平成27年11月定例県議会 発言内容(石和大議員)


◆石和大

   

 エネルギー政策において自然エネルギーの導入拡大が重要となる中で、長野県の自然エネルギー導入のポテンシャルの高さは本県の大きな強みとなっています。地方創生ということにおいてもこれは特徴的な個性であり、これを伸ばし育てることは信州の魅力をさらに大きくします。

 そんな長野県においては太陽光発電を中心に自然エネルギーの導入が進んでいますが、このような中、県では、環境エネルギー戦略などの目標値を上方修正し、平成29年度には発電設備容量からみるエネルギー自給率100%を目指すとしています。

 進んでいる太陽光発電だけではなく、長野県は、山林に囲まれ、また急峻な地形を有することから、木質バイオマスや小水力は全国的にも高いポテンシャルを有しています。県が29年度に100%という目標を達成するためには小水力発電を積極的に推進するなどポテンシャルを最大限に生かした取り組みが必要と考えますが、どのような方針で進めていくのか。環境部長にお伺いいたします。

 次に、企業局における自然エネルギーの普及拡大に向けた役割についてお伺いをいたします。

 企業局の電気事業につきましては、平成23年3月の東日本大震災の発生によりエネルギーをめぐる情勢が大きく変化したことから改めて電気事業の果たすべき役割について検討が行われ、平成24年度に、長期的に安定した経営が見込まれることに加え、発電所の新規開発や技術支援により自然エネルギーの普及拡大に寄与することという新たな役割も期待されることから、電気事業の継続の方向性が示され、11月議会での議論を経て継続が決定されました。

 この間、私も、文教企業委員として議論に参加をし、継続を強く訴えてきたことから、現在、企業局が経営の安定と礎づくりを目指して今後10年間の経営の基本計画ともいえる経営戦略の策定に取り組み、新たな時代に果敢に挑戦されようとしていることに心から適切な判断であったと思うと同時に、新たな取り組みに大きな期待を寄せているものであります。

 さて、平成22年度の環境省の調査によれば長野県の水力発電のポテンシャルは全国トップクラスとなっており、こうした恵まれた水資源を有効に活用し、自然エネルギーの普及拡大に努めていくことは、温暖化対策の観点からも極めて重要であることは言うまでもありません。

 私は、先ほども申し上げましたが、企業局電気事業の継続の要因の一つとされた発電所の新規開発と地域への技術支援こそが企業局の果たすべき重要な役割だと考えます。

 そこで、公営企業管理者に伺いますが、先月、企業局として13年ぶりの新規建設となる奥裾花第2発電所並びに高遠発電所の起工式が行われたとのことであり、大変喜ばしいことですが、その進捗状況と今後の予定にあわせて、今後の新規発電所整備に対する考え方についてお伺いをいたします。

 次に、地域への技術支援等についてお伺いいたしますが、水力発電の経験のない市町村、あるいは土地改良区、さらには住民の方々にとって、専門的な知識、技術を有するいわば電気のプロ集団ともいえる企業局の支援は何よりも貴重で頼りになるものと思います。

 そこで、企業局では、市町村や団体等に対し、技術的な支援も含め、どのような支援を行ってきたのか、また、今後どのように取り組まれる所存か。公営企業管理者にお伺いをいたします。

 次に、先ほども触れましたが、長野県は起伏に富んだ地形を有し、昨年7月に県が公表した、基幹的農業用水路における小水力発電の適地調査結果でも多くの候補地があるとされています。農業用水を活用した小水力発電は、地域のエネルギー自給率向上はもとより、施設管理者においては売電益を老朽化が進む土地改良施設の維持管理に活用できることから、県として大いに推進すべきものであると考えます。

 そこで、現在、農業用水を活用した小水力発電施設の整備はどの程度進んでいるのでしょうか。また、小水力発電をより一層推進するためにはどのような課題があり、それに対してどのように取り組んでいるのか。農政部長にお伺いをいたします。

 

◎環境部長(青柳郁生)

 

 自然エネルギー施策の今後の方針についてお答えいたします。

 県では、省エネルギー化の促進や自然エネルギーの普及により、エネルギーコストとして県外に流出している資金が県内にとどまり、地域の中で循環していく姿を目指しているところでございます。

