平成28年9月定例県議会 発言内容(荒井武志議員)


◆荒井武志

   

 初めに、県の現地機関の実施案についてであります。

 このことにつきましては、阿部知事が県行政機構審議会に対し、昨年6月8日、現地機関の組織体制を中心とした県の行政機構のあり方について諮問したことに始まりました。諮問の一文には、「地域が抱える様々な課題への主体的かつ総合的な取組や、県土が広く、市町村数や小規模町村が多いという本県の特徴を踏まえた効果的な市町村支援や住民の利便性への配慮などがこれまで以上に求められている」とする一方、「限られた財源の中で、時代の変化に対応し、必要な機能を発揮するため、現地機関の組織の効率化を図っていくことも重要な課題」と現状を踏まえた今後のあり方を述べておりました。

 その後、1年余りをかけて8回開催した審議会は、去る9月5日、諮問に対する答申を行いました。現地機関の見直しでは、「現場の最前線にあって、現場で生じている課題を発見するとともに、県民のニーズを的確に把握し、スピード感を持って主体的・積極的に課題解決に当たることができるよう、現在の地方事務所に代え、新たな県の総合現地機関として、機能や権限を強化した「地域振興局(仮称)」を設置することが適当です。」とすることに加え、「保健福祉事務所や建設事務所については、それぞれの専門性の発揮や、危機管理対応等での迅速性を考慮し、現行どおり単独の現地機関として存続させることが適当です。」と明示されていることから、地域や現場重視の姿勢がうかがい知れるところであります。

 そして、9月15日には、早速、県行政機構審議会の答申をベースとする来年4月施行に向けた現地機関の見直しに係る県実施案が公表されました。この件につきましては、昨年11月定例会において一般質問しておりますけれども、今般具体的な実施案が示されましたので、改めてお聞きしていきたいと思います。

 初めに、知事に伺います。

 このたび、県行政機構審議会から答申があり、早速県実施案をまとめ、公表されましたが、諮問当時の決意や思いを踏まえ、現在の所感をお聞かせください。

 次に、現在の地方事務所10所を名称変更し地域振興局を設置することについて、単に名称変更するともとれてしまう部分も感じられますが、これまでとは違うどのようなところに優位性が出てくるのかお答えください。

 三つに、「今回の見直しは、地域の課題を地域で解決するための第一歩」と明記されていますが、第二歩、第三歩をどのように描き、取り組んでいこうとしているのでしょうか。

 以上3点、知事にお尋ねいたします。

 

◎知事(阿部守一)

 

 現地機関の見直しに係る荒井議員の御質問に、3点お答えを申し上げたいと思います。

 まず、諮問から今回の実施案策定に至る思い、所感についてということでございます。

 これまで、県実施案を取りまとめるまでの過程におきましては、合同庁舎で行政機構審議会を開催したり、あるいは私や副知事も現場に出向いて現地機関に勤務する職員と対話を行ったり、あるいは県の現地機関と身近で接していただいております市町村の皆様方に対するアンケートの実施等、市町村あるいは現場の職員の声をできるだけ反映しようということで、丁寧に取り組んでまいりました。

 職員との討論、対話の中では、三つ選択肢を参考までに示して議論をしましたが、例えば、そのうちの一つは、地方事務所、保健福祉事務所、建設事務所の3所を集約する案を提示をいたしました。現場の職員の声を聞くと、やっぱり専門性とか災害時における迅速性の確保の重視との声も、私が予想した以上に現場の職員もそうした認識を持っていたわけでありますし、こうしたことも踏まえて、今回、保健福祉事務所あるいは建設事務所については現行の体制を維持するという案にしております。

 また、市町村アンケートにおきましては、地域の課題の解決に向けてもっと現地機関に権限や予算が必要だという御意見、あるいは、国であったり大学、市町村圏を超えて活動している企業、こうした人たちとの調整については、これは市町村ではなくて県の現地機関、あるいは県が積極的に対応していただきたいと。県の現地機関が一丸となって市町村と情報や問題意識を共有して取り組んでもらいたいと、そうした期待感も示されておりました。

 そういう中で、今回の実施案におきましては、現場の最前線で責任を持って主体的に地域課題に向き合う現地機関として地域振興局を新たに設置しようということにいたしたわけであります。

