平成27年 9月定例県議会 発言内容(山岸喜昭議員)


◆山岸喜昭

   

 おはようございます。早速、スタートを切らせていただきます。

 先般、知事初め日韓親善促進議員連盟及び在日大韓民国民団本部関係者とともに、戦後70年、日韓国交正常化50年の節目の年を迎え、国中で光復節を祝う韓国を訪問してまいりました。日韓の首脳同士の会談は途絶えたままですが、両国の自治体や民間は交流の糸口を探っております。今回の事業の目的としまして、長野県知事としては初めての韓国訪問であり、これまで交流のなかった韓国の自治体との関係を構築することは、戦後70年という大きな節目であることしを国際関係再構築年と位置づけ、日韓国交正常化50年を迎え、新たな海外での地方間交流を進め、協力・連携関係をこれまで以上に深めていく目的であります。

 特に、アジアの近隣諸国との安定的かつ将来的な友好交流の推進は最も重要であることから、今回の長野県知事がトップセールスとして、また日韓議連のこれまでの交流とあわせ、在日大韓民団の皆さんとともに訪問できたことは、長野県と韓国における新たな地方間交流関係の構築を図るための大変意義ある訪問であったと捉えているところであります。

 アシアナ航空の金社長と知事、日韓議連との会談が行われ、信州まつもと空港への国際チャーター便運航について議論され、知事からは、将来を見据え、韓国との友好交流をさらに深め強化するためには人と人の顔が見える関係で交流していくことが大切であり、そのためには互いに行き来、往来をこれまで以上に盛んにしていくことが大変重要で、利便性向上のためには航空機の就航が確保されることであると信州を結ぶ国際チャーター便就航の実現に向けての要望をしたところであります。

 アシアナ航空側からは、日韓の路線は25年の歴史があり、各地に路線を就航させ、日本には格別な愛情を持っており、長野県のすぐれた自然環境などから松本へのチャーター便利用は見込めると大変前向きな回答をいただきました。

 しかし、松本空港は、将来、国際定期便就航につなげるためには多くの課題があり、滑走路の長さが比較的短いために運航できる機体の制限や計器着陸装置の設置、空港におけるチェックシステム、国内線、国際線の搭乗、到着ロビーの設置など多くの機能上の制約を抱えております。

 企画振興部長にお聞きします。

 開港50年を迎え、これまで空港の改善はどのようにされてきたのか。

 アシアナ航空側からは、滑走路が2,000メートルでは短い、離着陸に難易度と制限があるとの指摘があり、安全運航のために慎重なる検討が必要であるが、その解決策はどのように考えているのか。

 滑走路へ着陸する際には視界が悪い状況でも着陸ができるILSという正確なコントロールを用いた進入方式がありますが、最近では最新方式のRNP-ARの運用が始まり、一部の空港では運用されているとお聞きします。この方式は、性能準拠型の運用により精密な直線、曲線経路を設定することで最終進入経路を曲線を描いて滑走路に進入するシステムで、長い直線が必要なく、着陸時の飛行ルートが短くなり、時間の短縮と燃料の節約につながり、これにより正確に空港におりられることになり、ILSの導入より費用も安く、決心高度もさらに低くなることから松本空港への導入も考えていく必要があると思うが、お考えをお聞かせください。 

  

◎企画振興部長(小岩正貴)

 

 山岸喜昭議員からの信州まつもと空港の改善についての御質問にお答え申し上げます。

 まず、滑走路への指摘に関する解決策についてでございます。

 昭和40年に開港しました信州まつもと空港は、平成6年7月に滑走路をそれまでの1,500メートルから2,000メートルに延長し、小型ジェット機の就航が可能な空港として整備をされたところであります。一方で、標高が高く、周囲に山々が存在するという立地条件や滑走路の長さの限界から、運航の難易性や就航可能な機材の制約といった課題も引き続きあるところでございます。

 しかし、最近では離陸距離が比較的短い機材の開発、導入が進んでおり、信州まつもと空港の現状の滑走路でも離着陸可能な機材の幅は広がってきております。また、さらなる安全運航の観点からはGPSを活用した滑走路への新たな進入方式も広がりを見せつつある状況でございます。これら最新機材や最新技術の動向を注視し、積極的に導入できるよう関係者を交えた意見や情報の交換に努めてまいりたいと考えております。

