平成28年 6月定例県議会 発言内容(埋橋茂人議員)


◆埋橋茂人

   

 おはようございます。

 まず、私は三つの質問を申し上げたいというふうに思います。

 最初に、保育士、介護福祉士の確保対策について伺います。

 この問題につきましては、政府が一億総活躍社会の重要課題として取り上げ、また、長野県人口定着・確かな暮らし実現総合戦略、いわゆる信州創生戦略でも大きな柱として位置づけていますが、実効性を確保するために県としてどのような施策を講じていくか。お考えを伺います。

 まず知事に、信州創生戦略を実践していくに当たって、この重要課題に長野県としてどう取り組むお考えか、基本的なところをお聞かせいただきたいと思います。

 また、子育て支援税の導入も検討課題として盛られておりますが、消費税の引き上げ再延期で社会保障にかかわる安定財源の確保が危ぶまれる中、先行導入を考えているのか。伺います。

 次いで、その中で欠かせない保育士、介護福祉士の確保対策について、県民文化部長及び健康福祉部長にお答えを願います。4点ございます。

 保育士、介護福祉士の県内養成機関の定員とその充足状況、卒業後の県内就職率を説明をいただきたい。

 二つ目として、定員充足率が一定基準以下の場合、国の補助金が削減されるとのことであり、保育士、介護福祉士の確保のため、養成機関への県の支援が必要と考えるが、お考えを伺います。

 三つ目として、保育士、介護福祉士の有資格者で従事していない方の復帰対策とその実績について伺います。

 4番目、保育士、介護福祉士の待遇改善策について、国の施策だけですと大都市圏との格差は依然として解消しません。人材流出が懸念されますが、県としての対策をどうお考えか。伺います。

 

◎知事(阿部守一)

 

 保育士、介護福祉士の確保対策についての御質問にお答え申し上げます。

 子育てしやすい環境をつくる、また年をとっても安心して暮らせる長野県をつくる、そうしたことを進めていく上では、そうした取り組みを支えていただく人材の確保、御質問にありましたように、保育士、介護福祉士の人材確保は県としても極めて重要な課題だというふうに考えております。

 まず、保育士につきましては、特に年度途中の3歳未満児の受け入れに対応するための保育士の確保が当面喫緊の課題であるというふうに考えております。また、中長期的に見た場合には、3歳未満児の保育でありますとか、あるいは病児保育等、こうした保育の仕組みをさらに充実していくために保育士を確保していく、あるいは人材を育てていく、こうしたことが重要だと考えております。

 県としては、年度途中の乳児受け入れのための助成を民間保育所に対して行わせていただいておりますし、また、潜在保育士の皆様方の復職支援、さらには修学資金貸付事業等を通じた保育士を目指す学生の増加等さまざまな取り組みを行ってきているところでございます。また、保育士が定着していただく上では、給与等抜本的に処遇改善を進めていくということも大変重要であります。こうした点については、国に対して引き続き強く要請をしてまいります。

 また、介護の分野では、増大する介護需要に対応していくための人材確保も喫緊の課題であります。2025年には4.6万人の介護職員の皆さんが必要であるというふうに推計をされております。特段の対策がなければ、大変多くの人材不足が見込まれているところでございます。こうしたことから、多様な方々、多様な人材にまず介護福祉士になっていただけるような取り組みを進めていくと同時に、職場に定着していただく、あるいは離職を防止していく、こうしたことを進めていきたいと考えております。

 まず、入職促進、介護福祉士になっていただくという観点で申し上げれば、誰もが介護の仕事につきやすい環境を整えるという観点で、求職される方、職を求められる方と介護事業所のマッチングを支援しております。また、資格がない方には、介護の資格取得費用の全額助成というようなことも行って対応しているところでございます。

 また、職場の定着、離職の防止につきましては、業務改善を促し、また介護職員の負担軽減を図るといったような観点で、経営の専門家を派遣させていただく事業でありますとか、また子育て世代の介護職員の皆様方にも働き続けていただけるような環境を整える上で、施設内保育所の運営支援等を新たに創設して、職場への定着、離職防止に努めているところでございます。

