平成29年6月定例県議会 発言内容(小林東一郎議員)
◆小林東一郎
最初に、大北森林組合事件について伺います。
去る3月28日、本件にかかわる元組合専務理事並びに組合に対する裁判の一審判決が言い渡され、その後、この判決が確定しています。判決では、県職員が現地調査をすれば虚偽の補助金交付申請であることが直ちに明らかになるのであるから、元専務理事が地方事務所職員の了解もないまま虚偽の補助金申請に及ぶことは想定できず、そのような事情だけを見ても、組合を信用していたなどとする証言が信用できないことは明らかとし、補助金を交付する側の県に重大な落ち度があったとしています。
これに対し、知事は、今回の判決の核心部分は県職員の関与にあるのではなく、県職員は当事者でもなく、裁判官が県職員の対応について悪い心証を持ったと受けとめたとしても、これまで県が説明してきたことを覆す内容ではないとされています。また、林務部長も、一昨日の答弁で、判決で指摘された点については職員の懲戒処分等を行って厳正に対処してきているが、未完了事業等の容認や事後的にも検査を実施していないなど、当時の職員の事務処理上問題のある行為が裁判官の心証につながったと思われ、重く受けとめているとされましたが、判決にある、調査をすれば虚偽の補助金申請であることが明らかになることと、実際には調査がされていないこととがかみ合っておらず、極めて難解です。県民が理解できるよう丁寧な説明を知事に求めます。
私は、裁判官の心証と県民の心証とは一致すると考えております。それは、県民世論調査で、県職員の再調査が必要、71%、必要ない、8%という結果にあらわれています。県職員が補助金交付時点で未着手事業を容認してきたことを県はこれまでも認めてきたが、判決にも書かれていることだが、作業道の整備を通じて森林整備を図るという使命を果たそうとしてきた結果であり、ただ補助事業を消化すればいいと考えていたこととは全く異なり、しかも、県職員は何らの利益供与を受けていないと知事は言われるのですが、そのことは県組織の長としてのみの見解に感じられてなりません。現時点において、多額の県民負担が生じていることを顧みれば、県民益を追求すべき県民の代表としての視点を欠くのではありませんか。知事にお聞きします。
大北森林組合の補助金不適正受給事案について2件御質問をいただきました。
今回の事案は、民事あるいは刑事、あるいは職員の処分、補助金の返還、さまざまな側面があるわけでありますので、その側面に適合した最善の答弁に努めさせていただいているところでありますが、どうしても部分的な話になるので、私の感覚、思いというのがなかなか伝えづらいところがあるのかなというふうに思っております。
まず、刑事事件で判示されたことについてなかなか理解しづらいんじゃないかという御質問をいただきました。今回の裁判では、大北森林組合、そして元専務理事の刑事上の責任が明らかになったわけであります。このことは争いがないところだと思いますが、あわせて、県側の対応にも大きな問題があったということは指摘されておりますし、私どもも従前からそうした受けとめをしているところでございます。
調べればすぐわかるのにどうしてかという判決文に書かれているくだりがありますが、率直に申し上げて、私自身も、しっかりとした検査を行っていさえすれば今回の事態は防げたのではないかというふうに思っておりまして、なぜだというのは全く私も同じ思いでございます。
この案件は平成19年度から始まっているわけでありますが、今回の事案を振り返ってみますと、北安曇地方事務所において未完了事業の申請を容認したということから始まっております。未完了事業を容認したことに合わせて、まずそうしてしまったことによって、検査野帳のつじつまを合わせなければいけなくなったということで、現地調査をしていないにもかかわらず、したということを記載をすることになったわけであります。現地調査していないにもかかわらず記載してしまったわけですので、結果的にはその後の検査が不十分なまま放置されるということにつながったものというふうに受けとめているところでございます。
未完了事業の申請の容認、これは、職員がいずれ着手するものと考えていたというふうに言っているわけでありますが、今申し上げたように、未完了事業の申請を容認してしまったということが多数の不適正申請を長期にわたり継続させてしまった大きな契機となっているものというふうに受けとめております。したがって、このこと自体、極めて問題のある対応だったというふうに私自身は認識をしております。
それから、私自身が県組織の長としての立場からのみの見解ではないかという御指摘でございます。
