平成30年2月定例県議会 発言内容(小島康晴議員)
◆小島康晴
次期総合計画にかかわって何点かお尋ねいたします。
誰にでも居場所と出番がある県づくり、あるいは人生二毛作、こういった施策の推進のため、長野県シニア大学は大変重要な事業と思います。一方で、このところ定員割れなどが取り沙汰されています。そこで、この間のシニア大学の成果や課題をどのように捉えているか、また、新年度から、募集対象者をおおむね50歳からと10歳引き下げるとのことですが、その理由について健康福祉部長に伺います。
知事はシニア大学の学長ですが、このシニア大学をどのように評価し、また、次期総合計画にどう位置づけていくのか。また、50歳から募集となりますと、知事御自身も50代で学生となれるわけでございますが、それでいいのでしょうか。所感を伺います。
次期総合計画において、仮に生産年齢人口を20歳から74歳までと捉えると、長期的には60%程度で定常化すると人口推計が示されています。言ってみれば、平均して74歳ぐらいまでは元気で活躍していただきたいということになると思いますが、このことをどのように次期総合計画の施策や事業に反映させていくのか。
また、各地域編を見ますと、従来の生産年齢区分、3区分のグラフが示されており、これをもとに計画策定されたとうかがわれますが、地域編こそしっかりとそれぞれの地域の年齢構成等を分析して政策推進すべきと考えますが、いかがでしょうか。知事に伺います。
学びと自治の力を次期総合計画の基本に据えたことを高く評価するところです。学びと自治といいますと、私は、地域の公民館活動や自治会や町内会などの住民組織の活動がまず頭に浮かびます。長野県全体もそうでしょうが、飯田・下伊那地方では公民館活動が盛んであり、また、地域の住民組織も活発に活動しています。
飯田市では、合併前の旧村単位の20地区にそれぞれ公民館と自治振興センターを置き、センター長や公民館主事など市職員を数人ずつそれぞれ配置して地域の活動を支えています。さらに、地区によって多少は違いますが、公民館の下にさらに各地域の分館も置かれ、活動が展開されています。
私自身も、人口約4,000人弱の地元の東野公民館で広報委員を15年ほど担わせていただきました。職場と自宅の往復だけでは得られない地域の情報や課題を知り、また生涯の友人、知人を得ることができました。
もちろん、消防団やPTA役員もそうでしょうが、こうした地域の活動の中で学び、育ち、いずれは自治会長など地域のリーダーになっていく、それが目指すべきまちづくりの姿だと思います。
学びと自治を政策推進のエンジンとするというならば、例えば地域おこし協力隊のように外から風を入れる最近の仕組みも大切であると思いますが、さることながら、今まで積み重ねてきた地域の活動を財産として、そこから出発すべきと考えます。
県内の公民館活動や地域の住民の皆さんの自主的な組織の活動をどのように評価し、次期総合計画に位置づけていくのか、知事に伺います。
シニア大学の成果と課題、また募集対象年齢の引き下げについてお尋ねをいただきました。
高齢者の生きがいづくり、仲間づくりと積極的な社会参加の実践者を養成することを目的とするシニア大学は、これまでの約40年間で5万人近い卒業生を輩出してまいりました。
近年は、シニア大学卒業後に社会参加、社会貢献していただくことに力を入れており、近年の卒業生は、例えばスーパーに買い物に訪れた高齢者が気軽に立ち寄れる、いわゆる高齢者サロンの開設など、さまざまな形で地域に貢献されております。
このような社会貢献活動に積極的に参加するシニアを社会にさらに送り出すことが今後のシニア大学の課題と考えております。そのため、シニアの皆様にとって魅力があると同時に、実践力、実践に結びつく学びの場となるよう、社会貢献の実践者から直接話を聞くことができる講座の開催、課題を抱える地域に出向いてのフィールドワークの実施など、学部ごとに工夫をしているところであります。
入学資格の引き下げにつきましては、50歳代の方々からの入学要望を踏まえ、シニアとなる前からその後の人生の準備が必要ではないかとの考えから、有識者も含めたシニア大学運営委員会で決定したものであります。
以上であります。
シニア大学について御質問いただきました。
シニア大学は、昭和53年の開学以来、約40年の歴史を有する学びの場であります。これまで、時代に合わせて名称や講座内容も見直しをしてきたわけであります。
近年、生きがいづくりのみならず、社会活動に関する講座も充実させてきておりますし、シニア活動推進コーディネーターの活動とも連携をすることによりまして、具体的な地域活動に携わる受講生の皆様方もふえてきているという状況であります。
こうしたシニア大学の取り組みは、私もシニア大学に学ばれた方々とお話をさせていただきますけれども、これまでかなり多くの皆様方の生きがいづくり、健康づくりにつながってきたものというふうに評価をしております。
