平成28年6月定例県議会 発言内容(小林東一郎議員)
◆小林東一郎
おはようございます。順次質問してまいります。
我が国の自然環境の特徴を多様性と見るとき、それと表裏のものとして自然災害が生じていることを忘れてはならない。多様性は自然の恩恵であり、災害は脅威。自然の恩恵と脅威は表裏の関係にある。このことを各地の自然の姿や伝承、歴史を通じて学んでいくことが災害と向き合う私たちの自然観の形成にとって大切だと日本自然保護協会理事長の亀山章氏は提唱されています。
前世紀の前半までは、重厚長大な技術で自然に打ち勝とうとしてきた時代でしたが、前世紀後半から現代は、それに伴って生じた環境破壊への反省から、自然の力をより的確に捉えて自然に従おうとする時代であり、重厚長大な技術に頼ろうとする思考の限界に目覚めることが求められています。
我が国では、ナショナル・レジリエンスを国土強靱化と訳してきました。ほとんどの人が、国土強靱化と聞いたとき、各地に防災施設が設置され土地そのものを強くするイメージを持つように、いまだ過去の価値観に縛られ、ナショナル・レジリエンス本来の意味が適切に反映されているとは思えません。ナショナルは、国土ではなく、国を構成する政府、自治体、企業、学校、地域、個人を単位とする人々の大小の共同体、コミュニティーのことですから、ナショナル・レジリエンスとは、みんなの協力により、人々がつくるコミュニティーを、災害に強く、しなやかに、かつ復旧を早くすることを意味すると思うのです。このことを、阪神・淡路大震災記念人と防災未来センター所長の河田惠昭氏は、縮災と表現されています。この縮災の観点から、以下、お聞きしてまいります。
本震の発生から2カ月以上が経過した今も余震がやまぬ熊本地震の被災地では、福祉避難所での混乱、宅地判定の機能不全、進まぬ罹災証明の発行など自治体の疲弊が際立っています。自治体職員は、みずからも被災者でありながら住民支援に当たらねばならず、苦しい対応を迫られる。優先順位をつけ、素早い行動を求められるなど、身も心も休まらぬ日々が続きます。
大規模災害時に自治体が優先する業務を整理した業務継続計画BCPの策定を、国は全ての自治体で早期に求めており、防災基本計画にも位置づけがされています。しかし、昨年12月の段階でBCPを策定している市町村は、県内ではわずかに七つ。これまで、市町村の計画策定に向け、県はどのような支援を行ってきたのでしょうか。小さな町村では、ノウハウや人員の不足などの理由から策定に踏み切れずにいる実態があります。さらには、自然災害から学びながら、不断の改善も必要とされています。
今後、地方事務所単位で研修会を開催し、市町村の連絡員となっている地方事務所職員も計画づくりに参画することで、市町村ごとに想定が異なる災害特性にも応じた策定支援が必要と考えますが、いかに支援を充実させていくおつもりですか。
また、災害時の業務継続を図る上で、行政事務に長じた退職公務員の活用が考えられますが、地域に居住する元県職員を災害時に臨時職員として市町村が採用し、活動してもらうための登録制度をつくってはどうでしょうか。
以上、危機管理部長に伺います。
◎危機管理監兼危機管理部長(野池明登)
危機管理対応につきまして、3点、順次お答え申し上げます。
まず、市町村の業務継続計画、いわゆるBCPの策定に対する支援のこれまでの経過でございます。
市町村は、災害時にあっても優先的に実施すべき業務を的確に行えるよう業務継続計画を策定し、常に見直し、改善を行うことが極めて重要でございます。
お話にもございました消防庁調査によりますと、昨年12月1日現在、県内市町村の策定済みは7市町村ということでございますが、34市町村が平成28年度までに策定見込みと回答しているところでもございます。
県では、昨年度、市町村のための業務継続計画作成ガイドを市町村にお送りをいたしまして、本年2月及び3月には、消防庁の協力をいただき、市町村BCP策定研修会を開催し、これには47市町村が参加をするなど、計画策定のための支援を行ってきたところでございます。
次に、策定及び改善に対する今後の支援についてでございます。
