平成28年9月定例県議会 発言内容(小林東一郎議員)


◆小林東一郎

 

  初めに、大北森林組合問題について、全て知事に伺います。

 去る9月9日に国から発せられた大北森林組合等の補助金不正受給に関する補助金の返還命令等により、県は9月12日に国庫補助金を返還、あわせて、補助金等の予算執行の適正化に関する法律第17条1項により交付決定が取り消された補助金について、同法第19条1項の規定に基づき課された加算金を納付しました。本来ならば、これにより大北森林組合問題は次の段階に進むはずなのですが、組合から県への補助金返還のめどは五里霧中、組合と組合の元専務理事が訴えられている裁判の公判で証人尋問された県職員から、不適正な申請を認めたとの証言もされ、泥沼の様相を呈しています。

 今回の国庫補助金の返還等においても、あるいは今後進めていかなければならない手続等においても、いまだに多くの疑問や不明確な点が残されており、これが解き明かされない限り、県民の納得が得られるものではありません。

 この観点から、順次伺ってまいります。

 県は、補助金不正受給事案1件ごとに国との協議を重ね、ほぼ金額が固まったとし、6月補正予算に国への返還分11億5,346万円を計上しました。知事は、予算の範囲内で国への返還を行ったとされていますが、大北森林組合分の返還見込額7億1,856万円を超過する7億2,314万円余を返還するところとなりました。見込額を超えてしまった原因はどこにあるのですか。また、見込みの甘さも問われますが、そのことへの御見解もお聞きします。

 知事は、一昨日の県補助金返還に伴い課される加算金についての今井愛郎議員の質問に、法令に基づいて適切に対処していくと答えておられます。それは、基本的に加算金を課すということでよろしいでしょうか。仮に、組合からの申請を認め、加算金を免除するとなれば、それは県の債務放棄となり、議会の議決を要することになりますが、そのような手続がされるということでよろしいでしょうか。

 加算金の対象とならない基金事業や県に不備のなかった案件を除き、課せられた加算金は返還対象補助金の89%にも上っています。加算金が課された返還対象補助金は6億9,500万円とされていますが、6月補正予算で見込んだ金額との差は幾らになりますか。また、加算金3億5,300万円余は県の指導監督の不備を理由に課されたと説明されていますが、何が不備だったのか、具体的にお示しください。

 補助金適正化法第19条の3項には、やむを得ない事情があるときは加算金の免除が規定されています。過去に例のない3億5,300万円という多額の加算金が課せられましたが、この規定による免除はされなかったのでしょうか。免除があったのであれば、何がやむを得ない事情と判断をされ、免除額は幾らなのでしょうか。免除がされなかったのであれば、その理由をお聞きいたします。

      

◎知事(阿部守一)

 

 大北森林組合の問題についての御質問に順次お答えを申し上げたいと思います。

 まず、昨日も申し上げましたが、この大北森林組合の問題について私ども県として取り組むべきことは、補助金の返還請求、あるいは国への返還の事務、さらには職員の処分、また関係者、責任があるというふうに思われる者に対する刑事告発と、こうしたさまざまな取り組みをこれまでも行ってきているところであります。私どもとして、県民の皆様方の期待に応えられるように全力でこの問題に向き合っているという状況でございます。

 そういう中で、まず大北森林組合分の国庫補助金返還額の予算額との差について御質問いただきました。

 6月補正の段階では、これは当時の国との打ち合わせの状況を踏まえて見込まれていた額を計上ということで、これは提案説明でもそういう趣旨で御説明をさせていただいたところでございます。国への納入額との差については、私も林務部に対して徹底的に整理をせよということで指示をしてまいりました。2,108件に及ぶ膨大な補助金の交付案件につきまして、国とも1件1件内容を整理した上で突き合わせをしてまいりました。

 その結果、作業道整備3件について、これは、県が現地調査において一部施工された部分を確認し、聞き取り調査の結果も踏まえて、交付申請時点での一部完了が認められるというふうに考えていたものにつきまして、国においてはその部分が完了した日付が書面等で正確に確認できないということで、一部完了とは認められないという判断をされたものであります。

