平成30年2月定例県議会 発言内容(竹内久幸議員)
◆竹内久幸
長野県立病院機構の運営について質問いたします。まず、健康福祉部長に伺います。
昨年9月に長野県立病院機構評価委員会から出された平成28年度評価結果で指摘された厳しい病院経営の状況について、病院機構は、経常損益が平成27年度と比べて3億37万円の減と大幅に悪化した。今年度も、7月までの経常損益の累計は既に債務超過の状況を示しており、大幅に経営が悪化している。その原因は、年金制度改革に伴う共済年金掛金の増加、人事委員会勧告に準じた給与引き上げの影響、厳しい医師不足などとしています。
評価委員会の前年度の評価結果では、経営改善に向けた取り組みを継続することで第2期中期計画を達成できるものと思われるとしているのに、なぜその後の1年間でこんなに経営状況が悪化してしまったのか。それは、県が定めた第2期中期目標の運営費負担金の検討や計画の認可の際、めまぐるしく変わる医療改革への考慮や賃金の賃上げ等を考慮せず、硬直化させてしまったのではないか、この点についてまず伺います。
また、地方独立行政法人法には、設立団体が中期計画で定める事項の一つとして「予算(人件費の見積もりを含む)」とありますが、第1期、2期計画とも、予算の備考欄に、「期間中の診療報酬の改定、給与改定及び物価の変動等は考慮していない。」としており、認可に当たりどのような判断をされたのか伺います。
同計画の短期借入金の発生理由として、賞与の支給等、資金繰り資金への対応とありますが、どのような判断をして認可したのか、あわせて伺います。
次に、病院機構の平成28年度財務諸表等の独法化移行前の地方債償還債務は、期末残高が156億円余、移行後の長期借入金の期末残高が86億円余となっており、同年度に償還金として26億円余を返還してもこれだけの残額が残っています。そこで、第2期中期計画に定められた5年間固定して県が毎年負担する運営費負担金54億8,000万円の検討に当たり、これらの債務の償還金の県負担の基準と、単年度の県の負担金額について伺います。
長野県立病院機構の運営について、大きく3点御質問いただきました。
まず初めに、運営費負担金が硬直化しているのではないかとの御質問がございました。
中期計画期間中の5年間、あらかじめ県が示した定額の財政負担をすることで、病院機構は期間全体を見通した経営方針や取り組みを立案できることや、県負担金を一定額にすることで毎年度の損失変動が明確になるなどの理由により、第1期中期計画から定額としているものであります。
第2期の運営費負担金の額については、第1期中期計画期間の累計の経常損益が6億円余の黒字の見通しであったことを踏まえ、検討を行っております。具体的には、第1期の運営費負担金51億7,000万円をベースに、第2期の期間中に見込まれた新たな取り組みや病院ごとの収支の状況を踏まえ、必要な見直しを行い、こども病院における急性期医療体制の強化などの県負担分として1億円、阿南病院の患者減少等による収益減少への支援として1億5,000万円など、3億1,000万円増額したところであります。
次に、中期計画期間中の変動を考慮しない理由と、短期借入金限度額を20億円とした判断についてのお尋ねがありました。
5年間という期間は、少なくとも診療報酬改定が2回行われるなど、経営に影響を与えるさまざまな要素で変動が見込まれるところです。変動は、収益の増加や費用の削減といった利益の増加に寄与するケースと、それとは逆のケースもありますが、いずれの場合においても、安定的な経営となるよう病院機構が自立的に対策を講じ、効率的に業務運営を行うことが基本と考えております。
次に、短期借入金の限度額20億円については、賞与の支給月は例月に比較して10億円程度多くの現金が必要となることに加え、高額の医療機器の支払いと重なるケース等を想定し、20億円としたものと認識しております。
なお、短期借入金については、中期計画に定めるよう法に規定されているため設けております。
最後に、債務償還金の県負担基準と単年度の県負担額についてお尋ねがございました。
債務償還金に係る県の負担の基準は企業債の借り入れ年度によって異なっております。具体的には、平成14年度までの借り入れに係る企業債償還金は県が3分の2を負担し、15年度以降の借り入れに係る企業債償還金は県が2分の1を負担しております。
平成28年度の企業債償還金と県の負担金額でございますが、償還金約26億1,600万円のうち、県が15億2,600万円、58.4%を負担しております。
以上であります。
健康福祉部長にもう一つ確認しておきたいことがあります。
一昨日の山口議員への答弁で、病院機構の経営悪化の要因として共済制度の変更がある趣旨を答弁しましたけれども、制度変更で機構の事業主負担は多額に上りますが、第2期計画の運営費負担金に計上されていたのかどうか。また、計上されていなかったとすれば、契約締結時に前提とされた事情がその後変化し、契約どおりに履行されることが契約者間の公平に反する結果となる場合に契約内容の修正をし得る事情変更の原則に該当すると思いますが、見解を伺います。
さらに、今回質問するに当たり、病院機構職員の給与の見直しまで踏み込んだ評価委員会の論議の内容が知りたくて県のホームページを見ましたが、平成29年度に行われた3回分が公表されていません。職員の生活にかかわるこんな重大な問題なのになぜ公表していないのか、あわせてお伺いをいたします。
第2期の運営費負担金の負担のあり方について再度御質問をいただきました。
