平成27年 9月定例県議会 発言内容(小林東一郎議員)


◆小林東一郎

   

 最初に、大北森林組合の補助金不適正受給について伺います。

 県は、大北森林組合不正受給等検証委員会の報告を受け、8月7日に、極めて多数の不適正申請を長期にわたり主体的、能動的に行ってきた大北森林組合に対しては、補助金返還請求はもとより、法令に基づく措置を講ずるなど厳正に対処するとともに、かかわった職員の処分についても厳正に対処し、事案を明確にするとした対応方針を決定、8月14日には組合と組合役員を補助金等に係る予算の執行に関する法律違反で刑事告発、同日、組合に対し最初の補助金返還請求を行っています。

 その後、組合専務理事が約7年間にわたり組合から1億円以上を着服していたことが発覚、組合は専務理事を解任する一方で、組合設置の大北森林組合補助金問題検討委員会は、私的流用は専務理事個人及び組合の責任とするものの、不適正受給そのものは県の主導によるとの報告書を公表、双方の主張は大きく隔たったままです。

 それでも解明に向け事態は動きつつありますが、県民の関心は、依然として、なぜ長期にわたり巨額の不適正受給が続いたのか、その構造と責任の所在を明らかにし、偽りにより投入された税をいかに取り戻すかに置かれています。

 そこで、林務部長に以下5点について方針決定後の対応をお聞きします。

 一つに、県は、組合に対し、2010年8月17日付の補助金交付決定を取り消し、5,956万4,200円の返還を命じていますが、いわゆる大北ルールに基づく不用萌芽除去については当時の北安曇地方事務所林務課の指導に沿ったやむを得ない施業と判断、国、県から交付された379万3,300円の返還を求めないとしました。

 では、この返還放棄分は誰が負担するのでしょうか。また、今後予定されている返還請求においても大北ルール該当分は返還を求められないとお考えでしょうか。そうした場合、請求を見送ることになるものは何件あって総額は幾らと見込まれていますか。

 二つに、組合に対し9月3日までに返還を求めた5,956万4,200円は返還がされましたか。返還がなされていない場合、延滞金の請求を含めどのような対応をされますか。

 三つに、林野庁は、不正な補助金を引き揚げなければ国民への背任行為となるとし、未施行で補助金を申請していた場合、その後事業を行ったとしても県に全額返還を求めるとの基本姿勢を示していると報道されていますが、検証委員会が不適正受給と判断した761件には林野庁が言うところの案件が含まれていますか。また、林野庁とはどのような方針で交渉をされていますか。

 四つに、組合の不適正受給のうち森林づくり県民税にかかわる不適正受給額は幾らですか。

 また、検証委員会は、北安曇地方事務所林務課内に、県単独事業は森林整備状況に弾力的な対応をするための事業であることから国庫補助事業に比べ柔軟に対応してもよいとの認識があったと指摘しています。これを前提に担当職員が補助金要綱を無視した流用を行っていた事実も明らかになっています。このことは、森林税の目的を損なうと同時に、県民の意思を著しく踏みにじるものです。県民にどのように説明されますか。

 五つに、検証委員会は、組合が補助金適正化法第29条第1項に違反するとしましたが、補助金を交付した側の担当職員が同条第2項に該当するかに関しては申請ごとに慎重な事実認定が必要と明言を避けています。

 個別の補助金申請が同条第1項に該当する違法な申請であると情を知って交付したか否かについての判断は県に委ねられたのですが、県は検証委員会が不適正受給とした761件についてそれぞれ事実認定を行ってきたのですか。

 

◎林務部長(塩原豊)

 

 大北森林組合の補助金不適正受給についての御質問に順次お答えをいたします。

 初めに、補助金返還を求めていない不用萌芽除去についてのお尋ねですが、第1回目の補助金返還請求では、不用萌芽除去にかかわる9件、379万3,300円については、補助対象事業の実施要件には適合しないものの、当時の北安曇地方事務所林務課の指導に沿って行ったものであり、やむを得ない施業だったと評価できることから返還を求めないことといたしました。その負担については今後の検討課題として認識しております。