 このため、自然エネルギー信州ネットなどと連携しながら、地域の担い手が地域の資金を活用して行う地域主導型の自然エネルギー事業に対して集中的に支援をしてまいりました。特に、事業化における最大の課題が資金調達でありますことから、地域金融機関の融資と協調した補助制度を創設したところでもございます。

 これまでの施策により、ようやく全県的に地域主導の芽が出てきて、さらに面的な広がりが実現しようとしておりますことから、引き続き、小水力やバイオマスなど地域の特性を生かした発電事業、熱事業への支援を行い、エネルギー自立地域の確立を目指してまいります。

 以上です。

 

◎公営企業管理者(小林利弘)

 

 企業局におきます自然エネルギーの普及拡大に向けた役割につきまして2点お尋ねをいただきました。順次お答えを申し上げます。

 最初に、奥裾花第2発電所並びに高遠発電所の進捗状況等についてでございますが、発電機本体の製造には約2年を要しますことから、既に昨年12月に発注を行いまして、今回、建屋並びに水路等の関連工作物について発注を行い、過日、起工式を行ったものでございます。今後、来年秋から順次発電機の据えつけ工事を行い、機器の調整を経て試験運転を行い、平成29年度からの本格稼働を目指してまいります。

 なお、奥裾花第2発電所は最大出力が980キロワット、約1,400世帯分、高遠発電所は最大出力が180キロワット、約350世帯分の発電を予定しておりますが、この新規発電所につきましては、現在策定を進めております経営戦略において、信州発自然エネルギーとして大都市に売電し、その利益を県民に還元するという大都市との未来志向の連携の役割を果たす施設として位置づけることといたしておりまして、企業局といたしましても地方創生の役割を担っていく所存でございます。

 また、今後の新規発電所整備に対する考え方でございますが、まず、企業局が管理する三つのダムのうち唯一発電を行っていない湯の瀬ダムの開発可能性調査を、本年度、経済産業省の全額負担により、経済産業省から委託を受けた新エネルギー財団において行っていただいており、その結果を待って対応を検討してまいります。

 さらに、県所有のダムにつきましても、関係部局と連携し、調査研究を行い、経営の安定と自然エネルギーの普及拡大の両方の観点から検討を進めてまいりたいと考えております。

 次に、市町村や団体等に対する支援についてのお尋ねでございますが、私は、電気事業がこれまで半世紀以上の長きにわたり地域や市町村の皆様に支えられてきたことから、企業局の有する技術等を活用し地域貢献に積極的に取り組んでいく必要があるものと考えております。

 そこで、これまで、局内に中小規模水力発電技術支援チームを設置をいたしまして、相談のあった市町村等に対し、計画、設計、関係法令等に対する助言、あるいは管理、運営、保安体制等に関する助言、そして電気の基礎知識の普及啓発など個別の相談に対応いたしますほか、水力発電推進マニュアルの作成など、インターネットを活用した情報提供にも努めてまいりました。

 また、環境部などと連携し、小水力発電キャラバン隊にも参画いたしまして出張相談会や講習会を行ってきております。

 さらに、電気事業の利益を活用し、県の自然エネルギー地域基金へ総額5億円を拠出することといたしておりますが、拠出期間を当初の5年間から3年間に前倒しすることといたしまして、最終年度となります平成28年度には約6,000万円を拠出できるよう今議会に利益処分案の御審議をお願いしているところでございます。

 今後の取り組みについてでございますが、より踏み込んだ技術的支援を行うため、農業用水路を活用したある程度規模の大きな水力発電の導入を計画する土地改良区に対し、企業局の持つ技術力、信用力を総合的に活用し、発電所の建設に必要な各種申請手続から建設、施工管理まで企業局が一括して代行するという、いわば企業局版PFIともいえるモデル事業に取り組んでまいりたいと考えております。

 いずれにいたしましても、自然エネルギーの普及拡大に向け、企業局が果たすべき役割をしっかりと見据え、引き続き市町村等の要望を踏まえた支援を積極的に行ってまいる所存でございます。

 以上でございます。

 

◎農政部長(北原富裕)

 

 農業用水を活用した小水力発電についてでございますが、現在、14カ所の発電所が稼働し、さらに5カ所で建設を進めており、来年度以降順次発電を開始する予定となっております。

