平成27年 9月定例県議会 発言内容(荒井武志議員)


◆荒井武志

   

 おはようございます。信州・新風・みらいの荒井武志でございます。初めに、長野県人口の将来展望についてであります。

 さきに行われた議案説明で知事は人口の将来展望について触れ、2010年に215万2,000人だった本県の人口は特段の政策を講じなければ2060年には128万5,000人となり、その後も減少が続くものと推計されています、本県としては、結婚、出産、子育て支援等を行うことにより2035年までに合計特殊出生率が人口置換水準である2.07に上昇し、さらには多様な人材の定着や経済構造の転換などにより人の流出を食いとめ、人を引きつけることで2060年で人口160万5,000人、長期的には150万人程度で定常化するものと見込んでいますとされました。

 まさに、想定が想定どおりに進んでいけばこのようなシナリオに沿ったものになっていくのでしょう。いや、そうさせなければならないと思いますが、これらの数字を導き出した過程における考え方について幾つかお伺いをしていきたいと思います。

 一つに、合計特殊出生率を2025年までに1.84人、35年までに2.07人と想定し、人口予測を160万5,000人としていますが、1994年以降の出生数の減少を考慮していないのではないかと推察されます。御見解をお聞きいたします。

 二つに、移動率は、2020年にかけて3分の1に縮小し、25年にかけて均衡するとしていますが、2001年からは人口流出になっていること、就職期及び転職期の転入傾向が弱まっていることなどからすれば移動率の想定に甘さがあると感じるのですが、いかがでしょうか。

 三つに、総合戦略の策定に当たっては市町村の取り組みと方向性を共有しながら実行されるとしていますが、具体的な共有手法についてどのようにお考えでしょうか。

 以上3点について企画振興部長にお伺いいたします。

 次に、人口減少社会を食いとめていくのにはあらゆる人口増加対策を推進することが不可欠でありますが、出生数が伸び悩む要因と目指すべき解決策について知事にお伺いいたします。

  

◎企画振興部長(小岩正貴)

 

 荒井武志議員からいただきました人口の将来展望についての御質問でございます。私には3件いただきました。順次お答え申し上げます。

 まず、出生数の見通しについてでございますが、近年、合計特殊出生率は回復しておりますが、15歳から49歳までの女性数が減少しているため出生数としましては減少が続いている状況でございます。今般お示ししております人口の将来展望におきましても、15歳から49歳までの女性数の減少を織り込んだ上で出生数を算出し、人口推計を行っているところでございます。

 次に、移動率の想定についてでございます。

 社会動態の推移を見ますと、御指摘のとおり、2001年から転出超過となってございますが、2010年以降、転出超過の幅は縮小しており、今後もこの傾向が続くものと見込まれております。

 また、本県の転出超過を分析しますと、東京圏への転出が約3分の2を占めます。一方、国の総合戦略では、2020年に東京圏から地方圏への転出、転入が均衡すると、このようにうたっているところでございます。こうしたことを踏まえまして、本県の転出超過率は2020年に3分の1に縮小し、そのペースを保てば2025年に均衡すると、このような想定をしたところでございます。

 人口の将来展望は国、県、市町村の総合戦略の効果が発現することを前提にしたものでございますので、将来展望が現実のものとなるよう総合戦略を推進してまいりたいと考えております。

 3点目、市町村との方向性の共有方法についてでございます。

 総合戦略の策定に当たりましては、県と市町村との間で目標設定や施策の方向性について互いに整合性がとられたものであることが望ましいと考えております。このため、本年7月に10の広域圏ごとに開催しました地域戦略会議では、県の総合戦略の策定に向けた重点検討項目等について意見交換を行うとともに、それぞれの地域の課題とその進むべき方向性についても議論したところでございます。

