平成28年9月定例県議会 発言内容(花岡賢一議員)


◆花岡賢一

   

 数多くの全国レベルのビッグイベントの開催が行われておりますことしの長野県の中で、先週末にG7長野県・軽井沢交通大臣会合が行われましたことは、皆様も御存じのとおりだと思います。2月定例会でも触れましたが、全国で開催されてきました各大臣級会合の中で、交通大臣の会合が開催される軽井沢町で1月に大型バス転落事故が発生してしまったことに対して、浅からぬ何かを感じるところでございます。

 私も、先週23日の夜には碓氷バイパスへ向い、交通安全を再度願ってまいりました。実際に群馬県からの走行で思ったことは、48カ所のカーブで残り数カ所のカーブまで来ておいて、なぜあの場所で事故が起こってしまったのか、その1点を考えさせられました。事故現場である群馬県側からの8%前後の勾配の下り坂は、今、登坂車線1レーンをガードで囲い、献花台が設けられている状態であります。

 この大惨事による若者たちの無念や、お亡くなりになった方々、御遺族の御心情、現代社会が招いた悲惨な実情と抱える課題を風化させないよう、歩道の整備も行われます。自動車の性能が向上することと道路の整備が進む中で、改めて安全の重要性を感じるのと、そのために行政はあるべきであると痛感していることを冒頭申し上げます。

 翌24日は、渋滞を考慮して鉄道を利用し、軽井沢へ向い、厳重な警備を目の当たりにしてまいりました。こちらも、同様に一般質問で、他県警察の応援を得ながら県警察の総力を挙げて取り組んでまいりますとの答弁をいただいておりますが、ほぼトラブルもなく大臣会合が成功の形で終えることができ、本年開催でありました伊勢志摩サミットに関連する国際会合を締めくくることができた対応に、長野県警察の警備のレベルの高さと、天候の悪い中警備に当たられました皆様に敬意と感謝を申し上げさせていただきます。

 一つの例として、地元住民の言葉で、恐らく、今、この日本で一番安全なのは軽井沢町であると言える。日本で1番ということは、恐らく世界で1番であることを証明しているように私は思っていますとのうれしい御意見を聞いてまいりましたので、そのことも御紹介させていただきます。

 そして、警備について、会場の駐車場においてひときわ目立つバルーン状の物体が浮遊していました。警備の観点上どのような役割を担っているかには触れませんが、見たことのないものに警戒をする人間の心理をよくついていたものでありました。しかも、そのバルーン状のものには、民間の警備会社の名前と長野県警察のダブルネームがはっきりとあらわされており、より厚くタッグを組んで警備を行っていることを会場に来た全ての人が感じたことであると思います。

 また、その民間の警備会社にあっては、2020年東京オリンピック・パラリンピックについても警備を行うコマーシャルを放映していることを考えると、今回の警備にあっても、2020年に向けた貴重なサンプルとなり得たことは間違いありません。

 また、このハイレベル国際会合を行うに当たり、地元の協力なくして成功はあり得なかった例の一つとして、軽井沢町消防団の方々が交代で詰め所を開き、警戒を行ってくださっていたことを、現役消防団員の一人として広く紹介させていただきます。

 さて、幾多の課題を乗り越え無事完遂することができた貴重な経験を、本県として今後生かしていかなくてはなりません。今定例会の提案説明において、阿部知事は触れられておりますが、県民の財産としてこの貴重な体験を積極的にアプローチを続けていかなくてはなりません。また、全県に波及させていくことも今後重要であることは言うまでもありません。

 そこで、今回のG7交通大臣会合において、今後のインバウンドの参考となった事例はあったのか、観光部長にお伺いいたします。

 また、インバウンドの振興策の一つとして、MICEがあります。ミーティング、インセンティブツアー、コンベンションもしくはカンファレンス、エキシビション、直訳で研修、招待旅行、国際会議、展示会の英字での頭文字M、I、C、EをとったMICEの特徴として、参加人数が多いことと、一般の観光者に比べて消費する額が大きいがゆえに、国や自治体が盛んに誘致を行っている現状があります。こちらも過去に答弁をいただいている経緯はありますが、今回の会合を終えて、県内でMICEを推進していく上で重要と感じたポイントが実例としてあったのか、あわせて観光部長にお伺いいたします。

 そして、2月定例会において、全庁一丸となって準備を進めるとの熱い思いで取り組まれたG7交通大臣会合にあって、会議全体の情報発信、そして機運の醸成に対して、数あるツールの中で有効と判断できた発信ツールはどのようなもので、それがどのような効果があったのか、産業労働部長にお伺いいたします。

