平成28年2月定例県議会 発言内容(小林東一郎議員)


◆小林東一郎

   

 最初に、財政規律について、臨時財政対策債を中心に伺ってまいります。

 2016年度の地方財政対策においては、地方税が前年度比1.2兆円増収となる中、地方交付税総額は前年度とほぼ同額を確保しつつ、臨時財政対策債はマイナス0.7兆円の3.8兆円に発行が抑制されています。これは、税収増により交付税対象財源不足が大幅に改善するのに伴い、折半ルール分の臨財債が2015年度比マイナス81.1%の2,747億円に圧縮されることによるものですが、まず、これらへの評価をお聞きします。

 一方で、元利償還金分等の臨財債発行額は増加の一途をたどっており、3兆5,133億円にまで膨らんでいます。県が来年度発行を予定している臨財債436億円のうち、折半ルール分と元利償還金分の内訳はどうなっていますか。

 また、元利償還金を新たな臨財債で賄う構造は、地方財政の持続性の観点からいかなる問題があるとお考えですか。

 臨財債の元利償還については、これまで、各年度の交付税算定において元利償還金相当額の全額が基準財政需要額に算入されていることから、交付税措置がされていると説明されてきました。すなわち、臨財債は自治体による交付税の立てかえとの見方なのですが、この見方のままで変化はありませんか。

 以上、総務部長に伺います。

 

◎総務部長(原山隆一)

 

 臨時財政対策債についての御質問でございます。

 まず、2016年度の地方財政計画における臨時財政対策債の折半ルール分に対する評価についてでございます。

 県では、これまで、特例的な措置である臨時財政対策債の廃止を国に対して要望してきたところであります。今回、臨時財政対策債の発行額が抑制されたことは、一定程度評価するところではございます。

 次に、臨時財政対策債発行額の内訳という御質問でございます。

 臨時財政対策債は、地方財政計画における折半ルール分と元利償還金分等の合計を全国の発行総額とした上で、国において各地方公共団体の財源不足額や財政力指数に基づき算定をし、各団体の発行可能額として決定されているところでございます。したがって、各団体の発行可能額は折半ルール分と元利償還金分等を分けた算定にはなっておりませんので、内訳というものはございません。それを御了解していただいた上で、仮に本県発行予定額の436億円を地方財政計画に計上された折半ルール分と元利償還金分等の金額の割合で単純に案分をいたしますと、それぞれ32億円、404億円となるところでございます。

 元利償還金を新たな臨時財政対策債で賄うことに対する見解という御質問でございますが、地方財政計画における財源不足については、本来、地方交付税で措置されるべきものであり、過去に発行された臨時財政対策債の元利償還金相当額を臨時財政対策債の発行により対応しているという現在の構造は、マクロの地方財政として見た場合には、公債費の増嵩といった財政の硬直化を招くなど、財政健全化の観点からも問題があるというふうに認識しております。

 それから、臨時財政対策債の見方についてでございますが、臨時財政対策債の元利償還金相当額については、地方財政法に基づきまして、その全額を後年度の地方交付税の基準財政需要額に算入されていることとされております。これは平成13年度以降、現在に至るまでその取り扱いに変更はないというふうに認識しております。

 以上でございます。

 

◆小林東一郎

 

 ところで、国は、本年度の地財対策のポイントに、赤字地方債である臨財債と明記し、来年度の地財対策のポイントでも同様の表現がされています。臨財債が文字どおり赤字地方債であるなら、自治体においてその責を負えとも読み取れるわけで、認めるわけにはいきません。臨財債は赤字地方債と国がしていることへの御見解を総務部長に伺います。

 臨財債は赤字地方債との見方に立つならば、実質公債比率や将来負担比率の算定で施されている臨財債の調整には疑問が生じることになります。調整なしでそれらを試算すると来年度の見込みでどのようになりますか。これも総務部長にお聞きします。

 

◎総務部長(原山隆一)

 

 まず、赤字地方債であることに対する見解についてでございます。

 臨時財政対策債は、投資的経費以外の経費にも充当できる地方債であり、財源を補△する目的で発行する性質上、退職手当債などと同様に、一般的に赤字地方債とも言われております。臨時財政対策債は、元利償還金相当額の全額が後年度の地方交付税の基準財政需要額に算入されるものでありますけれども、本来は地方交付税で措置されるものが望ましいというふうに考えております。

 それから、実質公債比率等における臨財債の調整についてでございます。

 実質公債費比率、それから将来負担比率のいずれの指標も、公債費などがどの程度一般財源の使途の自由度を制約しているかをはかる指標でございます。ですので、後年度、国が地方公共団体の財政運営に支障が生じることのないよう措置を行う地方債については、臨時財政対策債も含め、その調整を行わなければ財政状況の真の姿が見えないということになります。

 お尋ねは、臨時財政対策債を調整しないで算定するとどうかということでございますけれども、地方財政法に基づき元利償還金の全額が後年度の地方交付税の基準財政需要額に算入される臨時財政対策債を調整しない数値を示すことは、むしろ指標の目的からすれば適切でないというふうに考えております。

 

◆小林東一郎

 

 臨財債の導入から15年が経過し、その残高は累積する一方で、これまで一度も前年を下回ったことがありません。まして臨財債は赤字地方債ということなら、交付税措置がされないといった事態も予測し得るのでは。知事は、事あるごとに臨財債の廃止を国に求めると発言されてきましたし、来年度の当初予算案のポイントにも廃止を含めた抜本的な見直しを国に求めていきますと明記されています。自民党県議団、風間議員の代表質問でも、自民党県議団は臨財債の廃止を国に求めているとされました。

