平成28年6月定例県議会 発言内容(石和大議員)


◆石和大

   

 現在の小中学校の児童生徒を取り巻く環境は、それぞれ複雑な場合も多いと考えられます。核家族の構成により、いわゆる年の功による助言が家庭内では得られないとか、歴史的な経過の中で自分がそこに存在しているという実感がないとか、他者からありがとうという感謝の言葉や心を体感していないので自己肯定感がないとか、そういった状況の中で、学校の教員だけでいろいろなことに対処するのではなく、地域の人たちに学校運営に参加、協力していただこうというのがコミュニティスクールであり、より幅広く地域の力を発揮していただこうというのが信州型コミュニティスクールだと認識しています。これまでにも質問してきていますが、信州教育の再生には不可欠なことだと感じておりますので、質問いたします。

 平成29年度までに全小中学校に信州型コミュニティスクールを導入するという目標に対し、現時点での達成状況はどうか。また、これを有効に機能させるために重要で中心を担うコーディネーターの養成やコーディネーターへの支援はどのように行っているのか。それについて、3年前、信州型コミュニティスクールの導入により、教職員、特に教頭に負担感がふえる懸念について質問しましたが、現実はどうか。

 次に、国のコミュニティ・スクールでは市町村教育委員会に財政的支援がありますが、信州型では行われていない、そのことが信州型コミュニティスクールの導入に当たって不利になっていないかどうか。

 そして、信州型コミュニティスクールを導入した学校の成果はどのようなものがあるか。特に、地域で子供を育むという面で成果はどうか。

 以上、教育長にお聞きいたします。

 

◎教育長(原山隆一)

 

 信州型コミュニティスクールについてのお尋ねでございます。

 まず、達成状況でありますけれども、平成27年度末の達成目標が50%という設定ですけれども、平成28年4月時点の調査で67.6%、371校が導入しております。内訳としては、小学校が70.5%、256校、中学校が61.8%、115校という状況でございます。

 続いて、コーディネーターの養成や支援についてでございますけれども、生涯学習推進センターにおきまして平成25年度から27年度の3年間で、コーディネーター養成講座、それからボランティア養成講座、それぞれを開いておりますけれども、それぞれ延べ418名が受講をしております。本年度は、信州型コミュニティスクールをことしから本格的に立ち上げる予定の佐久地区、飯田・下伊那地区に出向いて開催をする予定でございます。

 また、新たに信州型コミュニティスクールを立ち上げる学校や地域のコーディネーターを支援するために、先駆的な実践活動を手がけているコーディネーター7名をアドバイザーとして派遣し、導入に関する具体的、個別的な相談に対応したいと考えております。

 教職員、特に教頭の負担感がふえることへの懸念についてでございますけれども、信州型コミュニティスクールを導入した後順調に運営されている学校では、教職員の負担感の減少という評価もお聞きしており、この点は目標を上回る実績に結びついた大きな要因であるというふうにも認識しております。

 運営組織を立ち上げる当初の段階では、当該学校の教育課題を関係者全体が共有化するという過程では時間を要するなど、少なからずの負担感が生ずることもありますけれども、できることをできるときにできる人がまず取り組むという柔軟さについて、校長、教頭を初め教職員や地域の関係者向けの研修の場で説明をしているところであります。

 あわせて、学校と地域をつなぐコーディネート機能を複数の者で担うという成功例もお聞きしておりますので、県内のさまざまな事例を紹介しながら、教職員や地域の関係者の負担軽減を図るように要請をしているところでございます。

 それから、国のコミュニティ・スクールの財政的支援との比較でございますけれども、国のコミュニティ・スクール、学校運営協議会制度でありますけれども、組織や運営体制づくりに向けた国の補助制度はありますが、指定開始から10年余りを経た本年4月現在の全国における指定状況は、小中学校合わせて10%に満たない状況であります。その一方、信州型コミュニティスクールは、制度導入から3年間で、先ほど申し上げましたとおり67.6%に至っておりまして、信州型の支援体制は不利にはなっていないというふうに考えております。これは、法令等にのっとって実施する国の制度に比べまして、それぞれの学校の特色ある教育活動を基盤として、地域に開かれた学校づくりを柔軟に進められるという信州型の特徴が着実に浸透してきたためというふうに考えております。

