平成29年2月定例県議会 発言内容(石和大議員)


◆石和大

   

 現代社会においては、地方創生がはやり言葉のように言われています。しかし、実際には、中央集権的な国の地方に対するさまざまな管理体制のごとき性質はそれほどに変化しているとは言いがたいという感があります。信州に暮らす人々の日常は、国が講ずる制度により、よりよい方向に進化しているとは言えない、そんな現実にそぐわない制度も少なからずあるわけであります。
 そんな現代の中で、県という中間自治体、市町村という基礎自治体、そして実際に人々が暮らすコミュニティーがいかに有機的に結びつくかが求められています。それを結びつけるのは人です。県、市町村で働く職員、つまり地方公務員に求められる人間像も変化していると言えるでしょう。そんな人材が育つためには、公務員が地域にしっかり根をおろして、さまざまな場面で地域に対して力を発揮し、住民の中で生きるという経験が、実践が必要です。当然、ともに地域で活動する地域おこし協力隊等の人々の中にもリーダーや人材が育っていくわけです。そんなことのためにも有効な事業の一つが、地域に飛び出せ!信州元気づくり実践塾だと感じています。
 そこで、お聞きします。
 まず、この事業の目的と内容はどのようなものか。また、地域おこし協力隊の塾への参加状況はどうか。
 次に、28年度は三つの実践塾が設定されたということですが、その三つの塾の3名の塾頭はそれぞれ信念と熱意を持って地域で実践されている方々ばかりですが、塾頭の活躍は期待どおりだったと言えるのかどうか。
 また、これまでの塾生の中には、自営業の傍ら、地元にある地域資源を活用して地域を活性化しようと住民有志と団体を立ち上げて、地域内をめぐるツアーの開催や地域の高齢者の除雪支援事業を行うなど、まさに地域づくりのリーダーとして活躍される方も出てきていると聞いております。一方で、地域おこし協力隊の任期終了後の定着といった課題などもあると感じておりますが、これまで3年間実践塾を開催してきた成果と課題をどう捉えているか。以上、企画振興部長にお聞きします。
 冒頭申し述べたとおり、この事業はとても有意義なものと感じますし、しあわせ信州の構築は地域づくり、そして地域づくりは人づくりであります。それが信州の未来へつながると考えております。
 そこで、知事にお聞きします。
 来年度は、次期総合5カ年計画の策定の年となりますが、この実践塾もこれまでの取り組みを総括した上でさらなる発展した取り組みとなるように願っておりますが、知事のこの事業にかける思いはいかがか、伺います。
      

◎企画振興部長(小岩正貴)

 

 石和大議員からの元気づくり実践塾についての御質問に順次お答え申し上げます。
 まず、事業の目的と内容、そして地域おこし協力隊の参加状況についてでございます。
 信州元気づくり実践塾は、地域づくり活動を担うリーダーを育成することを目的として平成26年度から実施しております。地域づくり活動の実践で大きな成果を上げている方を塾頭に迎え、現場での活動を通じた実践的なカリキュラムにより、約半年間の研修を行うものでございます。平成28年度は、3名の塾頭のもと、18名の方が全部で8回の講座を終了し、卒塾されております。塾生につきましては、広く地域づくり活動を志す方を対象とし、市町村職員や県職員についても、地域づくり活動の担い手として活躍することを期待し、対象としているところでございます。
 地域おこし協力隊も毎年度参加をしていただいておりまして、今年度は6名が参加していただいております。参加した協力隊の活動をフィールドワークとして取り入れ体験プログラムを企画した塾もあるなど、実践塾による研修は協力隊の活動に対する後押しにもなっておりますため、引き続き積極的な参加を呼びかけていきたいと考えております。
 次に、塾頭の評価についてでございます。
 3名の塾頭の方には、単に地域づくりの知識やノウハウだけにとどまらず、リーダーに必要な心構えや覚悟につきましても塾生に教えていただきました。卒塾生に対するアンケートにおきまして、回答者の8割以上が、受講して大変満足、または満足と回答していただいておりますのは、塾頭に対する高い評価のあらわれと受けとめているところでございます。
 最後に、これまでの成果と課題でございます。
 実践塾の成果といたしましては、平成26年、27年度に卒塾した47名のうち27名が既に地域づくり活動を実践していただいておりまして、そのうち4割がそのリーダーとして活躍していただいていることが挙げられます。一方で、地域づくり活動を継続していくための資金の確保や活動する仲間づくりなどの課題があると認識をしておりまして、引き続き元気づくり支援金や地域づくり団体の交流研修等を通じて支援をしてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
      