共済に関する負担に関しましては、第2期の運営費負担金の計算に当たり算定はしておりません。また、当該事項に関する事項については、先ほど御答弁させていただいたとおり、5年間の固定の中で対応していくものと考えており、中期計画の変更に関するものには該当しないと考えております。
また、ホームページの掲載につきましては、実情等については業務実績等を報告していただき、評価委員会で評価をしていくということになっております。また、予算編成過程における議論につきましては、委員会等で、またこの議会で御承認いただいたというふうに思っております。
以上でございます。
今質問しました事情変更の原則に該当するかどうかということについては、即応できないと思いますけれども、ぜひしっかり検討していただきたいということを申し上げておきたいと思います。ホームページについては、こんな大事なことをなぜ公開していないのか。それをもう一度はっきりとお答えいただきたいというふうに思います。
県立病院機構の運営に関する情報の公開に関するお尋ねだと理解をしております。
これにつきましては、先ほど御答弁させていただいたとおり、まず、運営費負担金を決定するに当たりましては、この議会にお諮りいただきまして、委員会で御議論いただいた上で承認をいただいているものと考えております。また、その後の運営につきましては、各年度、県立病院機構から事業実績の評価を報告をいただき、評価委員会に評価をさせていただいておりまして、関連する資料は公開しているものというふうに考えております。
以上でございます。
情報公開が大変重要な時代に、しかも大事な事柄について公開されていないということは本当に県政運営にとって極めて遺憾であるということを申し上げておきたいと思います。
次に、独法化移行時の確認事項と今後の対応について知事に伺います。
独法化移行時に県議会ではさまざまな議論がありました。それは、県のバラ色の説明に対し将来を不安視する声が多く、私も何回か質問しましたが、平成20年9月議会では、本県の広く分散していてそれぞれの目的を持つ病院を独法化することは地元対応や職員の労働条件などが懸念される中で、どこに行くバスかわからないのにそのバスに乗れないと発言した経緯があります。この考えに、当時の村井知事は、現在の医療提供機能の水準を維持向上させるものでなければならない。職員が働きがいのある職場をつくっていくことが何よりも大切としました。
また、平成21年2月議会では、県財政を身軽にする意図で県組織と切り離すのかとの議員の問いに、村井知事は、僻地医療や高度医療などの不採算医療が引き続き提供できるよう、適正な経費を負担していく。県の財政負担を削ろうという動機で行うものではない趣旨を答弁をしております。
そして、平成22年2月議会での知事の議案説明では、本年4月から病院機構に移行する県立病院は、将来にわたって質の高い医療を提供し続けることができるよう、中期的な見通しの上に立って運営費を負担してまいりますとし、同議会での私の運営費負担の問いに、当時の桑島昭文衛生部長は、病院機構の収支にかかわらず、中期的な見通しの上に立って一定の経費を負担してまいりたいとしました。
また、これらの過程では、県と県職労との間で法人に移行する職員の労働条件等に関する交渉が行われ、平成21年9月に、給与表、期末手当及び勤勉手当等を県に準じる等の確認が行われました。そして、私はこれらの論議の経過から、当初独法化には反対でしたけれども、賛成した経緯があります。
今回の事態は、第2期中期計画策定時の運営費負担金の検討の際、これらの経緯が忘れられ、県費負担の軽減と経営の効率化のみが優先されたのではないかと思わざるを得ません。
そこで、阿部知事は、これらの経緯を踏まえ、独法化するに当たっての当時の村井知事の考えを継承していかれるのか伺います。
また、地方独法法第25条では中期目標の期間は3年から5年とされていますが、今回の教訓を生かし、制度改正や人勧などの急激な変化に対応するため3年に短縮するとともに、今回の事態に対応するため、独法法第26条に「確実な実施上不適当となったと認められるときは、その中期計画を変更すべきことを命じることができる。」と定めていることから、これ以上県民福祉と医療を後退させないため変更すべきと思いますが、お考えを伺いたいと思います。
さらに、ことし4月から公立大学法人県立大学が開校しますが、同じ独法法のもとで運営する病院機構への負担金と大学への負担金との間で不均衡があってはならず、病院機構への運営費負担金も必要な分をしっかり負担していくべきと思いますが、知事の認識を伺います。
以上、お願いをいたします。
県立病院機構に関して3点御質問を頂戴いたしました。私も、今の県立病院機構の現状に対して、しっかり県として対応していかなければいけない状況だというふうに認識をしております。
まず、運営費の負担についての考え方でございます。
県立病院機構は、政策的医療あるいは不採算医療を担っていただいているわけでありまして、県民の皆様方が安心して暮らしを営んでいく上での重要なサービスを提供しているものというふうに認識をしております。
第2期中期目標におきましても、県内医療水準の向上に努めるよう業務の質の向上を指示させていただいておりまして、この実現のために運営費の負担を行っているところでございます。今後とも、質の高い医療の提供のために、中期的な見通しのもと、県が負担するべきものは負担をしていく考えでございます。
次に、計画期間の問題でございます。