 こうした議論を踏まえ、今回の県の総合戦略案には、医療・福祉人材を圏域で共同確保する仕組みの構築なども盛り込んだところでございます。

 また、現在、県と市町村との間では、移住・2地域居住の推進、企業と人材の誘致、結婚支援の三つのテーマにつきましてワーキンググループを設置し、協働による取り組みについて検討を進めているところでございます。11月以降に各広域圏で開催予定の地域戦略会議でも議論を深め、本年度末の戦略改定の際には市町村との連携施策をさらに盛り込んでいきたいと考えております。

 以上でございます。

 

◎知事(阿部守一)

 

 人口の将来展望についての御質問で、出生数が伸び悩む要因と目指すべき解決策という御質問でございます。

 まず、要因でございますが、出生数が減少している要因として、婚姻件数が昨年は約9,500件ということで、10年間で約2,000件減少し、結婚される方が減少してきているということ、そして、結婚されても経済的負担等の理由から希望される子供の数が実現できていないといったようなことから出生率の大幅な回復に至らず、平成26年は1.54にとどまっているということが挙げられます。

 また、出産可能な女性の数が平成9年には49万人を下回って以降減少を続けており、出生率は平成16年を底に若干回復してきている状況ではありますが、出生数自体は減少を続けているという状況でございます。

 この解決策でございますが、まず出生率を向上させる施策として、まずは結婚を望まれる方々が結婚していただくということが重要だというふうに思っております。そのため、市町村とも連携をして、しあわせ信州結婚支援センター、仮称でございますが、これを設置して、結婚を希望する方の出会いの機会の拡大に取り組んでいきたいというふうに考えています。

 また、結婚された方や子育て中の方に対しては経済的負担の軽減のため第3子の保育料助成を今年度から始めたところでございますが、引き続き、子育てと仕事の両立、子育て支援サービスの充実など子育て環境の整備に努めて出生率の回復を図っていきたいと考えています。

 また、社会減対応にも関連しますが、出産可能年齢の女性人口の減少を緩和させるという観点で、若い世代を県内にとどめ、また県外から呼び込むということも重要だと考えております。そこで、特に減少が著しい19歳以降の県外流出を緩和するという観点で、大学等高等教育の充実であるとか、あるいは若者が働く場の確保等、こうした教育あるいは雇用政策、総合的に取り組んでいきたいと考えております。

 以上です。

  

◆荒井武志

 

 人口を何とか維持していくためには出生数を何としてもふやさなければいけない、ここが一番だと思っております。ぜひそんな点でお願いしたいと思います。

 次に、長野県強靱化計画の策定についてであります。

 知事は、本年2月県議会における平成27年度に向けた議案説明の中で、主な施策のまず第1に防災・減災対策の推進を挙げられ、これまでの災害の教訓を生かし地域防災計画の見直しを進めるとともに、国土強靱化の観点からさまざまな分野の計画等の指針となる長野県強靱化計画を平成27年度末を目途に策定すると表明されました。

 私は、昨年1年間を振り返るとき、大きく四つの自然災害がきのうのことのように浮かんでまいります。

 県内各地で道路の通行どめや農業用ハウス等の損壊や倒壊など大きな爪跡を残した大雪災害、南木曽町では中学生のとうとい命が奪われてしまった土石流災害、60名を超える犠牲者をもたらした御嶽山の噴火災害、そして、多くの住宅はもとより、道路や河川、農地などにまで多大な被害が発生をしてしまった神城断層地震であります。

 つい先ごろは、茨城県常総市における、鬼怒川の越水、堤防決壊による住宅地や田畑など35平方キロ以上に及ぶ浸水被害が発生いたしました。

 これらの事象を踏まえれば、自然災害がいつ、どこで、どのような形で起こってしまうのか想定することは容易ではありません。しかし、それらを最小限に食いとめることが私たちに課せられた最大の課題であると思っています。そのような観点から、県土の強靱化への取り組みは重要かつ待ったなしであると言わざるを得ません。