◎知事(阿部守一)

 

 信州元気づくり実践塾にかける思いという御質問を頂戴いたしました。
 私も、この実践塾の開校式や閉校式に出させていただく中で、塾生の皆さんに直接激励の言葉をかけさせていただいたりしてきております。何よりも、塾頭の皆様方が御自分の熱い思い、あるいは信念、こうしたものを語っていただくということを通じて、単なる知識とかノウハウ以上の伝道の場になっているんじゃないかというふうに思っています。
 御質問にもありましたように、これから地方創生あるいは地方の自立、こうしたものを進めていく上では、やはりそうしたものを担っていただく人材、人づくりということが最も基本だというふうに思っております。私は、次の総合5カ年計画は、子供たちの教育、あるいは産業や地域を担っていただく人材の育成、こうしたものを大きなテーマにしていかなければいけないんじゃないかというふうに思っております。そういう中で、この信州元気づくり実践塾につきましても、先ほど企画振興部長から御答弁申し上げましたような現状と課題をよく分析をしながら、しっかりと次につながるように検討していきたいというふうに考えております。
 以上です。
      

◆石和大

 

 インクルーシブ教育の進捗状況と特別支援教育の今後の方向性についてお聞きします。
 長野県における小中学校の特別支援教育の現在の状況については、特別支援学級が主な学びの場となっています。在籍率で見ると、全国で小学校は2番目、中学校は1番目です。そんな中で、市町村別に見ると、在籍率に大きな差が見受けられます。これは、市町村教育委員会の就学判定の差ということなのか、お聞きします。
 一方、通級指導教室の利用率は全国で最下位レベルで、小学校42位、中学校は設置がなく46位ということです。この状況は、県教育委員会が目指すインクルーシブな教育の方向性に合致しているのか。教育長にお聞きします。
 通級指導教室の担当教員については、これまで、各県の要望に対し、国が予算の範囲内で措置、つまり加配定数という形で措置していたが、29年度から段階的に児童生徒数に応じて確実に措置される、いわゆる基礎定数化されることになったということで、長野県は29年度にLD等通級指導教室の担当教員を増員する計画ということです。現在の28人より11人ふやし39人ということで、小学校6人、中学校は新設し5人を配置するということです。この通級指導教室の増設により何を目指すのか。特別支援学級中心の形態から通級指導教室へシフトしていくということで理解してよいのか。教育長にお聞きします。
 高校について、国は平成30年度から通級指導を制度化するとのことですが、当県では、全国25校のモデル校のうちで、箕輪進修高校で通級指導の研究が行われています。これまでの成果と今後の当県における高校の特別支援教育の方向性についてお聞きします。また、支援を必要とする生徒に対する高校卒業後の進路指導の方針、方向性について教育長にお聞きします。
 あわせて、以前にも質問で取り上げましたが、中学校までは特別支援学級があるが、その後の進路については明確な指針がなく、生徒も保護者も進路選択に不安を抱えています。特に、情報量の不足はまだまだ改善されていないことが見受けられます。新たに制度化される通級による指導を含めた高等学校で目指している特別支援教育の方向について、どう伝え、生徒、保護者の進路選択に寄与していくと考えているのか。教育長に伺います。
 次に、特別支援学校での指導はその後の進路に及ぶが、就労ということについてどんな指導をしているのか。来年度の新規事業として、特別支援学校における技能検定制度を構築し、モデル校4校で導入されるということですが、現在の就職率は、全国で28.9%に対し当県は19.8%ということです。就職の希望者は23.4%ということで、この制度の導入は高等部の就職率向上を目的とすると思いますが、目標はどうか。また、このほかにも考えている取り組みはあるのか。教育長にお聞きします。
 次に、さきに質問した項目に関連しますが、障害者の就労支援について伺います。
 まず、障害者の就労移行支援事業の現状はどうか。どんな事業体がその業務に当たっているのか。健康福祉部長にお聞きします。
 この事業は、就労を希望する障害者で通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる者に対し、生産活動、職場体験、その他の活動の機会の提供や、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、求職活動に関する支援、その適性に応じた職場の開拓、就職後における職場への定着のために必要な相談等を行うとされています。こういった事業により就労支援を受けることができるということを中学校の段階で情報として知り得ていれば、生徒の進路選択やライフプランを考える材料ともなると考えるが、部局連携で取り組むことは可能か。対象者や保護者が望むのは自立だと考えますが、この事業を利用して、現状どの程度が目的を達成しているのか。また、今後この制度が目指すところはどのあたりか。健康福祉部長にお聞きします。
 また、関連して、障害者の農業就労チャレンジ事業についてお聞きします。
 この事業の目的は、障害者就労支援事業所等における農業分野での就労を促進し、障害者の働く場を創出、拡大するとともに障害者の工賃アップを図るというものですが、事業概要と活用状況はどうか。また、マッチングはうまくいっているのか。付き添う人が必要ということですが、人材は足りているか。また、課題は何か。健康福祉部長にお聞きします。
 就労形態は、アルバイトのような形態で一時的なものである場合が多いのか。また、農業法人のようなところへ就職のような長い期間の就労となる場合もあるのか。
 以上、健康福祉部長にお聞きをいたします。
      

