平成29年11月定例県議会 発言内容(荒井武志議員)


◆荒井武志 

 

 初めに、働き方改革についてであります。

 このことについては、2014年(平成26年)9月、厚生労働省に、長時間労働対策についての取り組みを総合的に推進することを目的に長時間労働削減推進本部が設置され、翌年1月には、長野労働局内に働き方改革推進本部が設置されました。これを受け、長野県も、長野労働局と連携して働き方改革に取り組んでこられたものと承知をしております。
 2016年(平成28年)2月4日には、経営者団体、労働団体、長野労働局、長野県など7者による長野県働き方改革・女性活躍推進会議が、人口減少が進む中、生き生きと働き人生を楽しめる長野県を目指し、オール信州で取り組む、「信州「働き方改革」共同宣言」を発し、同年12月22日、平成29年の取り組みに関する確認を取り交わし、国及び県は各事業所が行う課題解決のための取り組みを支援することが確認されました。
 具体的な項目として、「働き方改革」では、長時間労働の削減、年次有給休暇の取得促進、多様な働き方制度の普及促進、「女性活躍推進」では、300人以下の企業・団体の女性活躍推進法一般事業主行動計画策定の推進、イクボス・温かボス宣言者拡大の取組、女性リーダー育成に向けた学びの場づくりが挙げられました。
 そこで、以下2点について産業労働部長にお伺いします。
 一つは、県内企業が働き方改革に取り組んでいる実態はどのような状況になっておりますか。長時間労働の是正、正規、非正規間の格差の是正、就業率の増加など、それぞれの項目ごとに現状を披瀝ください。
 二つに、多様な働き方制度の普及促進における先進的な取り組み事例を御紹介ください。
 次に、県民文化部長に伺います。
 300人以下の企業・団体の女性活躍推進法一般事業主行動計画の策定状況はいかがでしょうか。
 続いて、産業労働部長に2点お伺いします。
 一つに、非正規労働者の雇用安定や処遇改善について、労働契約法やパートタイム労働法などの法改正が進み、来年4月には無期転換申込権の発生時期を迎えますが、既に法の趣旨を逸脱した対応も見受けられるとの指摘も聞き及んでおります。雇いどめ抑制の施策が急務と思いますが、県の対応はいかがでしょうか。
 二つに、今後の働き方改革では、従業員を単純労働からいかに解放し、付加価値の高い仕事に集中できる環境をしっかりと構築していくことが求められているのではないでしょうか。今後どのように県内企業に働きかけていきますか。
 また、県庁職員の勤務間インターバル最低11時間の取り組みが10月から始まりました。まだ2カ月足らずで成果も把握がままならない状況と思いますが、その狙いと試行の現状をどのように捉えておられるのか、総務部長に伺います。
      

◎産業政策監兼産業労働部長(土屋智則)

 

