平成30年9月定例県議会 発言内容(石和大議員)
◆石和大
9月6日、北海道胆振東部地震が発生し、甚大な被害に見舞われました。お亡くなりになられた方々にお悔やみ申し上げます。また、被災された皆様にお見舞い申し上げます。
この地震によりさまざまな被害がありましたが、中でも特異な状況だったのは、全道に及ぶ大規模停電、いわゆるブラックアウトです。これまでに、これだけ広範囲で長時間にわたる停電は現在日本では経験がなかったのではないかと思います。長野県民の皆様も、もし長野県でこのような大停電が起こったらという不安をお持ちになった方々が少なからずいらっしゃると思います。電力供給については、電力会社と経済産業省の所管であって、県の関与は難しいということですが、県民の感覚からすればもう少し県による把握やコントロールができないかと感じます。
県企業局では16の水力発電所で発電していますが、その大部分を中部電力に売電していて、中部電力から長野県内にも売電されているものの、企業局から直接的に県内に供給されている電力はないということです。万が一の事態のとき、つまり大停電が起きたときに、そこで発電されている電力が使えないということは、単純な感覚から言えば違和感はあります。これは、県内で災害が発生しているのではなく、例えば中南海地震のような大地震が発生し、発電所がとまり停電するという可能性もあるわけで、県内は被災していないのに停電は発生するという事態もあるわけです。長野県は自然エネルギーのポテンシャルが高く、自給率100%を標榜していますが、非常時に自然エネルギーで電力を賄うことは難しいのではないかと思います。長野県の強みとして、非常時の電力の地消地産のような施策が考えられないか、環境部長にお聞きをいたします。
関連して、家庭用の太陽光発電についてお聞きします。
今回の北海道の地震による停電の報道等を見ていても、スマートフォンの充電もできずに困った、停電だと家庭用の電話も通じずに困った、もちろんエアコンも使えない、困った話ばかりが目立ちました。家庭用の太陽光発電装置がついている家は、少なくとも昼間の日照がある時間は、ある程度電気が使えたはずで、その点ではよかったとか、近所の人に融通したとかということもあったのではないかと想像してみたのですが、ほとんど報道されてはいなかったと思われます。
9月6日の発災の日に、資源エネルギー庁は、停電時の住宅用太陽光発電パネルの自立運転機能についてというお知らせを出しています。この中で、御自宅の屋根などに太陽光発電パネルを設置されている方は、停電時でも日中は太陽光発電パネルの自立運転機能で電気を使うことができますと、その使い方について説明しています。つまり、この機能を知らない人が相当いるということです。
長野県は家庭用太陽光パネルの設置率が全国第3位ということです。この機能の周知を図り、停電時にも日中は自分の家の電気を使えるということを広く県民に知らせるべきだと考えますが、いかがでしょうか。環境部長に伺います。
さらに、公共施設に太陽光パネルが設置されているところも相当数あります。家庭用ではないので自立運転機能がついていないこともありますが、災害時に使える体制を構築すべきと考えますが、ソーラーマッピングの構築にあわせて施策の方向性はいかがでしょうか。環境部長に伺います。
次に、病院においての停電は命の危機にかかわるわけですが、県内病院における停電時の自家発電の充足はいかがか。また、何日もつのか。燃料の供給体制は整っているのか。これらの危機管理上の把握や対応について県はどのように関与しているのか、健康福祉部長にお聞きします。
3点御質問をいただきました。
初めに、非常時の電力の関係でございます。
議員の御指摘のとおり、非常時に地域の電力を地域で消費できるようにすることは重要でございますが、停電時には送電網に電気を流せないという課題があることから、本県では、施設単位での自立分散型のエネルギーシステムの導入に取り組んでまいりました。具体的には、地域の防災拠点となり得る施設が災害時に停電した場合でも、最低限の機能を維持することができるように、学校や市町村役場などへの太陽光発電と蓄電池をセットにしました再生可能エネルギー導入等を平成24年度から4年間、国のグリーンニューディール基金を活用して支援してまいりました。
この結果、避難所となる小中学校や公民館を初め、市町村役場、消防署、診療施設など合わせて60以上の施設に導入をされ、地域としての防災力強化も図られたところでございます。
続いて、自立運転機能の周知でございます。
自立運転機能は、今では住宅用太陽光発電システムの標準機能となっております。議員御指摘のとおり、太陽光発電は、停電になったときでも、日中は一定程度の電気を使うことができるという点を周知することは大切と考えております。