 導入の成果でありますけれども、地域によりさまざまではありますが、例えば、家庭学習のプリントのおさらいをした生徒が地域の学校ボランティアの方々に再度採点を受け、その積み重ねが家庭学習の意欲増進につながっているという例や、地域の方々の指導のもとにふるさとの歴史、文化、自然を学び、また職場体験を行い、こうした学習をもとにその地域に根差した産業に即した企画開発等のプレゼンテーションを行うという起業家意識の醸成に取り組む例など、特色ある事例があります。一般的にいっても、学校の実情に理解を示す地域の方々がふえることで生徒の指導事案も減少するなど、学校運営上の成果も出ているところであります。

 そういう意味で、本県が目指す「学びの郷 信州の創造」に向けまして、子供の成長とともに、地域住民の学びにもつながる取り組みが県下各地で展開されているものというふうに考えております。

 

◆石和大

 

 成果を上げつつある信州型コミュニティスクール、これは本当に地域を再生する一つの要素になります。さらには、教育県長野の復興にもつながっていくと思います。30年、40年後にはその子供たちが今度地域で力を出していくわけであります。ぜひ御期待をしたいと思います。

 次に、さきの熊本地方で発生した地震は、大きな災害となりました。犠牲になられた皆様の御冥福をお祈り申し上げます。被災した皆様には御見舞い申し上げます。このような地震は日本中で起こり得るということは覚悟せねばなりません。ということは、備えもしなくてはならないということであります。そんな視点も含めて、幾つか質問いたします。

 まず、道路舗装や橋梁の長寿命化修繕計画についてお聞きします。

 いずれの計画も、重要度に応じた管理水準を定めて修繕や予防保全を行うことによりライフサイクルコストの縮減を図りますということですが、これらの長寿命化の計画と見通しはどうか。それに関連して、必要な予算の長期的な見通しはどうなのか。県民の要望では、暮らしに直結する道路や橋梁の修繕は大きなウエートがあります。県は優先順位をつけて国に要望しているとのことですが、ゲリラ豪雨や豪雪、凍霜害など自然環境により整備が必要な優先順位も常に変化していると考えますが、どのように把握をし、国に予算措置を要望しているのか。また、国の反応は随時対応しているのかお聞きします。

 次に、県管理道路の除草についてお聞きいたします。

 県が管理する道路、歩道、そして道路敷、土手、つまりのり面などに草や木、特に成長が早い外来種の木が茂っている状況が目立ち、除草等の対策を望む声が多いわけであります。現状と対策についてお聞きをいたします。

 このような草や木の害は、子供たちの通学の危険、高齢者や障害者の通行の危険を高めるし、観光という面でも、せっかく県内をバスツアー等で景色を堪能している皆様にも、景観を楽しむ機会を阻害し、また来たいというリピート率を低下させる大きな要因となります。

 千曲川ワインバレーの地域の中で、軽井沢から上田までバスを走らせてワイナリーめぐりをする。ワイナリーだけではなく、浅間南麓地域の幹線道路である浅間サンラインに観光周遊バスを走らせるという場合でも、車中からの景観は大きな売り物です。それが、草木が生い茂り景色が見えない、歩道から車道にも荒れ地のように草が生えているということでは、せっかくの信州の美しさが損なわれます。除草や木の除伐は重要な課題です。早急な取り組みを望みます。

 そんな中で、除草等の整備に関するそういった予算が少なくて対応が難しいとすれば、また、全てを県の行政サービスではカバーできないとすれば、新しい公共のあり方として、県民の皆様のお力もおかりすることも御理解いただいた上でお願いすることを考える必要があるというふうに思います。