 大和総研が行った2012年度分での試算では、臨財債の調整なしでストック指標である将来負担比率を考えると、実質債務が都道府県においては倍以上になることが示されています。調整を除いた分析指標を把握し県民に示していくことが、廃止を国に求める必要があることへの理解を深めることになるのではありませんか。知事の御所見を伺います。

 

◎知事(阿部守一)

 

 臨時財政対策債についてるる御質問をいただいているわけでありますけれども、これは、平成13年度からずっと、臨時と言いながら恒久化されつつあるというような観点で、これはやはり問題があるというふうに思っております。そういう観点で、国に対してその廃止を引き続き強く要望していきたいと思ってます。

 スタートしたときは、かつては交付税特会で、国の特別会計内で国と地方の分担関係をやっていた、それが地方であったり国民に対してわかりづらいということから導入されたという経過もあるわけでありまして、総務省も、この臨時財政対策債の縮減、今、発行額、残高は増加方向でありますけれども、縮減しなければいけないという問題意識はしっかり持っていただけているというふうに思ってます。

 そういう中で、財政指標の話については、総務部長から御答弁したとおりであります。この臨時財政対策債の元利償還金相当額は、本来は地方交付税で、そもそもキャッシュで交付されるべきものというものが、これは起債で後年度の交付税の基準財政需要額に算入しましょうというルールになっているわけでありまして、こうした措置が将来仮に万が一にも講じられないということになれば、そもそも地方財政そのものの信頼性が全く損なわれるというふうに思っております。そういう意味で、交付税措置を前提としない分析指標というのは、かえって実態をわかりにくくしてしまうんじゃないかと私は思っております。そういう意味で、総務部長から御答弁したとおりでありますが、この臨財債自体の問題意識についてはしっかりと持っておりますので、そういう観点で国に対しては引き続き廃止を求めてまいりたいというふうに思っております。

 以上です。

 

◆小林東一郎

 

 今御説明がありましたように、元利償還金の全額が地方交付税の算定式に加えられるといっても、後年の交付税がキャッシュベースでふえるということを必ずしも意味をしていないわけであります。また、臨財債の実態は、先ほど総務部長の答弁にもあったように、経常支出を債務で賄うというものであります。つまり、人件費の一部ですら後年度負担に回していることになります。可能な限り子供たちの世代にツケを回さないどころではないのです。

 このような臨財債の本質をわかりやすく県民に説明する必要があります。いかに県民の注意を喚起されるおつもりか。また、ルール変更のためいかなる行動を新たに起こしていかれるのか。知事にお聞きをいたします。

 次に、県組織のコンプライアンス確立について伺います。

 大北森林組合の補助金不正受給事案に続き、県組織において法令を逸脱する事務処理、公務員としての倫理感覚の欠如、あるいは県民益の喪失といった問題が次から次へと表面化しています。もういいかげんにしてくれというのが偽らざる県民感情でしょう。

 それにしても疑問に思うのは、事態が組織内で発覚してから公表に至るまでの時間の長さです。道路占有料の未徴収問題では4カ月、産業廃棄物の許可証偽造交付においては8カ月を要しています。慎重に事実確認を行う必要があったためと説明されていますが、なぜこれほどの時間がかかるのか。知事にお聞きします。

 事実確認に時間がかかるのは、コンプライアンス推進室の機能が十分でない証左ではありませんか。人員配置を含め、推進体制を整え、迅速な事務処理に努めるべきでは。これも知事にお聞きします。

 道路占有料未徴収問題では、2,200万円に上る多額の徴収漏れがあり、そのうち1,000万円余は時効となっています。データベースへの未登録という人為ミス、それに年度がわりの突き合わせチェックの未実施が重なったとの説明ですが、その責任の所在は明らかになっていません。問題が発生した原因やけじめのつけ方等を県民にきちんと説明する必要があります。建設部長、御説明ください。

 産業廃棄物の許可証偽造交付問題では、県職員による公文書偽造に該当することが明白であるにもかかわらず、刑事告発はされていません。なぜ告発を見送ったのか。環境部長に御説明をいただきます。

 教科書会社の三省堂が県内の中学校長に検定中の教科書を見せ、謝礼を渡していた問題で、教育長は、教科書を見せるほうの問題とし、教員が教科書編集に携わることや謝金を受け取ることに問題はないと昨年11月に表明しておられます。その後、文科省の調査によって新たに25名の教員が検定中の教科書を見せられ、意見を言ったことで謝礼を受け取っていたことが判明していますが、以前の見解のままで変化はないのでしょうか。

 また、26名のうち9名が、その後、教科書採択の地区調査員に委嘱されています。調査員からすれば、教科書会社は利害関係者に当たるのではありませんか。県教委は3月中旬までに事実関係を調べ、文科省に報告するとしていますが、早急に調査し、今議会中に県議会にも報告すべきです。これは、来年度末に退職予定の教育長がなすべき責務であるはずです。

 以上、教育長に伺います。

 

◎知事(阿部守一)

 