一方で、この機能は、正しく操作しないと自立運転に切りかわらなかったり、思わぬトラブルにつながる可能性もあると認識しております。このため、県としましては、非常時だけではなく、平時からこの機能のメリットや操作方法を県民に知っていただけるよう、今後、この情報を県のホームページ等で発信し、県民の皆様に周知してまいりたいと考えております。
続きまして、公共施設の太陽光発電の関係でございます。
県では、県有施設の屋根を太陽光発電を希望する事業者に貸し出す際には、非常用電源の設置を推奨しております。また、災害に備えた体制づくりにも資するシステムといたしまして、本年度、県では、県有施設はもとより、他の公共施設や住宅など県内全ての建築物の屋根を対象に、発電、熱利用のポテンシャルを見える化するソーラーマッピングの構築に着手しました。今後、このソーラーマッピングを活用した屋根ソーラー普及策を展開する中で、市町村等に対しましても、公共施設の太陽光発電設備に自立運転機能が備わっていることのメリット等を周知するとともに、非常時には施設単位で電力を賄えるような地消地産の体制の幅広い普及に取り組んでまいります。
以上でございます。
病院の停電時の対応についてお答え申し上げます。
災害時における医療提供体制として、県は、災害時の高度の診療機能を有し、重症患者の受け入れや搬出などを担う10の災害拠点病院を県内全ての2次医療圏で指定しています。これらの災害拠点病院では、自家発電機の保有や必要な燃料の備蓄をしており、3日間程度は単独で稼働できる状況であります。また、災害拠点病院以外の118病院においては、約9割に当たる103病院で、非常時に備え、自家発電設備を整備しております。実際の災害時には、広域災害・救急医療情報システムにより、全病院の電力や燃料の確保状況を把握する体制を整えており、これらの情報を電力会社や関係団体と共有し、優先的な電源車の確保、燃料の供給に係る要請など、必要な支援を行ってまいります。今後も、未整備の病院には非常用電源の確保などを、整備済みの病院には燃料の備蓄や設備の充実などを要請し、災害に備えた体制整備を図ってまいります。
以上でございます。
次に、幼児教育について伺います。
近年、少子化や核家族化など子供たちを取り巻く環境が大きく変化する中、生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育の重要性はますます高まっています。また、国においては、平成29年3月に、幼稚園教育要領、保育所保育指針等が同時改訂され、幼稚園、保育所、認定こども園等が幼児教育を行う施設として位置づけられ、全ての施設において質の高い幼児教育を実現させることが求められているとろであります。
こうしたことから、県では、幼児教育の質を向上させるための包括的なシステムの構築を目指し、信州幼児教育支援センター(仮称)の設置について検討を進めているとこれまでの答弁でもお聞きをしています。
そこで、幼児教育支援センターの設置についてお伺いをいたします。
幼児教育支援センターの設置に向けた検討の進捗状況はどうか。また、検討を進めてきている中で見えてきた課題は何か。幼児教育施設は、公立幼稚園、私立幼稚園、あるいは保育所などさまざまあります。行政の所管もそれぞれ異なる中、部局横断的な取り組みが必要と考えますが、検討状況はどうか。以上、教育長にお伺いいたします。
まず、幼児教育支援センターの検討状況、課題についてでございます。
本年5月、長野県幼児教育あり方検討会及び専門部会を立ち上げまして、学識経験者や幼保小等の幼児教育に携わる関係機関の皆様を委員としてお願いいたしまして、長野県幼児教育振興基本方針の策定と幼児教育支援センターの役割について議論を重ねていただいているところであります。
これまで、検討会を1回、専門部会を3回開催し、まずは幼児教育の現状と課題について議論をした上で、基本理念と、それを実現する具体的取り組みについて協議を行ってきているところであります。協議の中で見えてきた課題としましては、子供がみずから持った興味、関心を伸ばすことができる子供主体、主役の幼児教育になっていないのではないか。あるいは幼稚園、保育所等と小学校との連続性について、幼児期に培った一人一人の興味、関心をさらに伸ばす多様性のある授業が行われていないのではないか。配慮の必要な子供たちへの対応について、専門的知識に基づいたアドバイスを受けたいなどといった御意見をいただいているところでございます。
次に、その部局横断的な取り組みの検討状況についてでありますが、協議の中で見えてきたこれらの課題に対しては、議員御指摘のとおり、もともとの幼児教育機関としての公立幼稚園、私立幼稚園、あるいは保育を必要とする乳児、幼児を預かる保育所など、設置目的や所管が異なるために、それらの枠を超えて幼児教育支援センターにおいて部局横断的に取り組んでいくことが必要だというふうに考えております。