県内市町村が策定に時間を要している理由としては、必要な人員がいない、重要性に対する認識が高まっていない、十分な知見がないことを主な理由として挙げているところでございます。これらの理由に対応した対策といたしまして、昨年度開催した市町村BCP策定研修会でございますが、より参加しやすいように開催地をふやす方法を検討したいと思いますし、県において、小規模町村においても計画の策定が進むよう、個別の相談に応じていきたいというふうに考えております。また、その重要性に対する市町村長の皆さんの認識を高めてもらうことが極めて重要ということで、来月22日に開催をいたします「減災トップフォーラムin長野」の場におきまして、その重要性を伝えてまいりたいと考えております。
3点目の災害時における元県職員の活用のための登録制度の御提案でございます。
災害時における業務継続について、元県職員の登録制度という御提案でございますけれども、有事の際の人員確保の方法を平時から検討していくことは重要という認識は持っております。現在、災害時に被災市町村から県職員の応援派遣要請があれば、要請内容に応じた職員を派遣をしていきますし、また、県内市町村間においても、長野県市町村災害時相互応援協定書が締結をされておりまして、必要な人員派遣の仕組みが整っているところでございます。まずはこうした既存の制度の活用を図ってまいりたいと考えているところでございます。
以上でございます。
◆小林東一郎
本県を訪れる観光客に安心、安全な移動、滞在、体験などを提供していくことは、観光振興のための大前提であり、観光地としてのブランド力、競争力を高め、観光大県づくりを進めるに当たって極めて大切になります。災害予防や初期対応では、観光客と住民を切り離して扱うことの難しさがあることは理解できるものの、熊本地震の発生を踏まえ、地域防災計画を今後見直す中で、観光客の安全確保などの観光危機管理についてどのような視点で対策を進めていかれますか。観光部長に伺います。
また、信州・長野県観光協会は、名称を長野県観光機構に改め、県DMOに移行していくとされていますが、危機管理、防災対策には官民の連携が不可欠です。民を代表する県DMOの役割をどのようにお考えですか。これも観光部長に伺います。
去る5月30日、千曲川河川事務所は、想定最大規模降雨による千曲川・犀川浸水想定区域図を公表しました。水防法に基づき、これと同じ想定で、県管理区間の34水位周知河川の浸水想定図を県が順次策定することになりますが、どのようなスピード感で取り組まれますか。建設部長に伺います。
また、関係市町村は、洪水ハザードマップなどを作成し、避難場所などの情報を住民に知らせることになります。これにあわせ、逃げるための体制づくりが不可欠と考えますが、いかに市町村と連携し対策を進めていかれますか。これは危機管理部長に伺います。
◎観光部長(吉澤猛)
二つ御質問いただいております。
まず、観光客の安全確保など観光危機管理についてでございます。
観光客の安心、安全の確保は、議員から御指摘がございましたように、観光大県づくりの大前提であり、県の地域防災計画においても観光地の災害応急対策を定めているところでございます。
大地震等の発生時において、一般的に観光客が置かれてしまう状況としましては、一つ目として、地理的に不案内であり避難方法がわからない。二つ目に、住居等の本拠地がなく衣類などの備えがない。三つ目に、外国人旅行者はコミュニケーションがとりにくい。四つ目として、できるだけ早く家族等に連絡した上で帰宅したいなどが当てはまり、これらの視点からの地域防災計画の見直しが必要と考えております。
熊本地震に関しては、現在、危機管理部において、長野県地震防災体制庁内検証会議を設置し、課題の洗い出しを行っているところであり、観光客は災害弱者であるという認識の上に立って、全庁的な体制で必要な対応を検討してまいります。また、発災直後からの正確な情報提供や復旧段階での積極的なプロモーション活動などにより風評被害の防止を図るとともに、金融支援や被災市町村の支援等による観光産業の早期復興など、関係機関と連携して観光危機管理対策にも努めてまいります。
次に、危機管理対応における県DMOの役割についてでございます。
現在の信州・長野県観光協会は、7月1日から名称を長野県観光機構と改めて、本格的なDMO化に向け新たなスタートを切ることになっております。今後、県観光機構は、組織機能の充実強化を図りながら、長野県観光の中核となる民間組織として、地域DMOとの連携や多様な関係者の巻き込みを強化しながら、観光地域経営を担うかじ取り役としての県DMOへと役割を転換してまいります。