 また、作業道整備7件については、いずれも作業道整備そのものについては適正に実施されているわけであります。しかしながら、一体として行われるべき森林整備が補助事業の要件に合致していなかったということで、県は、森林整備は実施されておりましたので、作業道整備については返還の対象とは考えていなかったわけでありますが、国においては一体として行われた森林整備が適正ではない場合には作業道整備も全て返還の対象になるというふうに判断をされたものであります。そういう意味で、今申し上げましたように、私ども丁寧に精査をさせてきていただいた結果のものでございます。

 それから、加算金についてでございます。

 補助金等交付規則に基づいて、加算金は原則として課すものでありまして、大北森林組合にも通知をしているところでございます。御質問にありましたように、免除するとすれば、制度的には自治法に規定しております権利の放棄に当たるため、県議会の御議決が必要だというふうに認識しております。しかしながら、組合の抜本的な経営改善の姿も何ら見えないことから、こうしたことを判断する状況には全くないというふうに考えています。

 次に、6月補正に見込んだ加算金の金額との差についての御質問でございます。

 6月補正予算に計上いたしました加算金の見込額は約3億5,448万円でございます。実際に国から課された加算金が3億5,305万円ということで、予算計上額に比べまして約143万円、こちらは減額になっております。加算金が課される理由となった県の指導監督の不備についてでありますが、大きく申し上げまして、県が補助事業者に行った指導が国の要領に沿っていなかったもの、いわゆる大北ルールに基づくもの、あるいは県が行う補助金の交付決定の際に国の要領上必要な現地調査を適切に実施をしていない、または適正実施が確認できなかったものでございます。

 やむを得ない事情があるときの加算金の免除、国からの加算金の免除の御質問だと思いますが、加算金につきましては、補助金適正化法上、補助事業者であります県に義務違反があった場合に課されるものでありまして、今回の事案におきましては、適切な現地調査を実施していない等、県の義務違反が明らかであるということから、補助金適化法第19条3項の事由に該当してないということで、規定に沿った加算金の納付を行ったところでございます。

 以上でございます。

      

◆小林東一郎

 

 私がお聞きいたしましたのは、課せられた加算金、その返還対象補助金の89%、その額は6億9,500万円ということなんですが、もともと見込んだ返還対象の補助金との差をお聞きいたしました。もう一度答弁をいただきたいと思います。

 昨年1月29日の大北森林組合による補助金不正受給の公表後、県は調査を行い、国との間で案件の精査に努めてきました。にもかかわらず、これ以降納付の日までの期間においても加算金が課せられる事態。1日当たり20万円として19カ月で1億1,400万円になります。これは、県にとって苛烈ですらあります。県民にとっても不幸としか言いようがありません。解明のための調査を行い、国との協議に費やしてきた期間すら、なぜやむを得ない事情として認められなかったのでしょうか。御説明をいただきたいと思います。

 大北森林組合問題について、県はこれまで、この事案を主体的、能動的に行ってきたのは組合との説明を繰り返してこられました。今議会でのこれまでの議論においても、知事の御説明はそこから一歩も踏み出してはいないように思います。確かに組合の行った行為は泥棒そのものでしょう。しかし、国の姿勢は県に責任ありで貫かれており、県民はこの乖離を埋めることができずにいます。県民の理解が進むよう、合理的な説明をいただきたいと思います。

      

◎知事(阿部守一)

 

 小林東一郎議員の再質問の御趣旨なんですが、先ほど6月補正に計上した加算金の見込額、それから実際に課された加算金の差額について御答弁申し上げましたが、私もそこの部分が御質問の趣旨であるということで御答弁させていただいております。もし具体的な数字の御質問であれば、また別途御照会いただければというふうに思います。正確な数字で御答弁させていただくのはやぶさかではございませんので、よろしくお願いいたします。

 それから、加算金の免除については、この補助金適化法19条3項で免除の規定があるわけでありますけれども、これは今回取り消しの事由になり得るのが、補助金適化法の17条の1項に該当するか2項に該当するかということでありまして、1項のものについては加算金が課されるという形になっております。19条の規定によりまして、やむを得ない事情があるときには全部または一部の免除ができるということになっておりますけれども、これは極めて例外的な場合という形になっておりまして、今回の場合は県の義務違反が明らかということもありますので、これには該当しないというものでございます。