改めて申し上げますが、今回の事案は、組合あるいは元専務理事の刑事上の責任がある一方で県職員の対応にも大きな問題があったということで、私の立場からすると、組合、専務理事に責任があったというふうに言わなけばいけない側面と県職員にも問題があったと言わなければいけない側面が両面あるということは重々認識をしております。
そういう意味で、私の立場は、大北森林組合の問題にかかわらずでありますが、県組織を円滑に運営していくという県組織の代表者であると同時に、県民の皆様方からの負託を受けて県政をしっかり運営しろ、県政に誤りがあればそれを正せというのが県民の皆様方の御意向だと思っておりますので、時には県の職員にも厳しい指摘をさせていただきながら県民の代表者としての役割も果たそうということで努めてまいりました。
今回の大北森林組合の問題につきましては、そういう意味で、事案が発覚して以降、県民の皆様方の代表という立場から、まずは徹底した事案の調査、検証を行うように指示をさせていただきました。加えて、法的に最大限可能な組合に対する補助金の返還請求、あるいは組合や元専務に対する刑事告発、さらには関係した職員に対する懲戒処分、そして財政負担の最少化につながる取り組みなど、県民の皆様方から御理解が得られるように厳正な対処に努めてきたところでございます。
他方で、県組織の代表としては、県職員の行為を含んでおります今回の事案におきまして、この場、あるいは会見等で、県民の皆様方に、組織を代表する立場として謝罪もさせていただき、また、みずからの責任として給与減額も議会に御提案して了承をいただいたわけであります。引き続き、県民の皆様方からの信頼回復に向けてコンプライアンスの推進等全力で取り組んでいきたいと考えております。
以上です。
未着手あるいは未完了事業の補助金申請を容認したとは、未着手、未完了なのだから調査には及ばず、申請は素通りさせ虚偽の報告を重ねてきた、そのような構図がつくられ、7年にもわたり維持をされてきた。これが実態だと私も思いますし、ただいま知事からもそのような説明をいただきました。
ただ、その先の部分、結果的には、これは架空申請容認と何ら変わるところがないわけであります。組合事件は、その発端も含め、一職員が公務員としての本分をおろそかにしてきたことに起因する事象とは根本的に異なります。どのようなプロセスで未着手、未完了事業を容認し、補助金をただ流す仕組みがつくられ、それが引き継がれていったのか。これについては、先ほどから伺っておりますように、これまで県民に説明がなされているとは思いません。ここを明らかにしない限り県民への説明責任を果たしたとは言えないのではないでしょうか。それとも、この点については既に処分済みであり決着しているとお考えでしょうか。知事にお聞きいたします。
大北森林組合の問題に関連しましては、私どもは、第三者の目も入れながら丁寧に事案の検証に努めてきたところであります。そうした観点で、例えば裁判の証言と県で確認した内容が異なってる部分についても改めて県職員に確認をする等、県民の皆様方に理解と納得をいただけるような対応に努めてきたところであります。
これは、私も先ほど申し上げたように、なぜだという思いがあるわけでありますので、県庁内での打ち合わせでは、再三にわたって、本当にそうなのかと。私は県民の代表でありますので、県職員の側に立たなければいけないときもありますが、今回の事案においては県民の側に立たなければいけないということで、先ほど御質問にありましたように、本当に全くの架空申請の容認はなかったのかということについてしっかり確認するようにということを再三にわたって申し上げてきました。しかしながら、そういった発言は確認されない、そうした事実は確認されないというのが現状であります。
この問題につきましては、先ほどから申し上げているように、民事の対応あるいは刑事の対応、職員の処分の対応、さまざまな側面があるわけであります。これから職員も含めた損害賠償責任をどう考えるかということで、法的課題検討委員会で現在検討をいただいているところでございます。その方向性が明らかになった段階で県としての対応方針を定めて、また、全体としての県の考え方を丁寧に県民の皆様方にお伝えしていきたいというふうに思っております。
以上です。
