平成29年2月定例県議会 発言内容(埋橋茂人議員)


◆埋橋茂人

   

 本日は、私は農業、畜産関係について、主として生産を支える種子、苗木、優良牛の確保や新技術とその維持、普及対策等の視点から順次質問いたします。

 最初に、主要農作物種子法廃止の動きがございます。この動きを踏まえた県の役割について農政部長に伺います。
 2週間前の2月10日、農業競争力強化支援法案、農業機械化促進法を廃止する等の法律案及び主要農作物種子法を廃止する法律案が閣議決定されました。政府は、これら3法案は、良質で低廉な農業資材の供給と農産物の流通、加工の合理化を実現するため、国が講ずべき施策や事業者の自主的な判断による事業再編等の取り組みを促進するための支援措置を講ずるとして、これら3法案により農業の競争力の強化がさらに促進されるものとして今国会で成立を期すとしております。
 主要農作物とは、稲、大麦、裸麦、小麦及び大豆、すなわち主食や重要なたんぱく源となる穀物のことですが、私はこの主要農作物種子法の廃止に強い懸念を持っております。また、農業者やJAからも心配の声が私のところに聞こえてきております。
 廃止予定法案の7条の1項において、原種及び原原種の生産について、「都道府県は、主要農作物の原種ほ及び原原種ほの設置等により、指定種子生産ほ場において主要農作物の優良な種子の生産を行うために必要な主要農作物の原種及び当該原種の生産を行うために必要な主要農作物の原原種の確保が図られるよう主要農作物の原種及び原原種の生産を行わなければならない。」、また、8条において、優良な品種を決定するための試験について、「都道府県は、当該都道府県に普及すべき主要農作物の優良な品種を決定するため必要な試験を行わなければならない。」とされています。
 長野県は、稲、麦、大豆の品種開発について長い歴史と実績を持ち、主要農作物に係る長野県農業を支えてきました。園芸作物を含めた関係者の長い間の地道で気の遠くなるような御努力に感謝し、深く敬意を表するところでございます。
 例えば、水稲の主食、ウルチ米では、しなのこがね、ながのほまれ、最近では風さやか、酒米では美山錦、金紋錦、ひとごこち、モチ米ではもちひかりなどです。また、大麦では、全国でも非常に評価の高いファイバースノウ、シュンライ、小麦では麺用のシラネコムギ、しゅんようの2品種を主体として、低アミロース性のユメセイキ、中華麺への加工適性が高い硬質小麦ハナマンテン、パンの加工適性が高い硬質小麦ゆめかおりなどです。大豆では、主に煮豆用のタチナガハ、主に豆腐用のナカセンナリ、ギンレイ、エンレイ、最近では、主に煮豆、みそ用のつぶほまれ、主に納豆用のすずこまち等ですが、ナカセンナリ、エンレイなど全国に誇る品種も多くあります。
 一方で、主要農作物の対象となっていないトウモロコシについては、米国の種子会社が開発したF1、一代雑種の天下となっております。御承知のとおり、このF1雑種をまいても、子はメンデルの法則でF1の形質は遺伝されません。当然日本国内で採種はできず、米国に莫大な利益がもたらされています。トウモロコシ、大豆等、遺伝子組みかえ品種も少なくありません。
 また、かつて「緑の革命」と称され、小麦の収穫量を飛躍的に増大させ世界の飢餓対策に多大な貢献をしたメキシコ小麦の品種開発には、日本の小麦、農林10号が用いられたことは有名な話です。この開発に努め、緑の革命に大きく貢献したとして、米国の農学者ボーローグ博士は1970年にノーベル平和賞を受賞しています。受賞理由は、歴史上どの人物より多くの命を救った人物ということでした。フィリピンの国際稲研究所、イリの稲の雄性不稔の多収穫品種の開発にも日本人が多大な貢献をしたことも含めて、世界の食料増産に日本は大きな貢献をしています。
 しかし、この多収穫小麦や稲の開発に当たったのは、米国のロックフェラー財団やフォード財団が設立した機関です。このように、種子はまさに国家戦略物資そのものであり、食料の安全保障、安定生産のためには、遺伝資源の確保や維持することが極めて肝要で、この法律は廃止すべきではなく、むしろ対象を拡大すべきだと思うところであります。
 種子を他国や多国籍企業に握られれば、農業競争力強化どころではありません。たとえ廃止になって民間企業の参入後も、主要穀物の品種開発と原種及び原原種の生産と採種圃における圃場審査、生産物審査は県が行っていくべきだと思います。
 南北に長く、広く、かつ標高差の大きい県土に対応した、まさに県民の財産であります地域ごとの適性品種を開発、維持していくのは長野県の役割ではないかと思います。主要農作物種子法の廃止の動きを受け、長野県として主要穀物の品種開発と原原種、原種生産と採種圃における圃場審査、生産物審査等種子の安定供給についてどのような方針で臨むのかお聞かせいただきたいと思います。農政部長に伺います。
      