 まず、臨時財政対策債についての追加の御質問でございます。

 いかに県民に注意喚起するかということであります。これは、財政状況、私どももわかりやすく公表に努めていかなければいけないというふうに思っておりますし、先ほど申し上げた臨時財政対策債、これは、そもそも、地方財政、国と地方の関係がかつての交付税特会の時代から、例えば2分の1折半ルールとか、テクニカルな部分がありますので、このことの詳細を県民の皆様方に理解いただくのはかなり難しい部分があると思います。ただ、財政状況として、県債残高がどうなっているのか、今後の財政見通しがどうなっているのか、そういうことはしっかりと公表させていただいているところでありまして、これは小林議員もぜひ議員として県民の皆様方に財政状況をわかりやすくお伝えいただく工夫をしていただけるとありがたいと思いますし、我々も、これからもしっかり財政状況の認識を共有して県民と一緒に進んでいけるように、さらなる工夫をしていきたいと思います。

 それから、新たな行動をどうするかということでありますが、これは、先ほど申し上げましたように、この臨時財政対策債の問題については、もう毎年のように国に対して求めてきております。繰り返しになりますけれども、総務省の幹部もこの問題は十分認識をしております。ただ、お金の問題でありますから、この臨時財政対策債を廃止したときの財源が打ち出の小づちのようにどこかから出てくるという話ではありませんので、国においても十分問題意識を持った上で、しっかりこの臨時財政対策債をなくす方向での取り組みをしてもらいたいということは、これからも、これは長野県単独ではなくて知事会等でも同様の問題意識を持っているわけでありますので、ほかの県とも連携して引き続き取り組んでいきたいと思っております。

 それから、コンプライアンスの問題についていろいろ御質問いただいておりますが、私に対しては、まず発覚から公表までの時間とそれから体制について御質問をいただきました。

 まず、さまざま問題が起きているということは大変私も遺憾に思っておりますし、私の立場は、県組織を統括する立場であると同時に、やはり県民の皆様方の代表者でもありますから、非常に両面あって、組織のモチベーションも維持しながら、しかしながら、県民の皆様方の厳しい声も真摯に伺いながら、厳正な対応をしていかなければいけないというふうに思っております。

 時間がかかることについては、これも会見で御質問ある中で、全ての問題ではありませんけれども、私からももっと短縮すべきであるということをこれまでも申し上げてきております。ただ、一概にどれぐらいの期間だったら早かった、遅かったというのはなかなか難しい部分もあります。道路占用料の未徴収の問題については、これは徴収すべき相手方が法人でございました。その中で、相手方サイドで多くの関係者への説明、対応が相当の期間が必要だったこともありますし、また、相手方にも対応していただかなければいけない部分もあるわけであります。

 公表することによって、これは我々に問題があるわけですけれども、相手方に対して新たな不利益を及ぼすということがないように慎重を期さなければいけないこともあるということはぜひ御理解いただきたいと思います。

 また、産業廃棄物の許可証偽造の交付についてでありますが、これはまさに許可した相手方、被害者になり得るわけでありまして、これも私ども県としての十分な説明、あるいは御理解をいただくということが必要であります。そういう意味で慎重な対応が必要でありますし、また、実はこの件とあわせて、大量の未処理書類が発見をされております。この大量の未処理書類の中に同様な案件があり得るのではないかということで確認をいたしました。200件を超える大量の未処理書類があったということで、私ども不十分な状況で発表することになりますと、本当はもっといろいろ問題があるけれども、一部だけ公表するということになってしまってもいけないということで、事実確認に時間を要したということであります。

 しかしながら、こうしたものについては、私としてはより短期間での公表が可能となるように取り組んでいくということが重要だと思いますので、今後とも各部局と総務部コンプライアンス推進室がしっかり連携をして、適切な対応を行うことができるように取り組んでまいります。

 また、コンプライアンス推進体制についてでありますが、昨年9月にコンプライアンス推進室を設置をいたしました。コンプライアンスの専門家として、コンプライアンス推進参与を任命して取り組んでいるわけであります。来年度は体制を強化いたしますが、これは各部局にコンプライアンス推進委員会を設置をいたします。そして、各部に責任者を置いて、全庁一丸となって迅速かつ的確な事務処理を行うように取り組んでまいりたいと考えています。

 以上でございます。

 

◎建設部長(奥村康博)

 

 道路占用料未徴収問題の発生原因、けじめのつけ方等に関するお尋ねでございます。

 長期にわたる不適切な事務処理により1,000万円を超える多額の道路占用料を徴収できなくなったことにつきまして、県民の皆様に深くおわび申し上げます。

 今回の事案は、コンプライアンス確保の取り組み強化の一環として、建設部現地機関の事務執行状況の徹底的な調査を行ったところ、判明したものでございます。道路占用料は、県企業局の場合は全額免除でありますが、一般ガス事業者への事業譲渡後は有料となります。徴収漏れは、この変更を事業譲渡時に道路占用台帳システムに登録しなかったという事務処理の誤りに端を発しております。その後、占用許可更新手続の際など、誤りをチェックできる機会があったと思われますが、既にシステム内に登録されていたデータが正しいと考え、十分な確認が行われなかったことが未徴収が長期化した原因となっております。

 なお、こうした徴収漏れの経過や原因につきましては、1月8日に把握している状況をできるだけ詳細に公表させていただきました。現在、関係した職員から状況を詳細に報告させており、担当部署においてその内容を確認した上で、責任の所在を明らかにし、基準に照らして処分が行われると考えております。

 建設部といたしましては、こうした事案が発生しないよう、占用許可マニュアルの見直しやチェック体制の強化など、再発防止に取り組んでおります。今後もより一層の事務処理の適正化に向けて部を挙げて取り組んでまいります。

 以上でございます。 

 