何度もお聞きしているんですが、私が疑問に思っているのは、全くの架空申請を認めたという部分については、知事は再三そういう事実はなかったんだという説明をされている。しかしながら、北安曇地方事務所林務課において先ほど申し上げたような仕組みがつくられ、それが長い間維持されてきたのはなぜなのかと。そこにメスが入っていないではないかということを申し上げているわけであります。裁判が終結して、元専務理事と組合の刑が確定、県職員は全て処分済みで、残るのは法的責任の有無のみということを知事は言われているわけであります。そこからは、もうこの事件の幕引きを図りたいという知事の意向が私には読み取れるわけでありますが、それではこのことをお聞きをしておきたいと思います。組合事件に関し、知事は何を説明すれば県民への説明責任を果たしたとお考えなのでしょうか。また、守るべき県民益とは一体何なのか、その部分をお答えをいただきたいと思います。
箕輪町の元町議が森林所有者の同意書を偽造するなどして森林整備の補助金を不正受給していた問題で、昨年の11月に個人事業者である元町議が補助金を返還したいと県に申し出てから交付決定を取り消し返還請求がされるまでに7カ月を要しています。具体的な事実を確定するのに時間がかかったと報道されていますが、スピード感が感じられません。発覚から返還に至るまでの経緯を林務部長に御説明をいただきます。
組合事件の発覚により、林務部では緊急点検を実施、しかし、今回の事案は書類上不自然な点がなかったことなどから現地調査は行われず、最終的にチェックをすり抜けています。同様の事案がほかにもあるとの懸念がある中、チェックをすり抜けた原因を解明し、今後の対応策を早急に打ち出すべきですが、林務部長にお聞きします。
お答えします。
私も疑い深いですけれども、議員も疑い深いなというふうに思ってお伺いをしておりますけれども、私、決して幕引きを図ろうなどということは頭の片隅にも思っておりません。むしろ、今回の事案をしっかりと解決することによって本当の意味で県民の期待に応えられる県政に変えていかなければいけないと。もちろん、非常に問題な事案ではありますけれども、逆に、林務部を初め長野県政がこれから大きく変わっていく契機にしていかなければいけないというのが私の率直な思いであります。
そういう中で、何を説明すればいいのか。そして、どうしてこういうことが引き継がれてしまったのかということでありますけれども、これは、検証委員会の報告書にも触れられているわけでありますけれども、一つは、やはり県の職員、慣例踏襲、前例踏襲、こうした風土があったということは言えるというふうに思います。
また、そもそもの発端が業務量が多過ぎた、急激に業務量がふえたということもあって、多忙を理由として十分な調査が行われてこなかったということも指摘されているわけであります。こうしたことについては、我々も重く受けとめているところであります。
したがって、先ほども答弁申し上げましたけれども、林務部自体の体制も、これまで林業の技術職だけでほとんど構成されていたわけでありますけれども、それだとどうしても今まで行われてきたことをそのまま引き継いでいかざるを得ない、あるいは人間関係が固定化して、自分の先輩に当たる人たちには余り思い切ったことが言えないということで、風通しのいい職場づくりをしていこうということで取り組みを始めているところでございます。
そういう意味で、今回の事案は複雑でありますので、刑事は刑事、職員処分は職員処分ということを言ってもなかなか報道も一部分しかされないので伝わりにくいところもありますけれども、私としては、これからも誠心誠意この問題へしっかり対応することを通じて県民の皆様方の理解と信頼の回復に努めていきたいというふうに考えております。
以上です。
上伊那地域振興局管内で発覚した不適正申請に関する返還に至るまでの経緯についてのお尋ねでございます。
今回の事案では、昨年11月に、補助申請者から、平成24年度に当時の上伊那地方事務所が補助金を交付した造林補助事業の一部に未実施部分が含まれているため受領した補助金を返還したい旨の申し出を受けました。これを受け、上伊那地域振興局林務課において直ちに当該補助申請者への聞き取り、残されていた書類や現地の調査を実施いたしました。しかしながら、調査を進める中で、本来補助申請者が保管すべき書類が、5年間保存することとされているにもかかわらず残されていなかったことが判明し、申請者本人からの説明も曖昧であったことなどから、事実関係の特定に極めて時間を要することとなりました。
こうした中で、事案に対する県の調査状況について逐次報告を行っていました林野庁担当者からの助言等も踏まえ、森林所有者や請負事業者、木材が搬出された市場等の関係者への聞き取り調査等を丁寧に実施いたしまして、可能な限り事案の経過を特定するよう取り組んでまいりました。そうした結果を踏まえまして、5月中旬に申請者から提出されたてんまつ書の内容、あるいは一連の調査で判明した事実などについて林野庁や法律の専門家にも御相談した上で、最終的に虚偽申請に当たるものと判断し、6月9日に全額の交付決定を取り消し、返還を求めることとしたものでございます。