具体的には、県DMOは、県内の観光情報を観光客の皆様に提供していくことが重要な機能の一つとなるものであり、例えば、平常時における県内各地域の宿泊、交通、飲食に関する情報、また、滞在プログラムや県内周遊ルートに関する情報などに加えて、災害発生に伴う交通や立入規制等の危機管理情報も含めて一元的に発信していけるよう関係機関と連携しながら体制を構築してまいります。
また、県DMOは、地域DMOや多様な事業者で構成する民間組織ですので、風評被害の防止や早期の観光復興といった観光危機管理の観点からも、観光客や事業者の声を集約し、それを私ども観光部に対して具体的な解決策として提案していただくことで、官民一体となって必要な施策の実現を図ってまいります。
以上でございます。
◎建設部長(奥村康博)
浸水想定区域図に関するお尋ねでございます。
1,000年に1回程度発生するとされる想定最大規模降雨での浸水想定区域図につきましては、近年、想定を超える浸水被害が多発していることから、想定最大規模の洪水に対する避難体制等の充実強化を図るために、平成27年7月の水防法改正により規定されたものでございます。
この水防法改正により、議員御指摘のとおり、出水時に水位の状況を住民に周知することとされているいわゆる水位周知河川等34河川において浸水想定区域図を作成する必要がございます。このため、県といたしましても、昨年度から、千曲川の県管理区間において作成作業を開始したところでございます。
作成に当たりましては、洪水氾濫シミュレーションを行い、氾濫区域、氾濫の深さ、浸水時間や家屋倒壊ゾーンなどを設定する必要があり、多くの費用や時間が必要になるという課題が生じているところでございます。県といたしましては、できる限り早期に浸水想定区域図の作成が進むよう取り組んでまいります。
以上でございます。
◎危機管理監兼危機管理部長(野池明登)
想定最大規模降雨での浸水想定区域図の作成に関連しまして、浸水想定区域の指定拡大に伴う避難体制の確保についてでございます。
水防法第15条に基づき市町村が地域防災計画に定める避難施設その他の避難場所及び避難路等は、大幅に修正をする必要が出てまいります。県としましては、地方事務所や建設事務所とともに、市町村防災会議を初めとするさまざまな機会を活用して、公表された浸水想定区域の周知を行うとともに、市町村が行う洪水を想定した各種防災訓練の実施に当たりまして、訓練方法の支援などを行ってまいりたいと考えております。
また、市町村地域防災計画に洪水ハザードマップを踏まえた避難場所、避難路、浸水想定区域内に立地する要配慮者利用施設の記載を促進いたしまして、円滑、迅速な避難の確保ができるよう関係機関と連携を図ってまいりたいと考えているところでございます。
◆小林東一郎
千曲川流域での2日間の総雨量396ミリの降雨が、建設中の浅川ダムを含む治水用ダムで超過洪水となる想定です。そのときには、ダムは全くの無力、ダムで守られているとの流域住民の安心感にも警告を発する必要があるはずです。いかに取り組まれるか。建設部長に伺います。
公表された浸水想定区域図からは、中野市を千曲川の洪水による孤立から防ぐ手段として、当初の計画から大幅に事業進捗がおくれている壁田・笠倉橋(仮称)の重要性が読み取れます。今後の事業加速についての認識を、これも建設部長に伺います。
次に、県組織のコンプライアンス確立について伺ってまいります。
2月定例会でこの問題について質問した以降も、またぞろ県民利益の喪失、法令を逸脱した事務処理、あるいは公務員としての倫理感覚の欠如といった問題が噴出し続けています。とどまるところを知らずとも言える事態です。
まず、河川占用料の徴収漏れと地籍調査事業における佐久穂町の補助金不適正処理について、その原因と再発防止策を建設部長と農政部長に伺います。
教員の不祥事も後を絶ちません。女子高生のスカートの中を盗撮した教員は、犯行前の4月にも飲酒運転、セクハラ、体罰などの研修を受けていましたが、研修中目立った様子は見られなかったとのこと。これだけ研修を繰り返してもまだ足りない。非違行為は割に合わないことが伝わらないということなら、科学的な分析も必要なのでは。いかなる再発防止策を図っていかれるのか。教育長に伺います。
さらには、上田警察署の交通課員が警察官の道路交通法違反、速度超過をもみ消していた問題で、取り締まりに関与していた交通課員は十数名とも報じられています。この問題にどのように対処していかれるのか。県警本部長に伺います。