 また、第2回目以降の返還請求対象の中で、不用萌芽除去は52件、約4,262万円でございます。

 なお、この中には、平成24年ころから不用萌芽除去の施業方法について地方事務所林務課が是正指導を行ったにもかかわらず森林組合がこれに従わなかった案件も含まれておりますことから、今後の調査を踏まえ返還額を算定することとしております。

 補助要件を逸脱した指導については大変遺憾なことでありまして、二度とこのようなことが起こらないよう徹底した再発防止に取り組んでまいります。

 次に、補助金不適正受給の返還についてのお尋ねですが、大北森林組合からは9月3日の期限までに補助金は返還されておらず、9月18日付で督促を行っておりますが、現時点では返還は確認できておりません。

 また、延滞金の請求等については、補助金を交付した立場から関係法令により対処していく所存でございます。

 次に、未施行で補助金申請した場合についてのお尋ねですが、補助金申請時点で未完了であった案件は、間伐については176件、4億8,268万円余、森林作業道については263件、3億8,466万円余でございます。そのうち、組合への聞き取りから、補助金申請後にも事業を行ったとされる案件があることを確認しております。

 補助金の返還に際しましては、該当する案件の1件1件について組合からの聞き取り内容も参考に精査いたしまして、慎重かつ厳正に返還金額の算定をしてまいります。

 また、林野庁に対しましては未完了事案に係る施業状況等の調査結果について丁寧に説明した上で、協議を進めてまいります。

 次に、森林づくり県民税にかかわるものの件数等に関するお尋ねですが、件数は124件、不適正受給額は2億1,000万円余となっております。

 また、補助金の本来の目的とは異なる流用についてのお尋ねですが、このようなことはあってはならない事務処理でありまして、コンプライアンス意識の欠如が厳しく指摘されるもので、事態を大変重く受けとめております。納税をいただいている県民の皆様の信頼を裏切ることになってしまったことについて改めて深くおわびを申し上げます。

 関係した職員に対しては、不適正受給にかかわった責任を明確にするために処分の手続が開始されており、厳正に対処してまいります。

 これまで、県民の皆様に御負担をいただいた森林づくり県民税の活用によりまして喫緊の課題となっております集落周辺の里山の森林整備を進めるなど、健全な森林の育成に取り組んでまいりました。こうした取り組みによりまして山地災害を未然に防止するなど、県民の皆様の安心、安全な暮らしの確保に効果を上げてきたと認識しております。こうした中で、今回の事案を踏まえ、森林づくり県民税の今後については、地方税制研究会やみんなで支える森林づくり県民会議などの御意見を伺いながら対応してまいりたいと考えております。

 次に、補助金適正化法にかかわる事実認定についてのお尋ねですが、県では、検証委員会の最終報告書に記載のとおり、昨年の12月から本年7月までの間、当時北安曇地方事務所林務課に在職した職員を中心に、実人員で26名、全32回にわたり事実関係等についての聞き取り調査を実施してまいりました。これまでの調査の中で、組合が行った架空申請の事案を県職員は容認していたという補助金適正化法第29条第2項に該当すると考えられる県職員の関与については現時点で確認されておりません。

 以上でございます。

 

◆小林東一郎

 

 補助金適正化法第29条第2項にかかわって、今のところ、県職員、それに該当するかについては、そのような案件はないということでございますが、では、県単独事業では、情を知って交付どころか、2007年度から2010年度にかけ担当職員が補助金の本来目的とは異なる内容への流用をみずから指示していたことが明らかになっているが、これについてはどのような判断をされておられますか。林務部長に伺います。

 

◎林務部長(塩原豊)

 