なお、当該申請者からは、請求日当日に返還が行われております。
続きまして、チェックをすり抜けた原因をしっかり究明し今後の対策を早急に打ち出すべきとのお尋ねでございます。
上伊那地域振興局管内の事案は、虚偽の森林所有者の同意書を添付し、全域の森林整備を実施したとする虚偽の申請により補助金の交付を受けていたものであります。
こうした問題への対応といたしましては、まず林業事業体において補助事業を適正に実施するとともに、その実施結果を確実に申請書にまとめ、県側でも適切にチェックできるという体制をつくっていくことが重要でございます。このため、昨年度、信州の森林づくり事業実施要領及び調査要領を改正するとともに、その周知徹底を図るため、林業事業体への説明会を、昨年、ことしとそれぞれ県下5カ所で実施いたしました。また、検査体制の強化に加え、GPS等により撮影位置が特定可能で作業内容が明確な写真を施行地ごとに添付することを新たに義務づけるなどの運用改善を行い、必ず現地確認が行える形といたしましたので、こうした取り組みにより不適正な申請の根絶に取り組んでまいりたいと考えております。
私が今お聞きをいたしましたのは、林務部が実施した緊急点検をすり抜けた事業があるではないか、まだほかにもある懸念があるということについてどのような対応策を打ち出すかということを伺ったわけでありまして、その辺のところをもう一度お願いをしたいと思います。
次に、組合事件にかかわり、県が関係者へ損害賠償請求を検討するために設置した法的課題検討委員会の碓井委員長は、国が県に課した加算金3億5,300万円について、関係した県職員だけでなく、組合側も対象になる可能性について言及されていると報道されています。そもそも国が県に加算金を課した理由は何だったのか。これも林務部長に伺います。
2点お尋ねいただきました。
緊急点検におきましては、19項目にわたるチェックリストについて、1カ所でも確認できない部分があったものについては全部全箇所の調査を実施しております。また、その他書類の審査におきましては、全ての箇所を当然審査いたしまして、そこの中で現場の確認状況あるいは矛盾がないか、こういったものを一通りチェックをしたわけでございます。全体で2万2,000件という膨大な数を一定の期間で効率的にやるという部分から、そうした上でさらに抽出調査を国の基準に基づく形の中で実行したのが緊急点検の結果でございます。
それから、大北森林組合の加算金を課した理由についてのお尋ねでございます。
国が県に課した加算金につきましては、県が補助事業者へ行った指導が国の要領に沿っていなかったなど県の指導監督の不備を問われ、補助金適正化法第17条第1項により交付決定が取り消されたものについて課せられたものでございます。
林務部長に再度お尋ねしますが、やるべきことはやった、でもすり抜けた。私は、これらはコンプライアンス推進とは異なると思うんですよね。根本的解決を図ることが重要だというふうに考えるんですが、林務部長の所見を伺います。
加算金が課された根本原因は組合にあるとして損害賠償を検討するとなれば、組合事件について、国や県の関与ありとし、補助金等の交付決定に付した条件に違反したことの責任の所在が曖昧になることが危惧されますが、知事の所見を伺います。
また、監査委員の知事への勧告は、加算金納付による損害の県職員への賠償請求により県民負担の軽減を求めるものでしたが、法的課題研究会における検討は県民負担の軽減という前提で進められているのでしょうか。これも知事にお聞きします。
緊急点検の中でさらにすり抜けたものに対する対策が不十分ではないかというお尋ねでございます。
この点検に当たりましては、極めて限られた時間の中で、通常の業務の停滞を招かないということで、27年から10カ月間かけて約2万2,000件にわたる申請案件の点検を実施したものでございます。そうした中で、書類上、そこに添付されているものから確実な実行が確認されたもの以外については全て全部の現地調査をするとともに、その上で、安全を期するために、国の基準に基づいてさらに抽出調査をしたというのが実態でございます。通常業務と並んで行うという部分でいけば、現実的には実行可能な最大限の調査を実施したものと私どもは考えております。
私に2問御質問を頂戴いたしました。
まず、加算金に関する損害賠償の請求についての御質問であります。