 そこで、以下2点、危機管理部長にお伺いいたします。

 一つに、計画案では、行政、企業等、県民がそれぞれ取り組むべきことを明確化するとしていますが、このための意見把握はどのように行っているのでしょうか。また、皆さんからの要望や意見、期待することにはどのようなものがありますか。

 二つに、さまざまな自然災害に対して自治体間の相互応援・連携対応などが重要であると考えていますが、応援協定などの現状はどのようになっているでしょうか。

 続いて、以下4点については建設部長にお伺いいたします。

 一つに、大規模自然災害は地震、豪雨、豪雪、火山噴火などさまざまありますが、とりわけ最近頻繁に発生しているゲリラ豪雨などによる河川災害に対する脆弱性や問題点をどのように捉えておりますか。

 二つに、河川整備に当たってはどの程度のリスクを想定して行っていこうと考えているのでしょうか。

 三つに、雨水・河川災害では上流部、中流部、下流部相互の情報共有や伝達手段の確立が大きな課題と捉えていますが、現状での対処方法についてどのように取り組んでおりますか。

 四つに、県内には現実にいまだ完成堤防になっていない河川が存在すると認識していますが、県内河川の現状はいかがでしょうか。また、これらの解消、具体化に向けてどのように取り組んでいくのでしょうか。ハード、ソフト両面からお答えいただきたいと思います。

         

◎危機管理監兼危機管理部長(野池明登)

 

 長野県強靱化計画について、まず意見把握をどのように行っているか、またその内容というお尋ねでございます。

 計画の策定に当たりまして、県民からの意見把握のため昨年12月に県内約1,200人の県政モニターを対象にアンケート調査を実施をし、加えて、本年度は、現時点で、13のライフラインに関連する企業との意見交換ですとか、防災等に関する有識者からの意見聴取を行っているところでございます。

 県民からは、大規模自然災害に対する事前の備えで優先度が高い項目として、道路等のインフラ整備、災害に強い物流、避難所、医療施設、行政機関といった公共施設の耐震化などの要望が多く寄せられたところでございます。

 ライフラインに関連する企業からは、自身が取り組む災害時の対応に当たり行政と緊密に連携したいとの要望があり、計画策定に当事者意識を持って主体的に参画をいただいているところでございます。

 有識者からは、民間企業や住民が役割を分担し災害に対する備えを強く認識してもらうこと、また小さな集落の地域コミュニティーを防災面でも生かしていくこと、災害時における企業の事業継続計画、BCPを推進することの重要性などの意見をいただいたところでございます。

 今後、計画案を策定した後、パブリックコメントにおいて幅広く意見を把握し、それらも計画に反映してまいりたいと考えているところでございます。

 2点目は、災害時の自治体間の相互応援体制、応援協定等の現状についてでございます。

 被災した自治体が単独では災害対応ができない規模の災害が発生した場合に、他の自治体による応援は被災者の救助、被災地の復旧に大変有効と認識をしております。

 県内市町村では、長野県市町村災害時相互応援協定などにより全市町村における広域的な相互応援を行う仕組みが整備されております。また、多くの市町村におきまして県外の市町村とも相互応援協定を締結している現状にございます。

 また、県では、全国知事会、関東地方知事会、中部圏知事会による協定がございまして、この8月には新たに新潟、山梨、静岡、長野の中央日本4県による相互応援協定を締結したところでございます。

 さきの関東・東北豪雨におきましても、関東地方知事会の協定に基づき、本県は、茨城県のカバー県として、災害発生当日に茨城県庁に連絡員を派遣し、飲料水等の物資の直接支援、各都県との支援調整など迅速な対応を行ったところでございます。

 今後も、相互応援協定に基づきまして、迅速、的確な対応に努めてまいりたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

 

建設部長(奥村康博)

 