 既に、県には、信州ふるさとの道ふれあい事業、いわゆるアダプトシステムがあり、4月1日現在で323団体、2万5,000人余りの皆様に御協力いただいているとのことであります。

 県内5,000キロの道路や道路周辺で、毎日草や木は伸びていきます。行政サービスの充実とともに、県民の皆様にもさらなる御協力をいただくことも考えるべきと考えますが、いかがですか。建設部長にお聞きします。

 次に、県内ライフラインの安定性についてお聞きします。

 水道については、県内には県営の水道、市町村単位の水道、さらに幾つかの市町村にまたがる企業団の水道と多様な形態がありますが、災害発生時の対応等の連携について対策は十分なのかどうか。また、県はどのような役割を果たすのか。環境部長にお聞きします。

 次に、ガスは都市ガスとプロパンガスがありますが、県内の割合はどうなっているのか。地震等の災害発生時に、都市ガスは長距離のパイプが配管されており、ガス漏れの危険はあるのかどうか。また、復旧に時間を要することも予想されるのかどうか。中山間地が多い県内は、プロパンガスの普及率が高く、万が一のときはガスの復旧は早いものと考えられるのかどうか。都市ガスが多い都市部で、災害等によりガスがとまると、都市機能が低下し、県民生活への影響も大きいと予想されますが、都市ガス、プロパンガスのガス事業者との災害時の県との協定の状況はどうか。産業労働部長にお聞きします。

 

◎建設部長(奥村康博)

 

 いただきました御質問に対し、順次お答え申し上げます。

 まず、道路舗装、橋梁の長寿命化修繕計画について、計画と今後の見通しについてのお尋ねでございます。

 まず、舗装につきましては、交通量に応じた路面の凹凸やひび割れの状況などの指標化による管理水準を定めまして、水準を維持すべく計画的な補修を行うこととしておりますが、舗装の劣化が進む中で、特に観光地や基幹道路の舗装修繕などを優先して実施しているところでございます。

 また、橋梁につきましては、県が管理する3,829橋のうち、緊急に対策が必要な264橋について、平成26年度からおおむね5年以内に補修することとしており、昨年度までに121橋が完了し、おおむね順調に推移しております。

 長寿命化修繕計画の実施に当たりましては、国の交付金の活用を図るとともに、損傷の状況や路線の重要度により優先順位をつけ、最適な工法を選定した上で必要な予算の確保に努めてまいります。

 次に、整備が必要な箇所の優先順位の把握と国への予算要望に関するお尋ねでございます。

 橋梁など主要な道路施設につきましては、5年に1回の法定点検のほか、大雨の後や通常の道路パトロールなどにより状況を把握し、優先順位を決定するとともに、災害等による被災を含めて緊急対策が必要となった箇所につきましては、必要に応じ前倒しで修繕を行っております。

 また、国への予算要望に当たりましては、優先順位や緊急対応を踏まえた必要額を要望しており、国土交通省では、こうした長寿命化修繕計画に基づく対策には重点的に交付金を配分していると聞いております。

 なお、年度途中で生じた緊急対応に関しましては、国の災害復旧事業や補正予算を活用するほか、必要に応じて県単独費により対応しております。

 建設部としましては、引き続き長寿命化修繕計画に基づき計画的に修繕を行うことによりコストの縮減を図るとともに、国に対してさらなる交付金等による支援を要望してまいります。

 次に、県管理道路の除草等についてのお尋ねでございます。

 道路のり面や歩道等の除草や樹木伐採につきましては、草や木の生育状況や交通への影響を勘案し、計画的に実施するとともに、道路パトロール等の際に随時状況を確認の上対応しております。

 特に、観光地につながる道路や通学路など、景観への影響や通行に支障が出るような箇所につきましては、観光シーズン前に集中的に除草を行うなど、実施時期や方法を工夫しながら、効果的な除草や伐採に努めております。