◎環境部長(青柳郁生)

 

 初めに、廃棄物行政の信頼を揺るがすこのような不祥事を生じさせてしまったことにつきまして、改めておわびを申し上げます。

 廃棄物処分業許可証を偽造した職員について、告発を見送った理由についてのお尋ねでございます。

 理由といたしましては、許可証の偽造交付を受けた事業者は既に許可を有しており、今回の更新許可申請時も許可の更新に必要な条件を満たしていたため、通常どおりの手続を行っていれば許可が更新となっていたものであったこと、そして、事業者に金銭面での被害、損害が生じていないこと、また、この職員自身が私腹を肥やすような行為ではなかったこと、また、事業者に県の謝罪を受け入れていただいたこと、こうした理由などから総合的に判断し、コンプライアンス違反の非違行為として対応することが適当と考えているところでございます。

 チェック体制の整備と職員の法令遵守を徹底し、再発防止に取り組んでまいります。

 以上です。

 

◎教育委員会教育長(伊藤学司)

 

 教科書検定本閲覧事案に関しますお尋ねに順次お答えを申し上げます。

 まず、昨年11月の私の見解についてのお尋ねでございますが、議員御指摘の点は、昨年11月の教育委員会の定例会後に行った記者会見で、記者の質問に対し私が答えた内容を指しているというふうに理解をしてございますが、この会見で私がお答えをしましたのは、検定中の教科書を見たことについて問題はないのかという記者の質問に対し、「その該当の教員が自分にその意図がない会議に出たときに、教科書会社の方から検定中の教科書を見せられてしまったというのは、見た本人を責めるというのは余りに酷なこと、この点については三省堂側の問題、見た側の問題はないと思っている」という発言と、一般論とし、「教員が教科書の執筆を行ったり、教科書の編集に携わったりするという行為は何ら問題がないことで、それに対し、謝金を受け取ることも特段問題はない。特に休日の活動である。例えば、原稿を執筆したら執筆料をもらうとか、講演を行って対価とし講演料をもらうとか、通常の謝金としていただくことは特段問題ではない」という発言をしたところでございまして、この点を指しているというふうに思いますが、この見解は今も同じでございます。

 次に、調査員と教科書会社との関係についてでございますが、検定中の教科書を見せられた教員は、教科書を見せられた時点においては、採択に関する権限を有しているわけではございませんので、当該の教科書会社と利害関係者ではないというふうに考えてございます。また、その後、その教員が採択地区の調査員を引き受けたとしても、調査員自体は教育長や教育委員とは異なり、教科書の採択権者ではない、採択権限は有してはおりませんので、いわゆる国家公務員倫理規定等で定めます利害関係者には直ちには当たらないというふうに考えてございます。

 次に、教科書検定本閲覧事例の報告についてのお尋ねでございますが、現在、該当教員が採択結果に影響を及ぼしたかどうか等に関する事実関係を詳細に調査をしているところでございます。具体的には、調査員となった該当者が調査員会でどのような発言をしたかや、採択地区協議会に対しどのような資料を作成したかなど、該当者はもとより、それ以外の調査員や採択地区協議会の関係者などから幅広く事情を聞きながら調査を行っているところでございます。

 当時の調査員会や採択地区協議会の関係者は数十名に及んでおりますことや、また、関係者が異動したり、既に退職をしていらっしゃる方もおること、また、教科書会社の自己点検で名前が上がっていた教員のうち、検定本そのものやその内容を示すものを見せられていないと言っている者があって、現在、教科書会社にも繰り返し問い合わせをしていることから、事実関係の把握に一定の時間を要しているところでございますが、文部科学省への報告期限である3月11日までに何とか間に合うよう、今早急に調査を進めているところでございまして、調査結果が取りまとまり次第、その内容については公表してまいりたいというふうに思っております。

 

◆小林東一郎

 

 建設部長に再度お聞きをいたしますが、時効となった1,000万円余でありますけれども、これは、その関係の会社とどのような交渉をされて、それでその1,000万円余を時効であるから放棄したという結論に至ったのか。御説明をいただきたいと思います。

 それから、教育長にも再度伺いますが、地区採択の調査員、決定権がないということで、教科書会社は利害関係者ではないという御説明が今ありましたけれども、調査員の方というのは、では教科書がどのようなものであるかという調査だけをされて、教科書採択についての、この教科書がいいですよというような意見は申し上げられない立場なのか。その辺を再度お願いいたします。

 

◎建設部長(奥村康博)

 

 時効となりました1,000万円の徴収ができなくなった理由等についてのお尋ねでございます。

 この事案、把握後でございますが、徴収漏れが始まりました10年前までさかのぼりまして、占用実績や占用料の徴収状況を確認して未徴収額を確定いたしました。その上で、法令等に照らし、法律の専門家にも相談した結果、最大限徴収可能な金額を徴収しております。道路占用料の徴収権は、道路法の規定によりまして5年の時効で消滅するため、占用料としては請求も徴収もできないことになっているという状況でございます。

 以上でございます。

◎教育委員会教育長(伊藤学司)

 調査員と教科書採択に関する点についての再度のお尋ねでございますが、調査員というのは、それぞれの地区において採択地区協議会からの委嘱を受けて、検定教科書の内容を比較検討して、それぞれの教科書がどういう特徴があるのかと、こういうような特徴点をまとめる基礎資料をつくると、これが調査員に課された役割でございます。