 河川災害に関する御質問に順次お答え申し上げます。

 まず、河川災害に対する脆弱性や問題点についてのお尋ねでございます。

 気象庁のデータによりますと、全国で年間80ミリ以上の豪雨の発生回数が30年前の約1.6倍となるなど、近年、想定を超える局地的な豪雨が多発しております。

 また、平地が少ない当県におきましては、地形特性上、河川の氾濫原に人口、家屋等が集中し、一たび堤防が決壊すると広範囲に氾濫し、甚大な被害が発生するおそれがあります。さらに、脆弱性の観点では、都市化による保水力の低下により雨水が直接河川に流出するなど河川への負担が増大しております。

 これらに対する対策として、河川改修、ダムや調節池等の築造、排水機場の増設などにより治水安全度を向上させる必要がありますが、河川改修には多大な費用と時間を要しているのが現状でございます。現在、限られた予算の中、計画的に整備を進めております。

 次に、河川整備に対するリスクの想定についてのお尋ねでございます。

 河川改修等の実施に当たりましては、流域面積、沿川の人口、家屋等の状況や過去に発生した最大流量等を考慮しまして、30年から100年に一度の豪雨に対応できる計画規模を河川ごとに設定しております。しかしながら、近年の集中豪雨等で頻発する豪雨災害を鑑みますと、計画規模を上回るような豪雨を想定した対策を講じることも必要であると考えております。

 次に、雨水・河川災害での上中下流部相互の情報共有等についてのお尋ねでございます。

 県では、千曲川を初めとした、流域内に家屋が比較的多い34河川で水位情報等を関係機関等に周知しております。これらの河川ではほぼリアルタイムで水位情報を収集しておりまして、収集した水位情報等は県ホームページの「長野県河川砂防情報ステーション」を通じまして一般にも公開し、河川の水位情報の共有を図っております。

 これらの河川におきまして河川水位が避難準備情報発令の目安となる避難判断水位等に達した場合には、水防計画に基づきまして、県水防本部から速やかに上流から下流部までの全市町村を初め県警など関係機関へファクシミリ及び電話で確実な情報伝達、情報共有を図る体制を確立しているところでございます。

 特に、災害の影響の大きな千曲川、天竜川及び諏訪湖などにおきまして氾濫が発生した場合には、氾濫発生情報を発出し、流域の全市町村などへ注意喚起を図ることとしております。

 避難判断水位情報等を受信した市町村におきましては、速やかに防災行政無線などを通じて住民へ避難準備情報等を発令することになります。

 議員御指摘のとおり、県といたしましても災害時の情報共有等は非常に重要なことと考えておりまして、引き続き、市町村などと連携を図り、災害への対応を行っていきたいと考えております。

 次に、県内河川の整備状況と対応についてのお尋ねでございます。

 県で管理しております1級河川のうち、堤防区間の整備率は平成26年度末時点で44.0%となっております。

 河川整備に当たりましては、過去の水害の発生状況や沿川の人口、家屋等の状況を考慮し、限られた予算を有効に活用すべく、優先度の高い箇所から実施しております。

 先ほど答弁申し上げました計画規模を上回るような豪雨も含め、近年の異常ともいえる豪雨に対しましてはハード対策のみではなかなか困難でありますことから、雨量や水位情報の提供、水防情報の発令、浸水想定区域図の提供等、ソフト対策もあわせて実施しております。引き続き、ハード対策を着実に進めるとともにソフト対策の充実を図り、双方一体となった防災・減災対策を着実に進めてまいります。

 以上でございます。

         

◆荒井武志

 

 この長野県強靱化計画は、いかに県民の暮らしを守るために強靱化に取り組んでいくのかに主眼があるわけで、県民の生命、財産を災害から守るためには計画が具体化されなければなりません。ハード、ソフト両面からの財政措置を含めたものとし、着実に進める必要があると考えますが、知事の思いやお考えをお伺いをさせていただきます。

 次に、中部北陸自然歩道についてであります。

 9月補正予算案では、信州の強みを生かした観光振興策として、中部北陸9県から成る昇龍道など長野県を含む観光ルートについて富山県、石川県と連携し、3県の魅力が詰まったコンテンツ等を強力に発信し新たなゴールデンルートの形成に取り組もうとしていること、社会資本整備では、観光アクセス道路やウオーキングロード等の整備を着実に推進し、県民生活の安全、安心の確保を図っていくとしており、重要なことと大いに評価したいと思います。