 こうしたさまざまな取り組みを通じて、保育士、介護福祉士の一層の確保に努力をしていきたいと考えております。

 また、子育て支援税についてでございますが、安心して子育てをすることができる環境整備は大変重要でございますし、そのための財政的な裏打ち、こうしたこともしっかり考えていくことが重要というふうに思っております。しかしながら、税の導入ということは、県民の皆様方に御負担をいただくことにつながるわけでございますので、幅広い県民の皆様方の御理解が不可欠というふうに考えております。そうしたことから、まずは庁内におきまして、今後取り組むべき子育て支援策とその財源のあり方について慎重に検討していきたいと考えております。

 以上でございます。

 

◎県民文化部長(青木弘)

 

 私には4点の御質問を受けましたので、それぞれ順次お答え申し上げたいと思います。

 まず、養成校の充足率等でございますが、県内の保育士養成施設は8校ございますが、平成27年4月1日現在の学生定員1,380名に対しまして1,143名が在籍しておりまして、充足率は82.8%となってございます。

 就職状況につきましては、長野市所管の養成施設2校がございますが、その2校を除きました6校について把握してございまして、平成26年度の状態で申し上げますと、保育士有資格者として卒業した407名のうち、県内に就職した方は346名となっておりまして、県内就職率は85%でございます。

 養成校への支援についてでございます。

 本年度、学費や入学金、入学準備金等の修学資金の返還免除型貸付制度の創設を予定してございまして、これによりまして保育士養成校の学生の負担軽減を図りますとともに、学生の確保、定員充足率の向上につなげてまいりたいと考えております。

 また、「信州で学ぼう!魅力発信事業」等によりまして、この養成機関でございます短期大学、専門学校で学ぶ魅力を発信する支援などをしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

 それから、保育士の復帰対策でございます。

 保育士資格を有しながらも保育士として勤務していない、いわゆる潜在保育士の復帰対策につきましては、昨年度、潜在保育士掘り起し事業を実施したところでございます。具体的には、長野県での保育士登録者約2万5,000人に対しまして、就業支援に向けた実態調査を実施したところでございます。6,784人の方から回答がございました。この調査の回答にあわせまして、就業意欲のある潜在保育士から求職票の提出を受けまして、649人を福祉人材センターに登録をいたしました。こうしたことで市町村等の保育士確保の支援を行いましたほか、就職支援講習会を県下10会場で実施し、212人に受講をいただいたところでございます。

 また、今年度復帰する潜在保育士の方に対する資金の返還免除型貸付制度の創設を予定してございまして、この実態調査により把握した潜在保育士に対しまして情報提供をしていくなど、具体的な復職につなげてまいりたいというふうに考えております。

 次に、保育士の処遇改善についてでございます。

 公立保育所の運営費は一般財源化されておりますし、民間保育所につきましては、全国一律の制度により国、県、市町村の財政負担及び利用者負担により運営されているところでございます。保育士の給与等処遇改善に県独自に取り組むことは、財源の確保に大きな課題があると認識してございます。保育士が処遇面においても魅力が感じられる職となりますよう、給与等抜本的な処遇改善につきましては、先ほども知事から答弁いたしましたとおり、引き続き国に要望してまいりたいというふうに考えております。

 なお、人材流出の対策につきましては、本年度創設を予定しております県内保育所での継続勤務を条件といたしました返還免除型の貸付制度を広く周知し、多くの学生に利用を働きかけまして、学生の県内保育所への就職促進につなげてまいりたいと考えておりますし、また、人材確保、人材流入の面からも、長野県の豊かな自然環境や地域資源を生かしました信州やまほいくの取り組みを強化するなど、魅力ある信州の保育現場をPRしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

 

◎健康福祉部長(山本英紀)

 

 介護福祉士の確保対策について順次お答えいたします。

 県内介護福祉士養成施設の定員は、11校465名でございます。また、平成27年度の入学定員に対する充足率は51.3%となっております。

 卒業後の就職状況でございますが、27年度の卒業生250名のうち233名が福祉・介護職場に就職しております。この233名のうち227名、率にして97.4%が県内に就職しております。