 この調査員の資料の中では、どれをとるべきだとか、優劣を明確につけて出すのではなくて、あくまでその資料をもとにそれぞれの採択地区協議会、これは、地区ごとにそれぞれの市町村の教育委員長や教育長で構成をしてございますが、この採択地区協議会でそれらの資料をもとにしながら議論をして決定をしていく、そして、最終的にはそれぞれの市町村教育委員会の中で決めていくというような役割でございますので、そうした観点から見ると、先ほど申しましたように国家公務員倫理規定等に定める利害関係者ということには該当しないのではないかというふうに私は考えております。

 

◆小林東一郎

 

 今、教育長は、調査員は教科書の特徴等をまとめる役割があるということをおっしゃいました。ということは、検定中の教科書を事前に教科書会社から見せられた、教科書の中身をある程度そこで把握をしていった、ということは、事前にその中身を見ていたということで、その方が教科書の特徴をさまざま調べる調査員としての適格があったのかどうか。つまりは、教科書会社から教科書を見せられた事実があるということを県教委なり市町村教委なりに報告をされていたのかということであります。その辺の報告がされていたのかどうか、教育長に伺います。

 県は、これまで、大北森林組合の補助金交付決定に際し、必要な事前の現地調査を怠り、検査野帳に虚偽の記載をした県職員について、虚偽公文書偽造・同行使の疑いで告発を行ってきませんでした。そのことは、この事案が組合主導だとする県のこれまでの主張に沿う中での判断と推測するところですが、改めて告発を行わなかった理由を知事にお聞きをいたします。

      

◎教育委員会教育長(伊藤学司)

 

 検定途中の教科書の内容を見た者が調査員に就任をしたことに関する再度のお尋ねでございますが、私も、教科書採択の調査員を引き受ける段階で、みずからこういうような形で事前に教科書会社から申請本を見たので、この調査員の委嘱を御辞退申し上げたいと、こういうようなことを言うということは十分あり得たのではないか、その点、それを申告をせずに引き受けたという点に関しては、今後の教科書採択に疑念を抱かせるという観点ではいささか軽率な場面があったのではないかということは、これは昨年の11月の定例会見でも御指摘を申し上げたところでございます。

 しかしながら、従来、例えば教科書の執筆者になっているとか、編集委員になっていてつくっているということがあるかどうかということを、採択地区調査員をお願いするときに事前に当人に確認をするということは徹底をしておりまして、その点についてはこれまでもやってきたわけでございますが、申請中の図書を短時間ぱっと見たと、こういうようなものについて、逆に調査員を委嘱する側も、それはだめな行為なので申告しなさいというようなことを事前に伝えていなかった。これは、長野県だけではなくて全国で、このような事例がこれまで全くなかった中で想定をしていなかった部分でございますので、その点については李下に冠を正さずの点で、より注意義務を果たすことが可能であったのではないかと、今の時点では私は思ってはおりますが、その時点において、そのような判断をできなかった部分について、いささかより慎重にというふうには思っておりますけれども、そういった行為なのかなというふうに認識をしているところでございます。

 以上でございます。

 

◎知事(阿部守一)

 

 大北森林組合の事件に関連して職員に対する告発についての御質問でございます。

 刑事告発につきましては、議員の御指摘がありましたように、指導した組合に対して、今回、検証委員会の最終報告の中で、本件における組合による補助金の受給のうち、少なくとも全くの架空申請に当たる補助金受給については、補助金適正化法第29条に該当するとの評価を免れないというふうにされたことを踏まえまして、本事案の核心的な部分でもあり、因果関係が明確な箇所について8月の段階で告発をさせていただいたところでございます。

 一方、検証委につきましては、未完了事業の容認等の不適正申請の認識はあったものの、全くの架空申請を容認したというふうに私どもは考えておりません。こうした点が組合及び組合役員とは決定的に異なるわけでありまして、補助金適正化法違反での告発は行わないことといたしております。

 また、虚偽公文書作成・同行使についてでありますが、この一連の不適正事務処理の中の検査野帳の虚偽記載はその一部であります。一連の不適正な事務処理の全体像を明らかにした上で懲戒処分で対応するべきものというふうに考え、昨年12月の時点で関係職員の処分を行ったところでございます。こうした対応は、もとより私どもだけで勝手に判断するのではなくて、弁護士とも相談した上で慎重に対応させていただきました。こうした職員の一連の行為は、適正を欠く行為であることは言うまでもないわけでありますので、今後こうしたことがないようにしっかりと対応していきたいと考えております。

 以上です。

 

◆小林東一郎

 

 先ほどの環境部長の答弁では、金銭的な被害がなかったことが告発を見送る理由に含まれているとのことでした。ところが、検査野帳の虚偽記載は、実施されていない施業に対し多額の補助金を交付する決定を下すための判断基準となったものです。これを告発せずとのことなら、ダブルスタンダードをつくっていることになりますが、知事、いかがでしょうか。

 知事は、議案説明で、本年をコンプライアンス元年とし、県庁全体で意識改革や組織風土の改革に取り組む、しかも単なる法令遵守という受け身の対応にとどまらず、必要とあらばルール変更のための行動を起こす主体的、能動的なものとすると宣言されておられます。推進に私も期待をいたすところですが、その前に、法令逸脱の実態とそれへの対応を明らかにし、県民への説明がなければなりません。大北森林組合事案の全貌が解明されたとは言いがたいこの時点で、知事はみずからの給料を減額する条例案を議会に提出されましたが、時期尚早ではありませんか。先送りすべきと思うのですが、知事にお聞きします。

