平成29年11月定例県議会 発言内容(山岸喜昭議員)


◆山岸喜昭

   

 おはようございます。順次質問に入ります。

 まず、国際交流についてでございます。
 議案説明でもありましたように、日中国交正常化45周年記念の節目の年を迎え、日中友好交流のさらなる推進と北京・河北省冬季オリ・パラに向けた冬季スポーツ分野の青少年交流、経済、農業交流等進展を図るため、知事を団長として、副議長ほか議員3名、高波日中友好協会会長、濱田信大学長、相澤日本病院会会長、関係村長など総勢60名で中国を訪問してまいりました。
 観光、環境、医学交流のほか、河北省、北京市とともに22年冬季オリ・パラ開催に向け、長野県の経験を学ぶために、特に冬季スポーツにおける青少年交流やスキー教育旅行の誘致、長野県、河北省、江原道との連携によるオリンピックムーブメントの発信などについての意見が交わされました。
 中国での冬季スポーツ人口は3億人と、飛躍的に増加すると予想され、施設、学校、訓練、スポーツ医学の普及に向けて大きな市場が展開すると思われます。今回の訪中におきましては、知事にとっては就任以来7回目の訪中とし、中国との交流は非常に重要なウェートを占め、さらなる飛躍と発展に、また多方面において官民一体となった広い分野での交流拡大を目指すなど、大きな収穫が得られたことと思います。訪問された成果についてお聞きします。
 また、長野県と中国との官民挙げての友好交流、経済交流など、加速しつつ未来に向けていくためには、若い世代の顔の見える交流が求められます。スポーツ交流は、まさに国を超え、言葉や文化を超え、相互交流、相互理解を図ることができ、新しい時代の日中友好交流のスタイルとして、日本と中国のジュニア選手のスポーツを中心とした交流事業は高く評価するところであります。
 河北省と合意し、北京市と覚書を結んだ今回の成果を踏まえて、今後具体的にどのように交流を進めていくのか、知事の決意をお聞かせください。
     

◎知事(阿部守一)

 

 今回の訪中の成果についての御質問でございます。
 日中国交正常化45周年という大きな節目に当たりまして、今回の訪中事業は、諏訪副議長を初め県議会からも御参加をいただいて大きな成果を上げることができたというふうに考えております。関係の皆様方に感謝を申し上げたいと思います。
 日中友好協会を初め多くの皆様方に御参加いただいたわけでありますが、中国日本友好協会唐家セン会長から、日中友好交流のイノベーションというふうに御評価いただいた官と民連携しての友好交流という形をまさに発展させることができたものというふうに考えております。
 具体的な成果としては、河北省、北京市との間で、2022年北京冬季オリンピックに向けまして、青少年冬季スポーツ交流の推進で合意をし、また、本県へのスキー教育旅行誘致への道筋をつけることができたというふうに考えております。特に、北京市に関しましては、長野県知事として初めて訪問いたしました。陳吉寧代理市長と覚書を締結いたしまして、スポーツはもとより、観光、教育分野への今後の交流拡大についても合意をいたしました。特に、発展著しい中国の首都でもあります北京市との交流は、今後に向けて大変大きな意味があるというふうに思っております。
 また、河北省の許勤省長とは、2018年平昌、2022年北京と、冬季オリンピックが東アジアで連続して開催される中で、開催地であります江原道、河北省、そして、かつて冬季オリンピックを開催した私ども長野県とが連携をしてオリンピックムーブメントの発信と冬季スポーツの振興に向けて取り組んでいこうということで合意をしたところでございます。
 さらに、農産物等の輸入、本県から輸出の規制が現在かかっているわけでありますけれども、輸入規制を管轄しております国家質量監督検験検疫総局の支樹平局長を表敬訪問させていただき、直接長野県の農産物等の輸入規制の早期解除について要請をさせていただいたところでございます。
 今後の具体的な交流につきましては、まず、今回の中国訪問におきましては、河北省の許勤省長、そして北京市の陳吉寧代理市長と北京冬季オリンピックに向けてのジュニア選手の交流と冬季スポーツの教育旅行の推進について合意をいたしました。このうち、ジュニア選手の交流につきましては、9月県議会でお認めをいただきました補正予算を活用させていただき、この冬のシーズンから河北省、そして北京市のスキー、アイスホッケーのジュニア選手を長野県に受け入れて、本県のジュニア選手と合同練習や競技会を行いますほか、地元の学校や地域とも交流を深めていきたいというふうに考えております。
 教育旅行の推進につきましては、まずは本県へスキー教育旅行等を誘致するため、河北省と連携をして、今月の13日に河北省の石家荘市で学校の校長等を対象といたしましてスキー教育旅行の説明会を開催いたしたところでございます。青少年の冬季スポーツ交流を推進することで青少年の交流をさらに拡大していくと同時に、今後、北京冬季オリンピックを控えて、中国国内のスキー人口はこれから急激に増加をしていくわけであります。この中国のスキー人口の増加を本県の観光振興等にしっかりとつなげていきたいというふうに思っておりますし、加えて、産業、教育分野など幅広い分野での交流をしっかりと今後とも拡大をしていきたいと考えております。
 以上です。
      