 次に、最新の着陸方式の導入についてでございます。

 御指摘のありましたRNP-ARは、GPSを活用した滑走路への新たな進入方式でございます。この方式が導入されれば、飛行経路の短縮や就航率向上のほか、安全性の向上にも効果があると認識をしております。この方式は、空港など地上施設の改修は不要であるものの、就航する航空会社においてこの方式に対応するような機材の改修やパイロットの訓練が必要とされるところであります。

 国土交通省では、就航する航空会社がこの条件を満たし、導入の効果が高いと見込まれる空港から順次飛行経路の設定を行い、導入を進めているところであります。現在、国内では16の空港で運用されているものと承知をしております。

 信州まつもと空港への導入に向けてはまずはFDAの対応が必要となることから、県といたしましてはFDAと密接に情報交換をしてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

  

◆山岸喜昭

 

 訪日外国人旅行者の急激な増加は目をみはるものがあり、韓国からも年間275万人の来訪者が利用をしております。この好機を最大限に生かすために海外からの受け入れ態勢の整備をさらに進める必要があり、チャーター便の運航は長野県のインバウンド拡大の切り札でもあるわけであります。

 長野県はポテンシャルが高いと言われ、海外からの利用は十分に見込めると思うが、アシアナ航空や旅行会社への旅行商品化に向けて、松本空港が海外からチャーター便などに利用可能だということを知っていただくことが重要だと考えております。

 まず、企画振興部長にお聞きします。

 一定期間チャーター便を運航するプログラムチャーターを行う場合は、現行の着陸料の免除に加え、新たな支援策を検討する旨を伝えたが、チャーター便就航に向けた具体的な支援策とはどのような支援を考えているのか。

 また、アシアナ航空側からは、最新の情報をいただければ再検討し運航に向けて検討すると大変前向きな回答をいただき、チャーター便就航に向けたチャンスが目の前に来ておりますが、アシアナ航空への情報提供も含め、どのように生かしていくのか。

 松本発の国際チャーター便についてはFDAによる運航も県や松本市が連携し働きかけていくべきと思いますが、どのように考えているのか。

 また、知事にお伺いいたします。

 国内線や定期便就航に向けて改善要求が強く望まれており、これから空港の利便性向上について今後どのように取り組んでいかれるのか。お聞きします。

      

◎企画振興部長(小岩正貴)

 

 チャーター便の就航につきまして私には大きく3点御質問をいただきました。順次お答え申し上げます。

 まず、プログラムチャーター便に対する支援策についてでございます。

 信州まつもと空港の国際チャーター便につきましては、平成17年より航空会社に対し着陸料の全額免除措置を行っております。また、主催する旅行会社に対しましても、信州まつもと空港利用促進協議会によって往復で14万円の助成を行っているところであります。

 一定期間を連続して運航するプログラムチャーター便につきましては、県内観光の振興や地域経済の活性化への効果が見込まれるところであります。そのため、その就航に向けてさらなる支援を実施していく必要があると認識をしております。例えば、県内での宿泊を条件に、ツアー経費に対して利用促進協議会を通じてさらなる助成を行うことなどが想定されるところであります。

 今後、航空会社や利用促進協議会の構成団体と調整を進め、具体的な支援策を打ち出してまいりたいと考えております。

 次に、アシアナ航空への情報提供についてでございます。

 今回の韓国訪問の後、早速、担当者がアシアナ航空名古屋支店に訪問し、具体的な情報交換を始めさせていただきました。この中では、需要創出策を含め、チャーター便の需要見込みについてさらに詰めていく必要があること、また、空港施設の充実に関する情報を共有していくことを相互に確認したところでございます。

 今後、これらの課題解決に向けた方策につきましてアシアナ航空とともにさらに検討を進め、プログラムチャーター便就航の実現を目指してまいりたいと考えております。

 3点目、FDAによる国際チャーター便の運航についてでございます。

 仮にFDAの国際線参入が実現すれば、信州まつもと空港の国際化に向けて願ってもないチャンスと認識をしております。一方、FDAといたしましては、将来的な構想として国際線への参入を視野には入れているものの機材の改修などの課題もあり、必ずしも直ちに実現するといった状況ではないとも伺っているところであります。

 引き続き、松本市など関係者を含め、FDAと密接な情報交換をする中で国際線への参入に向けた検討状況を注視してまいりたいと考えております。

 以上でございます。  

 

◎知事(阿部守一) 

 