 働き方改革に関しまして、私には4点御質問を頂戴いたしました。
 まず、県内企業の働き方改革の取り組みの現状についてでございます。
 県が県内企業を対象に実施いたしました調査によりますと、回答のあった371社のうち、働き方改革について経営者と従業員の話し合いを行った、または行う予定と回答した企業は68.7%でございました。その中で、長時間労働の削減について話し合った企業は239社で、うち一定の改善がされた割合というのが59.0%という状況でございます。
 次に、正規、非正規の格差是正についてでございますが、県が平成28年に非正規職員に対して行った調査によりますと、昇給制度の適用があると回答した社は38.0%、前回、平成25年調査より1.6ポイント増加という状況で、賞与制度の適用があると回答した社は52.2%で、同じく3.8ポイントの増加という状況でございます。
 また、平成27年の国勢調査では、本県の就業率は59.0%で全国第2位となっており、前回の58.9%からわずかに増加しております。女性の就業率については、特に子育て期に当たる25歳から44歳までの層では74.3%で前回から4.3ポイント増加したものの、全国順位は一つ下げて第13位という状況でございます。
 総じて、県内企業における働き方改革の取り組み状況は徐々に進展しつつあるものの、まだ改善の余地も多いというふうに考えているところでございます。
 次に、多様な働き方制度の先進的な取り組み事例についてでございます。
 県が仕事と家庭の両立ができる職場環境の改善や雇用の安定を進めることを目的として運営しております職場いきいきアドバンスカンパニーの認証を受けた企業等の中には、先進的かつ独自の取り組みを行っているところがございます。例えば、時効により失効した年次有給休暇を積み立て、育児や介護の用途に限り取得できる年休積立制度、平日5日連続して休暇を取得した場合手当を支給するリフレッシュ休暇制度、また、一日の所定労働時間を分割して、会社と自宅で自由に働く分断勤務制度などが挙げられるところでございます。いずれも従業員の立場に寄り添ったものであり、こうした取り組みによりまして従業員の定着やモチベーションの向上につながっているというふうにお聞きをしているところでございます。
 次に、無期転換ルールの適用に伴う雇いどめ抑制の対応についてでございます。
 無期転換の申し込みが本格的に行われると見込まれる平成30年4月まで残り4カ月となり、事前に対応していくことが肝要であると考えてございます。
 県では、制度の詳細についてホームページへの掲載や市町村への周知を行うとともに、労政事務所が実施する労働教育講座において、社会保険労務士を講師に招き、無期転換ルールの内容や、それを行うことによるメリットなどについて労働者及び事業主に周知を行っているところでございまして、これまでに約190名が受講をしてございます。
 また、国では、労働局が、労働団体に対し円滑な導入に向けた取り組みを要請するとともに、無期転換ルール特別相談窓口を設置し、対応しているところでございます。
 引き続き制度の円滑な導入が図られるよう努めてまいりますとともに、雇いどめ等の問題があると疑われる事案につきましては、相談者に行政指導権限を持つ労働基準監督署を御案内したり、またあっせんが必要な場合は県労働委員会を紹介するなど、関係機関と連携して取り組んでまいりたいと考えております。
 最後に、従業員を単純労働から付加価値の高い仕事に集中できる、そういった環境構築への取り組みについてでございます。
 働き方改革は、労働者の福祉の向上、暮らしの充実という側面とともに、生産性を上げるという目標に向けた一つの企業改革であるというふうに認識しているところでございます。第4次産業革命の技術が進展する中で、AI、IoT、ロボット等の活用により仕事の省力化、効率化を図ることが一つの方策であると考えております。県といたしましては、これまで、ITの活用に関心を持つ企業の要望に応じまして、ITエンジニア等の専門家を派遣し、仕事の効率化のためのアドバイスを行うとともに、生産性向上のための取り組みに対する国の助成制度を紹介し、利用促進を図ってまいりました。
 今後でございますが、AI、IoT等の活用に関する相談支援機能を強化をし、大学等の知見も活用いたしながら、省力化、効率化、高付加価値化の先進的事例を創出してまいりますとともに、これらの事例を県内中小企業に広く普及してまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。
      

◎県民文化部長(青木弘)

 

 300人以下の企業・団体の女性活躍推進法一般事業主行動計画の策定状況につきましては、現在、労働局等と連携しながら取り組んでいるところではございますが、11月1日現在で策定されましたのは32社となっている状況でございます。
 引き続き、関係団体との連携も含めまして計画策定の促進に取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。
 以上でございます。
      

◎総務部長(小林透)

 

 勤務間インターバル制についての御質問にお答えをいたします。
 本県では、本年10月から12月までの3カ月間、国や全国の都道府県に先駆けて勤務間インターバル制の取り組みをまず本庁各部局において試行しているところでございます。
 その目的といたしましては、議員御指摘のとおり、職員一人一人の勤務実態において、前日の勤務の終わりから当日の勤務の初めまでの休息時間を11時間以上とすることによりまして、職員の生活時間や睡眠時間を確保し、職員の健康維持増進やワークライフバランスの増進に資するとともに、それを生産性や県民サービスの向上につなげていくことを考えてございまして、職員一人一人の実質的な勤務時間の把握やしごと改革による業務の効率化もあわせて取り組みを進めてございます。
 具体的な実施状況等につきましては、試行期間終了後に取りまとめることとなってございますが、現在把握しているところでは、職員から、勤務が深夜に及んだ翌日の出勤をおくらせることで心身の疲れが回復しリフレッシュできるといった声が聞かれる一方で、業務が繁忙であり、休息時間を11時間確保することが難しいといった声も寄せられてございます。
 今回の試行を通じまして、休息時間や例外規定のあり方などを含めて、その効果や運用上の課題等を整理、検証した上で、現地機関での取り組みや本格実施に向けて検討してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
      