◎教育長(原山隆一)

 

 インクルーシブ教育の進捗状況と特別支援教育の今後の方向性についての御質問でございます。
 まず、市町村による特別支援学級在籍率の差についてでありますけれども、在籍の判断は市町村の教育委員会において丁寧に行われておりますけれども、本人、保護者の意向や体制整備の状況も含めて総合的に判断する仕組みとなっていること、さらに、これまで通級指導教室の整備が途上であったことなどが最終的な判断に影響しているものというふうに考えております。
 この現状についてですけれども、特別支援学級の在籍率が高くて通級指導教室の利用率が低いという現状は、本県が目指すインクルーシブな教育の方向性からは必ずしも望ましい状況とは言えないというふうに考えております。
 そして、通級指導教室の増設により目指すものでありますけれども、一人一人の教育的ニーズに適切に対応するために、通常の学級、通級指導教室、特別支援学級、そして特別支援学校といった連続性のある学びの場をバランスよく整備して、障害がある子供もない子供も、できる限りともに学ぶことを目指していくということが重要であるというふうに考えております。今後、通級指導教室を拡充しまして、通常の学級を基盤として学ぶことができる体制を整備していきたいというふうに考えております。
 次に、高校における通級指導の成果とその方向性ですけれども、箕輪進修高校における3年間のモデル研究によりまして配慮が必要な生徒に対する個別指導の有効性が確認できたとともに、通級の担当教員が中心となって合理的配慮マニュアルを作成するなど、生徒の実態把握とチーム支援体制づくりが進みまして、学校全体の特別支援教育が充実したところであります。
 今回のモデル校の成果を踏まえまして、通級による指導については、小、中、高と連続した指導を行うことによって生徒の自立を支えられますよう、国の施策に合わせて導入を目指してまいりたいというふうに考えております。
 それから、支援を必要とする生徒への高校卒業後の進路指導方針ですけれども、生徒本人の希望や適性に合った適切な進路選択ができるように支援すること、これがまず重要でありますが、同時に、高校卒業後も必要に応じた支援が引き継がれることも大切だと思っております。切れ目のない支援が進められますように、各圏域の障害者総合支援センター等の関係機関を活用して、高校卒業後も必要な情報の引き継ぎが図られるよう、さらに努めてまいりたいというふうに思っております。
 それから、支援を必要とする生徒への進路選択に係る情報提供ですけれども、発達障害等特別な支援を必要とする生徒は年々増加、多様化しておりまして、各高校では、一人一人の生徒の特性に配慮しながら指導、支援に取り組んでいるところであります。
 中学生や保護者に対しては、このような高校の指導、支援の取り組みについて、制度化が予定されています通級による指導も含め、進学が迫った中学3年生からではなくてできる限り早い段階から提供して、進路選択に当たっての疑問や不安に一つ一つ丁寧に対応していくことが重要であるというふうに思っておりますので、中学校の担任が高等学校での取り組みに関する情報を生徒本人、保護者に確実に提供できるように、中学校、高等学校双方の教職員が情報共有できる機会を設けるなど、一層の連携強化に努めてまいりたいというふうに考えております。
 それから、特別支援学校での就労に係る指導ですけれども、現在、高等部では、卒業後の社会的自立に向けまして、校内での作業学習に加え、地域の事業所等の協力をいただいて行う現場実習を春と秋それぞれ2週間程度実施して、働く力や生活する力を育てておりますけれども、全国と比べて就職率が低いということはやはり課題であるというふうに認識しております。
 そこで、来年度新たに導入する技能検定は、生徒の働きたいという意欲を育て、働く力を高めるために導入するものであります。生徒が段階的に力をつけて学習の成果を実感できるものとしていきたいと思っております。まずは、多くの職種に共通する基礎的な力を育てるために、来年度、清掃についての技能検定のモデル研究を4校で実施いたしまして、企業等の協力も得ながら実践を重ね、平成30年度以降は実施校数や検定種目も拡大し、生徒の就職希望率、就職率の向上につなげていきたいというふうに考えております。
      