◆山岸喜昭

 

 これまで先人たちが築いてこられた日中間の交流、そして長野県と河北省の間の信頼関係はもとより、今回、北京市政府と冬季オリ・パラをきっかけとした青少年の冬季スポーツの交流事業の実施で基本合意し、覚書を結ぶことができましたことは、大変意義がある大きな収穫であり、また、青少年スポーツ交流だけでなく、観光、産業振興など幅広い分野での交流拡大を目指すことが合意されました。
 アジアの近隣諸国との安定的かつ将来的な友好交流は最も重要であることから、日中友好協会のこれまでの交流とあわせて、大学、医療関係のトップの皆さんとともに訪問できたことは、長野県と中国における新たな地方間交流関係の構築を図るための大変意義のある訪問であったと捉えているところであります。
 近年におきまして、知事がトップセールスとして積極的に海外への友好交流を一層促進し、相互理解の発展、親善に努めていることに敬意を表するところであります。世界各国を訪問され、協定書、覚書を交わされ、その中で、特に青少年交流、派遣、人材育成などがうたわれていますが、それぞれにおいて青少年交流事業については今どのような取り組みがされているのか。また、成果は上がっているのか。今後とも海外との友好青少年交流事業はどのように取り組まれていくのか。県民文化部長にお聞きします。
      

◎県民文化部長(青木弘)

 

 各国との青少年交流事業の取り組みと成果、今後の取り組みについてのお尋ねでございます。
 長野県といたしまして、長年にわたり青少年交流事業に取り組んでいるのは、アメリカミズーリ州、中国河北省、オーストリアの3地域というふうに承知しております。
 ミズーリ州につきましては、平成28年からミズーリ大学コロンビア校を受け入れ、長野県短期大学や清泉女学院大学との交流等を通じて、長野県の食文化を体験するプログラムを実施しております。同校につきましては、長野県立大学の海外プログラムの研修先として関係を発展させていく予定でございます。
 中国河北省とは、これまで、技術研修員を受け入れ、環境保全研究所、病院等での研修を実施いたしますとともに、河北大学において短期大学の学生等が中国語や中国の政治、経済、文化等を学んでおります。また、今年度は、河北省からスキーのジュニア選手を受け入れ、スポーツ交流を実施することにより、本県のジュニア選手の育成をしてまいりたいと考えております。
 また、オーストリアとの関係におきましては、毎年ウィーンから演奏家を招聘し、音楽セミナーや演奏会を開催いたしまして、中高生が直接指導を受けております。さらに、平成28年には小諸高校音楽科の生徒18名をウィーンに派遣をいたしまして、音楽の都ウィーンにおいて一流の指導者による指導を受けるとともに、現地の生徒との交流等を通じた異文化体験を行っているところでもございます。
 このような青少年交流は、異文化理解や国際感覚とコミュニケーション能力を持ったグローバル時代に求められる人材育成に成果を上げていると認識をしております。今後も、次世代を担う若者に対して、引き続き多様な交流の機会を提供してまいりたいというふうに考えているところでございます。
 以上でございます。
      

◆山岸喜昭

 