◆荒井武志

 

 働き方改革につきましてはまだこれからというような報告をいただいたように思います。ぜひこれからも前向きに御努力をお願いしたいと思います。
 続いて、消防防災体制についてであります。
 災害の大規模化や複雑化、住民ニーズの多様化など、消防を取り巻く環境の変化に的確に対応できる市町村の消防体制の整備及び確立を図るために、長野県は、2008年(平成20年)1月、県内を東北信、中南信の2ブロックに再編する長野県消防広域化推進計画を策定しました。
 この計画の策定に当たっては、市町村、消防関係者、県民からも意見を聞く中で、長野県消防広域化推進検討委員会における検討を踏まえて策定され、市町村の消防の広域化が実現できるよう、県として必要な援助を行っていくとされました。その後、それぞれの地域において精力的な検討がなされたものの、諸々の事情により協議は一旦休止になったと承知しています。
 この間、東日本大震災の惨状や、これに立ち向かった消防署員や消防団員、自治体職員の活動等を顧みて、消防力の強化と効率化、大規模災害時の受援体制整備のためには消防の広域化が不可欠であるとの判断から、上伊那地域では、2012年(平成24年)7月、上伊那消防広域化協議会を設置し、消防組織の一本化についての検討が進められ、2015年(平成27年)4月、上伊那広域消防本部が発足、業務を始められました。
 一方、女性の社会参加の高まりもあって、消防職場にも女性消防隊員が少なからず採用され、活躍してきています。
 また、過重労働や職場上司からのたび重なる過剰な叱責、パワーハラスメントを受け、自殺された事例が全国で続いている状況と伺っています。
 そこで、危機管理部長に、以下4点についてお伺いします。
 一つに、常備消防について、長野県消防広域化推進計画のそもそもの目的や狙いは何であったのでしょうか。
 二つに、上伊那広域消防本部が広域化されましたが、その後の県内常備消防体制についての現状認識と課題はいかがでしょうか。
 三つに、消防職場における女性消防隊員への配慮を含む労働環境の改善やメンタルヘルスケアサポートの推進、いわゆるパワーハラスメント対策などが重要であると考えます。県内常備消防職場の実態についてどのように認識されておられますか。
 四つに、消防職員が胸を張って職務に精励できるよう、長野県消防協会と連携し、パワーハラスメント等のハラスメント対策を徹底対応していくべきではないでしょうか。今後どのように取り組んでいかれますか。お伺いします。
      

◎危機管理監兼危機管理部長(池田秀幸)

 