 本県の農業用水路は急勾配の箇所が多く、基幹的水路だけでも小水力発電の候補地は164カ所と見込まれますが、取り組みに当たっては、初期投資の負担と採算性の確保、また会計処理や運転管理等の運営体制の整備などが課題となっております。

 これら課題への対応といたしまして、施設建設に当たっては国庫補助事業の活用とともに県費補助率の引き上げを行っております。また、運営体制の課題に対しましては、本年7月に長野県土地改良施設エネルギー活用推進協議会を設立し、小水力発電に取り組もうとする市町村、土地改良区などに対し研修会の開催や専門技術者の派遣を行い、解決への支援を進めております。

 今後も、庁内関係部局や企業局とも連携し、農業用水路を活用した小水力発電の取り組みを支援してまいります。

 以上でございます。

 

◆石和大

 

 小水力の発電については、長野県のポテンシャルは高いわけでありますから、さらに期待をするところであります。

 次に、大規模な太陽光発電所の設置については、景観や災害、環境影響への懸念、さらには開発事業者による地域との調整不足などから、住民から反対運動が起きています。

 このような中、県では、環境保全の配慮が適切に行われるよう、一定規模以上の太陽光発電所を環境影響評価条例の対象とする改正を行うとともに、防災面からの規制を強化するため、林地開発許可基準である「流域開発に伴う防災調節池等技術基準」を改定したところであります。

 しかし、これらの対象とならない規模の事業計画においても地域と調和しないものがあり、その対応に苦慮している市町村も多いというふうに聞いております。県ではこうした市町村に対してどのような支援をしているのか。環境部長にお伺いをいたします。

 

◎環境部長(青柳郁生)

 

 太陽光発電所の設置における市町村支援についてお答え申し上げます。

 県では、御質問にございましたように、環境影響評価条例の改正を初め必要な対応をそれぞれとってまいりました。また、太陽光発電施設建設に対しましては基本的に市町村が地域の実情に応じて対応することが不可欠であり、また重要でありますことから、県ではその取り組みを支援したところでもございます。

 この結果、平成27年5月末現在で、47市町村が独自に条例やガイドライン等を設け対応しております。しかし、依然として対応に苦慮している市町村やその事例も多いことから、本年5月に、市町村と県関係部局を構成員とする、太陽光発電の適正な推進に関する連絡会議を設置し、課題の共有と支援策の検討をしているところであります。

 現在、市町村条例のモデルや市町村における対応マニュアルの策定を進めておりますが、年内には取りまとめる予定としておりまして、引き続き、市町村と連携しながら、地域の健全な発展と調和のとれた自然エネルギー事業の推進を図ってまいります。

 以上です。

 

◆石和大

 

 次に、TPP協定の大筋合意についてお聞きをいたします。

 TPP協定交渉については、2013年3月に安倍首相が交渉への参加を表明し、同年7月に開催された第18回交渉会合から我が国は交渉に参加をいたしました。その後、2年以上にわたる協議を経て、10月に開催された各国の閣僚会合においてTPP協定交渉は大筋合意に至りました。

 TPP協定の交渉中は政府からの公式な情報提供は限定された感がありましたが、協定の大筋合意後、国は交渉結果や農畜産物への定性的な影響評価などをさみだれ的に公表してきております。そういったぐあいですから、そもそも今回の大筋合意の内容が実際に効力を発効するためにはどのような手順を経ることが必要なのか、またどの程度の年月を要すると見込まれるのか不透明であり、対策を講じるにもいつまでにということがないと的確な対策にはならないわけであります。県からも国に対して明確な情報を早急に伝えることを要望すべきだと思います。

 このような状況の中、私の地元の東御市は古くから巨峰などのブドウの産地としても有名ですが、協定の発効後にチリ産のブドウの輸入がふえることを懸念されている方もいらっしゃいます。また、近年、県のワインバレー構想と連携し、ワイナリーが建設され、将来に夢を持って醸造用ブドウの栽培を始めた生産者の方もいらっしゃいます。