 続いて、信州ワインバレー構想についてお伺いします。
 先般、初来日したアメリカ、トランプ大統領をもてなす夕食会に、マンズワイン小諸ワイナリーで醸造した赤ワイン「ソラリス信州東山カベルネ・ソービニヨン2013」が提供されました。この日に提供された日本の赤ワインは同ワインだけであり、外交の表舞台で飲んでもらえたのが誇らしく、ナガノワインが注目されたことは大変うれしく感じております。
 県産ブドウを使ったナガノワインは、昨年の伊勢志摩サミットなどでも提供され、日本を代表するワインとして海外首脳にその味わいが発信されています。味が濃く、香りが高いが、フレッシュさも残るバランスのいいワインで、ナガノワインはブランドとして品質の高さを海外へ売り込んでいくための足がかりを得たものとして捉えています。
 ワイン用ブドウが実り、ワインができるようになるには、少なくとも5年が必要です。そのためには、準備も含め10年という長いスパンの計画になります。良質なワインを醸するためのブドウとなると生育条件が限られております。有名なワイン産地は、平均年間気温10から20度、日照時間が長い、降雨量が少ない、排水がよい、標高700から1,000メーターあたりの地域に集中しており、各地で最も適したブドウの品種や栽培法のもと、それぞれの個性あるワインが生み出されます。
 県がワイン振興を目指す信州ワインバレー構想を掲げて5年目、市町村や民間も信州ワインのブランド力向上や新規参入の支援に取り組み、ワイナリーやワイン生産者がふえている結果も出ております。特に、千曲川ワインバレーは、小規模ワイナリーが集積し、ブドウ生産者がたくさん集まることによって新しい産地の魅力を生み出そうとしています。
 ワインは農産物ですから、ブドウ畑の条件やつくる人の技術や個性によって1本1本が異なる特徴を持っています。ワインの品質は原料であるワインブドウのでき次第で9割が決まると言われています。これから、ワインブドウの栽培やワイナリー経営などに挑戦する「稼ぐ農業」を志す新規参入者がふえる中、意欲ある就農者の努力が報われるような施策が必要と思うが、いかがか。
 厳しい条件下において高品質のワイン用ブドウを安定的に生産するための栽培技術の向上と、内外の競争に打ち勝つため、さらなるナガノワインの品質向上が求められます。海外産地との交流や提携を積極的に推し進めるなど、世界最新の技術を収集、集積することによって、ナガノワインの原料となる県産ワイン用ブドウのさらなる生産拡大と品質向上を図るため、栽培技術指導者や県下の試験場による技術指導者の充実などが求められるが、県としてどのように生産振興対策を行っていくのか、農政部長にお聞きします。
 また、ワイン産業が地域にもたらす経済効果は、社会的影響などを研究し、地域への積極的な投資を誘致する活動や、地域住民によるワインへの理解と消費拡大が求められております。県産ブドウを原料としたワインが国際コンクールでも相次いで入賞するなど、ナガノワインの品質への評価が高まっている中、さらなる販売拡大や消費拡大が期待されるところであります。新しいプレミアムワインの原産地としてアイデンティティーを確立し、地域のブランドイメージとマーケティング戦略の展開が必要であります。
 また、観光旅行者にとって、食は旅行先を決めるための重要コンテンツであり、ナガノワインに注目が集まる中、2020年に開催される東京オリ・パラを見据え、首都圏への知名度向上がますます重要であり、特に銀座NAGANOが果たす役割は大きいものと考えております。
 そこで、銀座NAGANOを活用したナガノワインの消費拡大に向けてのプロモーション活動の現状と今後の展開について観光部長にお聞きします。
 今や日本のワイン業界をリードするナガノワインは、国内での評価は高まっているものの、国際的知名度、評価はまだまだこれからと思われ、本腰を入れて取り組む時期だと思います。ナガノワインの販路拡大は海外へのマーケティング戦略が求められます。厳しい海外戦略はどのような施策を考えているのか、産業労働部長にお聞きします。
      

◎農政部長(北原富裕)

 