 それから、事案の責任についての説明でございます。

 何度も申し上げてきておりますけれども、私どもは県の対応に問題がなかったということはこれまでも決して申してきてはいないわけでありまして、しかしながら、主として大北森林組合が元専務の主導のもとで多数の不適正申請を主体的、能動的に繰り返し行ってきたということは、これも片方で事実であります。片方で、加算金については、県の指導監督の不備によるものということで、これは6月の提案説明でも申し上げて、私からはその場で陳謝をさせていただいたところでございます。

 国からは、大北森林組合等が不適正な申請を行っていたということが確認されたことから補助金の返還を求められているものでありまして、また、返還を求められた案件の中に、県の組合への補助金交付に当たって指導監督の不備が認められるということで、加算金の納付が必要となったわけであります。

 したがいまして、私どもがこれまで説明をさせていただいていることと今回の国の判断については、これは食い違っているものではございませんで、これまで御説明をしてきたとおりということで御理解いただければというふうに思います。

 以上です。

      

◆小林東一郎

 

 今の答弁の中で、補助金適正化法の第17条の1項なのか2項なのかというお話がございましたが、実際に国は補助金適正化法第17条の1項を適用して補助金の交付決定を取り消し、それにより多額の加算金が県に課せられたことになります。知事がこれまで説明してこられたように、主体的、能動的に行ってきたのは組合だということであれば、国は補助金適正法第17条2項を適用して補助金交付決定を取り消すことのほうが私には順当と思えるのですが、知事の御見解を伺います。

      

◎知事(阿部守一)

 

 私どもの説明を十分御理解いただけてないのかもしれませんけれども、今回の取り消しは、適化法17条1項の適用分と、それから17条2項の適用分と両方あるわけでございます。しかしながら、全体を通じて、国の考え方は、今回大北森林組合以外もありますが、大北森林組合などの間接補助事業者が架空申請あるいは過大申請といった手続違反を行ったことにとどまらず、補助金の流用あるいは目的に沿った効果が発現されていなかったということを不適正受給として交付決定を取り消すというものでありまして、要は、大北森林組合についてのみ申し上げれば、大北森林組合側の問題が交付決定全体にかかっていると、これが国の考え方でございます。

 以上です。

      

◆小林東一郎

 

 組合が悪いということで17条2項の規定が適用になったものもあるという説明でありましたけれども、89%が1項の規定により補助金の交付決定が取り消されているんです。圧倒的に県の指導監督、その辺のところの不備を言われたわけであります。もう一度お聞きいたしますが、事業完了後に事業主体が補助金申請を行う実績補助方式であることから、事業実績がないのに補助申請を認めたこと自体を国は架空申請と判断をしているのではないでしょうか。

 去る9月14日と15日、補助金適正化法違反に問われている組合と同法違反及び詐欺罪に問われている組合の元専務理事の裁判で、県職員の証人尋問が行われました。そこでは、職員の規律が疑われる証言が続出。県は、公判での職員の証言と検証委員会がまとめた報告書の食い違いが生じたため聞き取り調査を行うとしていますが、何が食い違っているのか、明確にお示しください。

 知事は、県がこれまでに把握してきた事実と異なるものが明らかになれば再調査をすると言われてきました。一方、国は指導監督に不備ありとして多額の加算金を県に課し、県はそれを支払っています。それであるなら、国が県に突きつけた観点に立ち、再調査をすべきではないでしょうか。

      

◎知事(阿部守一)

 

 お答えします。

 小林東一郎議員のお尋ね、私どもは県の義務違反はあったということは申し上げているわけでありますので、県が全くそういうことに関与してないということで申し上げているわけではないということはぜひ御理解いただきたいと思います。全体的に捉えていただければというふうに思います。