入学資格の見直しにつきましては、先ほど健康福祉部長から御答弁申し上げたような背景でございます。長寿社会開発センターの皆さんがシニア大学運営委員会で検討を重ねて決定をされたわけでありますが、今後、長野県として、学びの県づくりを進めていくわけであります。その中で、大人の学びをどうしていくかということは大変重要なテーマだというふうに思っております。シニア大学のあり方についても、今後とも引き続き学びの県づくり全体の中で考えていきたいというふうに思っております。
それから、生産年齢の政策への反映についてという御質問でございます。
本県でシニア世代の皆さんと接するたびに、65歳ということで一律に線引きするということに対して率直な疑問を感じてきておりました。こうした問題意識から、信州創生戦略におきましても、社会情勢を反映した生産年齢ということで、20歳から74歳という区分を人口の区分としてお示しして、その推移を示したところであります。新しい総合計画においてもこれを踏襲させていただいております。
社会保障制度など県としては変えられない国の制度もありますけれども、県として政策を考える場合には、この人生100年時代というものを見据えて、一律に年齢で区切るということではなく、個々の県民の皆様方の状況に応じて柔軟な対応をしていくということも必要だというふうに思っております。
そういう中で、地域計画の部分でありますが、ここが従来の区分ではないかという御指摘だと思います。確かに、私もそういう御指摘はあり得るだろうというふうに思います。
今回の地域計画の人口推計は、市町村の人口ビジョンを集約させていただいたものでありまして、実は20歳から74歳の年齢を捉えるデータが市町村ごとに全ては整備されていないということで、そういうデータ整理はできなかったところでございます。
そういうことで、今回、地域計画でお示しをすることはできなかったわけでありますが、今後、広域圏ごとに人口推計をどうしていくかということについては重要な課題だというふうに受けとめて考えていきたいと思います。
地域計画を推進するに当たりまして、先ほど申し上げたように、年齢にかかわらず活躍できる社会をつくるという観点で取り組んでいきたいと思っております。
それから、学びと自治の関係で、公民館活動、地域の住民組織の活動への評価という御質問であります。
本県におきましては、公民館活動で学ばれた多くの県民の皆様方が地域活動の担い手となり、そして自治の力で地域づくりを実現されてきているというふうに思っております。まさに、この公民館活動、住民による活動は、小島議員の御指摘にもありましたように、学びと自治の力による県づくりを進めていく上で重要な基盤だというふうに考えています。
ただ一方で、県内各地の公民館職員は、経験年数が浅い若手職員が多くなってきており、かつてに比べるとリーダーシップを持った職員が少なくなっているのではないかという声もございます。また、地域によって活動にも差がございます。
こうした中、平成28年の5月に阿智村で公民館関係者の方々と私とで県政タウンミーティングを行わせていただきました。私も、長年地方自治に携わってきたわけでありますが、このタウンミーティングにおいて、実際に公民館活動をされてきている方々と直接話すことによって、まさに自治の担い手であります住民の皆さんと、そして支え手である公民館職員がともに育つ、ともにプロジェクトを進めていく、この飯田・下伊那のような公民館活動を県内各地に広げたいというふうに感じたところでございます。
今年度、飯田市役所で長らく公民館活動に従事されてこられた方を任期付職員として採用させていただいております。県内各地の公民館を初めとする学びの現場に出向いてもらい、現状の把握、あるいはすぐれた取り組みの収集、こうした本県の学びと自治の財産であります公民館活動を今後も維持発展させていくための種まきを行ってもらっているところでございます。新年度、こうしたことを踏まえまして、地域住民の学びと活動を支えていく公民館職員など中間支援人材の育成に取り組んでいきたいと考えております。
また、新たに地域づくりフォーラム・アワード(仮称)を創設して、公民館活動も含め、地域のすぐれた活動について積極的に検証を行わせていただき、また、先進的な事例の県内への横展開を図っていきたいと考えています。
こうした取り組みを通じまして、県としても、それぞれの地域が自治の力を育んでいくための支援を行っていきたいと考えております。
以上でございます。
私の質問の仕方が悪かったのでしょうか。定員割れなどが取り沙汰されているが成果と課題はというふうに部長に通告してお尋ねしたわけでありますけれども、一般的な御回答のような気がいたしました。40年で4万8,000人の卒業生があるということはすばらしいことではありますけれども、一方、60歳以上、あるいは65歳以上の県民の皆さんは60万人とか70万人おられるわけでありまして、そのことを思うと、素人判断では、60歳以上では定員割れしてきたからちょっと50歳に下げてみるかと思われても仕方ないのではないかというふうに気がかりなわけです。