 お尋ねのありました地方事務所の林務課職員が補助金の流用について指示をしていたこと、これは決してあってはならないことであって、二度とこのようなことが起きないように対処していく必要があるというふうに考えております。

 

◆小林東一郎

 

 私は判断についてお聞きをしているんです。もう一度答弁をお願いします。

 

◎林務部長(塩原豊)

 

 お尋ねのありました地方事務所林務課の職員の流用を行っていたことにつきましては全く不適切な対応だというふうに考えておりまして、こうしたことにつきましても厳正に対処する必要があるというふうに考えております。

 

◆小林東一郎

 

 県単独事業は補助金適正化法のらち外であるから告発ができないんだということのようだというふうに私は思っているところでありますが、国の補助事業だったら告発できるけれども森林税事業を含む県単独事業ではそのようにできないということであれば、これは県民感情からすればおさまらないのではないかと思いますが、知事はどのようにお考えでしょうか。

 

◎知事(阿部守一)

 

 小林議員の御質問にお答えしたいと思います。

 まず、今回の事案を少し客観的に振り返らなければいけないと思いますけれども、今御質問いただいた趣旨は組合に対する対応と県職員に対する対応とレベルが違うんじゃないかというのが基本的な御質問の趣旨だというふうに思います。

 私の認識を申し上げれば、まず今回の案件で誰が利得をしているのかと。これは、組合の役員が主導して長期継続的に多額の利得を得ていたのは明らかに大北森林組合であります。当然、刑事上の処分を科するということを考えたときには、やはり金銭的な利得がどこに帰着しているのかということは一番重要な判断要素だというふうに考えています。

 万が一、これに職員が加担して職員も同じように利得を得ようとしていたということがあれば、これは全く同罪、あるいはそれ以上に重いものというふうに思っておりますけれども、先ほど部長から御答弁申し上げましたように、職員に対する聞き取り等を行う中でそうしたことは確認をされておりません。そういう意味で、刑事的な処分というよりは、これから県職員の処分を行ってまいりますけれども、こうした中で厳しく対応していかなければいけないものというふうに考えているところでございます。

 以上です。

 

◆小林東一郎

 

 昨年4月、北安曇地方事務所林務課から組合の不正報告を受けた林務部は、不適切な事業実施状況を是正すべく完了を急がせる一方、実態調査を怠り、これを拙速で誤った判断としています。この誤った判断で調査が8カ月間放置されたことにより時効が成立し請求できなくなった補助金額は、県が時効で請求を求められないとした5億5,200万円のうち幾らになりますか。また、このことは県職員の不作為による逸失利益に当たると思うのですが、どのようにお考えですか。林務部長にお聞きします。

 あわせて、検証委員会がこの点について何も触れていないことに私は疑問を感じますが、知事の御見解をお伺いします。

      

◎林務部長(塩原豊)

 

 昨年の4月の誤った判断と解明に向けての調査についてのお尋ねでございますが、昨年4月、林務部森林づくり推進課が組合の間伐事業で完了していないものがあることを把握したものの、地域の森林整備を進めることを優先して早期の事業完了を指導するという不適切な対応をとった事実は既に公表をしたとおりでございますが、早期に組合の補助金不適正受給の調査を開始する機会を逸したことを重く受けとめております。

 議員が御指摘いただきました昨年4月以降の対応については、法的な問題に関しまして慎重な検討が必要であると考えております。

 以上でございます。

 

◎議長(西沢正隆 君)

 

 塩原林務部長に申し上げます。時効により返還を求められないとした5億5,200万のうち返還請求ができなくなった補助金は幾らかという部分、お答え願いたいと思います。

 

◎林務部長(塩原豊)

 

 返還請求できなくなった補助金額についてのお尋ねでございました。失礼いたしました。

 これにつきましては、法的な問題、昨年4月以降の対応、あるいは時効消滅額との因果関係、また、因果関係があるとした場合の損害の範囲等、こうした法的な問題がございます。昨年4月に組合の調査を開始していたらという仮定の話の中では、こうした金額の算出は困難なものだというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