 お答え申し上げます。まず聞き取り調査についてでございます。

 公判における県職員の証言につきましては、詳細に整理をした上で、再調査の必要性があれば再度確認を行っていくということで考えているわけでありまして、現在、整理を行っているところでございます。一連の公判が続いている状況でもございますし、公判で出た内容についてしっかりと整理をしていく必要があるというふうに思います。その上で、再度聞き取りを行う必要性があるかということも含めて判断をしていこうというものでございます。ですから、今の時点で直ちに大きな食い違いが起きているという認識ではありません。

 それから、再調査についてでありますけれども、国と県との関係について、加算金は今まで国の調査結果を踏まえた国の見解により課されたというものでありまして、今までの県の説明と国の見解は乖離しているものではないというふうに、これは先ほど御答弁申し上げたとおりであります。したがって、県が加算金を支払ったということをもって再調査の必要性があるというふうには判断しておりません。加算金については、県の義務違反ということで、6月の提案説明でも既に陳謝させていただいているところでございます。

 以上です。

      

◆小林東一郎

 

 架空申請についての国の判断、これを知事からきちんと御説明をいただきたいというふうに思います。

 それから、今回の補助金不正、これは不正の風船ということに例えますと、最初に風船に息を吹き込んだのは県です。それをその後一生懸命息を吹き込んで大きく大きく膨らませたのは、これは組合だと思います。しかし、県はその後、この膨らんだ風船を縮める努力は全くしてまいりませんでした。その末、14億円超という大きさにまで膨らんでついに破裂をしたというのが今回の事件の真相だろうというふうに私は思っております。簡単にまとめると、未完了工事の申請があるだろう、あるいは未完了でも認めろ、ところが必要な調査は実施せず、いつか組合が工事をすると思っていた。組合を信用し過ぎたということになるのだと思います。いわば帳尻さえ合わせればいいという考え方で、結果的には帳尻すら合わなかったということであります。

 知事は、昨日、答弁の中で、県民に県の取り組みが十分に伝えられていないかもしれない、そういうことを受けて、検証委員会が説明する機会を設けるということがけさの新聞で報道されております。果たして県の検証委員会が県民に説明をして、それで県民が納得をするでしょうか。むしろ議会の代表も参加して検証内容の論点整理を行ってはいかがでしょうか。

 北安曇地方事務所内では、大北森林組合問題について共有がされておらず、地方事務所長や副所長はいわば蚊帳の外であったと言われています。所長の職責が問われるのですが、現地機関の再編に当たって、不正防止や不正が起きたとしても発見しやすい組織づくりは組織風土の改革でとの答弁が荒井議員の質問にありました。それでは、地域振興局への組織がえによって、それらの課題は解決されるのでしょうか。

      

◎知事(阿部守一)

 

 今回の大北森林組合の問題については、再三申し上げてきておりますように、県の職員の義務違反等があった極めてゆゆしき問題だということは、これは再三申し上げてきているわけでありまして、そうしたことを県が認めていないかのような御質問をされるのは、私は、今までの答弁を聞いていただけてないのかなというふうにいささか残念に思っているわけであります。

 私は、この問題の端緒を聞いて以来、しっかりと事実関係を確認して、処分するべきものは処分する、告発するべきものは告発する、そして国に対して返還するべきものは返還する、そして補助金の返還請求や損害賠償請求を行うものは行うということで取り組んできたわけであります。

 ですから、昨日も申し上げましたけれども、私どもの取り組みについて、ぜひ全体像を御確認をいただいて、確かにこの問題は県民感情からして許しがたい職員の対応であった、あるいは大北森林組合の許しがたい行いだということはあるというふうに思います。しかしながら、そうしたものを一つ一つ着実に対応して改善をしていくということが我々に課された責任だということでしっかりと取り組んでいるところでございますので、ぜひこれからもそうした目でごらんいただきたいと思いますし、もちろん我々の対応に問題があれば、その都度御指摘いただきたいというふうに思いますけれども、そもそも何もやっていないかのようなことではないということはぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。

