平成29年6月定例県議会 発言内容(山岸喜昭議員)
◆山岸喜昭
おはようございます。順次質疑に入ります。再造林に必要な苗木の確保について伺います。
長野県森林づくり指針では、目指す姿として、100年先には針葉樹林や広葉樹林、針広混交林がバランスよく配置され、多様な林齢、樹種から成る森林を形成し、森林の持つ多面的機能が持続的、高度に発揮されるとしています。しかし、現在の県内の民有林における人工林は、50年生以上の森林面積が全体の65%を占め、25年生以下の森林面積は2%にしかすぎず、偏った齢級構成となっております。
60年生以上の森林は既に主伐を行う時期に入っており、今後、この約7割に当たる森林において主伐を計画的、段階的に進め、偏った齢級構成を平準化して持続的に森林資源を利用できる状態にしていく必要があります。
また、主伐後に適切な再造林がされず将来にわたり伐採地がそのままに放置されると、木材生産や地球温暖化防止を含む森林の持つ多面的・公益的機能の発揮に支障が生じ、県民の安心、安全な暮らしを損ないかねないこととなります。
今後、主伐がふえることが見込まれる中、100年先を見据えて、多面的・公益的機能が発揮された健全な森林を維持していくためには再造林を確実に行っていかなければならず、そのためには、コンテナ苗を用いた主伐から地ごしらえ、植栽までの一貫作業システムによる低コスト再造林を具現化する必要があります。
主伐が進む中で、切ったら植える再造林が望ましいが、再造林の現状はどうであるか。また、苗木は十分に確保できているのか。この一貫作業システムによる低コスト再造林のためには、コンテナ苗の生産、利用拡大が必要であると考えますが、現在のコンテナ苗木の生産者及び生産量はどの程度あるのか。また、コンテナ苗の生産には資材費などの初期投資が必要となりますが、具体的な支援は行っているのか。さらに、良質なコンテナ苗の普及を進めるためにはどのような施策を行っているのか。
以上、林務部長にお聞きします。
再造林に必要な苗木の確保につきまして4点御質問をいただきました。
初めに、再造林の現状及び苗木の確保についてのお尋ねでございます。
議員御指摘のとおり、本県の森林資源は成熟し、人工林の約7割が収穫期を迎えているなど、資源を育てる時期から利用する時期へと移行しております。
こうした中で、平成28年度の再造林面積は364ヘクタールでありまして、5年前の平成24年度と比較しますと1.7倍に増加しており、今後もさらに増加が予想されるところでございます。また、県内の苗木生産量は、県内外に約120万本を出荷しておりまして、現状では需要を賄うことができているところでございます。
しかしながら、今後、県内はもとより全国的に主伐、再造林が増加し、苗木が不足することが予想されることから、国有林を初めとする関係機関と連携した苗木の需要見通しの作成など計画的な生産拡大に向けて取り組んでまいります。
次に、コンテナ苗木の生産量等についてのお尋ねでございます。
平成28年度現在のコンテナ苗木の生産者は12名、生産量は29万8,000本でありまして、これは、生産者、生産量ともに全体の約3割といった状況でございます。
議員御指摘のとおり、再造林の低コスト化のためにはコンテナ苗木の活用が効果的であり、県内でも需要が増加していることから、安価で安定的に苗木が供給できるよう、初期投資の支援ですとか技術指導などに現在取り組んでいるところでございます。
続きまして、コンテナ苗木の具体的な生産支援内容についてのお尋ねでございます。
昨年度から、苗木生産者の協同組織であります山林種苗協同組合に対しまして、コンテナ苗木の生産拡大に向けた必要な初期投資の支援を行っております。具体的には、ビニールハウスや散水施設、苗の抜き取り機等育苗施設の整備、あるいはコンテナ容器の資材購入等に対しまして2分の1を補助し、昨年度では約790万円の支援額となっているところでございます。
最後に、良質なコンテナ苗木の普及についてのお尋ねでございます。
議員御指摘のとおり、計画的な主伐、再造林を進め、森林林業のサイクルを取り戻すためには、コンテナ苗木を利用した一貫作業システムによる低コスト造林を実現させる必要があります。
このため、本年度よりコンテナ苗木を活用した一貫作業システムに関するデータの収集を行い、先行する国有林と連携して森林所有者や林業事業体向けのマニュアルをまとめるとともに、苗木生産者の方々が高い技術力と将来への明るい見通しを持って苗木生産に携わることができるよう、山林種苗協同組合と連携し、苗木生産者向けの講習会や林業総合センターによる巡回指導に取り組むなど需要と供給の両面から良質なコンテナ苗木の生産、利用が進むよう取り組みを加速化させてまいります。