 今回、局長には、地域の横断的課題について複数の現地機関を統括、調整する権限であったり、あるいは、人事配置についてのこれまで以上の裁量権を付与していきたいと思っております。また、予算的な権限も強化をしていきたいと思っております。こうしたことによりまして、地域でできることは極力地域で対応してもらうという体制にしていきたいと思っております。

 今回の見直しの趣旨を徹底するためには、単に組織図をいじるということだけでは済まされないというふうに思っております。行政経営理念の中で、県民起点で真摯に行動するということを位置づけておりますが、このことを県職員一人一人が改めて認識して行動に移していくということが必要であります。そうした中で、地域の課題は地域振興局を初め現地機関がしっかりと向き合って、そうした現地機関を私や副知事、本庁の各部がしっかり支えていく、応援していく、そうした組織の関係性についても改革を図っていきたい、変更していきたいというふうに思っております。

 2点目の地域振興局の優位性についてということでございます。

 今申し上げた点とも重なる点もありますが、新しい地域振興局長については、一つは予算の権限を今まで以上に充実をしていきたいと思っております。それから、横断的な課題については、他の現地機関を局長が統括できるといったような権限も付与していきたいと思っております。さらには、局内の組織変更であったり定数増減を直接総務部に要望してもらえると、そうした人事組織上の権限も強化をしてまいりますし、何よりも、先ほど申し上げたように、私、知事、副知事に組織上は直結のポジションにしていきたいというふうに思っております。

 そういう中で、これまで以上に私や副知事と地域振興局長の意思疎通を図っていきたいというふうに思いますし、また、さまざまな権限を活用して、地域振興局長が市町村や地域の皆さんの抱えている問題を、自分の組織が持っている権能だけではなくて、横断的な課題については保健福祉事務所長や建設事務所長、そうした皆さんとも一緒になって総合的に対応していくことができる体制をつくっていきたいと思います。

 また、観光振興等長野県全体として進めなければいけない課題もありますが、例えば、同じ観光振興についても、北信地域や北安曇においてはスキー場の活性化ということが何よりも課題でありますし、また、南信地域ではリニアを活用した観光振興をどうしようかということで、同じ観光振興でも視点あるいは県のかかわり方が大分違ってまいります。そういう意味で、組織的、予算的な柔軟性を持たせていくということは、こうした地域の課題にしっかりと向き合っていく上では大変重要だというふうに思っております。

 また、先ほど申し上げましたように、今、建設部でも観光インフラの整備に力を入れてきていただいてますし、また、観光と食は密接な関係がありますが、食の関係であると、保健福祉事務所と農業改良普及センターが一緒になって取り組んでいくということも重要です。こうしたものを各現地機関が全体で力を合わせて取り組める体制にもつなげていきたいというふうに思っております。

 こうした組織面、それから私ども自体の行動の仕方の変革、こうしたものを通じて、この地域振興局が地域の皆さんにとってより有効な対応ができる組織、そして本当に期待に応えられる組織になるように取り組んでいきたいと思っております。

 それから、最後の3点目でございますが、今回第一歩と明記しているが、二歩、三歩をどうするのかということでございます。

 今回の現地機関の見直しは第一歩というふうに考えておりまして、今後、県と市町村との関係、あるいは試験研究機関のあり方など、不断の見直しが必要だと考えております。県と市町村の役割分担については、小規模町村への支援を初めとして、市町村単独では処理が難しい事務の補完のあり方、あるいは市町村で対応したほうが効果が大きいと考えられるような事務のあり方など、今後、市町村や広域連合の御意見も尊重しながら検討を深めていきたいと考えております。

 また、試験研究機関については、これは、今回の見直しにおきましても、連携担当職員を各機関に配置するとともに、主要な研究テーマを相互調整する試験研究機関の長協議会、あるいは各機関の翌年度の研究方針と主要研究テーマの方向性を明確化するための試験研究方針選定会合、こうしたものを開催して、これまで以上に横断的な連携協力を強化することにしています。

 それとあわせて、今後の課題としては、やはりイノベーション、技術革新、こうしたものが長野県の産業の発展にとっては極めて重要だと思っております。そういう意味で、試験研究機関が果たす役割は、これからの長野県の発展、特に産業振興にとっては、農業も林業もあるいはものづくりも大変重要だというふうに思っております。これは、単に現地機関の組織の問題というよりは、県民ニーズに合致する機能をどう付与するかということであるというふうに考えております。今後、県の産業政策の方向性等について、次期総合計画の策定の中で検討していきますが、それとあわせて、この試験研究機関のあり方についても、さらに検討を進めていきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