◎農政部長(北原富裕)

 

 主要農作物種子法廃止の動きを踏まえた県の対応についての御質問でございますが、米、麦、大豆等の主要農作物は最も基礎的な食料であり、生産安定のためには良質な種子を安定的に供給していくことが極めて重要であります。
 このため、長野県においては、昭和62年に県、JAグループ、市町村等との出資によりまして種子の生産と供給を担う長野県原種センターを設立し、県内の主要穀物や県試験場が育成した品種の安定供給に取り組んでいるところでございます。
 この結果、例えば出荷される米においては、毎年の種子更新率がほぼ100%となっており、このことが1等米比率全国一となるなど、高品質で安定した生産につながっているものと認識しております。
 国では、主要農作物種子法が仮に廃止された場合でも、米、麦、大豆の種子の安定供給はしっかり行うとしておりますので、県といたしましては、今後の動向について情報収集に努めますけれども、引き続き原種センター、JAグループ等と連携し、種子の安定供給、これはしっかりと図ってまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。
      

◆埋橋茂人

 

 お答えをいただきました。大変大切な最重要の部分でございますので、ぜひ公として維持をしていただくようにお願いして、次の質問に移ります。
 生産者の高齢化、温暖化の進行、中山間地の多い立地条件等から、品種開発や新技術の重要性が増しています。現状と県の対応について、主として果実、野菜等について伺います。
 諏訪議員も代表質問で触れられ、私も昨年の2月定例会で質問いたしましたが、県のオリジナル品種の大変高い人気に支えられて果樹農家が元気になってきています。県初め関係者の御尽力に感謝申し上げるところです。
 そこで、1年たちましたので、改めて伺います。
 リンゴのシナノスイート、シナノゴールド、秋映や、梨のサンセーキ、幸水、豊水、南水、ことし大変ブームにもなったブドウのシャインマスカット、ナガノパープル等、信州にはオリジナル品種を中心にすぐれた果物が多くあります。また、ワイン用ブドウの需要量も急増しています。リンゴの新矮化栽培等の果樹の新栽培技術の普及状況と今後の見通し、普及拡大のための苗木の生産、供給体制の現状とこれからの方針を伺います。同様に、野菜の品種開発、育種・育苗、供給についても、現状とこれからの方針を伺います。
 続いて、優良肉牛の生産振興についてお尋ねします。
 信州プレミアム牛肉は県内において高い評価を得ていますし、関西市場でも大変な評判でございます。県のあずかるところが大きく、肥育農家から非常に高く評価されています。また、認定頭数は、平成22年の844頭から平成27年には3,242頭と4倍近くまで増加しており、生産者の大きな励みになっているところです。
 しかし、その一方で、プレミアム牛肉が県内実需者から希望量が入手困難でせっかくの販売好機を逃しているとの声も少なからず聞いております。地消地産の面からも課題となっていると考えるところです。
 もと牛の価格高騰と円安による飼料高騰で肥育農家の経営収支は厳しくなっており、優良系統の和牛肥育によりそれをカバーしようと肥育農家は努力していますが、その大きな柱である信州プレミアム牛肉の拡大策と県内供給増対策を伺います。
 また、県と一般社団法人家畜改良事業団の双方の強みを生かして、極めて能力の高い雌の繁殖牛の作出が方針化されていますが、現況と今後の見通しをお聞かせ願います。
 農業関係では、最後に輸出振興について伺います。
 現行の農産物輸出3億円を5億円に拡大する方針について、具体的な品目、対象国をどのように考えているかお聞かせください。先般私も、知事、議長や多くの経済人、農業関係者の皆さんと一緒にベトナムを訪問してまいりましたが、農産物の輸出市場としては長い取り組みが必要だと痛感した次第であります。輸出に関してはどのような機関を利用するのか、お考えをあわせてお伺いします。
 また、リンゴの主要輸出先でありました台湾への輸出が激減しておりますが、その原因と回復策を伺います。
      