損害賠償が組合にまで及ぶとなれば責任の所在が曖昧になるのではないかという御質問の趣旨かと思いますが、損害賠償につきましては、現在、これは非常に法的に複雑でさまざまな論点がございますことから、専門的かつ客観的な観点で御議論いただこうということで、法的課題検討委員会の場におきまして、全ての関係者を対象として予断を持たず検討をいただいているところでございます。委員会におきましては、県がこうむった損害について、法的に誰に対して請求が可能なのかということについて御検討いただいているところでありまして、まさに責任の所在を明確にするために行っているものというふうに考えております。
それから、法的課題検討委員会が県民負担軽減という前提で進んでいるのかという御質問でございます。
法的課題検討委員会、これは、監査委員の勧告も踏まえ、関係者への損害賠償請求について県職員を含めて鋭意御検討いただいているところでございます。損害賠償の請求は、損害賠償をしてその補△がされるとすれば県民負担の軽減にもつながるものというふうに考えています。
以上です。
今、知事からお答えがありまして、損害賠償請求によってそのお金が入ってくれば県民負担の軽減になるというようなお答えでありましたけれども、そもそも、この勧告がされた中身というのが、今、現時点で多大なる県民負担が生じていると。これを、少しでも軽減する方向に持っていく、そのために検討しなさいということでありました。そういう趣旨でありますので、ぜひこれは県民負担を大きく減らすんだという意気込みでやっていただかなければいけないんだろうなというふうに私は思います。でないと、県民は納得できないということを申し上げておきたいと思います。
次に、部落差別解消法について県民文化部長に伺います。
昨年12月、部落差別の解消を推進する法律が成立、施行されました。国連の人権差別撤廃委員会や社会権規約委員会、自由権規約委員会から、我が国は差別禁止の法整備がなされていないと指摘され続けてきましたが、2006年、障害者権利条約が国連で採択されたことを受け、2011年には障害者差別禁止の理念が盛り込まれた障害者基本法が改正されました。これを契機に、2016年6月に障害者差別解消法が制定されています。また、ヘイトスピーチ対処法も同年5月に制定されています。差別に対する法的整備の推進という社会動向がようやく部落差別にも反映されたことになります。同法では、「現在もなお部落差別が存在する」と、部落差別が今もってなくなっていない現実のものであることが規定され、部落差別の解消を推進し、もって部落差別のない社会を実現するとの目的が示されています。
そこで、県内における部落差別の状況をどのように認識されておられますか。また、同法に基づき、部落差別のない社会実現を図るための初めの一歩として同法の周知が図られなければなりませんが、県民への周知についてはいかがなのでしょうか。
「部落差別の解消に関し、その地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めるものとする」と地方公共団体の責務も定められており、さらには、相談体制の充実、教育及び啓発については、特にそれぞれ別条を立てて同様の規定がされています。それらに基づき、いかなる具体策を講じていかれるのか、お伺いします。
部落差別解消推進法に関連しまして2点の御質問でございます。
まず、県内の部落差別の状況に対する認識、また、法の周知の状況ということでございますけれども、本県におきます部落差別事象につきましては、平成28年度で申し上げますと、市町村等から県への報告が3件あったところでございます。また、長野地方法務局が新たに人権侵犯事件として受け付けた事象につきましては、昨年は4件となってございまして、依然として部落差別は存在するというふうに認識をしているところでございます。
こうした中、部落差別解消推進法の施行を受けまして、法務局や市町村など関係機関でそれぞれ周知の取り組みが行われておりますが、県におきましては、県庁及び県内10広域全てで職員に対する説明会を開催いたしますとともに、人権啓発センター職員が講師を務めます人権に関する学習会で県民の皆様に新法の理念等を御説明するなどの周知に努めているところでございます。また、今後も、企業人権セミナーなどを活用し、各企業向けの説明を予定しているところでもございます。
続きまして、法に基づきます施策展開とのお尋ねでございますが、県におきましては、同和問題に関しまして、これまでも長野県人権政策推進基本方針に基づいて取り組んできたところでございます。
御指摘の相談体制の充実につきましては、相談の窓口となる人権啓発センターの啓発相談員を研修に参加させるとともに、より専門性の高い人材の登用を図るなど体制の強化に努めてきたところでございます。