 翻りまして、長野県には、多くの人々がすぐれた風景地を歩くことにより沿線の豊かな自然環境や自然景観、歴史や文化に触れ、親しんでいただくための道として、中部北陸地域の長野、群馬、新潟、富山、石川、福井、岐阜及び滋賀の8県を結んで整備された長距離自然歩道の中部北陸自然歩道が整備されています。この自然歩道は、1日で歩ける程度のルートを1日コースとして区分され、それぞれにコース名が設定されており、県内は34コースに区分され、総延長は約666キロメートルに及んでおります。

 私の自宅から数百メートルのところに、戦国村上氏をしのぶ道でしょうか、自然歩道の標柱が建っていますが、草に覆われ、上半分がようやく見える程度で、何ともやるせない思いになってしまいました。

 先ほど申し上げたとおり新たな取り組みは大変重要ですが、既に指定してあるものをいかに維持存続、やがては史跡としても指定されていくようなしっかりとした管理、そして、県内外、訪日外国人の方々にも訪れていただけるような有効なPRなどが求められていると思います。

 そこで、お伺いいたします。

 一つには、この中部北陸自然歩道の県内34コース、総延長666キロメートルの設置主体はどこで、その管理はどこがどのように行っているのでしょうか。また、自然災害発生時における危険箇所をどのように把握、想定しておられるのでしょうか。

 二つに、この自然歩道を利用促進するために行ってこられた周知方法並びに利用状況はどのようになっているのでしょうか。

 三つに、より一層利用度合いを高めるための活用策を含め、今後の方向性をどのように考えておられますか。

 以上3点について環境部長にお伺いいたします。

          

◎知事(阿部守一)

 

 強靱化計画についての思い、考えという御質問でございます。

 御質問にもありましたように、昨年、長野県、本当にさまざまな災害に見舞われ、多くの犠牲者、多くの被害を出す結果になってしまいました。

 今回、長野県強靱化計画の策定に当たっては、昨年発生した災害から得られた教訓もしっかり生かして、県民の皆様方の生命、財産、しっかり守っていこう、そういう強い決意のもと策定を進めていきたいと考えています。

 計画の中では、起きてはならない最悪の事態を想定して、その最悪の事態を回避するための方策を盛り込んでいきたいというふうに思っております。例えば、電柱倒壊によります通行の支障をなくすための無電柱化でありますとか、あるいは、緊急輸送路に当たっている橋梁の耐震補強整備といったハード対策でありますとか、自主防災組織の活性化、地域の防災リーダーの育成といったソフト対策、この両面からしっかりと取り組みを考えていきたいと思っております。

 また、こうした施策の推進に当たりましては、国のさまざまな制度等も有効に活用しながら必要な予算措置を講じ、災害に強い長野県づくりを目指して関係部局を挙げて取り組んでいきたいというふうに考えております。

 以上です。

 

◎環境部長(青柳郁生)

 

 中部北陸自然歩道について順次お答え申し上げます。

 この長距離自然歩道制度は、昭和45年、当時の厚生省、現在の環境省でございますが、高度経済成長下におきまして大規模開発が進行する中、国土や風土を手軽に再認識し、あわせて自然保護意識の高揚を図ることを目的として、自然景観や文化財等に恵まれた既存の道路をネットワーク化する形で始められたものでございます。国の助成を受け、国、県、市町村道等を活用して、県が事業主体となり主に標識等の整備を行っているところでございます。

 歩道の管理につきましては、各コース所在の市町村との委託契約によりまして、日常的な保守点検、利用案内、軽微な維持補修とともに、災害時等緊急事項の調査、通報等をお願いしております。また、大規模な補修や災害の復旧等が生じた場合には、道路管理者が定められた歩道にありましては道路管理者に要請するとともに、それ以外の歩道に当たりましては、国と協議し、県が必要な対策を講じることとなっております。