◎農政部長(北原富裕)

 

 大きく4点の御質問に順次お答えを申し上げます。
 初めに、果樹の新栽培技術についてですが、生産者の高齢化や樹園地の老朽化が進む中、本県果樹の生産力を維持していくためには、新品種等への更新にあわせ、早期に収量が上がる、高品質で均質な果実が生産できる、また、省力的で作業がマニュアル化できるなどの栽培技術を導入することが重要と考えております。
 このような技術としては、リンゴでは新矮化栽培がございます。平成27年度の面積230ヘクタールを平成37年度には1,000ヘクタールまで増加させる目標としております。現在、苗木不足が面積拡大のネックとなっておりますので、苗木増産に向けた産地の取り組みを支援する事業を来年度から実施し、現在の年間10万本の苗木生産量を平成30年には倍の20万本に引き上げ、新矮化栽培面積の拡大を推進したいと考えております。
 また、ブドウでの新栽培技術としては、平行整枝短梢剪定栽培がございます。シャインマスカットやナガノパープルなどの新品種において、この栽培技術100%の導入を推進しまして面積の拡大を図ってまいりたいと考えております。
 次に、野菜の品種開発についてですが、野菜花き試験場では、これまで、根腐れ病に強いレタスや夏秋イチゴ、機能性成分含量の高いケールなどの新品種を開発し、産地の栽培上の課題の解決や新たな産地育成に貢献してまいりました。
 今後も、病気に強く高品質な品種や地球温暖化に対応した品種、また、新たな需要を創出する品種など、野菜産地の発展、農業者の所得向上につながる品種の開発を進めてまいります。また、県が育成した品種は、原種センターを通じて生産者に種苗供給をしておりまして、同センターと連携し、地域のニーズに応じた安定供給に努めてまいります。
 次に、信州プレミアム牛肉についてですが、信州プレミアム牛肉の本年度の認定頭数は1月末時点で3,065頭と、前年同期に比べ11%増加しておりますが、平成29年度目標の3,700頭を達成するためにはさらなる生産の拡大が必要と認識をしております。このため、家畜保健衛生所による衛生管理指導等を通じて、認定の前提となります信州あんしん農産物生産認定農場をふやしてまいりたいと考えております。
 また、出荷牛の認定率向上に向けては、家畜保健衛生所、農業改良普及センター、JAが連携し、発育に応じた飼料の適正給与などの飼養管理の改善を指導してまいります。
 これらの取り組みによりまして、信州プレミアム牛肉の認定頭数を拡大し、県内需要に応えてまいりたいと考えております。
 また、能力が高い繁殖雌牛の作出につきましては、県では、高品質な和牛を生産するため、県内畜産農家が保有する雌牛の中から遺伝的能力が高いスペシャル繁殖牛をリスト化し、活用する取り組みを進めております。
 今回、家畜改良事業団と連携し、今までの取り組みのスピードアップが図れる技術、具体的にはDNA情報から遺伝的能力を推定するゲノミック評価技術を用いまして、よりすぐれた繁殖雌牛を選抜し、事業団が持つ種雄牛と交配することで、極めて能力が高い繁殖雌牛を早期に作出してまいりたいと考えております。この取り組みによりまして作出された繁殖牛を活用して、信州プレミアム牛肉の生産拡大を図り、畜産農家の所得の向上に貢献してまいりたいと考えております。
 最後に、農産物輸出の拡大方針等についてでございますが、農産物輸出については、来年度に5億円を超えることを達成目標としておりまして、そのために、シンガポール、香港、台湾、タイなどを重点対象国とし、ブドウ、リンゴ、桃、梨などの果物を中心として輸出拡大を進めることとしております。
 このため、重点対象国での長野フェアの開催、有望バイヤーを招聘しての産地見学会や商談会を行うとともに、現地において販路開拓のサポートを行う輸出支援員を、シンガポールに加え、新たに香港へ設置してまいりたいと考えております。
 また、長野県農産物等輸出事業者協議会の会員であります卸売業者や生産者、JAなどと相手国の有望バイヤーとをマッチングしまして、商業ベースでの輸出拡大を図ってまいります。
 なお、台湾への輸出につきましては、リンゴ等に対する植物防疫の規制が強化されたことなどによりまして平成21年産から激減したところですが、最近は人気の高いシャインマスカットなどの輸出が伸びていることから、来年度は台北市などにおきまして果物フェアを開催し、果実全体の輸出拡大につなげる予定としております。
 以上でございます。
      