 国の認識がどうなのかという御質問がありました。私どもは林野庁から通知を受けておりまして、交付決定取り消しの考え方については先ほども申し上げましたけれども、大北森林組合などの間接補助事業者が架空申請、あるいは過大申請、または要件不適合による申請など手続違反を行ったことにとどまらず、補助金を流用し、または補助金の目的に沿った効果が発現されなかったということを不適正受給として当該補助金の交付決定を取り消すということを言っているわけであります。そういう意味で、間接補助事業者、今回の場合でいえば大北森林組合のこうした事象、こうした状況を判断した上で取り消したというのが全体にかかっているわけであります。その上で、私ども長野県の関与が明らかなものについては、先ほどの17条1項での交付決定取り消し、その他のものについては2項で取り消しという形になっているわけでございます。

 次の質問は、組織との関係でございますけれども、私は、全職員がコンプライアンスに対する意識をしっかりと高めていくということが大変重要だというふうに思っています。これは、いかなる組織形態であろうがしっかりと取り組んでいくべきものというふうに思っています。一人一人の職員が、自分ごととして今回の問題を捉えて、組織風土の改革に取り組んでいくように全庁を挙げてしっかりと取り組んでいきたいというふうに考えています。

 以上です。

      

◆小林東一郎

 

 議会の代表を交えての論点整理を行ってはということについてはお答えをいただいておりません。再度お答えをいただきたいと思います。

 次に、県民協働による事業改善について伺います。

 本年度の県民協働の事業改善の点検作業が9月6日と10日の2日間、12事業を対象に実施されました。学生が点検者として参加するという新たな取り組みもされましたが、参加した学生は、点検は難しかった、学生に参加を呼びかけた県短期大学の准教授は、県事業についての理解を事前に深めておかなければ意見をつけることは難しいとし、県民協働は行政のポーズではないかとの疑問を示したと報道されています。傍聴者も少なく、県民の関心を集めているとは言いがたい状況にあります。

 そこで知事に伺います。

 点検のコーディネーターを務めた土屋龍一郎氏が、強化・拡大が大半で、事業改善の位置づけが不明確と指摘しているとおり、点検が実施された12事業中11事業で強化・拡大の判定が最多となりました。私は毎年傍聴を続けてまいりましたが、県民協働の名をかりた県事業の応援作業になってしまっている感が否めません。点検結果も含め、そもそもの知事の意図に即して点検が行われているとお考えですか。

 総務部長に2点お聞きします。

 一つに、点検者から、点検の観点がよくわからない事業がある。国の補助による事業を点検する意味があるのかという疑問が出されています。事業選定の課題については、私もこれまで何回か指摘してまいりましたし、土屋氏も、選定段階から有識者を交え、点検で何を目指すのかあらかじめ考えるべきだとしています。事業選定に課題ありとの御認識はお持ちでしょうか。

 二つに、前年度までの点検で強化・拡大の判定がなされたにもかかわらず、後年度において事業費の増加や新たな取り組みの追加など、県民の目に見える改善がなされているとは思えない事業が存在します。また、点検者からつけられた意見に沿った改善の方向が事業改善シートから読み取れないものもあります。強化・拡大の方向が示された事業では、例えば国の補助に県独自の上乗せを実施するなど、明確な改善基準を定めるべきではありませんか。

      

◎知事(阿部守一)

 

 まず、県議会を交えてのということでございますけれども、私は、執行部としてまずは責任を持ってこの問題に向き合って対応して、県民にも説明責任を果たしていくということが重要だというふうに思います。議会のお考えは、もし議会総体としてあれば承りますけれども、私は知事としてやはり責任を持ってまずは対応していきたいというふうに思っております。

 それから、事業改善についてでございます。今年度の実施についてどう受けとめているかという御質問でございます。

 本年度の事業改善、毎年少しずつ工夫をしてきておりますけれども、点検者として今回学生にも参加をいただいて、幅広い世代からの意見を聴取する仕組みといたしております。県民協働による事業改善は、政策評価制度のツールとして行っておりますけれども、担当事業課における資料の作成や事前説明に始まって、当日の議論、そしてその結果に至るまでの全体のプロセスを通じて、職員みずからが担当する事業を見詰め直すということ、あるいは県民の皆様との議論の中で新たな発見や反省に気づきを得ると、こういうことも拡大とか縮小とか、そういうこととあわせて重要なことだというふうに思っております。