◎健康福祉部長(山本英紀)

 

 就労移行支援事業等の現状等についてのお尋ねに順次回答させていただきます。
 就労移行支援事業は、一般企業等への就労を希望する障害者に対して必要な知識の習得や能力向上のための教育訓練を行うとともに、求職活動に関する支援を行い、それぞれの適性に応じた職場への就労に結びつけるものであります。
 県内の就労移行支援事業所数は、平成29年2月1日現在74カ所であり、このうち、社会福祉法人が運営する事業所は48カ所で全体の65%を占めております。そのほか、株式会社13カ所、NPO法人9カ所、企業組合等が4カ所となっております。
 議員御指摘のとおり、障害者が中学生のころから自分の特性を理解し、将来の生き方を主体的に考えていくために、さまざまな機会を通じて進路選択に関する多くの情報を提供することは重要であると考えております。教育委員会では、中学校特別支援学級担当者と高校の特別支援教育コーディネーターが学区ごとに集まり情報交換を行っており、こうした場に県内10圏域に設置している障害者就業・生活支援センターの担当者が出向き、就労移行支援事業を含む就労に関する情報提供を開始したところであります。また、障害者就業・生活支援センターでは、普通高校からの要請に応じて学校を訪問し、就職に関する相談対応や就労支援制度全般の周知や実際の就労事例の紹介を行っております。
 平成27年度の就労移行支援事業においては、年度当初の事業所利用者474人のうち167人、約3人に1人が一般就労に結びついております。障害者の経済的な自立に向けて、ハローワークや障害者就業・生活支援センターとの連携のもと、支援内容のさらなる充実と新たな就労の場の開拓を図り、1人でも多くの障害者が本人の希望や適性に合った職場へ就労することが重要と考えております。
 農業就労チャレンジ事業の概要、活用状況等についてのお尋ねがございました。
 農業就労チャレンジ事業は、一般企業への就労が困難な障害者の就労の場を創出、拡大するため、担い手不足に悩む農業者と農業に取り組む障害者就労施設とを結びつけるものであります。
 マッチングに当たっては、専任のコーディネーターが農作業の内容や必要な人員などの条件を調整するとともに、マッチング後は農業経験が豊かな高齢者等をサポーターとして派遣し、果樹の枝切りや苗の植え方など農作業の手順や方法をきめ細かく指導しております。平成28年度は、農業を行う就労継続支援B型事業所100施設のうち26施設がこの事業を活用し、ワイナリーや野菜、果樹栽培等の農業者との間で、目標としていた40件を上回る44件のマッチングがなされております。
 本事業の課題は、農作業の現場への往復に付き添いの職員が必要となること、農作業に必要な人数を一つの施設では確保できないことなどの理由によりマッチングに結びつかない事例があることであります。これらの課題の解決に向け、複数の施設による共同受注や新たに農業に取り組む施設の掘り起こしなどに努めているところであり、今後も、関係機関と連携しながら、農業分野における障害者のさらなる就労促進を図ってまいります。
 農業就労チャレンジ事業では、障害者就労施設が農業者との契約により農作業を請け負い、施設が利用者の中から希望や適性等を踏まえて従事者を選定し、作業に当たる形態が一般的であります。農作業は、例えばブドウの木の剪定やトマトの収穫など農繁期の作業である場合が多い状況ですが、単年度限りではなく、複数年にわたり継続的に契約を行っている事例も存在いたします。また、個人の農家のほかに農業法人等からも農作業の依頼を受けており、作業に習熟した障害者が従事先の農業法人等に雇用された事例も出てきております。
 以上でございます。
      

◆石和大

 