 最後に、今回の会合では、信州の文化や食をアピールするとともに、長野県の魅力を伝えることが十分にできたことと思います。率直にこの会合の感想、そして今後のこの貴重な経験をどう長野県全体に波及させていくのか、その思いを阿部知事にお伺いいたします。

 また、今回の会議で、軽井沢は安全で国際的な対応ができる都市であると国や世界に印象づけることができたと思いますが、一過性のものとならぬように、全県において新たな国際会議の誘致などに積極的に取り組んでいくべきと考えますが、御所見をあわせてお伺いいたします。

      

◎観光部長(吉澤猛)

 

 G7交通大臣会合につきまして二つ御質問をいただいております。

 まず、インバウンドの参考となった事例についてでございます。

 今回のG7交通大臣会合では、軽井沢町の官民連携組織の町民会議が中心となり、外国人のおもてなしに関するシンポジウムの開催などにより、住民一人一人がおもてなしの主役という意識を持つことで、地域が一丸となっておもてなしの機運醸成が図られたものと承知しております。また、会議当日には通訳ボランティアの皆さん約30名が会場内で海外の方に対する案内や観光PRで活躍され、人材育成という点からもよい機会となったものと考えております。

 今回のおもてなしの向上に向けた官民一体となった取り組みや通訳ボランティアの養成等につきましては、インバウンドの受け入れという点で一つの模範となるものと考えられますので、市町村や観光事業者に対しまして情報共有を図っていくことで、外国人旅行者の受け入れ環境整備や観光地域づくりのための人材育成に生かしてまいりたいと考えております。

 次に、MICE推進のポイントについてでございます。

 MICEは、訪日外国人の増大、地域の国際化、国際的知名度の向上のほか、御指摘のように地域への経済効果を生み出すことが期待されております。今回のG7会合を通じて得られたポイントとしては、先ほどインバウンドに関してお答えした受け入れ態勢の充実に加え、長野県の強みであるすぐれた自然環境、食の魅力、歴史文化等の観光資源を打ち出したアピール、おもてなしをしっかり行うことや、ターゲットを絞った誘致活動の重要性を認識したところでございます。

 今回の会合を通じて培われましたノウハウや官民一体の取り組み体制の成功例は、軽井沢町のみならず、本県全体にとっても大きな財産であると考えておりますので、今後、国際会議等の誘致に関心がある市町村や観光関係者の皆様を対象としたセミナーを開催するなど、MICEの誘致拡大に生かしてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

      

◎産業政策監兼産業労働部長(石原秀樹)

 

 発信ツールについての御質問でございます。

 昨年7月の交通大臣会合開催決定以降、まずは速報性と情報の拡散にたけたフェイスブック、日本語、英語のホームページをいち早く開設し、国内外に向けて長野県の情報を発信いたしました。また、全県的な機運醸成を図るため、県内各地でカウントダウンイベントを5回開催し、約7,000人の方々に御来場いただき、交通大臣会合をPRしたところです。

 しかし、こうした取り組みは、確かに国内向けには大きな効果があるものの、今回のような重要な国際会議では、参加各国の関係者に事前に現地に足をお運びいただき、開催地長野県の魅力をじかに感じていただくことが肝要と考えました。そこで、海外メディアを招聘しての県内取材を2回、国土交通省や外務省と連携した在京大使館の現地視察を4回実施し、軽井沢はもとより長野県各地の魅力を実際に見ていただいたところでございます。この現地視察が非常に好評であったことから、在京の大使館から本国政府に強い働きかけが行われ、交通大臣会合本番ではイタリアとドイツの大臣が直接参加するエクスカーションに結びつくなど、大きな成果があったものと考えております。

 今後、この貴重な経験やつくり上げましたネットワークを国際協力や国際連携のさまざまな場面で活用してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

     

◎知事(阿部守一)

 

 G7の交通大臣会合について、まず感想という御質問でございます。

 花岡議員からもるる御紹介いただきましたように、今回のG7交通大臣会合、地元の皆様方と、あるいは関係の皆様方と一緒になって誘致活動を行ってきたわけでありますけれども、その結果、大変いい形で会合を開くことができたんじゃないかというふうに思っておりますし、また、私ども長野県のさまざまな優位性ということも発信をする機会になったんじゃないかというふうに思っております。向山県議会議長を初め、県議会議員の皆様方にも多くの御支援をいただきましたこと、この場をおかりして心から感謝申し上げます。

 また、特に県警の警備も大変だったと思いますし、また、石原部長を初めとする産業労働部関係部局の職員一丸となって取り組んだわけであります。なかなか目に見えない財産でありますけれども、こうした大きな国際会議を受け入れる態勢をとれて、これが成功裏に開催できたということは、私ども県という組織にとっても一つの大きな無形の財産になり得るものというふうに思っております。