 消防防災体制について御質問いただきました。順次お答えを申し上げたいと思います。
 最初に、長野県消防広域化推進計画の目的等についての御質問でございます。
 長野県消防広域化推進計画は、消防組織法第33条第1項に定めます自主的な市町村の消防の広域化の推進及び広域化後の消防の円滑な運営の確保に関する計画といたしまして、平成20年4月に県が策定をしたものでございます。
 この計画の目的は、災害、事故の多様化や大規模化、少子・高齢化社会の到来など、消防を取り巻く環境の変化と将来の見通しから、消防体制の整備及び確立を図るためには、市町村消防の広域化によりまして、初動体制の強化でありますとか資機材の計画的整備など、行財政上のさまざまなスケールメリットを実現していくというものでございます。
 次に、常備消防体制の現状認識と課題についての御質問でございます。
 議員御指摘のとおり、最近では、平成27年4月、従前の伊那消防組合と伊南行政組合の消防本部が広域化をいたしまして、上伊那広域消防本部が誕生しております。
 県内の常備消防体制の現状につきましては、県内では長野市消防局を初め13の消防本部が設置をされておりまして、県内の全市町村で常備消防体制が整っております。しかしながら、県内には管轄人口10万人未満のいわゆる小規模消防本部が6本部あり、厳しい市町村の財政事情や少子・高齢化が進む中で、現状の消防体制をどのように維持していくかということが懸念されるところでもございます。
 こういった状況の中、広域化の必要性は市町村や消防本部も認めるものの、関係市町村間で運営方式や組織運営など十分に調整が必要なことから、上伊那広域消防本部以降、広域化は行われておりません。
 県といたしましては、今後も市町村及び消防本部の意向を尊重しながら、消防広域化や業務の共同運用などについて、関係市町村間の必要な調整など支援を行ってまいりたいと考えております。
 次に、女性消防隊員の労働環境の改善やパワーハラスメント対策についての御質問でございます。
 女性消防吏員が増加することは、住民サービスの向上や多様な視点による組織の活性化が図られるなど大変重要と考えておりますが、県内における女性消防吏員は、本年4月1日現在、43人で、全体の1.7%、全国平均の2.4%を下回っております。また、女性専用の仮眠室でありますとかトイレなど施設の整備状況につきましては、消防本部において、女性消防吏員が勤務する消防署の整備を優先的に行ってはおりますが、まだ十分な整備状況となってはおりません。
 多くの女性が消防本部で活躍していただくためには、女性専用の施設の整備など労働環境の改善は不可欠と考えておりまして、県といたしましても、消防本部に対しまして、特別交付税などを活用した施設整備につきまして引き続き支援をしてまいりたいと考えております。
 次に、パワーハラスメント対策についてでございますが、パワーハラスメント被害の実態につきましては、本年の3月、国が全国の消防職員4,000人を抽出いたしまして、その実態調査を行っております。その結果では、最近1年間に職場でパワーハラスメント被害に遭ったことがあると答えた職員は、回答のあった2,939人の16.6%に当たる489人という結果が出ております。県といたしましても、消防本部におけるパワーハラスメントを含む全てのハラスメントの撲滅のために必要な対策を講じてまいりたいと考えているところでございます。
 次に、消防長会と連携したハラスメント対策についての御質問でございます。
 先ほどの質問と関連いたしますが、国におきましては、本年7月、県や消防本部に対しまして、ハラスメント対応策をまとめ、ハラスメント通報制度の確立など実現可能なものから順次取り組むよう通知をされております。県といたしましては、この通知を踏まえまして、消防本部に対しまして、ハラスメントなどの撲滅のため必要な対策を講じるよう求めるとともに、県の危機管理部消防課へのハラスメント相談員の設置でありますとか、県の消防学校の講義におけますハラスメント対策の研修の充実を図ってまいりたいと考えております。
 消防長会の全国組織であります全国消防長会におきましても、本年5月に全国消防長会ハラスメント防止宣言を出しまして、消防庁の皆様みずからがハラスメント防止対策を積極的に取り組んでいくことを宣言をされております。
 今後も、ハラスメント撲滅に向けまして、消防長会ともしっかり連携をいたしまして積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 以上でございます。
      

◆荒井武志

 

 女性隊員を含めまして、消防職場が胸を張って明るい職場にできますように願っているところでございます。
 続いて、本年3月5日に発生してしまいました消防防災ヘリ「アルプス」の墜落事故に際し、お亡くなりになられました隊員並びに御遺族の皆様に改めて哀悼の誠をささげさせていただきます。
 消防防災航空体制の再構築に向けて、さきの議案説明で、知事は、十分な訓練を行うなど安全運航体制を確立し、来年春から段階的な活動を再開する。当面、民間航空会社から機体を借り受け、操縦士等も派遣を受けて対応していく。安全運航管理幹の新たな配置、ダブルパイロット制の導入、第三者が運航状況の点検と助言、指導を行う仕組みを導入するなどを表明されました。しかし、墜落の原因が何であったのかはいまだに明らかにされていません。原因の解決があってこそ安全な運航、確実な救助などが行えるものと考えます。
 そこで、お伺いします。県の消防防災ヘリ「アルプス」が墜落して8カ月が経過しました。いまだに原因究明がされていない状況の中で運航再開を目指すことについて、知事の率直な御所見をお伺いします。
 危機管理部長に伺います。
 県の消防防災航空センター派遣職員の宿舎は共同で使用していると伺っておりますが、個人のプライバシーが確保できる状況をつくっていくべきではないでしょうか。認識と今後の対応策をお聞きします。
      

◎知事(阿部守一)

 

