、徹底した改革に取り組み、県民の皆様の信頼回復につながるよう全力で取り組んでまいります。
      

◆小林東一郎

 

 ただいまの林務部長の答弁によれば、事務代行によって林務課イコール協議会だったというふうに考えるしかありませんが、私はこれこそ利益相反に当たるのではないかと思います。林務部長、いかがでしょうか。
      

◎林務部長(山﨑明)

 

 林務課職員の行為が利益相反に当たるのではないかとのお尋ねでございます。
 今回の事例では、補助金の申請者である協議会会長と交付者である地方事務所長はそれぞれ異なっております。いわゆる利益相反には該当しないと考えております。
 しかしながら、交付側と申請者側双方の立場に携わることはできるだけ避けることが望ましいところで、平成23年度以降はこうした事務代行を行っておりませんが、改めてこうした適正な事務処理について徹底してまいります。
      

◆小林東一郎

 

 ただいまの問題につきましては、今後さらにお伺いをしていく予定でおりますので、よろしくお願いいたします。
 知事は、2月定例会での私の質問に対し、一連の不適切事案について、公務員としての本分をおろそかにしてきたことが根底にあるとの指摘を真摯に、謙虚に受けとめ、取り組みをさらに進めていきたいと答弁されています。今回の問題においても、公務員としての意識改革をさらに進める必要がより明らかになりました。それをなすほかに県民の信頼を回復する道はあり得ません。いかなる覚悟で取り組みを進めていかれるのか、知事にお聞きします。
 また、二つの協議会の事務処理問題が表面化した発端は、昨年1月の職員による内部告発にありました。ところが、コンプライアンス推進が取り組まれている矢先であったにもかかわらず、林務部は調査の結果、問題なしとし、県民への説明はされませんでした。コンプライアンス推進を急務とするなら、コンプライアンス・行政経営課の職員体制を拡充し、同課が告発等への対応、調査を主管し、結果を県民に公表する体制をつくるべきですが、知事の御見解を伺います。
      

◎知事(阿部守一)

 

 意識改革について再三にわたって御指摘をいただいているという状況、私も真摯に受けとめなければいけないというふうに思っております。
 多くの県職員は、志高く、しっかり県民のための仕事をしているわけでありますが、しかしながら、他方で、毎年監査委員から事務の不適切等で御指摘をいただくというような状況については、しっかり改善していかなければいけないだろうというふうに思っております。
 この11月に、全部局長から構成するコンプライアンス推進本部を私が本部長ということで立ち上げさせていただきました。改めて、全庁を挙げて、この意識改革、コンプライアンス推進に取り組んでいきたいというふうに思っておりますし、また、その中で、今、内部統制の仕組みづくりということで、リスクマネジメント、リスクの発生要因の分析をしています。気合いで意識を改革するということだけではなくて、具体的な取り組みを通じて意識を変えていきたいと。リスクの洗い出しをやっていますと、例えば、補助事務に対してどれぐらいリスクがあるかという問題意識も、各部局必ずしも一様ではないというようなことも見えてきておりますので、そうした具体的な取り組みをしっかり進めてまいりたいというふうに思っております。
 また、コンプライアンス推進体制ということで、コンプライアンス・行政経営課の職員体制のあり方については、業務量を見きわめながら考えていきたいというふうに思っております。
 また、従来から、同課におきまして、公益通報者保護法に基づく長野県職員等公益通報制度を所管してきているわけでありますが、ことしの5月から、職場等における新たな相談提案制度、シグナルフラッグという形の制度をつくらせていただいております。これは、従来の制度が、ある意味敷居が高かったという問題意識のもとで、法令違反の疑いが顕著なレッドフラッグというようなものだけではなくて、業務改善的なブルーフラッグ、あるいは相談・提案、法令に違反するおそれがある行為を通報するイエローフラッグと、こういう形で職員の問題提起をしていただきやすい仕組みもつくっておりますし、イエローフラッグで上がってきた問題については、これはコンプライアンス・行政経営課もしっかり共有しようという仕組みをつくらせていただいております。当面、この制度をしっかりと運用していくように心がけていきたいというふうに思っております。
 以上です。
      

◆小林東一郎

 

 さまざまな制度が整えられるということでありますが、知事、トップの姿勢がまず職員に示されること、これが一番肝要であります。どうか県民の期待に応えていただきたいということをお願いをして、質問を終わります。