今、人生100年とか、74歳まで活躍して頑張ろうというのに、片やシニアは50歳に下げるということで、これはよくわからないのです。もう一度部長の答弁をお願いします。
シニア大学の成果と課題、また募集年齢の引き下げについての再度のお尋ねであります。
シニア大学の果たすべき役割や社会情勢につきましては、今議員から御指摘のとおり、さまざまな変化の中、我々も対応してきたところであります。そうした中で、さまざまな市町村でも取り組みが行われ、県として取り組んでいるシニア大学については見直しを行ってきたわけであります。
具体的な内容としては、先ほど来答弁させていただいておりますとおり、社会貢献活動に関する取り組みを進めてきているという状況で、そうした中で、議員御指摘のように定員割れが起こっている事実も一部あると思っています。
こうした状況を踏まえ、今後につきましては、先ほど知事から答弁のありましたとおり、今後のあり方を県政の政策の中で考えていきたいというふうに考えております。
以上であります。
この1年間でも、健康福祉委員会の中で、定員割れしている、平均75%になっていることについて、例えば、何年か前から、募集のハードルが高くなった、あるいは敷居が高くなってしまって諦めたという声が私のところにも届いている。そういった議論をされている中で、今のように、せっかく県費を投入してシニア大学をやっているのに、何か人ごとのようなお話で、センターに任せるとしても、県民が期待する県の事業の大事な柱であるので、ぜひもう一度きちんと定員割れの原因を分析して、ちょっと面倒だけれどもおもしろそうだから、2年間、1万円ずつ払って一緒に行ってみまいかと高齢者の皆さんが気楽に誘い合って参加できるのがシニア大学の原点だと考えておりますので、そのことを含めて根本的な精査、見直しを強く求めておきたいと思います。
それから、今、公民館活動について知事から御丁寧な答弁をいただきました。
ただ、次期総合計画の中を見てまいりますと、図書館、公民館を活用して、云々、機会の提供をとか、あるいは、数値目標の中に、市町村公民館の学級・講座数を目標として掲げるといった表現が見受けられます。
公民館というものを、箱物、建物として捉えていて、さっき私が簡単に紹介したような地域の自治の学びの場というか、そういう生きた公民館活動というものについて少し踏み込みが足りないのでないかということが気になっております。そんなことを申し上げておきたいと思います。
三つ目として、集落からの地域再生について伺います。
恥ずかしながら、最近、私は、T型集落点検というものを知りました。TというのはアルファベットのTですね。T型集落点検と申しますのは、今、その地元集落に住んでいる住民票上の住民の方だけではなくて、車で30分とか1時間程度以内に離れて暮らしている子供さんとかお孫さんといった世帯を家族としてカウントして、それに基づき、その集落の構成人数を見直していく、調査するというものでありまして、過疎集落の維持や農業の担い手問題などの課題に対して、このT型集落点検を用いまして、統計データだけでは見えてこない生活の実態をもとに集落点検を行って、地域づくりの一助を担おうとするものだそうです。熊本大学の徳野先生が提唱されて、お隣の新潟県を初め、各地域で、先生みずからも実践されて成果を上げておられるということです。
限界集落とか地方消滅とか言われますが、どっこい地域は生きているというのが私の実感でございます。その理由の一つが、このT型集落点検が示唆しているのではないか、少し離れてはいても、家族の助け合いがまだ生きているということではないかと思うわけです。
事ほどさように、核家族化、少子高齢化という外形的な統計のみに頼らず、また、限界とか消滅とか崩壊という言葉に惑わされずに、厳しい中でも生き残っている地域の実態に直接、間接的に県の組織も目配りしていただき、現地・現場主義で施策の推進を図り、総合計画を実のあるものにしていただきたいと思いますが、知事の所感を伺います。
農政部長の議案説明要旨の中で、農村コミュニティーの機能低下が心配され、その維持向上の取り組みが必要とされています。
ただいま紹介いたしましたT型集落点検の手法は、農村コミュニティーの維持向上のためにも有効であり、参考になるものだと思います。
生まれ育った飯田・下伊那の美しい農村の原風景を胸に、県民のために農政一筋に歩んでこられた北原農政部長の、中山間地域の農業農村の振興に対する所感を最後に伺います。
地域の実態に目配りした計画推進をという御質問でございます。