◎建設部長(奥村康博)
いただきました御質問3問に順次お答え申し上げます。
まず、ダムにおける超過洪水時の対応についてのお尋ねでございます。
今回の想定における1,000年に1回程度発生するとされる洪水時のダム運用におきましても、貯水池の洪水調節容量内に流水を貯留し洪水の調節を行うことから、下流部への洪水の到達をおくらせる効果がございます。したがいまして、ダムに貯留している間は時間的な余裕が生まれ、ダム流域住民の避難時間の確保に資することができます。その後、ダムの貯留量を超える洪水が流入した場合には、ダムに流入する流水がそのまま下流部に流れることになります。このため、県では、ダムに関係する市町村における確実な避難体制の判断に資するために、ダム貯水量やダムで把握する雨量や河川流量、洪水予測などの情報を、関係する市町村のみならず、流域住民の皆様に適時適切に発信してまいります。
次に、一般県道豊田中野線、中野市笠倉―壁田の整備についてのお尋ねでございます。
当路線は、幅員狭小で土砂災害等による通行どめが多い国道117号の災害時の代替道路として、また、中野市では唯一、千曲川の想定最大規模降雨においても浸水せず、千曲川を渡河できる災害に強い道路として重要な機能を担うと認識しております。このため、県では、平成19年度から道路改築事業に着手しているところでございますが、千曲川右岸の壁田城跡やねごや遺跡、千曲川左岸の琵琶島遺跡において、6年にわたる大規模な発掘調査を行うこととなり、工事着手がおくれたものの、本年度には調査が全て完了する予定でございます。
工事は、全体計画延長1,810メートルのうち、昨年度までに千曲川右岸の壁田地区の現道拡幅部370メートルと千曲川左岸の笠倉地区の420メートルについて、合計で790メートルを部分供用しております。さらに、本年度は千曲川右岸の壁田地区の道路築造工に着手し、引き続き早期完成に向けて整備を進めてまいります。
次に、河川占用料の徴収漏れの原因と再発防止策に関するお尋ねでございます。
河川占用料は、事業者等が国や県の許可を受けて河川空間にケーブルや管路等を設置する場合に、河川法の規定に基づきまして、国が許可したものも含め、県が設置者から徴収しているものでございます。
本年4月、河川占用料の今年度請求に向けた事務作業の中で、昭和58年から平成27年の間の計12件、1,027万1,015円の未徴収事案が判明いたしました。このうち、5年の時効が成立している692万9,822円を除いた徴収可能額334万1,193円について、5月末までに徴収を完了しております。長期にわたる不適切な事務処理により、700万円近い金額の河川占用料が徴収できなくなったことにつきまして、県民の皆様に深くおわび申し上げます。
徴収漏れの原因でございますが、河川の占用許可に関する国から県への通知内容について、県の台帳への入力が漏れていたものが大半となっておりまして、台帳の登録内容について十分な確認を行わなかったことが未徴収が長期化した原因と考えております。
県では、未徴収事案の発生を受けまして、国から全ての許可データの提供を受け、他に同様の事案がないか、現在、一斉点検を行っているところでございまして、9月末を目途に作業を終え、時効成立分の額を含めた最終結果につきましては、年内を目途に公表予定でございます。
県といたしましては、再発防止に向けて、今後とも、建設部が独自に実施する現地機関事務事業執行状況調査の中で占用料を重点的に調査するとともに、河川課が実施します河川占用許可事務に係る事務調査において、継続的にチェックを行ってまいります。また、簡明なマニュアルを策定いたしまして、適切な事務処理についてより一層周知徹底を図ってまいります。
以上でございます。
◎農政部長(北原富裕)
地籍調査事業における佐久穂町の補助金不適正処理についてですが、平成27年度事業において、年度末に事業が完了していない事態が判明したため、事業を廃止し、あわせて過去5年間の状況を調査したところ、平成26年度において未完了事業に102万円の補助金を交付していた事案が判明したものでございます。
現在、町との間で補助金の返還手続を進めているところでございます。原因につきましては、町において、担当者1人任せであったことや、事業が未完了なまま上司に報告や相談がなされていなかったことなど、事業管理が適切に行われていなかったためと把握しております。また、県においても、町の完了検査をもって実績確認としていたものでございます。