◆埋橋茂人

 

 県民の期待も非常に大きいところでありますので、引き続き御尽力のほどをお願いします。
 続いて、医療、介護、福祉について健康福祉部長に伺います。
 浜議員も触れられましたが、地域間格差の解消に向けて、平成29年度事業において一定の改善策が示されていますが、高齢化、過疎化の進行の中で医療圏の改編等を検討しているのか伺います。
 現在検討されている平成30年診療報酬改定、介護報酬改定では、在宅復帰率の見直し等で、従来の急性期、回復期、慢性期病院では存続できず、介護・住宅系施設への経営転換が行われることが予測されます。
 これは、従来の介護福祉施設利用者と対象が重なり、地域によっては介護施設が淘汰されるリスクを含んでいると思います。長野県では、特に農山村地域における医療と介護施設のバランスのよい配置が必要だと思いますが、県の見解と方針を伺います。
 続いて、介護人材養成確保に関する課題です。
 国は、団塊の世代が75歳以上になる2025年問題に向けて、全国で約37万人、長野県でも約8,000人の介護人材の不足が見込まれるとしており、介護人材の養成確保が急務となっており、さまざまな方針を打ち出しています。
 その中の一つとして、介護職を二つに分け、A、専門性の高い介護福祉士の養成、B、介護助手制度を導入し生活支援業務を中心とした介護職の養成を図ろうとしています。導入理由として、現在の介護福祉士資格は比較的安易に取得が可能で、介護の質に対してさまざまな課題があり、また、このことが給与水準が上がらない理由の一つとして捉えていると思われます。
 今申し上げた専門性の高い介護職員、すなわち介護福祉士とは、専門教育(大学、短大、専門学校)を受けた方や、専門的な研修を受講し修了した方しか受験資格が与えられない仕組みとなっております。
 しかし、県内の介護福祉士養成コースがある短期大学等は定員の50%程度しか学生が集まらない状況で、学校名は挙げませんが、既に定員を減らす動きをしている短大も出ております。
 このような状況を鑑みれば、長野県の高齢者介護の担い手育成、すなわち専門性の高い介護福祉士を担当する短期大学等への県の支援が必要ではないかと思いますが、いかがですか。
 医療とあわせ、介護保険事業を展開している病院の医療福祉センターに現状を確認したところ、その病院では、医療病棟に高齢者が多く入院し、治療目的の看護にあわせ、身体支援等を行う介護のニーズがふえている。二つとして、一方で在院日数の制約から医療依存度の高い利用者が介護福祉施設に転院し、看護師の少ない施設では対応に苦慮しているとのことでありました。
 長寿県長野として、今後さらなる健康長寿県を目指すためにも対応すべき分野でないかと思いますが、県の見解を伺います。
 最後に、地域包括ケアシステム関係であります。
 今申し上げた報酬改定とあわせて、地域包括ケアシステムは、地域連携から地域統合への流れが加速すると思われます。具体的には、本年4月から認められる地域医療連携推進法人ですが、この組織に県としてどんな機能や役割を求めていくのか伺います。
      