 次に、介護福祉士養成施設への県の支援についてお尋ねがございました。

 県内の養成施設の入学者数はここ数年減少傾向にあり、将来の介護需要に対応した専門人材を育成確保していく上で入学者数の増加は重要な課題であると認識しております。そこで、介護福祉士養成施設への入学者に対する修学資金の貸付制度を希望する学生全員が利用できるよう、これまでの40人程度から今年度は70人程度まで事業を拡大したところでございます。

 また、平成27年度から、養成施設が行うオープンキャンパスやパンフレット作成等のPR費用に対して助成する介護の次世代育成促進事業を創設し、入学者数の増加に向けた取り組みを支援しているところであり、今後も各養成施設と連携を図りながら、入学者数の増加に向けた取り組みを支援してまいります。

 資格を有しながらも介護福祉士として勤務していない、いわゆる潜在介護福祉士の復帰対策については、平成25年度より、就労していない期間の技術的な不安を解消するための復職支援研修会を就職相談会と組み合せて実施するなどの取り組みを進めております。27年度までの3年間で177人がこの研修会に参加し、現在求職中の方もおられますが、少なくとも48人が介護の仕事に復帰しているところです。

 こうした取り組みに加えて、潜在介護福祉士等の復職を財政的に支援する再就職準備金貸付制度を創設し、今後4年間で1,300人以上の再就職を後押ししてまいります。加えて、29年4月から介護職員が離職する際の届け出制度が全国一斉に開始されることを受け、28年10月から県福祉人材センターに福祉支援専門員を配置するなど、対策の強化を図ってまいります。

 人材流出への対策についてお答えいたします。

 県では、介護の職場の離職防止、定着促進に向けて、27年度末に長野県版キャリアパス・モデルとモデル給与規程、給与表を作成し、県内介護事業者に幅広く周知することで、各事業者のキャリアパスの構築を支援し、処遇改善を促しております。

 また、今年度新たに中小企業診断士や税理士、社会保険労務士などによる経営専門家派遣事業を実施し、働きやすい職場環境の整備等に向けた取り組みを支援しているところでございます。

 大都市圏への人材流出への懸念につきましては、昨年度より、移住交流先として高いポテンシャルを持つ本県の特性を生かし、移住施策と連携した県外における就職説明会の開催を通じて、U・Iターン希望者の獲得に取り組んでおります。

 今後も、こうしたさまざまな取り組みを通じて介護人材の確保に努めてまいります。

 以上であります。

 

◆埋橋茂人

 

 御答弁をいただきましたけれども、とりわけ介護福祉士が465人の定員枠のところで250人ということですので、この対策をさらにお進めいただくことをお願いして、次に移ります。

 次に、地方創生に不可欠な農業の維持振興策と、関係機関、制度の利活用について、農政部長に伺います。

 農業を支える多くの仕組み、制度、機関がございますが、農地法、農業委員会法、農協法が改定されています。その中で、今後この農業、農協にどのような影響を与えるのか。現状の仕組み、制度をどう利活用して地域農業を支えていくのか。

 以下、6点お願いします。

 生産基盤の維持対策についてです。

 土地改良区、農業委員会、農地中間管理機構等の関係機関や関連制度がございますが、この改正等を踏まえ、どのように利活用して生産基盤の維持を図っていくのか。伺います。

 また、課題となっております畜産のクラスター事業の県内の現状はどうなっているのかお聞かせをいただきたいと思います。

 二つ目に、人の問題でございます。従事者の確保対策です。

 担い手への土地、施策の集中が政策的に進行しています。新規就農者の対策に加えて、集落営農によるものや定年帰農者等、多様な就農者が必要だというふうに思いますが、どのように確保していく方針かお示しをいただきたいと思います。

 三つ目、新技術、新品種の開発について、新技術、新品種の開発と普及を、どのような国、県、民間の研究機関を利用してどのような視点で進めていくのか。伺いたいと思います。