また、教育につきましては、各学校において、総合的な学習の時間などで、本県独自に作成しましたリーフレットの活用等により同和問題を児童生徒がみずからの問題として考える学習に取り組んできているところでございます。
さらに、啓発につきましては、先ほども申し上げましたが、人権啓発センター職員が講師を務める学習会において同和問題をテーマとして取り上げますとともに、県内で活躍しているプロスポーツ4チームと連携し、同和問題も含めた人権啓発のための冠試合やテレビCMを実施するなど多様な手法により取り組んでいるところでございます。
今後とも、この法律の基本理念にのっとりまして、教育委員会を初め法務局や市町村など関係機関との連携のもと、法の周知を含む啓発などその取り組みの充実を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
以上でございます。
法の目的は、部落差別のない社会を実現するということであります。ぜひ当事者の意見にしっかりと耳を傾けていただいて施策を展開していただきたいというふうに要望しておきたいと思います。
次に、教育勅語について教育長に伺います。
保育士が確保できず業務停止命令が出されるなど、森友学園問題は新たな展開も始まり、この問題は疑惑の百貨店といった様相を呈していますが、この問題の核心の一つは、親孝行、夫婦仲よく、友達を大切にといった徳目を実行することで、「一旦緩急あれば義勇公に奉じ、もって天壌無窮の皇運を扶翼すべし」と説く教育勅語を幼稚園児が無邪気な声でそらんじてみせるその姿が、洗脳を思わせる異様さであり、この幼稚園で培われてきた芯が公立小学校へ行って損なわれてしまう危険があるから瑞穂の国記念小学院が必要だと首相夫人が我が国の公教育を否定してみせるところにあります。また、政府が道徳の教材として教育勅語を使うことを否定しないという事態にも至っています。
そこで、お聞きいたします。
教育勅語に説かれている親孝行などの徳目は私も否定するものではありませんが、それを教えるために教育勅語という過去の遺物を持ち出さなければ子供に教えることができないとお考えでしょうか。
教育勅語については、1948年に衆議院での排除、参議院での失効確認の議決がされています。参議院議決には、こうあります。「我らは日本国憲法にのっとり、教育基本法を制定し、我が国と我が民族を中心とする教育の誤りを払拭し、真理と平和を希求する人間を育成する民主主義的教育理念を宣言した。教育勅語が既に効力を失った事実を明確にし、政府は勅語の謄本を回収せよ。」。ところが、3月31日、政府は、憲法や教育基本法に反しない形で教材として用いることまでは否定されないという答弁書を閣議決定しています。では、どのように使うかについては、一義的には教員、学校長の権限、それぞれの現場で判断することと、具体的な説明を避けています。このままでは、使ってもいいという空気だけが教育現場に広がることが懸念されますが、御見解を伺います。
勅語を活用するとしたら、負の歴史としての教材とする以外には考えられません。松野文科相は、適切な配慮のもとであれば問題なしとしていますが、適切な配慮とはいかなることだとお考えでしょうか。教育長にお聞きいたしまして、質問を終わります。
教育勅語についてのお尋ねでございます。
まず、教育勅語を持ち出さなければ道徳を教えられないかという御質問でございます。
道徳で使用する教材につきましては、他の教科と同様、児童生徒の実情や授業の進め方に合わせて各学校において選択することとされており、子供たちが他者とともによりよく生きるための基盤となる道徳性を養うことができるよう、各学校において適切に対応されるものと考えております。
次に、教育勅語の使用に関する空気の現場への広がりについてというお尋ねでございますが、学習指導要領では、道徳の授業について、人間としての生き方を考え、主体的な判断のもとに行動し、自立した人間として他者とともによりよく生きるための基盤となる道徳性を養うこととされているところでありまして、学校現場におきましては、この趣旨に沿って教育活動が行われていくものというふうに考えております。
最後に、教育勅語の使用に当たっての適切な配慮についてでございますが、松野文部科学大臣の発言でありますので、私としてお答えできる材料を持ち合わせてはおりませんが、4月21日付の内閣の答弁書において、教育勅語の使用が憲法や教育基本法に違反するか否かについて、教育を受ける者の心身の発達等の個別具体的な状況に即して、国民主権等の憲法の基本理念や教育基本法の定める教育の目的等に反しないような適切な配慮がなされているか等のさまざまな事情を総合的に考慮して判断されるべきものという記述があることについては承知をしているところでございます。