◎健康福祉部長(山本英紀)

 

 医療、介護、福祉についての御質問に順次回答させていただきます。
 医療圏については、国が示す医療計画作成指針に基づき都道府県が策定する保健医療計画の中に定めることとなっております。現在、次期保健医療計画の策定に向け、国において検討会を設置し、作成指針の見直しを行っているところですが、検討会では、2次医療圏の設定に関して、人口規模、患者の受療動向など将来の要素を考慮しながら検討する必要があること、地域医療構想の構想区域と2次医療圏を一致させることなどが議論されているところです。
 今後の医療圏の設定については、国の作成指針に基づき、患者の受療動向の情報を初め医療圏の面積、基幹病院までのアクセス等、病院の実情を十分に考慮し、地域の意見もお聞きしながら次期保健医療計画策定の中で検討してまいります。
 医療機関と介護施設の配置については、これまでも病院の再編にあわせた特別養護老人ホームの移転整備や農山村地域での診療所、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設の一体的整備など、地域の実情に合わせて医療と介護の整合性を図った施設整備が行われてまいりました。
 今後は、高齢社会の進展に伴い、より一層医療と介護サービスの総合的な確保が求められることから、県では平成30年度がともに初年度となる第7次長野県保健医療計画と第7期長野県高齢者プランの策定に向け、検討会議を合同で開催するとともに、全市町村と行う予定の高齢者プランの策定に係るヒアリングにおいても、各圏域ごとの将来の必要病床数の推計結果や病床整備の取り組み状況を共有した上で意見交換を行ってまいります。
 こうした取り組みを通じて、これまで以上に医療と介護との整合性を図り、農山村地域を含め、地域の実情を反映した計画づくり、施設整備に取り組んでまいります。
 介護福祉士養成校への支援についてのお尋ねがございました。
 介護福祉士養成校の入学者数は近年減少傾向にあり、将来の介護の担い手である専門性の高い介護福祉士を育成確保していく上で、養成校の入学者数の増加は重要な課題と認識しております。
 県では、平成27年度から各養成校が開催するオープンキャンパスや高校生向けの啓発冊子の作成などのPR費用を助成する介護の次世代育成促進事業を実施し、入学者数の増加に向けた取り組みを支援しているところでございます。また、介護福祉士を目指す学生に対して、5年間県内の介護職場で就労することを条件にその返還を免除する修学資金の貸与事業につきましても、対象者を、これまでの40人程度から平成28年度にはほぼ希望者全員に当たる80人程度へ拡大し、進学しやすい環境を整えているところでございます。
 加えて、県教育委員会と連携し、毎年、高校の進路指導担当教員が参集するキャリア教育担当研究協議会において、介護の仕事の意義や魅力を説明するとともに、県内介護福祉士養成校の紹介を行い、生徒の進路の選択肢としていただくよう直接お願いをしているところです。今後も、関係機関等と連携し、将来を担う介護福祉士の確保に努めてまいります。
 医療機関と介護施設における療養環境に関するお尋ねについては、議員御指摘のとおり、現在の医療機関、介護施設の人員配置や構成と、実際に入院、入所されている方が必要とする医療・介護サービスにはさまざまな課題があると認識しております。
 例えば、平成27年度に県で実施した療養病床に入院中の患者の実態調査によると、病状が安定しており医学的に退院可能な患者が60%程度という状況にあり、現在、国において、患者が退院後も療養生活を継続できるよう、介護療養病床や医療療養病床の一部を新たな介護施設とする検討がなされているところであります。
 また、急性期病床が過剰である一方で、比較的病状が落ち着いている方を受け入れる回復期病床が不足しているとともに、医療的ケアを必要とする要介護者の増加が見込まれるため、介護施設において医療的ケアを提供するための看護職員、介護職員の確保が重要となっております。
 これらの状況を踏まえ、県では、地域医療介護総合確保基金を活用し、急性期病床から回復期病床への転換など患者の病状に応じた病床の整備を行うとともに、ナースバンクなどによる看護師を必要とする介護施設と就職を希望する看護師とのマッチングや、喀たん吸引等研修会による医療的ケアの可能な介護職員の増員支援により介護施設における医療的ケアの提供体制の充実を支援しているところであります。引き続き、高齢社会に対応した医療、介護の提供体制の充実に取り組んでまいります。
 地域医療連携推進法人の機能、役割についてのお尋ねがございました。
 地域の医療機関相互の機能分担、連携を推進し、質の高い医療を効率的に提供するため、平成29年4月から、複数の病院や診療所、介護事業所などが参画する法人を地域医療連携推進法人として都道府県知事が認定できることになっております。
 連携法人になった場合には、病床過剰地域であっても、病院間の病床の融通が可能となるとともに、患者の病状に応じた紹介、逆紹介の円滑化や、医薬品や高額医療機器の共同購入などによる経営の効率化、安定化などのメリットがあると考えられます。
 したがいまして、連携法人は、地域の実情に応じた効率的な医療、介護の提供体制を構築していくための一つの選択肢となると考えられることから、県としてはこの制度の周知を図るとともに、法人設立を検討する地域の関係者から連携法人について相談があった場合には、法人の設立に向け、適切に対応してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
      