 とりあえずここで切ります。

 

◎農政部長(北原富裕)

 

 農業問題に対する御質問について順次お答えをいたします。

 初めに、農地法、農業委員会法、農協法などの改正を踏まえた生産基盤の維持についてですが、県といたしましては、今般の法改正の趣旨である担い手が積極的に活動できる環境整備を関係機関と連携して進めることが重要と考えております。このため、市町村農業委員会に新たに設置された農地利用最適化推進委員と、県、市町村、JA、また農地中間管理機構などがチームを組み、担い手への農地の集積や遊休農地の発生防止などへの取り組みを強化し、地域農業の基盤である担い手の確保と農地の維持を進めてまいります。

 また、畜産クラスター事業につきましては、地域の中心的な畜産経営体やJA、市町村などにより協議会を設立し、地域ぐるみで収益力の高い畜産を実現する取り組みでありますけれども、平成27年度は、3協議会において3億8,965万円の事業費により、畜舎や堆肥舎などの施設整備を実施しております。本年度は、TPP関連対策事業として拡充され、現在、3協議会の事業要望について国と協議を進めているところでございます。

 また、担い手経営体が規模拡大等に取り組むための畜産機械リース事業につきましては、県は、全農長野や畜産関係機関・団体とともに信州畜産クラスター協議会を設立し、この支援に当たっているところでございます。

 次に、多様な就農者の確保対策についてですが、本県農業の競争力を強化するためには、認定農業者、集落営農組織、新規就農者など効率的な経営体が本県農業生産の主体を担う構造となることが重要と考えております。このため、認定農業者の経営拡大への支援や、新規就農里親支援事業などによる新規就農者対策、また集落営農の法人化、組織化への支援助成を進めているところであります。

 一方、農村を今後とも維持、活性化していくためには、定年帰農者やIターン者など多様な農業者の確保も必要と認識しております。本年度、これらの方々への支援として、農業機械や農業資材の購入資金に対して利子を助成する事業を新たに創設したところです。また、本年2月には、JA長野県グループと農村地域の暮らし支援に関する協定を締結しまして、相互に連携して農村コミュニティーの維持に取り組むこととしたところでございます。これら取り組みによりまして、多様な農業者が地域で活躍できる農業・農村づくりを進めてまいります。

 最後に、新技術、新品種の開発と普及についてでございますが、今後の試験研究においては、国や各県の農業関係研究機関にとどまらず、農業分野以外の大学や企業、研究機関が持つ技術シーズを積極的に取り入れ、県内農業の体質強化、農産物のブランド化などに寄与する革新的な技術の早期開発と普及を目指すことが重要と考えております。

 このため、農水省の研究予算を活用し、国や他県の研究機関、大学等と連携して技術開発を進めるとともに、平成27年度からは、農業分野以外の大学や企業と連携する信州農業を革新する技術開発推進事業をスタートさせ、水田畦畔除草機、レタス収穫機、フィルム状の太陽光発電装置などの開発を進めております。

 また、7月1日には、多分野連携のマッチングフォーラムを開催し、さらに多方面にわたる企業、研究機関などと積極的に連携した研究開発に取り組んでまいります。

 以上でございます。

 

◆埋橋茂人

 

 続いて、3点について伺います。

 販売対策でございます。

 大手の量販店の流通や価格に対する支配力が非常に強くなっております。その中で、県産品の販売確保、先ほども触れられましたが、ブランド化、また輸出拡大ということの中で、県はどのように臨んでいかれるか。御説明をいただきたいと思います。

 また、県産農畜産物の輸出実績と重点輸出品目、またそのために必要な施設や仕組みをどのように構築するのか、どんな機関を利用していくお考えか。伺います。

 続いて、価格安定対策です。

 品目横断的経営安定対策におきます米・畑作物の収入減少影響緩和対策、俗称ナラシ対策でありますが、27年産から収入源を補△する保険的制度がこのナラシ対策のみになったことの影響や評価を伺います。