 

◎知事(阿部守一)

 

 検証委員会の報告書の中で4月以降の対応について記載がないのはなぜかということでありますが、これは一義的には検証委員会の皆さんの責任で取りまとめていただいておりますので、私がこの取りまとめについて口出しをしていませんので、直接的になぜかという理由を御回答するのはなかなか難しいわけでありますが、昨年4月以降の対応については、私ども県としては本年1月に今回の事案をプレスリリースした際に広く対外的に公表させていただいております。また、こうした経過については検証委員会にも御報告をさせていただいたところであります。検証委員会におきましては、こうしたことも踏まえて報告書をまとめていただいているところというふうに考えております。

 報告書では確かに御指摘のように直接的な言及がなされていない感を私も受けておりますが、ただ、報告書の中には、本庁林務部の実態把握を怠っていたというようなこと、それから、北安の地方事務所の林務課において事後的なチェックが行われていなかったこと、こうした林務部の不適切な対応についても全般として厳しく御指摘いただいているところでありまして、こうした中に検証委員会の皆様方の認識が反映されているのではないかというふうに考えております。

 以上です。

 

◆小林東一郎

 

 今、林務部長から仮定のことについてはお答えできないという答弁をいただいたわけでありますけれども、補助金交付の日付というのは決まっているわけですよね。それを8カ月間放置をされているんですから、それは仮定でも何でもない。しっかりと精査すれば幾らなのか明瞭にできると思うんですが、再度答弁をお願いをいたします。

 監査委員は、組合が不適正受給を続けていた2007年度から2013年度までの歳入歳出決算審査意見書で、予算の執行、経理事務等の執行においてはおおむね適正に処理されていると認められるとの意見を付してこられたのですが、このことに関しての御見解を代表監査委員にお聞きいたします。

 

◎林務部長(塩原豊)

 

 返還請求できなかった補助金額のお尋ねで、これまで8カ月間調査が行われてなかった、これについてのお尋ねでございますけれども、先ほど答弁申し上げましたように、昨年4月以降の対応状況、それからまた時効消滅額との因果関係、これにつきましては法的な問題でございまして慎重に検討する必要があるところでございます。そうしたことを踏まえますと、今回のお尋ねでありました金額の算出は非常に困難なものだというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

 

◎監査委員(田口敏子)

 

 歳入歳出決算審査意見書についてのお尋ねでございます。

 私ども監査委員は、審査に当たりましては、それぞれの関係機関から、決算書、また同附属書類について、一つとして、決算の計数は正確か、予算執行が議会の議決の趣旨に沿って適正かつ効率的になされているか、財務に関する事務は法令に適合し適正になされているか、財産の管理は適正になされているかというようなことを主眼に置きまして審査を行っております。

 今回の大北森林組合の補助金不適正受給につきましては、審査対象機関等から提出されました書類などからは残念ながら不適正な処理は明らかにできなかったものでございます。そこで、おおむね適正に処理されているという判断をしてきたものでございます。

 加えて、今回の事案を踏まえまして、歳入歳出決算の審査に当たりまして、さまざまな角度からの情報収集、これを一層意を強く注ぐことに努め、慎重かつ十分な審査、これを私どもは心がけてまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

 

◆小林東一郎

 

 もう一度林務部長にお伺いをしますが、林務部長は先ほどまでいろいろな不正に関しての審査を慎重に行ってきたというふうにおっしゃっておられました。にもかかわらず、8カ月間放置されたことによって時効となったものを明らかにできない、そこはまだ慎重に審査を要するということを言われているんですが、私はその辺に矛盾を感じるんでありますが、慎重に審査をされてきたということに関して再度お答えをいただきたいと思います。