◆埋橋茂人

 

 高齢化が進行する中で喫緊の課題だと思いますので、よろしくお取り組みのほどをお願いいたします。
 続いて、格差問題について質問いたします。産業労働部長に伺います。
 小島議員や毛利議員が代表質問でも触れられていましたが、新規求人に占める正社員割合が全国より低く、最下位から2番目とか3番目ですが、産業構造等に起因するのか、ほかに相関関係にあるものがあるのか、この原因、要因をどう分析しているのか伺います。
 あわせて、有効求人倍率が改善される中で、この時期を捉えて対策を講ずべきと考えますが、正規雇用の拡大策とその実績を伺います。また、非正規雇用者が働きながらスキルアップすることは容易ではありません。県として具体的な対策をお考えか伺います。
 続いて、県民文化部長に2点伺います。
 子供の貧困は本人に責任のない問題であり、政治が対応すべき課題と思います。信州こどもカフェにおけるプラットフォームづくりについて十分な予算措置と早期対応が必要と考えます。今年度事業実施している松本市、飯田市におけるモデル事業は、PDCAサイクルのD、ドゥーが終わり、C、チェックを経て、これからA、アクションに移るところであり、この2市の事業は継続すべきものだと思いますが、見解を伺います。
 また、あわせまして、先日NHKスペシャルで放送されましたが、普通の状況なら参加できる行事等への参加機会が貧困ゆえ剥奪されている機会剥奪への対応が必要だと考えますが、見解はいかがですか。
      

◎産業政策監兼産業労働部長(石原秀樹)

 