 次に、利用促進のための周知方法についてですが、歩道の周知方法につきましては、歩道のマップを作成し、関係市町村、観光団体、メディア関係者等に配布するとともに、県、そして環境省外郭団体のホームページに掲載するなど普及啓発に努めております。

 利用状況につきましては、平成25年度の環境省統計で、長野県内に係る中部北陸自然歩道の利用者数は約1万1,000人となっております。

 最後に、より一層利用度合いを高めるための活用策でございますが、この自然歩道制度は、制度構築当時に比べますと健康づくりや外国人客の増加など取り巻く状況が変化してきておりますことから、より一層の活用に向け、健康づくり県民運動、ACEプロジェクトにおきます市町村のウオーキングコース設定の参考資料としていただくこと、あるいは、観光部と連携し、観光ウエブサイト等により自然歩道を発信していくなど、さらなる利用促進に向け取り組んでまいりたいと考えております。

 以上でございます。

 

◆荒井武志

 

 答弁をいただきましたが、今、千曲市の沢山川というところでは漏水対策を予算もありますので年次的にやっていただいておりますけれども、こういう漏水があるというふうなものこそ早急な対応が必要だと思っております。どうぞその辺につきましては積極的な取り組みを要望させていただきたいと思います。

 それから、自然歩道につきましては、666キロある中で1万1,000人ということで利用度が極めて少ないというふうに思っております。しっかり取り組むというお話もいただきましたので、ぜひ実効が上がりますように期待をさせていただきたいと思います。

 次に、手話言語条例の制定についてであります。

 私は、このことについて、今から2年前の11月定例会において、平成18年に開催された国連の第61回総会で障害者権利条約が全ての加盟国により採択され、手話は言語であると世界的に認められ、その後、日本でも、聾唖団体の皆さん方の要請に基づいて平成23年7月に障害者基本法が改正され、言語に手話を含むことが明記された、加えて、衆議院、参議院は、その附帯決議で、国と地方公共団体は意思疎通が困難な聴覚、視覚などの障害者が手話を含む適切な言語の習得を図るために必要な施策を講じるように求めていることを申し上げ、長野県手話言語条例の制定の必要性をただしてまいりました。

 その際、知事は、その必要性については、聴覚障害者の方々、当事者の皆様方のお考え、思いというものをお伺いする中で判断をしてまいりたいと答弁されました。

 その後、昨年の9月議会における続木幹夫議員の手話言語条例に関する質問に対し、知事は、長野市で開催された全国ろうあ者大会に出席し、全国の聴覚障害の方々の手話の普及あるいは理解促進に対する願いというものを強く感じた、現在、関係部局の職員でワーキンググループをつくって検討に着手した、手話言語条例は、関係の皆様方の御意見、要望も伺いながら、県の施策の方向性を定めて早期に制定を目指して精力的に取り組んでいきたいと答弁しております。

 加えて、本年2月県議会における知事議案説明では、手話の普及に向けた手話言語条例(仮称)の検討を進めますと積極的な姿勢を表明されました。

 去る5月21日には、小林健康福祉部長以下関係の県職員、そして障害をお持ちの皆様を初め多くの県民が参加される中で、長野県手話言語条例(仮称)制定に向けての講演会及び意見交換会が開催されました。私も同席させていただき、勉強させていただきました。

 また、条例制定を求めている社会福祉法人長野県聴覚障害者協会とは、8月18日、手話言語条例準備委員会と、健康福祉部長、障がい者支援課長との懇談会が持たれ、その際、協会から、長野県は手話言語条例1本でつくってほしい旨要望されたとお伺いいたしました。