例えば、子供が主役となる質の高い幼児教育を県内全ての施設において実現させるための幼稚園教諭や保育士等を対象とした研修内容の共有化や、あるいは経験年数に応じた体系的な研修のあり方についてでありますとか、幼稚園、保育所等と小学校との連続性について、モデルとなる接続カリキュラムをどう作成するか。さらには、配慮の必要な子供たちへの支援について、医療、福祉分野と連携し、専門的なアドバイスが受けられる仕組みをどう構築するかなど、幼児教育支援センター設置に向けまして、部局横断的なメンバーで構成しておりますあり方検討会及び専門部会で検討しているところでございます。
知事は提案説明で、子育て世帯に対する支援策を市町村とともに改めて検討するとも述べられています。県と市町村の担当課長で構成される子育て支援合同検討チームにおいて、子どもの未来応援基金(仮称)の検討が進められているとお聞きをしていますが、子供、若者の未来の応援のため、長期的、戦略的な視点を踏まえつつ、子育て支援や困難を有する子供、若者、家庭への支援などについてきめ細やかな取り組みを推進されていくことを要望して、次の質問に移ります。
本年6月に文化財保護法が改定されるなど、文化財の保護や活用が注目されています。とりわけ地域固有の文化、伝統、歴史の結晶である祭りや踊りなどの民俗芸能は地域に住む人々の心のよりどころ、地域の誇りであり、中山間地域を維持するためのツールになるものであるとともに、地域を活性化させる移住者を呼び込む核にもなるものと考えます。
一方、民俗芸能は、各保存団体の皆様の努力に負っている部分が大きく、人口減少化においては、後継者の不足や不在により存続の危機にさらされており、いかに次世代に継承させていくかが大きな課題と考えています。
県教育委員会では、民俗芸能が多く継承されている南信州地域をモデルに、伝統行事継承モデル構築事業を平成27年度から3年間実施し、南信州民俗芸能パートナー企業制度などで地域で民俗文化財を継承していく取り組みが始まっており、こうした取り組みを県内の他地域にも紹介していく必要があると考えます。
そこで、南信州地域をモデルに実施した伝統行事継承モデル構築事業ではどのような取り組みや成果、課題があったのか。また、県内の民俗芸能の継承に向け、南信州地域での取り組みの成果の普及を初め県としてどのように取り組んでいくのか。以上、教育長に伺います。
民俗芸能の伝承につきまして、一つは南信州をモデルとしたモデル構築事業の取り組み成果、課題、それから、それの普及を初めとする民俗芸能の継承に向けて県としてどのように取り組んでいるかという御質問でございます。
まず、このモデル構築事業を実施したことによりまして、民俗芸能の継承に御協力いただける企業を登録する南信州民俗芸能パートナー企業制度の創設や、小学生を対象とした民俗芸能子ども体験会などを開催しまして、担い手人材の確保育成が図られたところでございます。
例えば、このパートナー企業制度では、ことし9月現在で登録42社ということであります。そして、ことしの5月では、大鹿歌舞伎でも4社8人が運営ボランティアで参加したといったことがございます。また、ウエブサイト南信州民俗芸能ナビの開設や南信州民俗芸能継承フォーラムを開催し、継承意識の醸成に努めているところであります。
この3月の民俗芸能継承フォーラムでは約200名が参加し、飯田女子高校、阿南高校の生徒が発表したということであります。こうした成果の一方、民俗芸能の多寡や保存団体など継承に取り組む状況や基盤が地域によって違いがあることを踏まえますと、このモデル事業をどう他の地域に広げていくかということが一つの課題だというふうに思っています。
そこで、本年4月の地域振興局長会議におきまして、モデル事業のさまざまな取り組み事例を紹介し、その内容や成果の共有を図った上で、まずは各地域でできるところから取り組んでいただくことが重要だというふうに考え、今年度、文化財保護事業補助金により、長野市の犀川神社の杜煙火の伝承者養成を支援しているほか、地域発元気づくり支援金によりまして、体験教室の開催など12件、2,474万3,000円の支援を行っているところでございます。引き続き、市町村、保存団体、地域振興局などと連携しながら県内の民俗芸能の継承を支援してまいりたいというふうに考えております。
人口減少社会の中で、地域の伝統文化の伝承が困難な状況になることは県内各地で発生することが予想されます。せっかく南信州でモデルケースの実践があるわけでありますから、よく分析して、全県的な取り組みとなるように広めていただき、信州らしさを守り生かす事業に発展することを願い、質問を終わります。