 非正規の雇用対策についての御質問です。
 御指摘のとおり、長野県の新規求人数に占める正社員の割合は、以前は全国平均と同じ水準でしたが、リーマンショック以降、30%台まで低下しております。
 その要因といたしましては、県内にはスキー場やゴルフ場など季節的求人が多いこと、経済の先行きに不安があることから一時的な受注増加には臨時的な求人で対応していることなどが考えられます。
 そこで、県では、正規雇用の拡大を図るため、長野労働局と連携して、県内企業に対しまして正社員の採用や非正規社員の正社員化に向けた働きかけを行ってまいりました。また、未就業や不本意ながら非正規で就労している若者などに対しましては、座学と職場実習を組み合わせた研修により、これまでに約300人を正規雇用に結びつけたところでございます。
 また、非正規社員のスキルアップの対策といたしましては、技術専門校の在職者向けの技能習得支援講座を活用して現在進めており、27年度は非正規雇用の方約50人が受講いたしました。
 なお、国におきましても、キャリアアップ助成金によりまして非正規労働者に職業訓練を実施した企業に財政的な支援を行っておりますので、このような制度も活用し、今後も非正規労働者が職業訓練を受けられる機会の拡大を図ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。
      

◎県民文化部長(青木弘)

 

 まず1点目の信州こどもカフェのモデル事業についてのお尋ねでございます。
 この事業を実施したことで、子供たちからは、集中して勉強ができるようになった、またスタッフからは、子供たちの表情が大変穏やかになった、また、親が朝食をつくるようになったなど、子供たちや保護者に目に見える変化があるといった声が寄せられてございます。大きな効果がある事業だというふうに認識をしているところでございます。
 こうした成果を踏まえまして、この事業を継続していただくため、県では、松本市と飯田市に対しまして、国のひとり親家庭支援の補助事業でございますとか地域発元気づくり支援金の活用もお示ししながら、これまで丁寧に協議を重ねてきたところでございます。
 その結果、松本市におきましては、市内での複数設置を前提にいたしまして、新たに市単独事業といたしまして子供の居場所づくりを地域で進める交付金事業を創設すること、また飯田市では、県も負担する中で、国の補助を活用した事業として実施するなど、両市ともにこどもカフェの意義や有効性を御理解をいただきまして、しっかりと継続をしていただくことになったところでございます。
 一方、モデル事業では、実際にカフェを運営している方々からは、担い手の確保や育成、子育て支援のNPO等のネットワークづくりの必要性が課題として指摘を受けております。それに対する県の支援についても強く要望されているところでございます。このため、平成29年度は、地域振興局の体制を整備する中で、市町村、NPO等から構成されます地域プラットフォームを10広域で構築、運営してまいりたいと考えてございます。
 子供の居場所づくりの取り組みが今後も進みますよう、市町村等と十分連携を図りながら県としての役割をしっかりと果たしてまいりたいというふうに考えております。
 機会剥奪というお尋ねでございます。
 子供が楽しみにしております遠足、修学旅行といった学校行事への参加や、あるいは高等教育機関での修学などについて、経済的な理由によりましてその機会が奪われている現実があるということは御指摘のとおりでございます。
 本県では、これまで国に先駆けまして給付型奨学金を創設し、低所得世帯や児童養護施設に入所しています子供の大学等への就学を支援いたしますとともに、低所得世帯の高校生等の保護者に修学旅行や部活動に係る費用等を支給する奨学給付金を拡充し、生徒がさまざまな活動に参加できるよう支援をしてまいりました。
 また、児童養護施設の設置者等が実施いたします自然科学体験に係る費用を助成することによりまして、児童養護施設入所児童等が多様な体験の機会を得られるよう応援をしているところでございます。
 毛利議員の代表質問でもお答えしましたとおり、来年度は、こうしたいわゆる剥奪の状況も含めまして詳細な実態調査を実施させていただきますので、その調査結果も踏まえまして、必要な対策を検討し、来年度策定を予定しております子供の貧困対策を含む子供・若者支援に関する総合的な計画に盛り込んでまいりたいというふうに考えているところでございます。
 以上でございます。
      

◆埋橋茂人

 