 

 

◆荒井武志

 

 今、答弁では、現場重視の姿勢というのは若干見えてきたかなとは思うのですけれども、横断的にという部分では、地域振興局長がこれからやっていくんだというようなことも少しわかりました。しかしながら、地方事務所長ではできなかったところというのがもう少し見えてないかなというふうに思うのですね。その辺をもう1回御答弁をいただければとお願いをしたいと思います。

 続いて、さきの知事議案説明では、「地域振興局長に対しては、地域の横断的な課題について複数の現地機関を統括、調整する権限や、人事配置に関するこれまで以上の裁量権を付与するとともに、主体的に活用できる予算の充実や部局を通じた予算要求の制度化により、その財政的な権限も強化する」と明らかにされましたが、地域振興局長がこれまでにも増して現地機関をどのように統括、調整していくのか。1地方事務所当たり50万円であった総合調整推進費の引き上げや元気づくり支援金をどのように充実させていこうとしているのでしょうか。

 二つに、地域の現地機関や市町村、NPO等との調整機能、局の政策形成機能を強化するため、企画振興課を新設する方向とのことですが、地域や県民意見、要望等をどのように吸い上げていくのか。県と市町村の役割分担のあり方を含め、新たな取り組み手法についてお示しください。この件につきましては、あわせて総務部長に伺います。

 次に、答申の5番目に、現地機関の見直しに当たっての留意点の項のうち、(4)では、「大北森林組合等の補助金不適正受給問題を踏まえ、今後の不正防止や、不正が起きたとしても発見しやすい組織づくりが求められます。その一環として、業務の見える化を進め、管理監督職員が部下職員の業務量や業務の進行状況を適切に把握し、コントロールする仕組みの構築や、建設的な提案も受け付ける公益通報制度の検討などが重要であるとの意見が出されました。」と明記されていますが、このことに関して、県としての検討状況及び具体的にどのような組織づくりあるいは取り組みをしていこうと考えておられますか。総務部長に伺います。

         

◎知事(阿部守一)

 

 地方事務所長ではだめなのかという御質問でございます。

 もとより、現在は、地方事務所長がいろんな取り組みをしているわけでありますので、今の体制が全く無意味だと、全く機能してないという意味ではもちろんありません。しかしながら、これからの長野県を考えていったときに、私は、まず長野県の特性というものをしっかり踏まえた組織にしていかなければいけないと思っております。

 例えば、先ほど申し上げたように、北信と南信、地域課題は全く違います。リニアの問題を北信に行って話しても、何のことですかと。飯田に行って新幹線の話をしても、何のことですかということになるわけであります。したがって、長野県は、ほかの県以上に分権型の組織をつくっていくことが役割として求められるというふうに思っています。

 今の地方事務所は、現地機関の筆頭的な立場ではありますけれども、しかしながら、組織上ワン・オブ・ゼムの扱いになっております。そういう中で、先ほど申し上げたように、横断的な課題について明確に統括できるような権限を持たせていくということとあわせて、今、率直に言って、これは私の責任でもありますが、わずかばかりの調整費プラス元気づくり支援金の配分といったようなところが予算にかかわる地方事務所長の大きな権能で、ほかの部分は縦系列で各部局が要求したものを執行するというような役割に残念ながらとどまってしまっているというのが現状であります。

 しかしながら、市町村の皆様方とお話しすると、地方の課題、特に広域的な課題については、現在の地方事務所がもっとリーダーシップを発揮してもらいたいという声が私には聞こえてまいります。恐らく、県議会の皆様方にもそうした声は聞こえてきているんじゃないかというふうに思います。そういう意味で、地域の課題についてもっと権限と責任をしっかり持って対応していくと。こうした組織をつくっていくということが、先ほど申し上げた長野県の広域で、それぞれの地域の課題に非常に大きな違いがあるという県にとっては大変不可欠だというふうに思っております。

 これまでも、さまざまな御意見を伺いながらこうした県としての実施案を取りまとめてきましたが、これは、県議会の皆様方から御意見をいただく中で、また、県民からも御意見をちょうだいする中で、しっかりとした成案を取りまとめて実行していきたいというふうに思っております。

 以上です。

 

◎総務部長(小林透)

 