 代表監査委員からは、前回の答弁でも、限られた人員と時間の中で監査を実施しており、不正を明らかにできなかった、このような答弁をいただいております。ということは、同様な事態が再発した場合、現行の体制ではそれを明らかにできない可能性が大いにあるわけで、厳正な監査を行っていただいているとは言いがたい状況にあります。それも体制の問題とのことです。

 では、知事にお尋ねをいたしますが、予算措置を講じ監査体制の改善を図るお考えは持っておられるでしょうか。

 次に、検証委員会の報告書から見えてくるものは、以前から指摘してまいりましたように、不適正受給の発端をみずからつくり、なすすべもなく長期にわたる不正を許してきた担当職員の姿と組織のあり方なのです。知事は厳正に処分をすると言っておられますが、これまでの対応は余りに県職員に甘いと映り、公平感を欠くように思います。法令遵守を云々される前に、県側の責任を明確にし、先ほどの答弁では職員が金品を受け取ったかどうかがポイントであるというようなことを言っておられますけれども、しっかりとけじめをつけた上で再出発すべきと思いますが、知事にお聞きをいたします。

 

◎林務部長(塩原豊)

 

 これまでの県林務部で行っております調査等の状況についてのお尋ねでございますけれども、林務部といたしましても、とりわけ昨年の4月からの対応におきましても内容等を現在も調査しているところでもございまして、そうしたものの法的な因果関係等につきましてもさらに慎重に検討しなければならない状況にございます。これまでの調査等も最大限この事案の解決に向けて調査してきていることは事実でございます。今後の再発防止に向けても、こうした調査、検証内容を生かしていく必要があるというふうに考えているところでございます。

 

◎知事(阿部守一)

 

 お答えします。

 まず、監査体制について予算措置を講じて強化するかという御質問でございます。

 先ほど田口代表監査委員からも、監査委員側の認識、御答弁いただいたところであります。これは、まずは監査委員の皆様方がどういうふうに考えられるかということを我々受けとめさせていただいて、それを尊重して、どういう体制がいいのかということは一緒に考える必要があろうかというふうに思います。

 のみならず、今回、県全体のコンプライアンス推進体制をしっかりしていこうというふうに考えておりますので、会計局の審査のあり方等も含めて県庁全体が本当に県民の皆様方からの信頼をしっかり取り戻すことができるような取り組みを進めていきたいと思っております。

 それから、県職員に甘いのではないか、けじめをつけろというお話であります。

 先ほどの金品の話が職員に対して甘いということで受け取られるとすれば、それは本意ではありません。御質問の趣旨が刑事事件としての扱いか否かという観点で質問を受けたので、そうした観点で申し上げました。

 あわせて申し上げたように、それと職員の処分の話とは別の次元の問題だというふうに明確に考えております。非常に大きな事案であり、また関係者が多数に及ぶということから時間を要しておりますけれども、しっかりと処分を行っていきたいというふうに思っております。

 特に、今回の事案は県民からの信頼を著しく損なう極めて遺憾な事態だというふうに考えておりますので、そうしたことも十分勘案した上で対応していかなければいけないというふうに思っております。こういうことを念頭に置いて厳正な処分を行ってまいります。

 また、県職員に甘いというふうに思われているのでは大変私としては遺憾でありまして、林務部がつくっておりますコンプライアンス推進行動計画も私は何度も却下をさせていただいております。本当に林務部が再生するのは今しかないというふうに思っております。

 そういう意味で、今回の背景も含めてしっかり書けということを林務部には指示しているところでありまして、これは、今回の事案に関係した職員のみならず、県組織全体に対して、私は県組織の代表者でありますので県組織の中の和ということも片方で大事にしなければいけないと思いますが、もう片方で県民の代表という立場でもございます。そういう意味で、心を鬼にして林務部に対しては厳しく対応していきたいというふうに考えております。

 以上です。

 

◆小林東一郎

 