 二つ目として、Alic、独立行政法人農畜産業振興機構による畜産・園芸の収入補△対策に加えて、野菜等におきましては、長野県独自の価格安定基金制度で園芸産地と生産を維持してきたことについては生産者から高い評価を得ております。今後の国の制度設計にどのように要望しているのか、このAlicも資金的には畜産のほうに重点が移っていますが、TPPでここのところにもいろいろな影響が出ようかというふうに思いますので、この辺のお話をいただければと思いますし、県として独自で維持している仕組みをどういうふうに考えているのかお聞かせいただきたいと思います。

 最後の質問でございます。

 再生産確保対策について、いわゆるゲタ対策の県内における実績と評価、麦、大豆、ソバ等の畑作物が対象でございますが、これを伺いたいと思います。

 二つ目に、農業共済組合を通じて自然災害に対します損害補△がなされ、再生産の確保が図られております。しかし、今、農業共済組合の組織再編が検討されておりますけれども、これによります機能の変更等がないのかお聞かせをいただきたいと思います。

 以上です。

 

◎農政部長(北原富裕)

 

 順次お答えをいたします。

 初めに、県産農産物の販売対策についてでございますが、JA長野県グループと連携した卸売市場へのトップセールスはもとより、おいしい信州ふーど(風土)を旗印とした首都圏などにおける商談会や、県内の旅館、ホテルで県産食材の活用を進める食の地消地産の取り組みなどにより、販路拡大とブランド化を進めてまいります。

 また、農産物の輸出につきましては、平成29年度5億円を目標として取り組んでおりますが、平成27年度は前年対比184%の3億8,000万円余と年々増加しており、リンゴなどの果物や米を重点輸出品目と位置づけ、東南アジアを中心に輸出額の増加に取り組んでまいります。とりわけ、人気の高いシャインマスカットやナガノパープルなどのブドウについては、本年度から産地における鮮度保持施設の整備を支援し、輸出時期の長期化や輸出先の拡大につなげてまいります。

 今後も、長野県農産物等輸出事業者協議会を中心に、輸出先の有力バイヤーを招聘した商談や現地でのフェアを開催し、継続的で安定的な商業ベースでの輸出を拡大してまいります。

 次に、価格安定対策の部分の中の、初めに収入減少影響緩和対策の影響と評価についてですが、国は水田農業を担う農業者への支援の重点化を進めるため、米価などが下落した際に収入を補△する制度を平成27年産から米、畑作物の収入減少影響緩和対策、いわゆるナラシ対策に一本化し、規模要件を廃止した上で、交付対象者を認定農業者、集落営農組織等の担い手としたところでございます。

 平成27年産のナラシ対策への本県の加入状況は、1,527件、1万3,281ヘクタールと、平成26年産の605件、1万1,052ヘクタールから大幅に増加しており、認定農業者への誘導や集落営農の取り組みが進んでいるものと認識しております。

 一方、加入者負担が生じる、認定農業者となっていないなどから制度加入していない農業者も多い状況にあります。ナラシ対策は、担い手農業者の経営安定にとって重要な制度でありますので、引き続き市町村やJAと連携し、多くの農業者が制度に加入できるよう推進してまいります。

 また、今後の国の制度設計についての御質問でございますけれども、まず園芸の野菜価格安定制度、また畜産の畜産価格安定制度につきましては、国に対しまして引き続き予算の確保と事業の拡充について要望しているところでございます。

 現在、国では、全ての農作物を対象として、自然災害による収量減に加え、価格が低下した場合を含めた収入の減少を補△する収入保険制度の検討が進められておりまして、検討の中では対象者を青色申告者に限定すると言われております。県といたしましては、収入保険制度の創設に伴いまして、野菜価格安定制度や畜産経営安定制度などの既存制度に加入している全ての農業者が補償水準の低下や農家負担の増大など不利益を受けることがないよう、十分な整合を持って検討していただきたいということを国へ要請してきているところでございます。

 また、県単の園芸作物に対する価格安定事業につきましては、これら国の動向を注視しつつ、生産者団体の意向を踏まえ、引き続き的確に対応してまいりたいというふうに考えております。