続きまして、武道振興について伺います。
日本固有の伝統文化であり、子供から高齢者までの世代との交流、選手として一緒に競技をし合い、いろんなことを経験できる武道は魅力的であり、これからの日本にとっては大事なスポーツでもあり、学びの場でもあると捉えております。
多くの県民が生涯にわたり健康で元気な生活を送ることができるよう、スポーツを楽しむことができる環境づくりを推進する必要があるとのことから、しあわせ信州創造プラン、長野県スポーツ推進計画において、武道を振興するための施設のあり方を検討することが位置づけられました。県民初め武道関係者の長年の悲願でありました県立武道館の建設準備が着々と進んでいることは大変うれしく思うところであります。
拠点づくりは、スポーツ振興には欠かせません。県民が見る、または支えるきっかけとなる施設が必要であります。情報発信等により武道を広く普及することが重要であり、武道をやっている人だけでなく、武道を知らない人も受け入れられる、身近な開かれた施設が求められます。
東京オリンピックの開催時期を見据えたスケジュールで建設の準備が進められているとお聞きしますが、現時点でどのような進捗状況か、教育長にお聞きします。
県立武道館の進捗状況についてのお尋ねでございます。
県立武道館につきましては、プロポーザル審査会において選定された業者と昨年12月に設計業務委託契約を締結し、現在、建設工事の設計を進めているところでございます。
設計に当たっては、競技ごとに専門的な調整を要する事項も多いため、随時武道団体等と協議しながら進めておりまして、本年11月末までに完了する予定であります。
設計終了後は、建設工事の発注手続を経て、平成30年度の前半に工事を着手、東京オリンピックの前年となる平成31年度中の供用開始を目指しているところでございます。
私は、今、武道については大変危機的意識を持っています。先般、地元の小諸市で開催されました懐古園柔道大会を観戦させていただきました。この大会は、戦前から始まる伝統ある大会でもあり、市内で柔道に取り組んでいる園児から中学生、高校、一般までが参加する柔道大会であります。観戦して非常に気になったことは、以前は会場あふれんばかりの参加選手がおりましたが、今では年々参加選手が激減しているとのことであります。ことしは総勢22名の参加ということであり、中学生の団体戦では、市内の二つの中学校からの参加でしたが、何とか団体戦が組めたという状況であります。
文科省では、中学校学習指導要領の改訂を告示し、平成24年度からは中学校において武道が必修とされており、これにより生徒たちの武道に触れる機会が格段にふえたと思うところでございます。
なぜ今の子供たちに武道を教えるのかといえば、武士道の伝統に由来する日本において、武道は体系化された武技の修練による心技一如の運動文化であり、日本固有の伝統文化に触れ、礼に始まり礼に終わる、礼節を尊重する礼儀など道徳心の育成、子供たちの体力、運動能力が低い水準にあることが懸念される中、武道の普及により子供たちの身体感覚を養い、安全に関する能力、自分を守り相手を思いやる能力を身につけること、心技体を一体として修練する体力づくりやさまざまな世代と交流することにより青少年の健全育成につながる人間形成の道として期待されています。
このように、武道は子供たちや青少年の育成及び作法や道徳教育を学ぶ場として重要と考えていますが、子供たちの武道に対しての関心度は高くないものと思われます。そこで、必修となった武道学習の実施状況、中学、高校の柔道、剣道を初めとした武道にかかわる部活動への加入状況及びその他の主な部活動への加入状況の推移はいかがか。仮に、武道への加入状況が大幅に減少しているなら、何が原因と分析しているのか。
武道は、中途半端にやると非常に危険な面もありますから、事故も何件か発生しております。武道はそれだけ危険を伴う実戦の世界ですが、魅力ある指導者のもとでちゃんとやれば、得るものがたくさんあります。将来の武道振興のために子供たちの育成が重要であり、魅力ある指導者が求められます。
長野県に189校の公立中学校、公立高校が82校ありますが、武道の普及、奨励には、正しい指導方法を身につけた指導者が全県で養成されることが望ましいが、今、実際に指導者は適切に配置されているのか。青少年健全育成、競技力向上の根幹となる魅力ある指導者の実践、育成など指導者の資質向上に対する施策は図られているのか。
冒頭にも申し上げましたとおり、礼節を尊重し、心技体を一体として修練する日本固有の伝統文化である武道は、次世代へもしっかりと継承していかなければなりません。ましてや、世界一の健康長寿県を目指している本県では、武道がその牽引役として、体力、運動能力の向上、生涯にわたる健康づくり推進、世代間の交流の場、青少年健全育成や高齢者の生きがいづくりにも貢献することが大きく期待されるところでございます。