 本格的な夏に向けたこれからの時期は、草刈り等に関する御要望をいただくことが多くなりますので、地域の皆様の御意見もお聞きしながら、良好な道路環境の維持に努めてまいります。

 次に、県民の皆様の協力を得た除草についてのお尋ねでございます。

 道路の除草につきましては、県としてしっかりと対応することはもちろんでございますが、住民の皆様の御協力は欠くことのできない非常に重要なものだと考えております。

 ボランティアで道路の美化運動を行うアダプト団体は、平成15年の制度開始時は30団体程度でございましたが、現在は約10倍の規模となっているほか、道路愛護団体や自治会単位の道路美化活動など多くの住民の皆様の御協力によりまして道路環境の維持向上が図られており、心から感謝申し上げる次第でございます。

 こうしたアダプト団体や道路愛護団体の活動に対しましては、傷害保険への加入や必要な道具、材料等の支給、活動に伴って発生するごみ処理等の支援を行っております。

 建設部といたしましては、引き続きアダプト活動等への支援や制度の広報を行うとともに、住民の皆様の自主的な活動と積極的に連携協力しながら道路の適切な維持管理に努めてまいります。

 以上でございます。

 

◎環境部長(関昇一郎)

 

 水道の災害発生時の対応等と県の役割についてお尋ねでございます。

 県内の水道施設が被災をした際の応援体制といたしましては、県内全ての公営水道事業者等で構成をいたします長野県水道協議会の要綱に基づき、応急給水や応急復旧を実施する体制を整えております。また、県内の水道事業者による相互応援だけでは対応が困難な場合には、全国の水道事業者で構成される日本水道協会中部地方支部9県の協定に基づき、応援体制を確保しております。

 県の役割といたしましては、協議会の事務局として、災害発生時にはこれらの要綱、協定により、水道事業者による相互応援活動の調整を行うこととしております。

 今後とも、重要なライフラインであります水道の確保を図るため、県水道協議会等と連携をし、災害に対する備えについて万全を期してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

 

◎産業政策監兼産業労働部長(石原秀樹)

 

 4点、順次お答えいたします。

 まず、都市ガスとプロパンガスの割合でございます。

 県内では都市ガスを利用している家庭が約2割、プロパンガス利用が約8割ということで、プロパンガス利用世帯が大変多い状況にございます。

 次に、都市ガスの危険性とその復旧時間についての御質問でございます。

 都市ガスのパイプは、これまでの経験を生かしまして、地盤変動に強い素材が使われるとともに、万が一一定規模以上の地震が発生したときは緊急停止を行う装置が複数設置されており、ガスの漏えいの危険性は低いと言われております。

 また、復旧におきましては、パイプでつながっている区域内の安全を確認した上で、区域ごとに順次復旧することになっておりますので、一定の時間を要するものと認識しております。

 次に、プロパンガスの復旧についての御質問ですが、御指摘のように、プロパンガスは各世帯に個別供給されており、設備の点検箇所も少ないため、都市ガスに比べ比較的早く復旧するものと認識しております。

 最後に、災害時の応援協定についての御質問でございます。

 長野県では、平成25年に、全県のプロパンガス業者で組織されております長野県LPガス協会と災害時におけるプロパンガスの調達及び災害対応の協定を締結しております。また、県との協定締結を契機に、協会は県内の全市町村とも既に協定を締結しております。

 なお、県との協定の中では、被災時の緊急点検や供給についての協力を定めるとともに、避難所や病院などで新たにLPガス需要が発生したときは、設備工事やガスの供給につきましても協力を要請ができることになっております。

 いずれにしましても、被災時のエネルギーの安全確保、供給維持は大変重要な課題でございます。今後も防災訓練などでしっかりと協定に即した連携体制を確認するとともに、常に効果的な運用を目指しまして万一に備えてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

 

◆石和大

 