 また、本番の会議の部分は国土交通省の皆様方が主体的に対応されていたわけでありますけれども、私ども地域が担う部分として、大きな行事は歓迎夕食会の部分を初めとするおもてなしの部分だったと思います。こうした部分も、お酒や食事を大変気に入っていただけたというふうに思っております。私も、同席していた皆様方から、口々に長野県のワインや日本酒はすばらしいというお話をいただきました。

 また、御柱の木遣り、あるいは真田陣太鼓といったイベントも催させていただきましたけれども、各大臣にも舞台に上がっていただいて一緒に太鼓をたたいていただいたり、踊りを踊っていただいたりということで、大変盛り上がる会になりました。短い時間ではありましたけれども、各国の皆様方に私ども長野県としての思いを十分お伝えすることができ、御満足いただけたのではないかというふうに思っております。

 今後、こうした経験をしっかりと生かして、軽井沢のみならず県全体に波及させていくということが重要だと思っております。一つは、この会合を契機に、G7の各国大使館、政府との関係、ネットワークも構築されてまいりました。こうしたものを生かして、国際交流であったり、あるいは直近の大きな日本全体のイベントとして東京オリンピック・パラリンピックもあります。こうした事前合宿等にもつなげていきたいというふうに思いますし、また、花岡議員の御質問の中にもありましたけれども、こうした大きな国際会議を開催できましたので、MICEについてはこれまで以上に積極的に対応して、多くの皆様方を世界中からお招きすることができるように取り組んでいきたいというふうに考えております。

 以上です。

      

◆花岡賢一

 

 御答弁いただきました。

 会場となりました軽井沢プリンスホテルでは、先ほど知事の答弁の中にもありましたけれども、好評をいただいたという今回の歓迎夕食会のメニューをアレンジして提供する内容をマーケティング戦略の課題に上げて議論を進めているということを聞いております。長野県もおくれをとらぬよう推進していっていただくことを添えまして、質問を移ります。

 ドライブレコーダーと監視カメラについて御質問を申し上げます。

 先ほどより申し上げてまいりました大臣会合において議論されたテーマの一つに、自動運転がありました。もはや人がハンドルを持たずとも走行が可能となる時代が来るのであるならば、当然その走行記録を録画しておかなくてはならない時代の到来がそう遠くないことを伝えていました。

 現在、ドライブレコーダーは、価格が5,000円を切るものも登場するなど、その需要と普及傾向は日々高まってきております。また、性能の向上にあわせ、停車中にあっても録画を続けることが可能になってきております。そして、その記憶媒体のメインがSDカードであるわけですが、そのSDカードも今や容量が1テラのものまで発表される時代となっております。これは、搭載するカメラの画素数にもよりますが、今までとは比べものにならないほどの録画時間を可能としていることをあらわしています。

 交通事故発生時、当事者は興奮状態であることにより、後々の現場などでの証言において一致しないケースもあります。その際、最終的な証拠となり得たケースは実際に存在しているわけです。現在のドライブレコーダーは安全運転の確保に資する機器としての枠を超え、安全管理の面からも普及が進み、活用が検討されている中、今年度より長野県として定めた第10次長野県交通安全計画において、どのような位置づけとなっているのか、県民文化部長にお伺いいたします。

 また、他県にあっても、公用車へのドライブレコーダーの設置について検討されたケースもありますが、長野県警察として警察車両にはどの程度の搭載がされているのか。また、搭載されているとしたならば、実際に映像として使い役に立ったケースは存在しているのか。さらに、自治体の努力として警察車両への搭載は急務と考えておりますが、そのお考えを警察本部長にお伺いいたします。

 そして、警察車両以外の県公用車にはどの程度の搭載が行われているのか。同様に、実際に映像を使い役に立ったケースは存在しているのか。公用車への搭載についてのお考えを知事にお伺いいたします。

      

◎県民文化部長(青木弘)

 

 交通安全計画におけるドライブレコーダーの位置づけについてでございます。

 本年5月に策定いたしました第10次長野県交通安全計画では、軽井沢におけるスキーバス事故の発生を受け、事業用自動車等による重大事故防止の促進の項目を設け、ドライブレコーダーの普及促進についても位置づけをしたところでございます。