 消防防災ヘリコプターの事故原因究明がされていない中での運航再開についての考え方という御質問でございます。
 消防防災ヘリコプター事故の原因究明につきましては、国土交通省の運輸安全委員会における調査、あるいは県警の捜査に全面的に協力している状況でありますが、結論が出されるまでには事故発生から1年半近くかかる見通しというふうに伺っております。
 一方で、空からの災害対応等につきましては、現在、隣接県や県警等から応援をいただき、応援に頼っているという状況でありまして、大規模な災害等に対して万全の体制であるというふうには言いがたい状況にございます。
 こうしたことから、消防防災航空体制のあり方検討会を設置をいたしまして、運航再開の時期等につきまして、県の消防防災航空体制を直接支えていただいております市町村長、あるいは消防庁の皆様方と慎重に検討を重ねてまいったところでございます。
 その結果、事故に結びつき得る要因を幅広く洗い出した上で、ダブルパイロット制などの安全対策を講じていくということを前提として、来春の林野火災消火活動からの再開を目指すことについて合意がなされたところでございます。
 消防防災ヘリコプターの運航再開に向けては、二度と事故を起こすまいという強い決意のもと、安全運航の確保に万全を期して取り組んでまいりたいと考えております。
 以上です。
      

◎危機管理監兼危機管理部長(池田秀幸)

 

 消防防災航空センターの宿舎についての御質問をいただきました。
 議員御指摘のとおり、消防防災航空センターが管理いたします職員宿舎は、7部屋ある一戸建て宿舎でございまして、現在、5名の隊員が共同で生活をしているところでございます。
 消防防災航空隊員の住環境の改善につきましては、消防防災航空体制のあり方検討会でも重要であるという意見が出されておりまして、引き続き隊員の意見を十分聞いてあっせんする職員宿舎の範囲を広げるなど、隊員の力が十分発揮できるよう取り組んでまいりたいと考えております。
 以上でございます。
      

◆荒井武志

 

 次に、予算執行のあり方についてであります。
 大北森林組合の補助金不適正受給事案から明らかになったように、仕事量と予算額のあり方が大きな課題になったと考えております。
 そこで、まず農政部長、建設部長にお伺いします。
 補助金が伴うハード事業における予算は、どのような根拠や積み上げにより要求されているのでしょうか。
 次に、林務部長にお伺いします。
 大北森林組合の補助金不適正受給事案では、造林関係予算の配分が地域の実情に即しておらず、北安曇地方事務所においてプレッシャーを感じていたとの検証がなされています。造林関係予算の配分にはどのような問題があり、改善をどのように行ってきたのでしょうか。
 また、執行段階では、当該団体等から補助金申請を受け、内示をし、事業執行の後、事業完了報告がなされ、検査、確認後、補助金交付となるのが一般的と思います。しかしながら、大北森林組合の補助金不適正受給事案では、既存の道路が申請され、施工もされていない事業に補助金が交付される事態になっています。なぜこうした事態に至ったのか、原因をどのように捉え、改善をどのように行っているのかお答えください。
 最後に、知事にお伺いします。
 こうした中で、県民の信頼回復に向けて、二度とこうした事案を起こさないことが絶対不可欠であります。知事は、造林補助事業の県の検査を初めとする林務部における改善策の取り組み状況をどのように評価し、今後さらにどのように取り組むお考えか、御所見をお伺いします。
      

◎農政部長(北原富裕)

 

 補助金を伴うハード事業の予算要求に関する御質問に対し、農政部所管の事業についてお答えをいたします。
 市町村や土地改良区が行う農地や農業水利施設等の整備事業、いわゆる農政公共事業につきましては、通常3年程度の事業期間を要するものが多く、市町村等が策定した事業計画を法令や要綱、要領に合致しているかを確認し、事業採択を行っており、各年度の予算要求に当たりましては、市町村等の事業計画に基づく要望額について、積算根拠等を精査した上で必要額を要求しております。
 また、農産物集出荷施設や農業用機械、施設等の整備事業、いわゆる非公共事業につきましては、市町村やJA、農業者など事業主体の要望を把握した上で事業実施の確実性等を精査し、事業必要額を要求しております。
 以上でございます。
      

◎建設部長(油井均)

 

 建設部が所管する補助金が伴うハード事業といたしましては、高規格幹線道路の整備促進を図るため、高規格幹線道路に関連する市町村道等の改良事業に対する補助金、広域的な観点から整備が必要な土地区画整理事業に対する補助金、住宅等の耐震診断や補強工事に対し市町村が行う助成への補助金など、市町村事業への補助が主なものとなっております。
 予算要求に当たりましては、原則として、あらかじめ市町村から要望いただいた事業の積算根拠等を精査の上、必要額を要求させていただいているところです。
      