松本空港の利便性向上についての取り組みという御質問でございます。

 信州まつもと空港、これまで以上に利用しやすい空港として発展し、本県の交通体系の中でより大きな役割を果たしていくことができるように県としても取り組む必要があると思います。新規路線の開設など就航路線の拡充ということがこうした観点で必要だと思っております。

 このため、県としては、昨年の12月に専門コンサルタントに対しまして調査、検討を委託をしているところでございます。年内には調査結果をまとめていただく予定になっております。現在、旅客動向の整理、あるいは航空会社へのヒアリング、旅客ターミナルビルなど空港施設の現況調査や課題整理等が行われているところでございます。今後、国際線を含め、ターゲットとすべき路線あるいは必要となる空港施設の機能強化について検討が進められるところというふうに聞いております。

 県としては、この調査結果を踏まえまして路線拡充と空港機能強化に向けた基本方針を本年度中に取りまとめて、信州まつもと空港の活性化に向けた取り組みを一層進めていきたいというふうに考えています。

 以上です。

 

◆山岸喜昭

 

 続きまして、交流についてお伺いします。

 ソウル特別市朴市長との会談では、ソウル市としても長野県を積極的にPRをし、多くの韓国人が訪問できるように取り組んでいきたい、困難なときに助け合う隣人としてともに共有し、長野県とソウル市が手を取り合って新しい時代を切り開いていきたい、節目の年を迎え、新しいきずなが生まれた長野県とソウル市が新しい歴史を刻むことができたらよいとの旨を示し、知事からも、国と国との関係も基本は人と人との人間関係であり、地方同士がさまざまな交流、連携をしっかりと行うことにより国と国との間も健全な関係が生まれる、ソウルと長野県との観光交流を進め、またスポーツ交流や青少年交流など一層の活性化を進めていきたい、ソウル市と長野県は観光地としての魅力を明確にし、お互いの交流を具体的に進めたいとの意向を示したところであります。

 また、江原道崔知事からも、冬季五輪の運営を学び、今後、長野県と行政同士の協議を開始し、可能な分野から交流を始めていきたい。特に長野県との交流に期待感を示しており、知事からも、江原道とは大変よく似ており親しみを感じる、今後、隣国同士の自治体同士としての新たな交流を開始したいとの旨を示しました。

 また、江原道議会も金議会議長からは、これまで萩原会長を初め日韓議連から2回の訪問を受け交流を積み重ねてきた、今後ともより一層の交流を深めていきたい。

 また、南日韓交流協会会長から、江原道議会と長野県議会との友好協定等についても提案され、今後もより深いものにしていきたいとの意向が示されました。

 また、江原大学校総長との会談では、知事から新県立大学への思いと大学校との交換留学や教員の交流などを要請し、辛大学総長からは、グローバル教育に力を入れており、新しい時代に通用する新しい人材を育成するという理念のもとに、長野県に新県立大学が設置された暁には交流を開始していきたいと交流に前向きな姿勢を示しました。

 姉妹提携に至る要件は、ともに共通性であります。民間の積み重ねてきたつながりと日韓議連、在日大韓民団の仲立ちもあり、かなり多彩で重層的な友好関係に発展するものと思われます。姉妹自治体交流には、相互理解や国際親善の推進、地域の振興、活性化、さらには国際社会の平和と繁栄への貢献といったところが期待をされます。

 知事にお聞きします。

 新たな交流の契機は、相手都市の要請や自都市内の要望を受けて、速やかに、かつ迅速に動くことが重要であるが、交流に積極的なソウル市及び江原道との交流は今後どのように取り組んでいかれるのか。

 海外の自治体との交流や姉妹提携に関し明確な考え方や意識を持ちながら、国際化の視点だけでなく、人材育成や観光、地域活性化など複眼的な視点を持ち、関係団体等との連携を図りつつ事業展開をすることが必要と思うが、どのように取り組まれるのか。

 また、新県立大学とソウル市立大学、江原大学校との交換留学生や教員の交流についての期待度はいかがか。

 今回、初めて知事と議員連盟が一緒に韓国を訪問することができましたが、その意義についてお聞きします。

           

◎知事(阿部守一) 

  

 今回の韓国訪問、そして国際交流についての御質問に順次お答えを申し上げたいと思います。

 まず、ソウル特別市、江原道との交流についてでございます。

 ソウル特別市は長野県から最も近い海外の大都市であります。近年、韓国においては登山ブームということもあり、私ども長野県の山岳高原観光というものと非常に観光面で親和性が高い地域だというふうに思っております。こうした観点で有望な交流の相手方であるというふうに考えておりまして、山岳高原観光のインバウンドを中心とした観光分野での交流を基軸として交流、連携を進めていきたいというふうに考えています。