 前向きなお答えをいただきましたので、ぜひよろしくお願いします。
 事実上事業を継続する飯田市、松本市と連携して課題や運営方法を共有し、今後の10圏域でつくるプラットフォームづくりに生かしていただきたいことを要望します。また、新たに設けられる地域振興局のまさに出番であり、大いに期待申し上げ、次に移ります。
 続いて、健康福祉部長に伺います。
 近年、かつて貧しさの指標でありましたエンゲル係数が上昇に転じているとのことですが、ひとり暮らしや共働きの増加で、中食や総菜品の購入がふえていることが主たる原因とのことでありました。
 このことをもって新しい食の貧困が起きているということは一概には言えませんが、貧困対策として、食の確保だけでなく、孤食、ひとり食事の解消等、多方面から食のあり方を検討し、具体的な実施体制をつくることが重要であることを示していると思います。
 NPOやライオンズクラブ、生協、労組、JAグループなどでフードバンクやフードドライブ等の動きが活発になっています。公の関与をできるだけ少なくして取り組みが行われていますが、集積場所の提供や輸送費、通信費等の運営費、間接コストに対して助成する仕組みを検討すべきではないかと考えるが、いかがでありますか。
 最後に、建設部長に伺います。
 民間の空き家、空き室を利用して、低額所得者、高齢者、子育て世帯等の住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度を創設する等、住宅セーフティーネットの機能を強化するための住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法律案が国会に提出されました。
 このように、低所得者に対して住宅確保という側面からサポートする施策を国としても進めていますが、今後の公共住宅のあり方とも密接に関連するこのような動きに対する県の考え方を示していただきたいと思います。
      

◎健康福祉部長(山本英紀)

 

 フードバンクや、そのための食料を場所と時間を決めて市民に呼びかけて集めるフードドライブについては、県内各地の民間団体や市町村等で実施されるとともに、県でも特定非営利活動法人フードバンク信州や信州こども食堂ネットワークといった民間の支援団体と協働し、12月8日、9日に県庁で、1月23日には松本合同庁舎でフードドライブを実施いたしました。多くの食品等を支援団体を通して必要としている人に届けることができ、また県民にフードバンクの取り組みについて発信することができたと考えております。
 フードバンクの運営は、企業や個人からの寄附や団体からの助成金、社会福祉法人の社会貢献事業等を利用して民間の団体等により主体的に取り組まれております。県としては、こういった活動を応援するため、フードドライブの会場として県庁舎を提供するとともに、フードバンクの活動について多くの方に知っていただき、食料提供や事業費の寄附といった支援の輪が広がっていくよう県民への広報を行うなど、活動しやすい環境づくりを行ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。
      

◎建設部長(奥村康博)

 

 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の改正によります新たな制度への対応に関するお尋ねでございます。
 改正法案による新たな制度におきまして、県は、民間の空き家、空き室を住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅として登録し、情報を開示するほか、社会福祉法人等を家賃債務保証などの居住支援活動を行う法人として指定するなどの役割が想定されております。
 また、県及び市町村は、入居対象者の収入の状況や家賃の額等が一定の条件を満たす場合に、登録住宅の改修や入居負担軽減のための経済的な支援を行うことができることとされております。
 入居支援の体制づくりのためには、入居希望者、住宅所有者双方のニーズの把握が不可欠でございまして、県、市町村の住宅部局や福祉部局に加え、不動産関係団体などとの役割の整理が求められるところでございます。
 県といたしましては、法案が国会へ提出されたばかりの状況でございまして、制度の詳細について情報収集を進め、市町村や不動産関係団体などとともに、さまざまな課題の整理も含め支援のあり方について検討してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
      

◆埋橋茂人

 

 貧困問題は多岐にわたる要因を持ち、解決が一朝一夕にできるものではありませんが、貧困が連鎖しないよう、さまざまな対策を重層的に組み合わせ、改善に向けて取り組みを加速化することを要望して私の一切の質問を終わります。ありがとうございました。