県立病院につきましては、経営主体の創意工夫で収益を確保して診療機能の維持向上を図るということを目的として地方独立行政法人化しているわけであります。中期計画期間の5年という期間、これは、県が一定の財政支援を行う中で、病院機構が自立的に病院経営を担っていただくということが基本だというふうに思っております。
まず、今後の計画期間のあり方ですが、計画期間を短くすると時代状況の変化に対応しやすいということがありますが、他方で、中長期的な経営方針のもとに経営をしづらいというような観点もありますので、今後のあり方をしっかり考えていくべき問題だというふうに思っております。
また、中期計画の変更という観点でありますが、県といたしましては、病院機構の自立性あるいは自主性が損なわれないように配慮をしていくという観点も必要だというふうに思っています。中期計画の変更を命ずるということに対しましては慎重でなければならないというふうに思っております。
今期につきましては、これまで経常収支でマイナスという厳しい経営状況になっているわけでありますが、経営改善に向けまして、現在病院機構において取り組みを行っていただいている状況であります。その状況を見守っていきたいというふうに考えております。
次に、病院機構と県立大学の県負担についてでございます。
双方同じ地方独立行政法人で、同じ法律の適用になるわけでありますが、しかしながら、財政、財務の部分につきましては、法律上、病院事業につきましては、大学と異なり、公営企業型地方独立行政法人という形の位置づけになっております。原則として事業の経営に伴う収入をもって充てる独立採算が原則という状況です。
県立病院機構、県立大学、いずれにおきましても、法の趣旨も踏まえながら、いずれも県民にとって重要な機能を果たしているわけでありますので、県として必要な負担を行っていきたいと考えております。
以上です。
部長の答弁で、負担金が固定化されていることについて、機構の経営が明確化することが一つの目的であるということでしたけれども、ただ、言えることは、既に本当に大変な経営状況になっておって、現に、今議会に県職員や地方職員の人勧の改定の条例案が出ていますけれども、残念ながら病院のほうはそれが適用されないというところまで既に決まってしまっているわけですね。そのことは、やはり大変変化している事態であるということをぜひ認識をいただいて、負担するものは負担するというふうに言われましたけれども、ぜひ早急に検討をしていただいてしかるべき対応をとっていただきたいということをお願いしておきたいというふうに思います。
この課題は、やはり待遇の問題というのは、競争の中で、僻地医療を維持していくために、例えば木曽であるとかそういうところを維持していくためにお医者さんをどう確保するかということがあるわけでして、そういう風評被害がだんだんと広がっていくと人が集まらなくなってきてしまう。その結果、地域も疲弊してしまうということになりますし、全体の医療水準も落ちてしまうということがあります。そこのところが一番柱にあるということをぜひ肝に銘じていただいて対応していただきたいということを強く申し上げておきたいというふうに思います。
いずれにしても、この問題は大変重要な問題なので、これからもしっかり県の様子を検証しながら、私としても徹底的に取り組んでいく決意でございますので申し上げておきたいというふうに思います。
最後に、近く定年退職される青木県民文化部長は、信濃美術館の整備や文化、芸術の振興にかかわるなど、さまざまな功績を残されてこられましたけれども、県職員生活を振り返っての思いについて率直にお伺いを申し上げたいというふうに思います。
県職員生活を振り返っての思いについてのお尋ねをいただきました。
県民文化部長としての最後の3年間は、お尋ねにもございましたように、信濃美術館の整備や芸術監督団を初めとした文化、芸術の振興、子どもを性被害から守るための条例の制定や高等教育の振興など、それぞれに重要な施策に携わることができました。これらは、いずれも県民文化部の職員や関係する部局の皆さんとのチームワークで進めてこられたものでございますし、議員の皆様の御理解なくしては進めてこられなかったものでございます。心より感謝を申し上げる次第でございます。
個人的には、県職員を志望しましたのは福祉の仕事をしたいとの漠然とした思いからでございましたが、歩んできたのは少し違う道でもございました。私たちの仕事の根本にあるのは、社会的に弱い立場の皆さんにどう向き合うかだと思ってまいりました。最後に県民文化部で子供の貧困対策や児童相談所の強化などの施策にかかわることができましたことにやりがいも感じてきたところでございます。
退職に当たり、これからも、職員の皆さんが、知事のもとで、仕事へのやりがいを持ちながら助け合い、励まし合って、チームとして長野県の発展、県民福祉の向上のために力を尽くしていただきますことを期待し、エールを送らせていただきたいと思います。
また、議員の皆様にも長い間本当にお世話になりました。改めて感謝を申し上げ、お尋ねへの答えとさせていただきます。ありがとうございました。
ありがとうございました。青木部長を初め議場におられるほかの退職される職員の皆さん、そして県政全体の中でも退職される職員の皆さんの今日までの御尽力に改めて感謝を申し上げ、そして、これからの御健勝を心から御祈念申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。