 ドライブレコーダーは、事故等の客観的な記録化、搭載することによる運転者の安全意識の向上、記録映像データに基づく安全運転指導への活用、事故の再発防止策の検討や立案等の効率的、効果的な実施など、安全運転の確保に資する機器としての効果が認められており、国の交通安全基本計画にも位置づけられているところでございます。こうしたことから、県計画におきましても、ドライブレコーダーの画像等を活用した交通安全教育や安全運転管理の手法等の普及に向け、運送事業者等への働きかけに努めることとしております。

 今後とも、この計画に基づきまして、関係機関、団体と緊密な連携を保ち、効果的な交通安全施策の推進を図ってまいりたいと考えております。

 以上でございます。

      

◎警察本部長(尾﨑徹)

 

 警察車両へのドライブレコーダー整備についてお答えいたします。

 議員御指摘のとおり、ドライブレコーダーは交通事故原因の解明に役立つほか、悪質交通違反者の確実な検挙、得られた映像の各種交通安全教育への活用など、警察活動に有用であると認められますことから、県警察では本年度から警察車両へのドライブレコーダーの整備を進めることとしており、本年度はパトカーを中心として40台の警察車両にドライブレコーダーを整備いたしました。

 導入後間がないため、まだ効果的な活用事例は確認されておりませんが、今後、知事部局にも相談しつつ、警察車両へのドライブレコーダー整備の拡充を図ってまいりたいと考えております。

      

◎知事(阿部守一)

 

 ドライブレコーダーの公用車への搭載についての御質問でございます。

 現在、知事部局の公用車では、平成27年度から3台ドライブレコーダー搭載をしています。今のところ、事故に遭遇した例がなく、その映像を使った搭載の効果に該当するケースはありません。ドライブレコーダーは、職員の安全運転意識の向上、あるいは事故が起きた場合の円滑な処理にも効果が期待できるというふうに考えられますので、その機能、あるいは搭載すべき車両、費用対効果、他県の導入状況、こうしたことを踏まえて幅広い観点から研究してまいります。

 以上です。

      

◆花岡賢一

 

 御答弁いただきましたけれども、自動運転の時代の到来は、遠隔地における監視体制の強化についても問われていると私は考えています。ドライブレコーダーの普及と同時に、公的な努力として、せめて重要交差点や交通事故多発箇所、三桁国道を初め重要幹線道路への監視カメラの設置の必要性を強く要望するとともに、さらなる交通安全の推進を願い、質問を移ります。

 ニホンジカの対策についてお伺いいたします。

 野生獣肉の移動解体車が全国初として長野県で導入されました。そして、7月25日にお披露目といった形で日の目を見ることとなったことに、喜びと今後の長野県のジビエ振興への期待がとまりません。最初はただの提案でしかなかったものが、スピード感を持って導入に至ったことは、長野県としてのジビエに対する理解の深さと情熱のたまものと考えております。

 きのうも、今井愛郎議員と寺沢功希議員とともに夕食に鹿をいただいてまいりましたが、やはりうまいの一言でした。今後、長野県のおもてなしの一つとして成長していくことを期待を込めまして質問を申し上げます。

 まず、移動解体車の導入から2カ月がたちましたが、現状と課題について。

 そして、全国初と言われていますけれども、県内の反響はどのようであるか。また、全国をPRして回ると聞いておりますが、反応はどのようであるのか。

 また、年間4万頭の捕獲目標の中、移動解体車の導入によってどの程度が加工され、枝肉として活用ができるようになるのか。その可能性について。

 平成27年度の調査により、ニホンジカの生息数を10万頭から30万頭と推測したとのことですが、その振り幅20万頭というのは余りに大きくて曖昧なのではないのでしょうか。その調査結果からどのようにして4万頭の捕獲目標を算出したのか。今後、毎年4万頭ずつ、5年間で20万頭を捕獲する計画とのことですが、ニホンジカの管理計画の最終目標はどこを見据えているのか。

 以上5点について林務部長にお伺いいたします。

 最後に、移動解体車を導入し、信州認証ジビエを抱える長野県として、他県に劣らない鹿へのアプローチと意気込みを阿部知事にお伺いいたします。

      

◎林務部長(池田秀幸)

 

 ニホンジカ対策につきまして順次お答え申し上げます。

 移動式解体処理車の現状と課題についてでございますが、移動式解体処理車は、現地において捕獲後、直ちに内臓摘出から流通までの工程を行うことで、これまで遠隔地で捕獲され、食肉加工施設までの運搬に時間がかかることから利用できなかった野生獣肉の活用を促進する上で有効なものと考えております。

 全国に先駆けてNPO法人日本ジビエ振興協議会が開発した移動式解体処理車は、議員御指摘のとおり、7月25日に長野県庁においてお披露目会を開催いたしました。その後、8月の下旬から9月の下旬にかけて富士見町において現地実証が行われ、使用した方からは、捕獲者からのスムーズな連絡体制の整備でありますとか、作業効率の面で若干の課題があるというふうにお聞きをしております。