 また、畑作物の直接支払交付金の実績と評価についてでございますが、平成27年産から交付対象者が担い手とされたことから、平成27年は申請件数が1,197件と前年の5,651件から大幅に減少しておりますが、一方、面積は7,271ヘクタールと、前年の7,554ヘクタールに対しわずかな減少にとどまっております。これは、集落営農組織や担い手農業者への集積が進んでいる結果と認識しておりまして、本制度は、水田転作作物としても重要な麦、大豆、ソバ等の生産の維持拡大につながっているものと認識をしております。

 最後に、農業共済組合の組織再編についてでございますが、現在、県内四つの農業共済組合と県農業共済組合連合会及び国という3段階から成る制度になっておりますが、現在、各農業共済組合と連合会が合併し、国との2段階制とする1県1組合化に向けた検討が行われております。1県1組合化によりまして、業務の効率化、合理化、より迅速な損害評価や共済金の早期支払い、また事業運営基盤の安定化が図られるものと考えております。

 合併後の新たな組合においては、組合員資格、共済事業の内容に変更はなく、また現在の組合事務所は存続し、職員数は現在数を継承すると聞いておりますので、農業共済組合の基本的な機能に変更はないものと認識しております。

 以上でございます。

 

◆埋橋茂人

 

いずれにしろ、制度の激変期でございますので、よろしく対応をお願いしたいというふうに思います。

 最後に、松枯れ対策について御質問を申し上げます。

 先般、植樹祭が行われ、森林の持ちますさまざまな価値が再認識されたことについては大変有意義であったというふうに思います。しかし、皆さんも御同様だと思いますけれども、信州の緑の松山が次々と赤茶色に変わっていくのを見るのは非常につらいものがございます。また、防災上からも大きな課題だと思います。

 松枯れ対策は、従来からもさまざまな論議と対策が講じられていますが、県の現状認識、対応方針について、林務部長に以下5点伺います。

 被害林の経年データと今後の予測、地域別の被害率はどうなっているのかお示しをいただきたいと思います。また、被害林の拡大実態はどうなっているか、また、何かと相関関係があるのかということです。

 二つ目として、この被害林の伐採計画と害虫でありますマツノザイセンチュウ、これの媒介昆虫でありますマツノマダラカミキリの防除対策はどうなっているか説明をいただきたいと思います。薬剤散布や樹幹注入、薫蒸、防御帯の設置などありますけれども、どの程度なされていて、拡大防止効果がどのくらい出ているのかお伺いします。

 三つ目としては、マツノマダラカミキリに対して有効な交信攪乱剤、コンフューザーと言いますけれども、これがあるのかないのか。また、あったら使っているのか。伺いたいというふうに思います。

 四つ目として、マツノザイセンチュウは100年ほど前に北米から入ったということですが、私がアメリカを訪れた折は、かの地の松は非常に健在でございました。松は乾燥に強いものですから、松がなくなるともう砂漠化してしまうということで大変大事にされておりましたけれども、アメリカで松が健在だということは、マツノザイセンチュウに対する耐性種が自然淘汰の中で生き延びたものだというふうに思います。

 日本においても、松枯れ耐性松の選抜や研究を国や県の研究機関、大学等で行っているのか。伺います。行っているとすれば、現状どの程度まで進んでいるか御説明をいただきます。

 最後ですが、西日本の多くの地域のように、放置してというより放置せざるを得ず、結果的に松林から広葉樹や他の針葉樹等への樹種の変更を待つか、地域を限定してでも徹底的な対策を講ずるのか、県の方針はどうか、御説明をいただきたいと思います。

 以上でございます。

 

◎林務部長(池田秀幸)

 

 松枯れ対策につきまして、順次お答えを申し上げます。

 最初に、被害の経年データ、被害の拡大実態についてのお尋ねでございます。

 長野県の松くい虫被害は、昭和56年度に初めて確認されてから、平成20年度に6万立方メートルを超え、平成25年度にこれまでの最高となる約7万8,000立方メートルとなり、平成27年度でも7万立方メートルを超えており、今後も予断を許さない状況が続いております。