 御質問に順次お答えをいたします。

 議員御質問の横断的な課題につきましては、現地機関の長で構成する地域振興会議を新たに設置し、この会議において地域振興局長が統括すべき重要課題を決定するほか、他の現地機関と情報共有の上、それぞれの現地機関が主体となり、連携協力しながら解決に当たる課題を整理することとしてございます。これにより、課題解決に向けた地域の取り組みの方向性を定め、その進捗管理をPDCAサイクルにより回してまいります。

 さらに、この会議のもと、課題に応じて、地域を管轄する現地機関の職員を兼務などにより配置する権限を局長に付与し、事業などの実施レベルの連携を進めます。

 また、議員御質問の地方事務所長総合調整推進費及び地域発元気づくり支援金につきましては、より地域が主体性を発揮し協働して地域課題に取り組めるよう、市町村の声も伺っているところでございますが、そうした声を踏まえまして、両者を地域振興局の一体的な地域予算として、平成29年度から充実を図ってまいりたいと考えているところでございます。

 次に、地域や県民要望の吸い上げ方など新たな取り組み手法についてでございますが、地域のことを地域で解決していくためには、地域の課題や県民ニーズの発見あるいは把握がきわめて重要と考えております。現在、地方事務所の地域政策課企画振興係が地域振興や市町村との関係などを主に担当してございますが、地域や県民、団体からの要望や実情を把握し、地域に必要な施策を企画、実施するためには、今の係体制では十分とは言えない状況でございます。そこで、この企画振興係の充実強化を図る形で、地域振興局に企画振興課を新設し、調整機能や政策形成機能を拡充するとともに、地域振興局長がランチミーティングやタウンミーティングのような地域住民との対話の場を設け、県民に寄り添う取り組みを積極的に行うなど、現地における広聴機能の充実も図ってまいります。

 また、県と市町村の役割分担については、先ほど知事から答弁したとおり、小規模町村への支援を初め、市町村単独では処理が難しい事務の補完のあり方や、市町村で対応したほうが効果が大きいと考えられる事務のあり方など、今後、市町村や広域連合との検討をさらに進めてまいりたいと思っております。

 次に、不正防止の取り組みについてでございますが、不正防止や、不正が起きても発見しやすい組織づくりや取り組みについては、大北森林組合等の問題において、事業実施などに当たり、上司と部下、本庁組織と現地機関との意思疎通が十分でなかったことや、日ごろからのコミュニケーションが不足する状況にあったことを踏まえて、組織風土を改革する取り組みを進めているところでございます。

 具体的には、平成28年度コンプライアンス推進取組方針に従いまして、各部局等にコンプライアンス委員会を新たに設置いたしました。この委員会では、問題事案の再発防止策を検討する中で、例えば、申請があった段階で作成した受付簿を上司が常に進捗を管理することなどにより、職員同士の対話や討議などを通じて、さまざまな課題の解決に向けて検討をしてございます。また、広聴通報機能につきましては、内部通報という側面のみならず、職員が誰でもどこからでも活用しやすい窓口を設置するとともに、前向きで建設的な提案を受け付けるような幅広い制度となるよう検討を進めまして、風通しのよい組織づくりを目指して、今後具体化を図ってまいりたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

 

◆荒井武志

 

 1地方事務所当たり50万円と元気づくり支援金の関係、これをセットで新しい局長がやっていくと、こういう話をお聞きしました。予算につきましては、確保充実の観点でぜひお願いをしたいと思うところでございます。

 少子高齢社会が加速度的に進行していく状況の中で、地方創生の取り組みや地域の活性化が強く求められております。答申では、県と市町村の役割分担について、再検証の必要性を指摘するにとめているわけでありますが、市町村や広域連合等との連絡会議を定期的に開催するなど密接な関係づくりを一層進め、県内77市町村がひとしく発展できるよう取り組みの強化を要望し、次の質問に移ります。

 次に、子供の貧困対策についてであります。

 全国の子供の貧困率は、今から4年前の厚生労働省国民生活基礎調査によると、2012年時点で16.3%、その後も年々上昇傾向と伺っており、長野県でも約1割の子供たちが生活保護世帯等を対象とした就学援助制度の対象で、その割合は年々増加している状況のようであります。

 このような中、県は昨年、児童扶養手当の受給者であるひとり親家庭への実態調査を実施、回収率は49.8%、同時に子どもの声アンケートも実施し、4,754人から回答をいただいたと承知しております。