 

◎知事(阿部守一)

 

 告発に関連して、先ほど林務部長の答弁との関係性についてお話がありましたが、先ほどの部長からの答弁は事業者の金銭的被害という答弁でありまして、今回のケースは、事業者に金銭面での被害、損害が生じてないことということで御答弁させていただいたと認識しておりますので、そういう意味では必ずしも同じ状況ではないと。ただ、そのことだけで環境部も対応したわけではありませんし、私どももその御指摘いただいた1点のみで判断をしているわけではないというのは先ほど申し上げたとおりでございます。

 もとより、冒頭申し上げましたように、私は県民を代表する立場でありますから、県の組織あるいは職員に対しても厳しく対応しなければいけないということで、正直断腸の思いでやらなければいけないことも責任を持ってやらせていただいているところでございます。県民の皆様方の利益を考え、県民の皆様方がごらんになったときに不信を招くことがないようにという思いで日々さまざまな問題に取り組んでいるところでございます。

 私の給与削減条例、先送りしてはどうかということでございますが、今回提案させていただきましたことは、これは大北森林組合の問題についてのものでございます。県職員に対しましては、昨年12月の段階で、今回の事案にかかわった25名に対しまして、厳正な懲戒処分等を行わせていただいたところでございます。それとの関連で、私も知事としての責任を明らかにするために条例案を提出させていただいているところでございますので、ぜひ御理解を賜りますようお願いを申し上げます。

 以上でございます。

 

◆小林東一郎

 

今、産業廃棄物業者の金銭的な損失がなかったからだというふうに知事はお答えになりました。大北森林組合の問題で最大の被害を受けているのは県民であります。知事は県民の被害ということをどのようにお考えですか。御答弁をいただきたいと思います。

 

◎知事(阿部守一)

 

 告発との関連での一連の御質問でありました。告発の問題については、これは私から申し上げるまでもなく、法的な整理をしっかりと行った上で行わなければいけないわけであります。県という公の組織が告発という行動に進む以上、しっかりとした因果関係、厳密な因果関係を明確にした上で取り組まなければいけないというふうに思っております。

 もとより、県職員のさまざまな不祥事、とりわけ、今回の大北森林組合の問題は、私自身も大変大きな問題であり、県民の皆様方の信頼を裏切る行為だというふうに思っております。そうした思いを込めて、これまでも私は知事として責任ある行動をとらせていただいてきております。今回も給与削減の条例を提案させていただいているわけでありますが、ぜひ県議会の皆様方にはこのことはお認めいただいた上で、県職員が本当に思いを共有して県民のための組織に生まれ変わるように、私自身しっかりと取り組んでいきたいというふうに思っております。どうか県議会の皆様方にも私どものこれからの取り組みにぜひ御協力をいただきたいというふうに思いますし、私は、引き続き、県民の代表として、正直言って非常に苦しい判断のこともあります。しかしながら、職員のことを思うと同時に、県民の皆様方のこともしっかり考えて責任ある知事としての務めを果たさせていただきたいというふうに思っております。

 以上でございます。

 

◆小林東一郎

 

 次に、林業行政のあり方について伺います。

 来年度当初予算案では、補助金不正受給事案の反省に立ち、地域要望を踏まえた適正額を計上した結果、信州の森林づくり事業、里山整備事業が前年度対比でそれぞれ84.6%、75.1%に減少しています。それでは、本年度までアクションプラン達成のため過度な予算消化を地域に強いてきたのかとの疑問も生じるのですが、内実は京都議定書の目標達成に向けた森林吸収源対策としての間伐が進んだことに加え、森林づくり事業では補助制度の厳格化、里山整備事業では保育間伐の施業要件に該当する里山が、集約化がより困難なところや広葉樹林に限定されつつあるという実態の反映ではありませんか。林務部長に伺います。

 毎年、森林の齢級は上がっていくのですから、里山整備の対象となる森林は減るばかりです。ここから予測される懸念は森林税活用事業の先細りであり、大北森林組合事案も絡んで、県民の森林税に対する不満が増すのは明らかでしょう。現在、審議中の森林・林業基本計画の改正素案において、戦後造成された人口林の半数以上が10齢級の主伐期を迎えており、森林資源を循環利用することが大きな課題、生産性向上のため森林組合等による森林の保育、保有、経営の円滑化を図るとされていることからも、森林税の使い方の抜本的な見直しあるいは税廃止も視野に入れ、早急に検討を開始すべきですが、知事の御見解を伺います。

 

◎林務部長(塩原豊)

 

 林業行政のあり方として、信州の森林づくり事業等の予算についての御質問をいただきました。

 信州の森林づくり事業とみんなで支える里山整備事業につきましては、これまでは森林づくりアクションプランの間伐目標面積などに基づき予算計上してまいりましたが、平成28年度の予算要求では、今回の事案の反省を踏まえて、林務部コンプライアンス推進行動計画に基づき、林業事業体からの要望の聞き取りを予算編成前の9月に前倒しして実施するとともに、実行可能な地域要望を踏まえた額を予算計上したところでございます。

 具体的には、国庫補助事業である信州の森林づくり事業につきまして、林業事業体の要望量を基本としつつ、国の予算編成の動向も勘案して、県産材の安定供給に向けた搬出間伐を優先するなどの精査を行ったものでございます。

 また、森林税活用事業でありますみんなで支える里山整備事業につきましては、林業事業体からの要望に沿って平成28年度の間伐面積を設定したものでございますが、各地域の課題を現場ごとに確認をして効果的な里山整備が進むよう努めていく必要があると考えております。