 このように、直接関係される皆様からの意見聴取もしっかり取り組んでこられたことに敬意を表したいと思います。

 そこで、お伺いいたします。

 一つに、関係者からの意見聴取はどこでどのように行ってきたのでしょうか。また、その中での特徴的な意見にはどのようなものがありましたか。

 二つに、意見聴取以外では、県内市町村との意見交換を含め、どのような検討を行ってきたのでしょうか。

 以上、健康福祉部長にお伺いいたします。

         

◎健康福祉部長(小林透)

 

 手話言語条例についての御質問に順次お答えをいたします。

 まず、関係者からの意見聴取についてでございますが、この条例を検討するため、昨年7月、庁内部局横断のワーキンググループを設置して以来、長野県聴覚障害者協会を初め関係団体と複数回にわたりアンケートや意見交換を実施いたしました。

 具体的には、本年1月と4月に聴覚障害のある方々の現状や課題に関するアンケート調査を実施した上で、御質問にもありました5月21日に、条例を既に制定している鳥取県から、その中心的役割を果たした聴覚障害者協会の石橋事務局長にもおいでをいただいて当事者団体との意見交換会を開催し、また、8月18日に、長野県聴覚障害者協会が設置した長野県手話言語条例(仮称)制定準備委員会との懇談会を開催したところでございます。

 さらに、8月28日には条例制定に関する当事者団体との意見交換会を開催いたしまして、こうした中での特徴的な意見についてでございますが、聴覚障害のある方々からは、手話言語条例を早期に制定してほしいとの意見のほか、日常生活において手話によるコミュニケーションがとれず苦慮している、あるいは、手話により必要な情報を得られるようにしてほしい等の意見をいただきました。

 次に、意見聴取以外の検討についてでございますが、長野ろう学校における手話教育の状況や、先進地である鳥取県における条例制定後の状況を調査するとともに、ワーキンググループにおいて関係団体からいただいた課題や意見等を踏まえて検討を行ってまいりました。

 市町村に対しましては、私も、市長会、町村会に赴き、取り組み状況などを説明して意見交換をするとともに、本年3月及び7月に開催した市町村担当者会議において、条例の検討状況を説明した上で、地域における聴覚障害のある方々への支援の取り組み状況について意見交換を実施したところでございます。

 以上であります。

 

◆荒井武志

 

 続いて、目指すべき条例の基本的部分になろうかと思いますが、手話通訳や要約筆記、筆談等のいわゆる情報保障手段の選択を保障するための情報・コミュニケーション部分については、県聴覚障害者協会から、手話を県民にしっかり覚えてもらいたいとの思いだ、この情報・コミュニケーション関係については別立てで検討してほしいとの強い要望があるようでございますが、どのように判断、対応していこうとしておりますか。

 二つに、先行事例では、市町村の責務として「手話を使用しやすい環境の整備に努める」と条文化されていますが、想定される環境整備にはどのようなものが考えられますか。

 三つに、事業者への支援について想定されることは何でしょうか。

 以上3点について健康福祉部長にお伺いいたします。

 

◎健康福祉部長(小林透)

 

 情報・コミュニケーションに係る検討についてでございますが、議員御指摘のとおり、8月28日に開催いたしました長野県手話言語条例(仮称)に係る意見交換会では、手話が日本語と同等の言語であることを理解してほしい、そのためまずは手話言語条例を制定してほしいとの強い思いをお伺いいたしました。

 それに加えて、要約筆記や点字なども含めました障害のある方々への情報保障やコミュニケーション支援全体の施策の充実についても要望をいただいたところでございます。

 そこで、こうした情報保障やコミュニケーション支援の充実に向けてはさまざまなお考えや課題もあると考えられますので、県としては、こうした関係者の思いを重く受けとめ、手話言語条例(仮称)の制定と並行して、当事者の方々を含めた関係者の皆様とともに、障害のある方々の情報保障やコミュニケーション支援のあり方などについても、課題などを整理しつつ、早急に検討することといたしたいと思います。