 また、江原道、御質問にも引用していただきましたように、風土的にも景観の面でも長野県と非常に似ている地域だという印象を持っております。冬季オリンピック・パラリンピック開催地という共通項も有しているわけでございますので、スポーツを通じた青少年交流あるいは山岳高原観光分野での連携等を中心として幅広い友好提携関係を築いていきたいと考えています。

 それから、2点目の国際関係の基本的考え方でございます。

 これまでの国際交流、いわゆる友好交流ということで、姉妹提携しております河北省、ミズーリ州との交流を中心に行ってきております。今後とも、こうした友好提携を結んでいる地域との交流はさらに深めていかなければいけないというふうに思っています。と同時に、長野県の持つさまざまな課題や強みを国外の地域との連携の中で生かしていくという視点も重要だというふうに考えております。そういう意味で、観光であるとか、産業であるとか、大学連携であるとか、具体的なテーマや施策ごとに具体的な交流を進めていく必要があるというふうに考えています。

 こうした取り組みを進めていくに当たりましては、これは、県行政だけではなくて、御質問の中にもありましたように、さまざまな関係団体の皆さんとの連携が極めて重要だというふうに思っております。例えば中国との関係でいけば、長野県日中友好協会を初め関係の皆様方の長年の取り組みの上に関係を構築してきているわけでありますし、また、産業的な分野での連携ということを考えたときには経済団体の皆様方の御協力も重要だというふうに思っております。こういう意味で、行政だけではなくて県内のさまざまな団体の皆様方としっかり連携・協力関係を築く中で、ともども国際交流の発展に努めていきたいと考えております。

 それから、新県立大学とソウル市立大学校、そして江原大学校との交流への期待という御質問でございます。

 朴ソウル市長との会談におきましては、新県立大学が健康発達学部を有するということで、市長は、大変市民の健康長寿への関心が高いということにも触れていただいて、連携について前向きな御返答をいただいております。また、江原大学校の辛総長からは、新しい県立大学が設置された際には交流を開始していきたいという非常に前向きなお話を伺っています。

 今回の訪問を通じて、ソウル市立大学校あるいは江原大学校との交流について非常に大きな可能性があるというふうに考えているところでありまして、大変有意義な訪問だったというふうに思っております。

 今後、新しい県立大学の学生が交流先で学んでいくべき内容、あるいは長野県のほうにお越しいただく留学生にとって魅力的なカリキュラム、こうした検討を具体的に行ってまいりますので、そうした内容を詰めた上で開学後の正式な協定につながるように取り組んでいきたいと考えております。

 それから、議員連盟と一緒に韓国を訪問させていただいた意義についてということでございます。

 今回の韓国訪問、長野県議会日韓親善促進議員連盟の萩原清会長を初め議員連盟の皆様方と一緒にお伺いをさせていただきました。これは議員連盟の皆様方がこれまで韓国との間で構築してこられた交流の基礎があってこそのものというふうに考えておりまして、そういう意味では県議会議員の皆様方に感謝を申し上げたいというふうに思います。

 県としては、戦後70年という大きな節目の年であることしを国際関係再構築年ということで位置づけています。議員連盟の皆様方とともに韓国を訪問させていただいて、これまで必ずしも行政同士の交流が活発とは言えなかった韓国の自治体との交流をスタートしていくことができたということは大変大きな意義があるというふうに考えております。

 今後とも、県議会の皆様方の御支援をいただきながら、県議会と私ども車の両輪として、ぜひ顔の見える国際交流の関係を構築して韓国との交流も含めて海外的な交流を一層進めていきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

  

 

◆山岸喜昭

 

 御答弁、ありがとうございました。

 海外自治体との交流は、本県における国際化の推進だけでなく、地域の活性化、ひいては地方創生につながっていくものと考えております。その中でも、韓国を初め近隣のアジア諸国とはまだまだ交流を広げていく余地があります。こうした交流を進めていく上で、今回のような、知事がトップセールスで、また議会と一緒に訪問することは大変意義があることでありまして、また効果的であると感じたところであります。

 今後もこうした取り組みを積極的に進めていただくことを要望いたしまして、一切の質問を終わりといたします。ありがとうございました。