 以上でございます。

 

◎知事(阿部守一)

 

 森林づくり県民税のあり方についての御質問でございます。

 これまで、森林づくり県民税の活用によりまして、里山の間伐を重点的に実施し、山地災害の防止等、県民の皆様方の安心、安全な暮らしの確保に成果を上げてきたものというふうに考えております。一方で、今回の事案を重く受けとめまして、森林税活用事業におきましても、地域の要望を踏まえた適正な予算額の計上や不適正申請の再発防止に徹底して取り組んでまいります。

 森林づくり県民税の今後のあり方については、地方税制研究会や森林づくり県民会議などの御意見を伺い、県民の皆様の御理解が得られるものとなるよう検討してまいりたいと考えています。

 以上です。 

 

◆小林東一郎

 

 次に、温暖化対策について伺います。

 昨年12月のCOP21でパリ協定が採択されました。地球の平均気温上昇を産業革命前の水準より2℃より低く抑え、1.5℃に近づくよう努力する目的に向かって世界全体がスタートラインにたどり着いたことになります。全ての国に温室効果ガス削減目標の策定や国内対策が義務づけられ、我々はどのような社会をつくっていくかという重い宿題を突きつけられたとも言えます。パリ協定の意義をどのように捉えておられるか。中島副知事にお聞きします。

 我が国では、依然として、我慢、辛抱といった否定的な印象を温暖化対策に抱いている人が多いようです。昨年7月、科学技術振興機構が行った世界市民会議「気候変動とエネルギー」、これには76カ国、1万人が参加していますが、ここでの意識調査結果を見ると、「気候変動対策は生活を向上させる」と考える市民は世界全体で66%であったのに対し、日本ではわずか17%、「気候変動対策は生活を脅かす」とするのは世界では27%、日本では60%、我が国では新たな発想など望むべくもないことがここに示されています。変えるべきは、まず国民の意識でしょう。その意味で、県民の啓発活動のあり方を根本的に見直す必要がありますが、このような観点は新年度予算に取り込まれているでしょうか。環境部長に伺います。

 パリ協定は、今世紀後半に温室効果ガス排出を実質ゼロにする明確な将来像を示しています。県の温暖化対策もボトムアップ式に何ができるかではなく、バックキャスト的に何が必要かという視点が欠かせないことになります。目指すべき社会実現のための能動的な政策が求められますが、いかに取り組まれますか。また、長野県地球温暖化対策条例は、低炭素社会、脱炭素社会構築を目的とするものに改定すべきですが、どのような御認識をお持ちでしょうか。知事にお聞きします。

 

◎副知事(中島恵理)

 

 パリ協定の意義についての御質問をいただきました。

 COP21で採択されたパリ協定の意義は、まず全ての国が温暖化対策に参加する枠組みとなったことでございます。この点が、先進国のみに温室効果ガス排出削減目標を課し、アメリカや中国等の主要排出国が参加しないことで公平性や実効性に課題のあった京都議定書と大きく異なっております。

 また、世界共通の長期目標として、気温上昇を産業革命前に比べ2度未満に抑え、1.5度以内に向けて努力するという目標に合意されておりますが、これによりまして、今世紀後半に温室効果ガスの排出量と吸収量をバランスさせるという非常に高い目標が合意されたということでございます。こういった高い目標の達成に向けて、全ての国が削減目標を5年ごとに提出、更新し、取り組み状況について国際的なレビューを受けることになっております。こういった新しい枠組みのもとで、先進国である日本が、そして長野県が率先して長期目標達成に向けた道筋を示していく必要があるというふうに考えております。

 以上でございます。

 

◎環境部長(青柳郁生)

 

 県民に対する温暖化対策の啓発についてお答えいたします。

 温暖化対策の啓発といたしまして、まずは県民総ぐるみの節電、省エネ運動であります信州省エネ大作戦を県民生活や経済活動に影響を及ぼさない、むしろ経費の節減や生活の質の向上に資する取り組みとして展開しております。

 具体的には、家庭の暖房機をとめて身近にある暖かく快適な場所やイベントへの外出を促すあったかシェアプロジェクトや、電気代の節約効果を明示した節電・省エネアクションメニューの紹介などを行っております。

 さらに、ガスや電気のエネルギー供給事業者が家庭を訪問した際に省エネをアドバイスする家庭の省エネサポート制度を実施しております。具体的には、省エネ性能が高い家電機器を選択することや、省エネにつながるガス、石油機器の使用方法など、無理をしなくても家庭の経費を節減できる省エネのアドバイスを行っております。

 これら普及啓発事業の平成28年度予算案として764万円をお願いしているところでございます。さらに、地球温暖化による気候変動がもたらす生活への影響につきましても、引き続き国や他の自治体とともに広く周知を図ってまいります。

 以上です。

 

◎知事(阿部守一)

 

 低炭素社会の構築に向けて能動的な政策が求められるがいかに取り組むのか、また、低炭素社会構築を目的とするものに条例の改定が必要ではないかという御質問でございます。

 私ども長野県としては、低炭素な地域社会を目指して、バックキャスティングの考え方も踏まえて、2050年度という長期の温室効果ガス削減目標を含む長野県環境エネルギー戦略を平成25年に策定をさせていただいております。この戦略に基づきまして、自然エネルギー信州ネットと連携して地域主導型の自然エネルギー事業を促進するとともに、家庭の省エネを支援する取り組みなどを展開してまいっております。