 昨年度、塩尻市で新たな被害が発生いたしまして、この5年間で被害市町村も46から51にふえるなど、被害地域が広がる傾向でございます。

 平成27年度の地域別の被害状況でございますが、上小、松本、佐久地域の順に被害が大きく、被害率につきましても、県全体の被害に対しまして、上小地域34%、松本地域29%となっておりまして、この2地域で全体の6割を占めている状況となっております。また、これまで被害の確認されなかった標高の高い地域への拡大が確認されておりまして、県の林業総合センターの分析によりますと、平均気温が高まるとマツノマダラカミキリの活動が活発化するなど、被害拡大の危険性が高まると指摘をされているところでございます。

 次に、マツノマダラカミキリの防除対策についてのお尋ねでございます。

 松くい虫対策は、市町村等との調整によりまして、県土の保全、または景観上などで重要な森林を守るべき松林として位置づけまして、被害の侵入を防ぐための防除対策を選択と集中により効率的、効果的に進めることを基本とさせていただいております。このため、守るべき松林におきましては、被害木の伐倒駆除に加え、薬剤散布、樹幹注入などの予防対策を重点的に実施しまして、その周辺松林では、伐倒駆除及び樹種転換などによる感染拡大対策を重点的に実施をしております。

 平成27年度には、防除対策といたしまして、被害木駆除4万7,000立方メートル、薬剤散布は444ヘクタール、樹幹注入228本、樹種転換101ヘクタールに取り組んでいるところでございます。これらの実施によりまして、ここ3年間を見ますと、被害量の増大を食いとめるなど一定の効果は上げていると認識をしているところでございます。

 次に、交信攪乱剤についてのお尋ねでございます。

 交信攪乱剤は、合成した性フェロモンを被害区域に放出することで、異性の探索、発見を困難にしまして、害虫の繁殖率を低下させる病虫害防除の方法の一つでございます。しかし、マツノマダラカミキリ類を対象といたしました交信攪乱剤の研究は、国の研究機関では1980年代から行われておりますけれども、いまだ製品化には至っていないのが現状でございます。

 本県でも、県の林業総合センターでマツノマダラカミキリの天敵となります微生物を利用した試験などを実施しておりまして、今後、こうした試験結果を十分に検証いたしまして、有効性が確認された場合には県下各地に普及に努めてまいりたいと考えているところでございます。

 次に、松枯れ耐性松の選抜や研究の現状についてのお尋ねでございます。

 松枯れしにくい松の品種開発につきましては、国内では昭和53年度から松枯れ被害の大きい場所で生き残った松などから選抜を行うことによりまして、平成26年度までに375種の抵抗性品種が開発をされまして、苗木の生産が行われております。

 本県では、平成16年度から、県の林業総合センターにおきまして、抵抗性品種の中から長野県の気候、風土に適した品種の評価、検証を行っておりまして、その結果を踏まえまして、平成30年度から種子の生産を行うことを目指して現在取り組んでいるところでございます。

 次に、今後の被害対策の方針についてのお尋ねでございます。

 県では、県内のアカマツ林約9万2,000ヘクタールのうち、約2割に当たります2万ヘクタールの松林を守るべき松林に定めておりまして、その周辺の松林を含めた約4万5,000ヘクタールの松林において、引き続き効率的かつ効果的な被害対策を実施してまいりたいと考えております。

 それ以外の被害松林につきましては、他の樹種への更新を進めることも必要と考えておりまして、公共造林事業などを活用いたしまして更新に向けた支援を行ってまいりたいと考えております。あわせまして、今後は更新の際などに伐採される被害材を木質バイオマス燃料等として有効利用する取り組みにつきましても積極的に進めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

 

◆埋橋茂人

 

 御答弁をいただきました。

 長野県はマツタケの生産量が日本一でありますけれども、これが失われると、かつての西日本のようになってしまいますので、効率的に守るべきところはぜひ守っていただくことをお願いいたしまして、私の一切の質問を終わります。