私は、大変恐縮ながら、T型集落点検という言葉を初めて聞かせていただいたわけでありますけれども、確かに、御指摘のとおり、地域の実情を見ると、例えば地域のお祭りには東京等都会に出ていった若者たちが戻ってきたり、あるいは、日常生活の中でも、近隣の市に住んでいる家族が週末は農作業の手伝いに来るとか、いろいろな交流の形態があり、御指摘のように、実態は必ずしも無機質な数値、統計だけにあらわれていないというふうに私も感じております。
そういう意味で、私どもは、県政を進める上でも、単に机に座ってデータだけで物事を判断するのではなくて、そこに暮らしている方々、あるいは産業に従事されている方々の本当の生の声、そして現実の皮膚感覚を我々も共有するということが重要だというふうに思っております。
地域課題を解決するための組織として地域振興局を設置して間もなく1年になるわけでありますけれども、この間、地域の皆様方の考え、思いをできるだけ聞いて、我々本庁も共有するように努めてきましたが、こうした取り組みをこれからさらに充実していかなければいけないだろうというふうに思います。
また、地域の実情は、もとより市町村の皆さんが一番よくわかっているわけでありますので、私どもとすれば、市町村の皆様方の声にしっかりと耳を傾けていくということも重要だと思います。
それに加えて、具体的な政策テーマ、里山をどうするかといったようなことについては、私ども県職員も、直接現場に入って県民の皆様と直接触れ合い、対話をさせていただく中できめ細やかな取り組みを進めていくということも重要だというふうに思います。
今後とも、これまで以上に地域重視、そして現場重視の観点で県政を進めてまいりたいと考えております。
以上です。
中山間地域の農業農村の振興に対する所感とのお尋ねでございます。
長野県は、その多くが中山間地域でございます。この現状を踏まえて、第3期長野県食と農業農村振興計画案を策定させていただきました。策定に当たりまして農業者と意見交換をする中で、県内には元気な若手農業者が多数いることを改めて感じるとともに、その中の一人の若者が、格好いい、稼げる、感動を与える、そういう新しい3Kの農業者を目指したいと目を輝かせて述べていた言葉が印象に残っております。
今回の計画では、このような意欲的な農業者を中核的経営体と位置づけ、耕地面積の5割以上、農産物産出額の8割以上を担っていただく農業構造にし、農業農村総生産額3,300億円を達成してまいりたいというふうに考えております。
本県の農業を振り返りますと、飯田・下伊那地域では、河岸段丘、また山間地の狭い耕地の中で、かつての養蚕地帯を私たちの親の世代が果樹、野菜、キノコ、畜産などへ転換し、産地化を図ってまいりました。同様に、県下各地の農業者は、進取と学びの精神で新しい品目や技術にチャレンジし、農業県長野を築き、平成3年には4,119億円の生産額を上げております。
しかし、その後は年々減少し、2,800億円を割り込みました。本県農業の低迷を打開するために、議員発議により、平成18年3月県議会において、長野県食と農業農村振興の県民条例を制定していただきました。その後の条例に基づきます振興計画の2期10年の取り組みによりまして、現在は農業農村総生産額3,100億円を超えるまでに回復し、成果となってあらわれてきているというふうに考えております。意欲ある農業者を初め、関係者が一体となってチャレンジングに第3期振興計画を推進すれば、必ずや日本をリードする農業先進県長野として再び輝けるものと思っております。
農村は、農の恵みがある生活の場であり、農産物の生産はもとより、農地や自然環境、農村景観の保全、食文化や伝統芸能の伝承、さらには食農教育といった多岐にわたる恩恵をもたらしております。人口減少と高齢化が進む中にあっても、農村コミュニティーを維持し、農村の持つ多様な機能や効果を次の世代へつなげていかなければならないと考えております。
第3期計画においては、農業者のみではなく、地域に暮らす方々や都市住民との協働による取り組みにより、農地や農村環境の保全と整備、また都市農村交流、地域資源の活用などを推進し、集落機能の維持と農村コミュニティーの活性化を図ることとしております。
この推進に当たりまして、議員御指摘のT型集落点検における資料を見ますと、近隣他出者という言葉が出てまいりますけれども、議員御紹介のこのような方々が、関係人口、交流人口をふやし、農村コミュニティー活動を活性化させる上では重要な視点であるというふうに感じたところでございます。
農業が成長産業として発展し、次の世代へ引き継がれていく。農村に暮らす方々や関係する人々がつながり、出番と役割を担って農業と生活が営まれる。そして、生産される食を通じて生産者と消費者がつながる。そうした長野県となることを思い、目指して策定したのが、第3期長野県食と農業農村振興計画案でございます。
議員各位におかれましては、農業振興、また長野県農政への引き続きの御指導と御支援をお願い申し上げまして、御質問へのお答えとさせていただきます。どうもありがとうございました。