 移動式解体処理車の県内外での反響についてでございますが、7月25日に県庁におきまして開催いたしましたお披露目会では、獣肉処理業者や狩猟者など約100人の参加があり、その後も県内の市町村等から個別に問い合わせをいただくなど、相当の関心の高さを感じているところでございます。また、全国に先駆けて営業許可した長野県には、21府県を初め県外から多くの問い合わせが寄せられております。

 なお、今後、移動式解体処理車は、宮崎県、鳥取県など全国を回りまして、PRのための展示や実証が行われる予定というふうに聞いております。

 移動式解体処理車の導入によりますさらなる鹿捕獲個体の利用についてでございますが、移動式解体処理車の導入によりまして、これまで利用できなかった遠隔地で捕獲された個体も食肉として利用可能となり、加工される頭数がふえるといった効果が期待をされております。さらに、迅速な処理によりまして、衛生面や肉質面での改善も図られるものというふうに考えております。ただし、現地での実証は始まったばかりでございまして、具体的な効果について検証するのはもう少し時間が必要と思われます。

 今後、実証が進む中で、開発した日本ジビエ振興協議会とも連携しながら、効果的な活用方法を検討していきたいと考えております。

 次に、ニホンジカの生息数と捕獲目標についてでございます。

 県では、5年ごとに、県内各地におきまして、ニホンジカのふんでありますとか痕跡などの現地調査を行いまして、環境審議会など専門家による検証もいただいた上で生息数を推定しているところでございます。ニホンジカの生息数につきましては、現時点での科学的知見でありますとか、現実的な現地調査地点数の中で、最大限精度の向上に努めておりますけれども、現状としてある程度幅を持たせて推定することが適切ではないかというふうに考えております。

 捕獲頭数につきましては、ふえ過ぎたニホンジカの頭数を適正な密度に減少させることと、過剰な捕獲によりまして絶滅する事態を回避することのバランスがとれるよう、推定した生息数をもとに、妊娠率でありますとか、死亡率等の科学的知見を踏まえて算出をさせていただいているところでございます。

 ニホンジカの管理計画の最終目標でございますが、ニホンジカの管理計画においては、その目的を、自然環境への影響と農林業被害の軽減を図りつつ、ふえ過ぎたニホンジカを適正な密度に維持することというふうにされております。具体的には、環境省のガイドラインにおきまして、農林業被害を最小限に抑えられる密度としている平方キロメートル当たり1から2頭の水準までニホンジカの生息密度を抑えることを最終的な目標として、5年ごとの捕獲頭数を定めております。

 今後とも、定期的な調査の実施と捕獲状況等を勘案しながら、最終的な目標達成に向けまして、必要に応じて捕獲目標を見直しながらニホンジカの管理を進めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

     

◎知事(阿部守一)

 

 鹿活用のアプローチと意気込みという御質問でございます。

 ジビエ振興、命を大切にしていくと、地域資源として有効に活用していくということのみならず、伝統的な食文化を見直し、また森林の保護育成、あるいは観光振興、さまざまなメリットがある取り組みだというふうに考えています。

 そういう中で、全国に先駆けて移動式解体処理車の営業許可を行わせていただいたわけでありますけれども、それで安心しているとどんどんほかの県に抜かされてしまうおそれがあるわけであります。今、JR東日本などとも連携した取り組みを進めてきておりますけれども、やはり実際に需要される方のお話を伺うと、品質の向上、それから安定的な供給ということが重要だというふうに伺っております。そういう意味で、今後、品質の向上を図るとともに、量的な確保ができる供給体制の整備を行うことにより、ジビエといえば信州という形で信州ジビエのブランドが確立できるように引き続き取り組んでいきたいというふうに考えております。

 以上です。

      

◆花岡賢一

 

 お答えいただきましたけれども、今定例会からですかね、阿部知事のネームホルダーが鹿の革の入れ物に変わっています。そういった形でも、やはり鹿の可能性についていろいろ議論されていく中で、よりよく活用されていくことを願っています。

 全くの余談ではございますけれども、今回導入された、先ほど来よりあるこの移動解体車でございますけれども、そちらにもドライブレコーダーはついております。この移動解体車は、導入が目的ではなくて、その導入によって始まるジビエの振興と、新たな食のイノベーションの創生に供されるものであると私は願っています。今後の展開を期待いたしますとともに、導入の早さがあだとなり、過去の長野県で導入されたおはなしパケット号のようにならないことを祈りまして、質問を終わります。