 次に、医師確保の現状と計画、見通しについて伺います。

 医師不足の改善、県内で活躍する医師の確保を目標にして、県の医学生修学資金貸与制度が始まって10年が経過しようとしています。その成果はどうなのか。そして、今後の見通しはどうか。また、医師が本格的に活躍するようになるには年数がかかると思うが、返還猶予や免除について、制度は機能的に運用されているのかどうか。さらに、県内の市町村や医療法人等でも奨学金制度を設けているところがあるが、状況を把握し、ネットワークを築き、県内の医師確保に向けて連携する必要を感じるが、所見を伺います。

 次に、県内への医師の着任について、ドクターバンクが有効に機能しているということでありますが、成果と今後の見通しはどうか。さらに関連して、県内の病院への移籍は他県にいる医師にとって魅力があるのかどうか。また、課題は何か。健康福祉部長にお聞きします。

 

◎健康福祉部長(山本英紀)

 

 医師確保の現状と今後の見通しについての御質問に順次回答させていただきます。

 最初に、医学生修学資金の成果と今後の見通しについてお尋ねがありました。

 医学生修学資金は、これまで200名を超える医学生に貸与してきたところであります。この制度により、大学入学から卒業までの6年間貸与を受けた場合、卒業後、県内の医療機関で5年間の研修を行い、その後、県が決定した医師不足病院等において4年間勤務していただきます。今年度、勤務の対象となっている医師は3名ですが、29年度は8名、30年度は12名と徐々に増加し、平成37年度には80名以上の医師を医師不足病院等に配置できる見込みであります。

 返還猶予、免除の措置の適用については、大学卒業時までこの制度を利用した医師は合計64名ですが、このうち研修または勤務を行っているために返還を猶予している医師が55名、義務年限が終了したことにより返還を免除した医師が7名となっており、本制度はその目的を果たしてきていると考えております。

 次に、県内市町村とのネットワーク化についてお尋ねがございました。

 県では、これまでも、貸与決定時において市町村等が実施する県と同様の貸与制度の利用の有無を確認するなど、重複して貸与することがないよう努めてきたところです。今後、勤務の対象となる医師が増加していくことから、他の貸与医師の勤務の動向などをより適切に把握し、重複配置が生じることのないよう、他の実施主体との連携方策について検討してまいりたいと考えております。

 ドクターバンク制度の成果と見通しについてのお尋ねであります。

 県内医療機関への就業をあっせんするドクターバンク事業は、平成19年6月にスタートし、この6月で10年目に入ったところであります。この事業を通じて、これまでに内科50名、産婦人科14名、小児科・麻酔科がそれぞれ8名など、計100名の医師の就業を支援してきており、一定の成果があったものと認識しております。

 しかしながら、いまだに111の医療機関から求人登録があることから、県内での就業を希望する医師を一人でも多く就業に結びつけることができるよう、引き続ききめ細やかな対応に努めてまいります。

 県内病院の魅力については、医師の勤務条件や生活環境などに関する価値観はそれぞれ異なるため、県内病院の魅力や課題を一概に論ずることは難しいですが、これまで就業を支援してきた個々の医師と面談する中では、多くの医師が長野県の豊かな自然や多様な食文化、交通の利便性について言及しております。こうした点が長野県で就業する魅力となっており、ドクターバンク事業において県内に就業した医師数が全国トップクラスとなっている一因ではないかと感じております。

 その一方で、休日・夜間の対応が少ないなど、ゆとりのある勤務を望む医師が見受けられることから、医師の勤務環境の改善に向けた取り組みが課題の一つであると考えております。

 以上であります。

 

◆石和大

 

 子どもを性被害から守るための条例についてお聞きいたします。

 この条例については、長い間県民の間で議論されてきました。長野県における青少年を健全に育てるという志のもとに展開されてきた県民運動を誇りに思います。私も、PTA活動や地域の青少年育成会等の活動に参加をしてきました。