 次に、去る11、12日に行われた県民協働の事業改善について伺います。

 私は毎回傍聴を続けてまいりましたが、今回は特に傍聴者が少なく、しかも県職員以外は極めて少数であったように思います。実際、傍聴者数やインターネット上での生中継アクセス数は昨年度に比べ半減したとのことです。それは、とりもなおさず県民の関心を集められていないという事実を示すものですが、原因をいかに分析されておられますか。

 また、県民の関心を高める取り組みを地道にやっていかなければいけない、県民とキャッチボールをしながら県政をつくっていかなくてはいけない、これは知事がよく口にされる言葉です。事業改善のあり方も常に改善を心がけなくてはいけないとも言われています。この意味で、今回工夫がされたことはあったのでしょうか。

 私の端的な感想を申し上げれば、本年度の議論は最少の経費で最大の効果を上げるという観点に乏しく、緊張感に欠けるものでした。それを反映してか、強化、拡大の方向で改善との意見が最多となった事業が15事業中10事業を占めたのですが、これは個々の事業に対する理解が深まった結果との受けとめでしょうか。

 また、国の補助金を事業主体である市町村等につなぐような、県の裁量の余地がほとんどない事業であっても強化、拡大の意見がつけられました。どのように対応されるのでしょうか。

 私は、国からの補助金で事業内容が決まってしまうようなものを点検対象とすべきではないと考えます。そのような事業は、むしろ、当事者に有識者を加え、担当職員との意見交換を行う方式に変えることが望ましいのではありませんか。

 以上、総務部長に伺います。

 県民協働による事業改善は、1期目の知事公約である信州型事業仕分けの延長上にあるものですが、私は仕分ける必要があると思っております。対象事業をしあわせ信州創造プランのプロジェクトに限定し、複数の担当課の参加による部局横断的な意見交換を取り入れるといった思い切った改革を行わなければ県と県民の距離を縮めるという本来の目的を果たすことはもはや不可能と考えますが、知事の御見解をお聞きします。

 

◎総務部長(原山隆一)

 

 県民協働による事業改善について3点の質問をいただきました。

 まず、傍聴者数等の検証と今回工夫したことについてのお尋ねでございます。

 県民の皆様に関心を持っていただくために、従来からの広報手法に加えまして、今回は開催地である佐久地域での広報活動にも新たに取り組んだところでございます。

 傍聴者などの減につきましては、本事業が試行から4回目を迎えまして、制度としては定着したものの県民の関心がやや低下したこと、あるいは審議時間確保の観点から昨年度に比べまして点検対象事業数を少し減らしたことで事業に関心のある方が減少したことなど複数の要因があるものというふうに分析しております。

 県民とキャッチボールしながら県政をつくるという意味で今回工夫した点でございますけれども、議論を単なる拡大、縮小にとどめることなく、具体的な改善項目にまで深化させるために点検シートの見直しを行ったところでございます。

 2点目の、強化、拡大が最多となったことに対する受けとめでございますが、強化、拡大の方向で改善という意見が最多ではございましたが、今回は、方向性のほかに、先ほど申し上げましたように、どのような事項について改善の必要があるか具体的な御意見を新たに記入してもらったところでございます。このため、方向性としては強化、拡大が最多でありましたけれども、その改善項目にはさまざまな御意見がありますので、今後その内容を詳しく分析いたしまして必要な改善につなげてまいりたいというふうに考えております。

 また、県に裁量の余地がない事業ということでございますが、例えば点検対象となりました高性能林業機械導入推進事業におきましては、小規模な事業者でも対象となるような仕組みにしてはどうかという御意見や、人・農地プラン総合対策事業におきましては、各農家まで事業の情報が届くように県は市町村との連携をより密にすべきだという意見などもありました。