 とりわけ、子どもの声の自由記入からは、サッカー選手になりたいという小学4年生のお子さんは、「僕はサッカーが好きでクラブに入りたいが、母子家庭で生活するのに大変でお金が無いので入りたくても入れません。会費もユニフォームも無料のところがあればいいなと思います」、オーケストラで活躍するのが夢とする中学1年生は、「お金が無いから将来の夢はかなわない。お母さんが入院した時、家にずっと一人でとても困ったけど誰も助けてくれなかった。もし、お母さんが死んでしまったら高校にも行けないと思う。お父さんは手紙を出しても何もしてくれないし、返事もない。お母さんは仕事をしても、私の学校の用事で会社を休むと、嫌な顔をされてしまい、すぐに会社をやめてしまう。かわいそうだから学校に来なくてもいいように、参観日とか役員を無くしてほしい」など、本当に切実な声が寄せられています。

 これらを受け、県は本年3月、あらゆる手段を講じて子供の貧困対策に取り組むための第一歩として、平成28年、29年度の2年間を対象とする長野県子どもの貧困対策推進計画を策定されました。

 そこで、以下、県民文化部長に伺います。

 一つに、長野県子どもの貧困対策推進計画に示す「第4章 基本目標に向けた「重点的な取組」」への対応状況と今後の課題にはどのようなものがあるのでしょうか。

 二つに、貧困の影響を受けているのは、子供だけではなく、その親にも相当の負の影響があるのではないでしょうか。家庭全体へのアプローチが重要であると思いますが、このことへの対応策について伺います。

 三つに、生活現場に最も近い行政体は市町村であります。これら市町村との連携はどのようにして行われていくのでしょうか。

 四つに、オール信州で子供や家庭を支える運動を展開するための長野県将来世代応援県民会議(仮称)設置への取り組み状況はいかがですか。平成20年に設置されているながの子ども・子育て応援県民会議との関係を含め、お答えください。

 若干子供の貧困対策からずれてしまうことかと思いますが、お伺いいたします。

 子供子育て支援施策のうち、妊娠、出産、子育てへの支援に関しまして、国は、子育て世代包括支援センターを全国展開していく方向で、平成27年度までに全国で150市町村が立ち上げられたとお聞きしております。長野県内の設置状況と、おおむね5年後までに全国展開を目指すとしている国の方針に対する今後の取り組み方針を健康福祉部長に伺います。

 

◎県民文化部長(青木弘)

 

 子供の貧困対策について順次お答えを申し上げます。

 まず、重点的な取り組みへの対応状況と今後の課題についてのお尋ねでございますが、子供の貧困対策につきましては、三つの重点的な取り組みを掲げてございます。

 まず、その一つ目の第1の取り組みでございますが、「長野県の地域資源を活用した家庭養育の補完の仕組みづくり」につきましては、主に子供の居場所づくりと家庭的養護の推進を掲げてございます。このうち、子供の居場所づくりでは、今年度、モデル地区2カ所で、信州こどもカフェと名づけまして、学習支援、食事提供、相談対応等、一場所多役の居場所づくりを行っているところでございます。また、家庭的養護の推進では、本年4月に児童相談所広域支援センターを中央児童相談所に設置し、里親委託の推進の取り組みを強化したところでございます。

 次に、第2の取り組みでございます「切れ目ない教育費の負担軽減等による子どもの希望を実現できる学びの支援」につきましては、今年度から、給付型奨学金であります県内大学就学のための奨学金を創設したほか、児童養護施設退所者支援として、大学等へ進学する者の家賃相当額、生活費等に対する返還免除型貸付制度を創設したところでございます。

 第3の取り組みの「早期の課題解決に向けたアウトリーチ型支援による要支援家庭の孤立化防止」につきましては、今年度、教育委員会におきまして、スクールソーシャルワーカーを大幅に拡充するとともに、地域全体で子供を守るため、市町村が設置します要保護児童対策地域協議会において、関係機関との連携のもと、要支援家庭の早期発見、早期対応に努めているところでございます。

 これら取り組みにおける主な課題といたしましては、信州こどもカフェにつきましては、子供に対する食事提供や相談活動を行っている県内各地の団体や、そうした活動に参加したいという意欲を持つ個人の参加を得つつ、市町村と連携しながら、対象の子供たちに着実に支援を届けられるよう、本年度着手いたしましたこの取り組みをいかに普及、定着させていくかということがございます。そのため、信州こどもカフェの運営の担い手をマッチングするための仕組みの構築、いわゆるプラットフォームづくりを通じまして、今後、官民連携しての全県への普及を図ってまいりたいと考えております。