 東御市での青少年育成の市民活動の中で、有害図書の自動販売機が県内で一番多いという状況を改善しようという運動が粘り強く展開されました。しかし、設置者は違法性がないということを根拠の中心として、撤去の要請にはかたくなに応じませんでした。そこで、市民運動だけでは限界があるという状況の中で、東御市青少年健全育成条例が制定されました。その後、自動販売機はなくなりました。

 この子どもを性被害から守るための条例についても、日ごろ熱心に子供たちを見守る活動や補導活動、青少年健全育成に携わっている皆様からも、制定を望む声が少なからずあるということであります。青少年を育てる県民運動の一つの力になればというふうに望んでいます。

 そもそも、子供が性被害に遭うなどということはあってはならないことです。さらには、そんな不当なことが、法律等の未整備により罪にも処罰対象にもならず、被害者が被害を受けただけということでは、健全な社会とは言えません。まして、全国の都道府県の中で長野県だけが加害者に対して何の対処もできないというのは不自然であります。

 被害を受けた子供は、自分のせいではないかというふうに自分を責めてしまうことも少なくないようです。そのようなことをした人がいけないのだと、社会が、大人が認めなければ、子供は自分のせいだと思い込んでしまうでしょう。長野県からそんな被害者を出さないことが最重要であります。

 知事は、県内の子供たちへの被害状況についてどう感じ、どのような決意で条例案を提出されたのかお聞きいたします。

 

◎知事(阿部守一)

 

 子どもを性被害から守るための条例案について、被害の状況をどう受けとめて、どういう決意かということでございます。

 これは、3年間いろいろな県民の皆様方と対話を重ねてきたわけでありますが、石和議員御指摘のとおり、子供の支援を行っていらっしゃる方ほどその必要性を痛感されているということが大変大きなポイントではないかなというふうに思います。

 これは、性にかかわることですので、余り表面化しづらい、被害に遭ってもなかなか訴えづらいということがある中で、どうしても水面下に実態が隠されてしまいかねない現状があります。

 さまざまな皆さんの御意見をいただく中で、今回の子どもを性被害から守るための条例、他県のいわゆる青少年健全育成条例、保護育成条例とは異なって、子供を性被害から守るということに特化をして検討してきました。

 先ほどから申し上げているように、子供の性被害は決して一過性でそのときだけで済むということではなくて、心の傷を本当に長い間にわたって残してしまいかねない極めて重大なことだという認識を共有しなければいけないと思いますし、また、石和議員の御質問にもありましたように、長野県では処罰対象になっていないものが他県では処罰対象になっている現状を考えたときに、子供たちは相手方が何ら処分もされない、いけないことともされていないと、自分がむしろ悪かったんじゃないかというような自責の感情に襲われてしまうということも、これはもう今の現状からすれば見過ごすことはできないんじゃないかというふうに思っております。

 長野県として、社会的に非難されるべき行為は何なのかということを、やっぱりはっきりと明確にした上で、そして教育から被害者支援まで総合的な対策を、今回お示しした条例に基づいて、しかもこれまでの長野県の伝統と誇りでもある県民運動を中心にしながらもしっかりと進めていくということが、子供たちを守っていく、そして子供たちを応援していく、そういう観点で極めて重要だというふうに思っております。

 どうか議員の皆様方の御理解、そして今回の条例案に対する御賛同を心からお願いするところでございます。

 以上でございます。

  

◆石和大

 

 最初に述べた信州型コミュニティスクールにおいても、地域の力というものが何より大事であります。県民運動も本当に地域の力の中で子供たちを健全に育もうという信州の心意気であります。そこに、今回の条例も一つの契機として、それが一つの大きな力となって県民運動がさらに展開されますことを、そして、長野県においては、子供の性被害に対して、加害者も被害者も出さない、そんな長野県を県民一丸となってつくりたい、そんな思いをここで申し上げて、質問を終わります。