 誰でも出番がある長野県に向けて、よりきめ細やかな施策を望んでおります。
 次に、親元就農と農地継承についてお聞きします。
 農家出身者が青年就農給付金の準備型を受給して就農した場合には、就農後5年以内に親から経営継承しないと給付金の返納対象となるということですが、実際の農業の経営体においては、経営者の判断で継承するものであり、一律の年限での区切りは実情にそぐわないと思うが、対処を工夫できないものか、お聞きをいたします。
 また、親元就農予定者における研修は、研修先での研修の専念義務に幅を持たせて、実家農業の手伝いのような業務も認めることはできないのかどうかお聞きをいたします。
 さらには、青年就農給付金の応募者の中には、研修計画や営農計画が審査の段階では不十分で給付金の交付が認められない方もいるのではないか。そうした方が十分準備してから計画を立て直し、再度応募した場合、予算が不足し、給付されないことが懸念されるわけであります。そこで、国の予算を基金で受け取り、安定的に運用することはできないものかどうかお聞きをいたします。
 また、農家出身でない新規就農者であっても、就農5年を経過すれば約20%の方が販売額1,000万円を超えるようになるというふうにお聞きをしております。ただ、中には生計を立てられない方も少なからずいるわけであります。親元就農について、他県では、県単の就農支援制度もあるやにお聞きをしますが、本県でも、親元就農について積極的に支援することが、農家を減少させず日本一就農しやすい長野県につながっていくと考えるが、親元就農に対してどのように支援しているのか伺います。
 次に、農地継承についてですが、長寿社会の現在においては、祖父の名義の農地が少なからずあり、孫への継承のほうがスムーズなケースがあります。しかし、祖父と孫間で生前一括贈与をした場合には、親子間で生前一括贈与した場合の贈与税の特例が適用されず、税制面で不利になります。
 今まで申し述べた支援や各種制度についての課題は、国の制度や税制といったすぐに変革できるものではないというふうには思っておりますが、農業の現場では、実際に感じられ、直面している課題であります。そんな農業者の声に対しどのように取り組むのか。以上、農政部長にお聞きいたします。
      

◎農政部長(北原富裕)

 

 親元就農と農地継承についての御質問に順次お答えをいたします。
 初めに、親元就農者が青年就農給付金の準備型を受給した場合の経営継承についてですが、青年就農給付金は、国が平成24年度に就農意欲は高いものの営農基盤を持たず、資金も十分にないIターン就農者等の生活費を支援することを主な目的として設立した制度でありまして、当初は親元就農者は対象外とされておりました。その後、本県を初め多くの県からの要請もあって、平成26年度から、就農後5年以内に経営継承する場合に限り給付対象となったところでございます。しかしながら、現場からは、親がまだ若い場合など、5年以内の経営継承が困難な事例もあるとの声をお聞きしておりますので、現場の実態に沿った要件の緩和を引き続き国に要請してまいります。
 次に、実家の手伝いも準備型の給付要件とすることについてですが、国は、3親等以内の親族のもとでの研修を給付対象としておりませんので、現状では困難となっております。
 次に、国の予算を県が基金として受け入れることについてですが、給付金の財源は、国が全国農業会議所に造成した基金で措置されておりまして、全国農業会議所は、都道府県に対し、実績に応じて補助金として交付する仕組みとなっております。このため、現状では、県が独自に基金造成をすることは困難となっておりますが、全国農業会議所に対しましては、安定的な運営がなされ、議員が懸念されるような事態が発生しないよう要請してまいりたいと考えております。
 次に、親元就農に対する支援についてですが、従来から、県、JAグループ、市町村等の出資で設立した長野県農業担い手育成基金において、親元就農者が経営者として成長するために必要な自己研さんの活動に対し助成をしてきております。また、規模拡大や生産性の向上に必要な施設や機械の整備については、経営体育成支援事業など国の制度を活用し、支援しているところでございます。さらに、今年度より、親元就農者を含めた果樹栽培を目指す新規就農者に対しまして、樹園地整備に要する苗木や果樹棚などの経費を就農前の研修時から支援する本県独自の果樹経営起業準備支援事業を始めたところでございます。
 県といたしましては、農家子弟の親元への就農は、親が持つ農地、農機具などの経営基盤が既にあり、円滑な就農に結びつくことから、新規就農の重要な形態の一つであるというふうに考えております。今後とも、各種施策を組み合わせるとともに、県が実施いたしますMBA研修や農業改良普及センターにおける技術や経営の指導などによりまして、就農後、農業経営者として発展できるよう、しっかりと支援してまいります。
 最後に、現場で直面している課題への取り組みにつきましては、議員御指摘の青年就農給付金や農地継承に関するさまざまな課題は、いずれも国の制度上の課題であることから、現場の実態を十分確認した上で、制度の見直しを国へ要請してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
      