◎林務部長(山﨑明)

 

 当時の造林関係予算の配分についてのお尋ねでございます。
 大北森林組合の補助金不適正受給事案発生当時の造林関係予算の配分につきましては、必ずしも地域の事業体や地方事務所の能力を十分考慮せず、地方事務所ごとの配分を設定していたことが、北安曇地方事務所林務課において不適切な申請の依頼が行われた原因の一つとなったとの検証をいただいたところでございます。
 この反省を踏まえ、従前の造林事業は、森林づくりアクションプランの間伐目標面積などに基づき予算編成を行い、地域への配分をしておりましたが、林務部コンプライアンス推進行動計画に基づき、平成28年度以降は、林業事業体からの要望の聞き取りを予算編成前の9月に前倒しして実施するとともに、実行可能な地域要望を踏まえた予算編成を行い、配分もその状況を踏まえたものに改善しております。
 さらに、今年度からは、事業体とともに団地ごとの事業の進捗情報を共有する取り組みを開始し、適正な事業の執行に取り組んでいるところでございます。
 次に、不適正受給の原因とその改善についてのお尋ねでございます。
 造林事業は、1カ所当たりの事業規模が小さく、件数が多いことなどから、一部の事業を除き、事業の完了後に補助金の申請を行う事後申請方式を採用しており、県が行う調査については、間伐等の森林整備につきましては抽出で、作業道については全ての箇所で実施しているというのが実態でございます。
 その上で、大北森林組合の補助金不適正受給事案では、地域の森林整備の機運の高まりやアクションプランに基づく間伐の推進等の背景がある中で、当時の林務課から組合への申請時点で未完了である事業の申請を依頼するという極めて問題がある対応がありました。
 さらに、作業道事業の赤字という経営上の問題を抱えていた組合が、私的利益を得ていた元専務の主導のもとで、多忙や積雪等を理由に現地調査を適切に行わないといった北安曇地方事務所の状況を利用し、多数の不適正申請を長期にわたり行っておりました。
 また、本庁林務部においても、組合や北安曇地方事務所林務課の実情を十分に把握せず、長期にわたり不適切な申請を防ぐことができなかったことも大変問題があったと認識しております。
 このため、二度とこのような事案を起こさないという決意のもと、林務部コンプライアンス推進行動計画を策定し、特に造林補助事業につきましては、先ほどの予算配分の見直しに加え、積雪期で現地調査が困難な第6回申請の廃止や、事業主体へは位置情報を持った調査記録の添付を義務づけるとともに、県の調査におきましては、2人体制での実施の徹底や空中写真等による除地や既設路網の有無などの確認など、調査体制の強化等に取り組んでいるところでございます。引き続き県民の皆様の信頼回復に向け、適正な執行に全力を挙げて取り組んでまいります。
      

◎知事(阿部守一)

 

 林務部におけます改善策に対する評価と、今後どう取り組んでいくかという御質問でございます。
 林務部におきましては、一昨年から林務部コンプライアンス推進行動計画を策定して、業務の適正化や職員の意識改革等に幅広く取り組んできているところでございます。
 造林事業に関しましては、林務部長からも御答弁申し上げましたとおり、2人体制での現地調査など運用改善の徹底に取り組んでまいっております。有識者で構成いたします林務部改革推進委員会からは、事案の発生要因に対する直接的な取り組み等について改善成果が得られているという一定の評価をいただいているところであり、今後とも継続的に改革、改善を進めてまいりたいと考えております。
 また、全庁的には、単なる法令遵守という受け身あるいは消極的な姿勢ではなくて、社会の環境変化に敏感に対応するといった前向きの姿勢で、行政経営方針に基づく県民の皆様方の信頼と期待に応える組織づくりを目指した取り組みをさらに一層推進していきたいというふうに考えております。
 以上です。
      

◆荒井武志

 

 答弁いただきました。それぞれ市町村のヒアリングを行ってやっているというお話を伺ったわけであります。その積み上げですから、当然、それが執行されれば予算は決算に結びつくわけでありますが、やっぱり現場の実情調査、現地調査、これもあらかじめの段階でしっかりやっていかなければいけないのではないかと、こういうふうに思ったところでございます。どうぞその辺も踏まえて今後の執行をお願いをしたいと思います。
 以上で質問を終わります。