 信州ワインバレー構想につきまして、農政部からは2点お答えをいたします。
 初めに、ワイン用ブドウ栽培やワイナリー経営の施策支援についてですが、ワイン用ブドウの栽培や醸造の取り組みを希望される方について、まずは基礎的な知識の習得が重要であることから、平成25年度からワイン生産アカデミーを開催し、新規参入希望者を支援しております。平成28年度までの4年間で156名が受講し、既に40名の方がワイン用ブドウ栽培を始めております。平成28年度からは、生育ステージごとの栽培管理技術を習得できる実技研修を開催するなど、新規栽培者の生産技術の向上にも取り組んでおります。
 また、ワイナリー設置を検討する方々に対しましては、ワイナリー経営者に里親になっていただき、醸造研修を行う制度を産業労働部において実施しているほか、去る11月21日には、酒税法等ワイナリー経営に関する勉強会と情報交換会を開催いたしました。また、ワイナリー設置に当たっては、6次産業化事業補助金、また制度融資等の活用について、地域振興局や普及センターにおいて相談に応じております。
 これらの取り組みによりまして、ワイン用ブドウ栽培やワイナリー経営に挑戦する意欲ある方々を引き続き支援してまいりたいと考えております。
 次に、ワイン用ブドウの生産振興策についてですが、県では、平成24年度から、農業改良普及センターの果樹担当者を対象にワイン用ブドウ栽培にかかわる専門研修を毎年実施し、普及指導員の指導力向上を図っております。また、本年度県内の生産者や研究者などが技術や課題を共有し議論できる場として、栽培情報プラットフォームを立ち上げるとともに、IoTを使って産地の気象、生育状況や病害虫などの情報を農業試験場に集積し、研究開発や技術指導に活用する体制を整備したところでございます。
 この取り組みの中で、8月には、世界の進んだ技術、知見を取り入れるため、イタリアトリノ大学の教授を招聘し、栽培技術向上カンファレンスを開催しております。また、東御市祢津御堂地区を初め、県下各地で取り組みが進められております遊休地等を活用したワイン用ブドウ団地の整備に対しましては、県営農業農村整備事業等により支援しておりますし、また、これらの取り組みで必要となる苗木の安定供給につきましても、本年度から健全な苗木の確保と増産体制の構築に着手しているところでございます。
 ワインの品質は、醸造技術に加え、原料ブドウの品質に大きく左右されることから、今後、これらの取り組みを一層強化し、ワイン用ブドウのさらなる高品質化と安定確保に向けた生産振興対策を進めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
      

◎観光部長(熊谷晃)

 

 銀座NAGANOにおけるナガノワインのプロモーション活動の現状と今後についてのお尋ねでございます。
 現在、銀座NAGANO1階のカウンターでは、各種ナガノワインが気軽にグラスで味わえることによりまして、お客様がお気に入りの1本に出会え、購入につなげることができるきっかけづくりを行っております。また、2階のイベントスペースでは、毎月県内各地のワイナリー経営者等をお迎えし、ナガノワインの魅力を伝えるセミナーを実施しておりまして、これをきっかけとして本県への現地体験ツアーも多数企画、開催させていただくことに至っております。
 なお、今月22日に実施いたしました在京大使館連携イベントでは、オーストリア大使を初め各国の大使館関係者にお集まりいただきまして、ナガノワインを御賞味いただくPRを行ったところでございます。
 議員御指摘のとおり、2020年の東京オリンピック・パラリンピックはナガノワインを国内外に向けてPRするまたとない機会でございます。今後は、トランプ米国大統領訪日の際の公式レセプションや昨年の伊勢志摩サミットで県産ワインが提供されたことなども積極的にPRしながら、信州マーケティング戦略担当参与を中心に、首都圏での外商活動も強化いたしまして、ナガノワインの消費拡大に努めてまいる所存でございます。
      

◎産業政策監兼産業労働部長(土屋智則)

 

 ナガノワインの海外戦略についてのお尋ねでございます。
 さまざまな機会を通じてナガノワインの国内での評価や人気が高まります一方で、議員御指摘のとおり、国際的な認知度はまだまだ低く、評価の基準となる国際ワインコンクールでの入賞や輸出の実績は一部のワイナリーにとどまっているのが現状でございます。
 そこで、国際的な認知度を高めるために、今年度新たに世界的に著名なワイン専門家2名を2月から3月にかけて県内に招聘することとしております。10社程度のワイナリーをめぐり、試飲と事業者との意見交換を行います中で、ナガノワインのこだわりのつくりと高い品質を紹介し、国際的ワイン専門誌等を通じて世界に発信をしていただきます。
 また、ヨーロッパやアジアで開催される国際ワインコンクールへの出品を促進するため、信州大学と協力して各コンクールの審査特性を分析いたしますとともに、県内ワイナリーに対して、その特性に応じたプレゼン資料の作成を支援してまいります。こうした取り組みでナガノワインの国際的な知名度を高め、まずはインバウンドによる需要の拡大を図りますとともに、将来的な輸出促進へとつなげるなど、ナガノワインの海外市場への展開を推進してまいります。
 以上でございます。
      

◆山岸喜昭

 

 それぞれ御答弁をいただきました。
 長野県の各地では、さまざまなワイナリーで、土地の特徴、個性を引き出した良質のワインがつくり出されております。ナガノワインが海外からも高く評価され、ワインとワイン関連の食や工芸が文化として根づく、そんなワイン文化に引かれて国内外から多くの人が集まる。ワインからも長野県の魅力を発信していきたいものであります。
 以上で質問を終わります。