 次に、想定される環境整備についてですが、平成25年10月に施行された鳥取県手話言語条例では、市町村の責務として、「手話の普及その他の手話を使用しやすい環境の整備に努める」と規定されてございます。手話を必要とする聴覚障害のある方々が、日常生活の中で手話により自由にコミュニケーションができ、手話を介して必要なときに必要な情報を取得できる環境の整備を進めるべきものと考えているところでございます。

 具体的には、手話を必要とする聴覚障害のある方々と手話により交流できる場の拡充ですとか、文字や音声だけではなく、手話による行政情報などの提供や窓口での対応などが考えられます。こうした環境の整備については、条例を制定する過程において市町村を含め幅広く県民に御理解をいただきながら検討を進めてまいります。

 次に、事業所への支援についてですが、聴覚障害のある方々からは、会社の会議等で手話通訳がなくて苦労している、あるいは、同僚とのコミュニケーションがとりづらいなどの御意見をいただいておりまして、手話を必要とする聴覚障害のある方々が働きやすい職場環境の整備を進めることが必要と考えております。

 また、店舗等においては、手話を必要とする聴覚障害のある方々が手話などにより買い物を初め必要なサービスを利用できるよう配慮されることが望ましいと思っております。このため、事業所への支援としては、事業所内での手話の学習会や啓発活動に対して手話ガイドブックの提供や講師の派遣などを行うことが考えられます。

 県といたしましては、手話を必要とする聴覚障害のある方々が安心して地域生活を送ることができるよう、事業者への支援の充実についても取り組んでまいります。

 以上でございます。 

         

◆荒井武志

 

 御答弁いただきました。

 幾つかお伺いしてきたわけですけれども、条例化に向けて大分煮詰まってきたようにも感じております。

 そこで、知事にお伺いいたします。

 今後、どのような手順、スタンスで取り組んでいくのでしょうか。御所見をお聞かせください。

 

◎知事(阿部守一)

 

 手話言語条例の条例化に向けた手順、スタンスという御質問でございます。

 障害がある方もない方も、お互いに個性を尊重し、支え合いながら、誰にでも居場所と出番がある信州をつくっていくということは、長野県が目指す大きな方向性だというふうに考えています。こうした社会をつくるためには、お互いに十分なコミュニケーションを図ることができる社会環境をつくっていくということが極めて重要だと考えております。

 手話を必要とされる聴覚に障害のある方々にとって手話はみずからの思いや考えを表現される言語でありまして、コミュニケーションに欠かせないものだというふうに認識をしております。

 手話が言語であるという理解は、現状では県民に広く浸透しているとは言えない状況であります。聴覚に障害のある皆様からいただいた手話言語条例の制定に対する思いやお考えを具現化するという観点で、早期に手話言語条例、名称はまだ仮称でございますが、制定をしていきたいというふうに強く決意をしております。

 この条例には、手話が独自の体系を持つ言語であることを基本理念として定め、条例制定とともに、県、市町村、県民が連携協力をして広く手話を普及することや手話を使いやすい環境整備を図る施策を推進していく、そういうことを盛り込んでいきたいと考えております。

 そうしたことを踏まえて、具体的な施策もあわせて進めていかなければいけないというふうに考えております。例えば、身近な地域や職場などで県民が手話を習得できる機会の提供でありますとか、また、信州山の日、あるいは県内プロスポーツ団体との連携などによりまして手話に親しみながら理解を深める啓発活動でありますとか、また、手話通訳者の拡充やICTを活用した手話通訳の実施、こうしたことにもぜひ取り組んでまいりたいと考えています。

 こうした取り組みを進め、誰もが手話に親しみを感じられる長野県としていきたいと思っております。

 今後、条例の骨子案を早急に広く県民にお示しし、パブリックコメントを実施した上で早期に条例案として取りまとめてまいりたいと考えております。

 以上です。

 

◆荒井武志

 

 御答弁いただきました。

 手話は誰もが感じられるようにという思いをお話いただきました。ぜひ早々にそうなりますように条例化を進めていただきたいと、このようなことを申し上げまして、質問を終わります。