 例えば、児童クラブの支援員の研修についてテーマになりました。私ども行政は、ともすると単なる数字で把握してしまいがちでありますけれども、今回のやりとりの中で、学生から、支援員は人の子供の命を預かる仕事だと。質の向上が図れるよう、研修の充実を検討してはどうかと。人の命を預かる職務に対してもっと真摯に向き合うべきだという御指摘がありました。私どもの職員からは、日ごろ我々の行政内部ではなかなか出ないようなこうした意見にはっとしたということも聞いております。

 御指摘のように、点検結果は強化・拡大ということが最多の結果になっておりますけれども、縮小あるいは事業移管等、点検者からは多様な御意見も出されています。こうした御意見も分析、検討することにより、事業内容に磨きをかけていきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

      

◎総務部長(小林透)

 

 御質問に順次お答えをいたします。

 まず、事業選定に対する課題認識についてでございますが、現行制度は、平成24年度に議会の研究会において御議論いただく中で、信州型事業仕分けの基本的な考え方を維持しながら、しあわせ信州創造プランの効果的な推進に向け、事業レベルで改善を図ることを目的に実施しているものでございます。この事業も5年目を迎え、定着しつつあるものと考えてございますが、事業の選定を初めその手法につきましては、議員御指摘のとおり研究すべき部分もあると感じているところでございます。

 現行制度では、点検者からの多様な意見を踏まえ、次年度以降の事業内容を検討していくものでございますが、例えば財源が県単独の事業や事業執行の手法において裁量が大きい事業を選定することを考えてはどうかなど、県民からの意見もちょうだいしてございます。議員の御指摘あるいはこうした県民の皆様からちょうだいした意見は真摯に受けとめ、今後の事業点検に生かしてまいりたいと考えているところでございます。

 次に、明確な改善基準の設定についてでございます。

 県民協働の事業改善の大きな目的は、県民視点の意見を踏まえ、事業をより効果的なものに改善することであり、点検の中で出された意見を最大限尊重し、次年度以降の事業構築に生かすことが重要と考えてございます。他方で、強化・拡大の方向性が示されたとしても、改善項目に関する意見はさまざまでございまして、例えば広報の手法ですとか、他の主体との連携、あるいは成果をチェックする仕組みなど、予算を増額すれば解決できるというものでないものも含まれてございます。

 点検結果と対応状況については、予算発表に合わせて公表しており、いずれの事業も何らかの対応を行っているところではございますが、これに加えて、今後、後年度においても改善結果を継続的に示すことも考えられるところでございますので、こうした点も検討してまいりたいと考えているところでございます。

 以上であります。

      

◆小林東一郎

 

 論点整理ですけれども、知事から議会の総意として示されればという答弁がございました。では、議会意思が示されたということであれば論点整理をともにする用意があるということでよろしいでしょうか。

 点検結果等から、私はこの制度自体の行き詰まりを指摘せざるを得ません。また、対象とすべき県事業も少なくなってきているとの声も聞こえてきます。当事者との意見交換によって事業の最適化を図る仕組みを取り入れるなどの改革抜きにこの制度の継続はあり得ないと考えますが、知事の御見解を伺います。

 次に、定時制、通信制高校教育の充実について、教育長に伺います。

 定時制、通信制高校は、働きながら学ぶ高校生の学びを保障する場であるとともに、義務教育段階でいじめ、不登校を経験するなどさまざまな困難を抱える生徒や、人生の目標を再確認して学び直しをする生徒の自己再生の場ともなっています。このような傾向から、近年は在学中に就労体験を通して自立の道を模索する取り組みの重要性がより高まってきています。このような定時制、通信制高校の現状をどのように捉えておられますか。また、いかに今後の充実を図られるお考えですか。