 今後、平成28年度予算編成の中で、国に対する補助対象拡大の要望など、県としての対応を検討してまいりたいというふうに考えております。

 3点目に、国庫補助事業の点検方法についてでございます。

 国庫補助事業についても、事業そのもののあり方や効果、補助要件など改善すべき点について議論を深め、それを国への提言や新たな県としての事業の構築に生かしていくことが重要だというふうに認識しております。

 その上で、現行の事業改善におきましては、御指摘の当事者は点検対象事業の直接の受益者であるということから今までは点検者としては除外してきたところでございますが、事業の改善に向けた議論を行う上では一つの新たな方策であるというふうに考えておりますので、今後研究してまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

 

◎知事(阿部守一)

 

 県民協働による事業改善、思い切った改革が必要だという御質問でございます。

 小林東一郎議員には、毎回関心を持ってこの事業改善を見守っていただいていることを大変ありがたく思っております。

 思いは私も似たような部分があるんじゃないかというふうに正直思っておりますが、どうしても結論のところが拡大というところに集中してしまうようなところだけ注目されがちですが、やはり、私、この事業改善はプロセスも実は非常に重要な部分があるというふうに思っています。

 今回参加された有識者、それから県政モニターの方々からの自由記載の意見欄のところを私も拝見させていただいていますけれども、全般としてはこういうことが行われていることに対するプラスの評価が多いのではないかというふうに思っています。特に、県政モニターの方々からは、とても勉強になった、いい機会をいただいた、あるいはこれからも続けてほしい、非常に県政が身近に感じられてよかったというようなプラスの御意見もいただいています。

 ただ、その反面、事業の説明方法をもっと改善しろ、あるいは説明が棒読みだとか、そうした厳しい御意見があるということも事実でありますので、こうしたことを踏まえてさらに改善していかなければいけないというふうに思います。

 また、事業選定のあり方であるとか、点検対象事業の位置づけ、施策の中でどういうものを点検対象にするかといったようなこともまたさらに工夫をしていくことも必要ではないかなというふうに思いますので、今回いただいた御意見も踏まえてさらなる改善、工夫に努めていきたいというふうに思っております。

 以上です。

 

◆小林東一郎

 

 最後に、県内出身者の入学料優遇や管理栄養士課程を学科に格上げするなどの方針が示された新県立4年制大学について伺います。

 来年10月に予定されている大学設置認可申請に向け、新大学全体及び各学科のポリシー案やカリキュラム案が示されましたが、新大学の使命を我が国の将来を背負う人材の育成に置き、高い目標に挑戦しようとする意欲や向上心、夢を持ち、社会貢献の志を有する入学者を求めるとしています。

 では、そのような入学者に求められる学力レベルとはどの程度のものなのでしょう。私が読み取った限りでは、幅広い教科で一定の水準に達していて、その上、潜在力のある学生、例えて言えば信州大学の入学者にも匹敵する者を想定しているように思えます。

 そこで、お聞きしますが、一般入試で合格するためにはどの程度のセンター試験得点率が必要と想定しておられますか。

 また、センター試験の科目数は3教科以上を検討とされていますが、期待される入学者像からすれば5教科入試とするのが順当ではありませんか。

 各学科のカリキュラム・学年進行案を見ますと、英語集中プログラムに加え相当重量のある専門課程も含まれており、海外プログラムが付加され、健康社会マネジメントプログラムも検討とされています。これを効率的に学んでいくためには、一般大学のような学年でのカリキュラム進行ではなく、国際教養大のようにステップアップ方式で、例えば海外プログラムの前に英語集中プログラムを終わらせておく形式が望ましいのではありませんか。

 以上、県立大学設立担当部長にお聞きします。

 

◎県立大学設立担当部長(高田幸生)

 

 新しい県立大学について2点お尋ねをいただきました。

 最初に、入学試験についてでございます。

 入学者選抜制度につきましては、現在、金田一学長予定者を中心に、各学部・学科の専門分野に関係する大学教授、県内の高校関係者、入学試験の実態に精通した大学職員などで構成する入学者選抜専門部会において検討いただいているところでございます。