 また、家庭的養護をさらに推進することが必要でございますので、母子保健の相談窓口や児童相談所、医療機関などの連携を拡大するとともに、児童相談所の体制を強化し、里親委託の一層の推進や児童虐待相談の増加へ的確に対応してまいりたいということを考えてございます。

 続きまして、家庭全体へのアプローチについてのお尋ねでございます。

 議員御指摘のとおり、子供の貧困は、その家庭の抱えるさまざまな課題から生じてございまして、家族全体へのアプローチが重要であると認識しております。その意味で、先ほど申し上げました要支援家庭の孤立化防止が家庭全体へのアプローチにつながると考えてございます。市町村の保健師、民生児童委員、スクールソーシャルワーカーなどが要支援家庭の課題を早期に発見し、その家族に寄り添い、必要な支援につなげる取り組みの充実が必要と考えているところでございます。

 このため、市町村が設置いたします要保護児童対策地域協議会において、県は、技術的支援、助言を行うなど、積極的なかかわりを通じまして、その活性化が図られるよう取り組んでまいりたいと考えております。

 それから、市町村との連携についてでございます。

 御指摘のとおり、子供の貧困対策を進める上で、市町村との連携協働は大変重要となってまいります。例えば、本年6月に公布されました改正児童福祉法では、市町村の体制強化、特に、さきに申し上げております要保護児童対策地域協議会の機能強化が求められております。それに当たりましては、とりわけ、小規模町村の児童家庭相談体制の充実には、児童相談所の技術的援助を行うといった連携を行うことが求められているところでございます。

 また、平成26年12月に策定いたしました長野県子育て支援戦略では、市町村との協議の場を活用し、連携して取り組みを進めてまいりました。これまで、ひとり親家庭等に対する生活就労支援や、学習がおくれがちな中学生を対象とした無料の学習サポート等の充実に取り組んでおりますが、いずれも、市町村との連携をもとに事業を推進しているところでございます。今後も、こうした協議の場などを活用し、市町村と十分に連携を図りながら子供の貧困対策に取り組んでまいりたいと考えております。

 最後に、長野県将来世代応援県民会議(仮称)についてでございます。

 本年6月、ながの子ども・子育て応援県民会議の部会を再編し、子どもの貧困対策部会を設置しまして、県民総ぐるみで子供の貧困対策を考える取り組みをスタートさせたところでございます。今後、これらの組織を発展させる中で、来年6月を目途に長野県将来世代応援県民会議(仮称)を立ち上げてまいりたいと考えております。

 新たな県民会議では、地域でさまざまな活動に取り組むNPO等の民間団体との連携をさらに充実させまして、本県の未来を担う子供たちが夢と希望を持って自立していくために、オール信州で子供とその家族を支える運動が展開できるよう努めてまいりたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

 

◎健康福祉部長(山本英紀)

 

 子育て世代包括支援センターについてのお尋ねでございます。

 長野県内の設置状況につきましては、昨年度は、国の支援事業を活用して8市町村が子育て世代包括支援センターを実施しており、今年度は、新たに9市町村が実施を予定しておりますので、合わせて17市町村においてこの包括支援センター事業が実施される見込みであります。

 国では、妊娠期から子育て期に至るまで、各機関の連携、情報共有のもとに切れ目のない支援を実施するため、子育て世代包括支援センターを平成32年度末までに全国展開することを目指していくとしており、母子保健法に同センターの設置根拠を設けて、市町村は同センターを設置するよう努めなければならないこととなりました。

 県では、既に取り組んでいる市町村の状況や成果を情報共有することで、県内市町村の設置を促進するとともに、昨年4月に設置した信州母子保健推進センターにおいて、市町村保健師のバックアップ体制を構築することなどにより、市町村における切れ目のない支援体制の充実を支援してまいります。

 以上でございます。

  

◆荒井武志

 

 お答えをいただきました。

 子供の貧困対策につきましては、幅広い行政分野での取り組み、連携が重要不可欠であると考えます。母子保健を初め、保育や教育、児童館や公園のありよう、若者、青少年対策、生活困窮者支援や生活保護などの福祉対策、税金や社会保険料対応、住宅対策や治安関係などなど、子供の貧困にかかわる問題意識が行政のさまざまな分野に浸透し、共有されていかなければならないと思います。

 市町村との連携は当然でありますが、県機関各部署相互の連携がしっかり図られ、子供の貧困対策の実効が高まることを強く期待し、一切の質問を終わります。