◆石和大

 

 国の制度についても、青年就農給付金は、親元就農には適用されなかったものが制度が改善された。これは、私も以前質問いたしましたが、県がそれをしっかりと国に上げることによって国の制度も変わっていくわけでありますから、これからも真摯なお取り組みをお願いしたいと思います。
 最後の質問として、臨時財政対策債についてお聞きをいたします。
 平成29年度当初予算案は、一般会計総額で8,625億円余りとなっておりますが、歳入面を見ると、県税収入は増加するものの地方交付税が59億円の減少となり、主要一般財源総額は減少する見通しということであります。そのうち、地方交付税の振りかえである臨時財政対策債については460億円と、前年度より24億円の増発を余儀なくされておりますが、平成29年度の地方財政計画における臨時財政対策債についてどのように評価しているのか。総務部長にお聞きします。
 さて、この臨時財政対策債は、地方交付税の原資が不足することから、特例的な措置として平成13年度に導入されたものであり、毎年度、国から示された額を県が借金し、その元利償還金は国がその全額を後年度地方交付税で措置するという、いわば地方交付税の立てかえ払いのような制度でありますが、国は、発行団体の責任において償還すべき地方の借金であるとも言っています。本県では、29年度末の県債残高全体は28年度末より119億円減少する見込みですが、一方で、臨時財政対策債の残高は増加の一途をたどり、29年度末には6,054億円に達し、県債残高全体の約4割を占める見込みだということであります。
 地方交付税の振りかえとして臨時的に県が発行を余儀なくされている臨時財政対策債が大きなウエートを占める現状は、地方財政の健全化という観点から大変憂慮すべき状況にあると考えます。そこで、今後も償還財源が確実に保障される見込みはあるのか。臨時財政対策債の廃止に向け具体的にどのように取り組むのか。総務部長の御所見を伺います。
      

◎総務部長(小林透)

 

 臨時財政対策債についての御質問にお答えをいたします。
 まず、この評価についてでございますが、平成29年度の地方財政計画における臨時財政対策債は4兆452億円と、前年度に比べ2,572億円、6.8%の増加となってございます。これについては、国税収入が減少するなど厳しい財政状況の中で地方財政計画において地方の一般財源総額を確保したものでございまして、この点については評価するものでございます。しかしながら、本来、臨時財政対策債は地方の歳出総額が確保できない場合のまさに臨時であり、特例的な措置であるはずのものでございますので、平成29年度も引き続き発行することとなったことに加えその額が増加したことは残念であると言わざるを得ないものでございます。
 次に、償還財源の保障の見込みについてでございますが、臨時財政対策債は、そもそも交付税特別会計における借り入れについて、住民に見えやすいようにするという意図により、平成13年度より個々の地方自治体の借り入れとしたものでございまして、その償還財源につきましては措置されるべきものとして、地方財政法などに基づき、その全額を後年度普通交付税の算定に用いる基準財政需要額に算入することとされていることから、今後とも財源保障されるものと認識してございます。
 最後に、廃止に向けた取り組みについてでございますが、地方交付税の法定率の引き上げと臨時財政対策債の廃止に向けて、これまでも、県として独自に知事が直接総務省や財務省、県関係国会議員を訪問し廃止等の要請を実施するとともに、全国知事会や関東知事会を通じて同様の要請をしてきたところでございます。県議会におかれましても、意見書を採択し国に要請していただいているところであり、引き続き他県や県内市町村とも連携しながら県議会の皆様のお力もおかりし、粘り強く国に働きかけてまいりたいと思います。
 以上でございます。
      

◆石和大

 

 臨時財政対策債は30年をかけて返すような制度ということでありまして、どこかで聞いたことがあるような話であります。
 冒頭申し述べたとおり、地方創生といいながら、国は、各自治体の事業を精査するという形でふるいにかけ、臨時財政対策債という形で借金を地方につけかえている、肩がわりさせているようなものであります。一朝一夕に変革、改革できる制度ではないかもしれません。しかし、こんな状況でも、地域特性を生かした地域づくり、人材づくりを推進し、信州らしさを前面に出し、その輝きを増すような次の総合5カ年計画をしっかりと立てられるよき新年度となるように期待するとともに、しっかり議論する1年となるように努力することを期して、質問を終わります。