 お尋ねのセンター試験での得点率については想定しておりませんが、新大学の教育内容にふさわしい学力とともに、意欲や適性、多様な能力をどう評価していくかという議論がされているところであります。

 受験科目数につきましては、高校で身につけた学力を幅広く問うという方針のもと、今回、3教科以上を検討していくとしたものでございます。今後、他大学の状況や受験生の志望傾向なども踏まえ多面的に検討し、今年度中に大枠を決定してまいりたいと考えております。

 次に、カリキュラムについてでございます。

 議員御指摘のように、英語集中プログラムや総合教育科目、専門教育科目を盛り込んだカリキュラム案が現在検討されているところですが、1年次を中心に集中的に英語科目を配置し2年次の海外プログラムの効果が高まるようにするとともに、海外プログラムがさらなる英語学習や専門分野の学習の動機づけとなるよう配慮されているところです。

 また、1年次から4年次まで総合教育科目を配置する一方、1年次から専門分野の学修を進めていくなど、国際教養大学の方式とは必ずしも同じではありませんが、学習内容が関連し合いながらステップアップしていけるようカリキュラムに工夫を凝らしていただいております。

 今後、教育課程・教員選考専門部会でさらに議論を重ねていただく予定であり、金田一学長予定者が目指す、厳しいけれども親身な身につく教育が実践できるよう検討が進められるものと考えております。

 以上でございます。

 

◆小林東一郎

 

 新県立大学が開校する、そのときに入学者となるのは今の高校1年生からということになります。高校1年生にとってみればそろそろ進路を考えていかなければいけないそういう非常に大切な時期にあるわけで、新県立大学がセンター試験を何教科課してくるのか、それは大変大きな問題だというふうに思います。ぜひ早目に決定をいただいて、受験生が迷うことのないようにお願いをしたいと思います。

 学生納付金設定の考え方には経済的理由で納付が困難な者に対する支援が示されましたが、独自と言えるのは海外プログラム参加への奨学金創設だけです。長野県世論調査協会が行った「阿部県政5年」の世論調査で、人口減少対策の総合戦略で最も力を入れてほしい政策は子育て環境の充実であります。

 御存じのように我が国の公的な教育支出は先進国中最低レベルであり、特に高等教育ではお寒い限りの状況です。そのことが子育て世代の家計を圧迫する要因の一つとなっており、経済的理由で進学を諦めてしまう子供をつくっているのです。

 知事は、長野県の将来を考えたとき子供の貧困対策は重要なテーマだと言っておられる。であれば、貧困の連鎖を断ち切るために給付型奨学金の導入を御決断をいただきたい。知事の御見解をお聞きして、私の質問といたします。

 

◎知事(阿部守一)

 

 子供の貧困対策は大変県政の中で重要な、正面から向き合わなければいけない課題だというふうに私も考えております。

 新県立大学についても、経済的な課題を抱える方たちが進学してくるということも十分念頭に置いて対応していくことが重要だと思っております。

 今回、県立大学設立委員会において、授業料等については国立大学並みの比較的進学しやすい水準とすること、あるいは経済的困窮者に対する減免制度を設けることが示されています。

 今後、大学全体の収支のあり方を検討する中で授業料等を固めていくわけでありますけれども、経済的な困難を抱える学生につきましては、所得水準によっては授業料全額免除ということも含めて検討していきたいというふうに思っております。

 また、子供の貧困対策という観点では、今、児童扶養手当の受給世帯、あるいは児童養護施設で暮らす子供たち等を対象とした実態調査を行って集計をしているところでございます。その中には、例えばお金がないから進学したくても進学できないという子供の声もあるというふうに聞いております。

 こうした実態調査をしっかりと踏まえて、今後の支援のあり方を大学の授業料の話とは別にまた検討していかなければいけないというふうに考えております。

 以上です。