 また、長野県地球温暖化対策条例につきましても、低炭素社会を目指す観点から、平成25年3月に大幅に改定をいたしまして、事業活動や建物の省エネを促進する先進的な制度を導入したわけであります。こうした一連の取り組みは、私はほかの地域と比べても進んだものが多く含まれているというふうに自負をしております。

 先日、すぐれた温暖化対策の取り組みを表彰いたします低炭素杯2016におきまして、本県の温暖化対策が全国の自治体の中で最優秀と評価され、ベスト長期目標賞の大賞にも選ばれたところでございます。低炭素な地域社会を実現するため、引き続きさまざまな対策を進めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

 

◆小林東一郎

 

 先ほどの部長の答弁で、無理なくという表現がありました。無理なくということを裏返せば、我慢、辛抱だと思うんですよね。私はそうではなくて、より生活を豊かにする温暖化対策、その視点で啓発をお願いをしておきたいと思います。

 知事は、産業イノベーション創出が産業政策の柱の一つであると今議会で繰り返し答弁されていますが、なぜ脱炭素社会を創出する産業に言及されないのか、私には疑問でなりません。パリ協定が産業に与えるインパクトは極めて大きなものになるでしょう。世界が脱炭素社会へのシフトを強めればチャンスを失うことになりますが、知事にお聞きします。

 

◎知事(阿部守一)

 

 産業政策の中でのイノベーション、もとより、エネルギー分野であったり、あるいは低炭素社会に向けた取り組みは重要だというふうに思っております。長野県としては成長産業分野として、健康、医療、あるいは航空・宇宙、環境エネルギー、こうしたものをしっかりと位置づけて進めていこうというふうにしているわけでありまして、今回の予算の説明資料の中に低炭素社会ということが入っていないから環境エネルギー分野は取り組まないということではありません。そうした分野も視野に入れてしっかり取り組ませていただきたいというふうに思っております。

 以上です。

 

◆小林東一郎

 

 最後に、子供の貧困対策について伺います。

 知事は私の貧困のコストについての質問に答え、長期的に見れば子供期の貧困対策は将来的な社会的コストを下げるばかりではなく、社会の安全性、暮らしの豊かさ、そのような面からも子供の貧困にしっかりと向き合っていかなければならないとされています。であれば、来年度、子供の貧困対策のパッケージとして盛られた各施策を期間限定の取り組みとすべきではありません。新規事業や拡充される事業の長期的な財政の裏づけはなされているのか。県民文化部長に伺います。

 子供の貧困対策は、子供だけへのサービスでおさまるものではありません。知事が直接的な支援と親の雇用対策が重要と言っておられるとおり、子供の生活支援を目的とするならば、子供の生活に決定的な影響を持つ親が抱えるさまざまな問題を解決しなければならないのは明らかです。

 しかし、子供の教育や福祉の現場におけるアプローチは不足、例えば生活の支援にまで踏み込めない児童相談所の現状があります。また、親の精神疾患や失業に対処する現場においても、では家庭の状況はどうなのだろうというところにまでは届いておりません。親の暮らしを総合的にサポートするメニューの拡充が求められているのですが、今後、政策パッケージに加えるべき具体的な施策は何か。また、その推進に向けての意欲を知事にお聞きをいたしまして、私の質問を終わります。

 

◎県民文化部長(青木弘)

 

 子供の貧困対策に関連しましてのお尋ねでございます。

 新規・拡充事業の長期的な財政的な裏づけのお尋ねでございますけれども、今回予算化いたしました新規事業のうち、県独自事業でございます県内大学就学のための奨学金給付事業及び児童養護施設入所児童の未来支援事業につきましては、企業局の電気事業の剰余金を活用した長野県こどもの未来支援基金による事業でございます。この基金への繰り出しにつきましては、長野県公営企業経営戦略におきまして、企業局の新たな地域貢献として平成28年度からの10年間で年5,000万円ずつ繰り出すこととされているところでございます。

 また、子供の居場所づくりモデル事業でございますけれども、このようにモデル事業の実施及びその検証を通じまして、今後の施策の展開につなげるものにつきましては、地方創生加速化交付金を活用するなど、事業の性格に合わせて財源を選択しているものでございます。その他の新規拡充事業につきましても、国の補助制度を活用しておりますけれども、今後とも必要な財源が確保されるように取り組んでまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

 

◎知事(阿部守一)

 

 子供の貧困対策、これは今回、政策パッケージとしてお示しして、各部局の施策を連携して進めていこうと思っております。ただ、小林議員の御質問の中でも、親を含む家族を総合的にサポートする必要と、これは大変重要だと思っておりまして、どうしても教育費の支援等は、やはりある意味対症療法的な話にとどまってしまいかねない部分があります。そういう意味では、就労支援等も含めて家庭全体を視野に入れて対応していくということも大変重要だというふうに思っております。

 今回、例えば重点的な取り組みとして、計画の中でもアウトリーチ型支援による要支援家庭の孤立化防止ということを掲げております。来年度は母子保健推進センターの拡充、あるいはスクールソーシャルワーカーの大幅な増員等でこうした部分を強化していきたいというふうに思っております。

 今後ともこの問題、引き続き全庁を挙げてしっかり問題意識を持って、本当に子供たちが安心して暮らせる長野県に、そして親も含めて家族全体が本当に幸せな家庭になっていくことができるように応援をしていきたいというふうに思っております。

 以上です。