さらには、念願の県立武道館が完成すれば、利用率もしっかり上げていかなければなりませんが、その点からも、武道を楽しむ子供たちをいかにふやしていくかが重要なポイントだと考えます。武道館の建設を武道振興にしっかりとつなげていかなければなりません。今の青少年にどのように武道振興を進めていくのか。
以上、教育長にお聞きします。
武道振興についてのお尋ねでございます。
まず、武道学習の実施状況や運動部の加入状況についてでありますが、本年度、公立中学校で予定されている武道授業の種目別の実施状況を見ますと、剣道が最も多く全体の72%に当たります136校です。柔道は16%に当たる31校、相撲は5校、弓道は1校のほか、複数種目を実施している学校が16校というふうになっております。
次に、近年の武道及びその他の主な競技の部活動への加入状況でございますけれども、中学校では、加入者数が多い競技の順に申しますと、ソフトテニス、サッカー、卓球となり、それぞれ10年前とほぼ同じか若干の減少傾向にありますけれども、武道競技は10年前の約3割減というふうになっております。
高校では、同様に、バドミントン、硬式野球、サッカーが加入者数が多い競技でありますけれども、いずれも10年前より増加をしております。しかし、武道競技は約2割減という状況であります。
こうした武道に係る部活動への加入者数の減少は全国的にも同様な傾向ではございますが、その要因としては、まずは少子化による生徒数そのものの減少に伴い部活動の存続が困難になるケース、それ以外にも、やっぱり子供や保護者が嗜好するスポーツ種目の多様化でありますとか安全性への懸念などが影響しているというふうに考えております。
次に、武道指導教員の配置や資質向上についてであります。
現在、指導力を示す目安の一つである段位を取得している中学校教員は、柔道が236名、剣道が231名、高校の教員は、柔道が242名、剣道は50名おりまして、それぞれ189の公立中学校、82の公立高等学校の大半の学校に配置をされております。
なお、武道指導の経験が少ない教員が配置された学校に対しては、県教委が実施する講習会への参加を求めるほか、学校体育実技指導者派遣事業等によりまして外部指導者を優先的に派遣するなどの支援をしているところであります。
指導教員の資質の向上につきましては、毎年、体育センターで段位の取得も可能な講習会を開催しておりますが、平成24年度の武道の必修化以降、これまでに柔道で69名、剣道で71名が段位を取得しているところであります。
また、毎年、中央研修で学んだ教員を講師とした指導法の伝達講習会を県内16カ所で開催しておりますほか、県教委で作成した指導の手引き書やDVDを県内の全中学校へ配付して、武道の知識や礼儀作法の習得、あるいは安全で楽しく効果が上がる武道学習を目指して指導力の向上に取り組んでいるところでございます。
最後に、県立武道館の建設と青少年への武道振興についてでありますが、まずは青少年に武道の魅力を肌で感じてもらうことが重要であるというふうに思っております。このため、県立武道館では、全県、全国からトップレベルの選手、指導者が参加する大会や講習会を誘致しまして、県内の子供たちに直接観戦してもらい、武道に対する理解と関心を高めることで競技の普及につなげてまいりたいというふうに思っております。
また、武道教室や指導者のための研修会を幅広く開催し、質の高い指導に努めるとともに、県内の武道団体や各地の武道施設との連携や情報交換を通じて、学校での活動のみならず、各地域での活動を活発化し、競技人口の増加と競技力の向上を図ってまいりたいと思っております。
さらには、本県出身のトップアスリートの活躍は大いに子供たちを刺激し、やってみたいという思いにさせるものであります。現に、最近では、大相撲の御嶽海の活躍が、武道学習で相撲を履修する中学校や相撲部員数の増加につながっているという事実もございます。こうした選手の育成と活躍を通じても青少年の武道振興に努めてまいりたいというふうに考えております。
お答えいただきました。
政治的にも文化的にもより身近に世界と対峙する現代において、我々の心の中に脈々と流れ続ける日本人が日本人たらしめる武士道の精神を今こそひもとくときではないでしょうか。
昨日、村石議員からも、愛国心と国歌、国旗を尊重することが述べられましたように、伝統と文化を尊重し、我が国と郷土を愛する人材を育成するために引き続き武道振興に力を尽くしていただくことをお願いしまして、質問を終わります。