 東御市だけではなく、本県は、果樹や野菜、花卉等の品目を中心に、園芸王国として発展をしてきました。国の生産農業所得統計によれば平成25年度の農産物の産出額は2,832億円となっており、このうち果樹、野菜、花卉の占める割合は5割を超えております。

 米や畜産などの重要5品目が大切であることはもちろんですが、本県においては果樹などの園芸品目も非常に重要な品目である中で、ブドウなど果樹の主な合意内容はどのようになっているのか。また、県としてブドウやリンゴなどの果樹を初めとした園芸品目の振興についてどう対応していくのか。農政部長にお伺いをいたします。

 さらに、先ほども触れましたように、長野ワイン、東御市にはワイナリーもふえて五つのワイナリーがあります。東御市だけではなく県内各地でワイナリーもふえてきていますし、地域によっては大きな産業となっています。ワインバレー構想を打ち出して県としても振興しているワインへの影響について観光部長にお伺いをいたします。

 

◎農政部長(北原富裕)

 

 TPP交渉の果樹の合意内容と園芸品目の振興についてでございますが、果樹については全ての品目で関税が撤廃される内容となっております。ブドウについては7.8から17%の関税が、梨は4.8%、桃は6%の関税が即時撤廃とされ、リンゴは17%の関税が11年かけて段階的に撤廃されるとされたところでございます。

 長野県産果実は高い品質と出荷時期の違いによりまして輸入品との差別化が図られているというふうに認識しておりますが、今後を見据えたとき、さらなる高品質化と生産性の向上に取り組む必要があるというふうに考えております。

 このため、消費者や実需者のニーズに的確に対応したマーケットインの生産を基本といたしまして、ナガノパープルやシナノスイートなど県オリジナル品種の拡大やリンゴ新矮化栽培などを推進してまいります。また、野菜につきましては、集出荷予冷施設の整備や実需者ニーズに対応した加工・業務用野菜、果菜類などの生産拡大によりまして収益性の向上を進めてまいります。

 これらの取り組みに当たりましては現在国で創設を検討しております産地パワーアップ事業なども積極的に活用し、産地の競争力の強化を図ってまいりたいと考えております。

 以上でございます。

 

◎観光部長(吉沢猛)

 

 TPP協定による長野県内のワインへの影響についてのお尋ねでございます。

 輸入ワインにつきましては、現在、1リットル当たり125円または価格の15%のいずれか低い額で関税が適用されておりますけれども、今回大筋合意したTPP協定の発効後8年目以降に撤廃されることとされております。この結果、輸入ワイン1本当たりではおおむね100円程度安くなるものと予想されております。

 TPP協定による長野県産ワインへの影響に関しましては、輸入ワインが7割を占めるという国内のワイン流通の現状から、特にチリ、アメリカ、オーストラリアなどからの低価格品のワインを中心に、長野県産ワインの一部との競合関係の激化が考えられます。この点に関し、関係業界からは低価格帯のワインの販売に一定の影響があるといった意見を聞いておりますが、その一方で、品質の高さで勝負していくといった声もお聞きしております。

 県では、先ほど御指摘がございましたように、平成25年3月に信州ワインバレー構想を策定いたしまして、ワイン産業を裾野が広く地域活性化につながる成長産業と位置づけ、新規就農や醸造技術向上の支援、消費拡大やブランド力向上など、ワイン用ブドウの生産からワインの消費に至る各段階におきまして官民一体で取り組みを実施してきております。

 今回のTPP協定の大筋合意を踏まえた上で長野ワインが目指すべき方向性といたしますと、県産ブドウを使った高品質で地域の個性を生かしたワインの醸造や、ワイナリーの顔が見える販売、そして県内観光地と連携したワインツーリズムの展開など、付加価値を高める取り組みを多面的に展開することで長野ワインの一層の振興を図ってまいります。

 以上でございます。

 

◆石和大

 

 私は、さきの議会の一般質問の中で農家の後継者についても就農支援を求めたい旨質問をいたしましたが、知事は、先日の農水政務官に対しての要望の中で、そのような旨要望いただいたようであります。

 このように、就農や後継者などの課題についての取り組みなど、県を初め農業関係者が日々長野県農業の未来に向けた努力を重ねています。そういった努力にTPPが水を差すようなことにならないように、TPPに対する施策の柔軟な対応を求めて、質問を終わります。