 飯田OIDE長姫高校では、同校の定時制教育振興会が主体となって、昨年度からいわゆるジョブチャレンジの取り組みが始まっています。社会とつながることに困難のある生徒を作業体験に参加させることで将来の就労につなげようとするものですが、体験の場の拡大や人間関係をつくることの苦手な生徒のために、ソーシャルスキルトレーニングの必要性など、課題も見えてきていることから、生徒の自立に向けた教育振興会独自の取り組みを支援するモデル事業の創設をお願いしたいのですが、御見解をお聞きします。

      

◎知事(阿部守一)

 

 重ねて御質問いただきました。

 今回の大北森林組合の問題は、私どもも精緻に検証して、第三者委員会にも検証していただいて、そして、昨日も御答弁したように、これまでの取り組みももう1回しっかりと精査をさせていただいた上で、県民の皆様方に第三者の皆様方からも説明をしていただくようにしていきたいというふうに思っているところでございます。そういう意味で、基本的にはこれは私どもが責任を持って行うべきものというふうに考えているところでございます。

 それから、県民協働による事業改善、この制度については、小林議員は応援をしていただいているスタンスで御質問いただけているんじゃないかというふうに思っておりますけれども、当事者との意見交換、こうしたことについては、私も場合によっては必要性があるんじゃないかというふうに思っております。特に、委託事業、あるいは事業主体が市町村とかNPO、こうした場合、実際に事業を行っていただいた当事者の方の意見というのは、我々が事業を改めていく上で非常に重要な視点であるということが期待できます。

 とかく事業仕分け的な手法でコストカットのためのツールというふうに見られがちでありますけれども、やはり事業の目的と手段の関係をしっかり見直し、また効果的な事業執行のあり方、あるいは行政経営を目指していく事業最適化のツールとしてできるだけ生かしていけるように工夫をしていかなければいけないというふうに思います。この県民協働による事業改善自身、常に見直し、よりよいものにしていくということが重要であります。多くの皆様方の声を真摯に受けとめて、改善に向けて取り組んでいきたいと考えております。

 以上です。

      

◎教育長(原山隆一)

 

 定時制、通信制高校教育の現状の捉え方と今後の充実についてのお尋ねでございます。

 高等学校の定時制、通信制教育は、勤労青少年に対して教育の機会を提供してきたところでございますが、社会の変化に伴い、現在ではさまざまな困難を抱えた生徒、例えば不登校経験者や特別な支援を要する生徒、学校に対して不適応を起こした生徒などが多く在籍するようになってきております。

 こうした状況を踏まえますと、定時制、通信制への入学を機に、自分らしさを取り戻し、社会に適応し、自立できるようにすることなど、多様なニーズに対応する教育の場としての機能を充実させていくことが重要だというふうに捉えております。そのため、各高校では、一人一人に寄り添い、基礎的、基本的学力の定着を図る授業に取り組んだり、コミュニケーション能力を固めるソーシャルスキルトレーニング、自己の可能性や適性について自覚を深めるキャリアカウンセリングなどを実施しておりまして、今後もこうした取り組みをさらに推進することで、定時制、通信制教育の充実に努めてまいりたいというふうに考えております。

 二つ目に、教育振興会独自の取り組みを支援するモデル事業の創設についての御提案でございますが、今御答弁したとおり、各高校では就業支援やソーシャルスキルトレーニングに取り組んでいるところでございますが、その推進に当たっては、各高校の教育振興会がそれぞれにお持ちの人的資源等を生かした御支援をいただいているというふうに考えております。御紹介のありました飯田OIDE長姫高校の定時制では、高校が行うキャリア教育に対して、振興会がその人脈等を生かして生徒の社会的な自立に向けた就業へのチャレンジを御支援をいただく仕組みというふうになっているところでございます。

 御提案でございますけれども、各高校が今後生徒の人間関係力や就労への意欲を高める取り組みを充実することが先決でありまして、それに対して教育振興会から御支援をしていただくことが基本であるというふうに考えております。

      

◆小林東一郎

 

 10月22日に箕輪町文化センターにおいて、定時制、通信制に学ぶ生徒の生活体験発表大会が開催されます。ぜひ教育長には足を運んでいただいて、生徒の発表をお聞きいただきたいというふうに思います。

 以上、それをお願いいたしまして、私の質問といたします。