再発防止策につきましては、県として、進捗状況の定期的な確認により年度内執行への適切な助言を行うとともに、実績確認においては、測量の成果物などにより事業が確実に執行されていることを確認するよう改善することとし、市町村及び県担当者への説明会などにより周知徹底を図っているところでございます。
以上でございます。
◎教育長(原山隆一)
再発防止対策についてのお尋ねでございます。
信州教育の信頼回復に向けた行動計画に基づきまして、研修のための手引きや不祥事の事例に基づいた資料等を作成し、各学校において研修を継続し、一定の成果はあったと考えておりますけれども、今回不祥事を起こした教員の心には届いていなかったということであります。なぜそうだったのか、そのことをしっかり検証し、真因を突きとめた上で対策を講ずることが重要だと思っております。その際には、専門家の知見も当然必要になってくるというふうに考えております。現在、検察による調査が続けられており、本人から聞き取る状況にはございませんが、状況が整い次第、即刻取りかかってまいりたいというふうに考えております。
◎警察本部長(尾﨑徹)
議員御指摘の事案は、上田警察署において、交通警察官が交通取り締まりの際に警察官の交通違反を適正に処理していなかった疑いのある事案でございまして、法を守り厳正に職務執行すべき警察官に対してこのような疑いがかかっていることについて、大変重く受けとめております。
この事案に対しどのような姿勢で対処するのかについてでございますが、現在、事実関係を慎重に確認しておりますことから、具体的なお答えは差し控えさせていただきますが、刑事事件として取り上げるべき事実が確認された場合には、法と証拠に基づき厳正に対処してまいります。また、規律違反につきましても、事実確認の結果を踏まえ、調査を尽くし、厳正な措置を行ってまいりたいと考えております。
◆小林東一郎
教育長は、今、教員の心に届かなかったということをおっしゃいました。今後どのような対策が考えられるのか、より突っ込んだ対策をとっていきたいという答弁をいただいたところでありますけれども、知事部局では、このような破廉恥な行為というのは、私は議員になってからいまだ聞いたことがありません。知事部局で長くお勤めになってこられた教育長、その辺の違いをぜひ明らかにしていっていただきたい。知事部局ではなぜこういう事案が起きないのか、その辺をどのように分析されているのか。お答えをいただきたいと思います。
次に、大北森林組合問題について伺います。
昨年12月に県が行った職員に対する懲戒処分により、林務部本庁職員2名が処分を受けています。会計検査対応で未完了箇所の完成を優先する誤った指示を行ったことが処分の理由とされていますが、この指示等のどこに誤りがあったのか、検証委員会の報告書にも言及がされておらず、処分の公表時にも明確な説明があったとは思えません。この2名の職員は何を誤ったことで処分を受けたのでしょうか。総務部長、明確にお答えをいただきたいと思います。
一昨年4月の段階で、北安曇地方事務所林務課内では、組合の不正行為についての意識が共有され、林務部本庁に報告がされていたにもかかわらず、林務部本庁でも地方事務所全体としても受けとめがなされていなかったと聞いています。そのことは、行政・財政改革方針に行政経営システム改革として組織風土の変革がうたわれていることとまさに真逆の行動と言わざるを得ません。これをいかに総括をされるのか。知事にお聞きいたします。
◎教育長(原山隆一)
知事部局との違いについてどう考えるかというお尋ねでございますが、そういう観点で今回の不祥事を捉えたことがございません。そういう意味では、議員御指摘の点、知事部局の職員の勤務環境、そして教職員の勤務環境の中にどういう違いがあり、それがこういう問題にどういう影響を与えるかということに関しても、専門家の知見も交えながら検討してまいりたいと思っております。
◎総務部長(小林透)
懲戒処分の対応につきましての御質問にお答えをいたします。
御質問の職員に対しましては、平成27年12月25日に厳正な処分を行い、同日、処分理由を説明の上、公表したところでございますが、処分の理由といたしましては、大北森林組合が実施した平成25年度補助事業実施箇所の中に未完了箇所が存在するという内容の報告を平成26年度に受けながら、上司に報告せず、未完了箇所の完成を優先するよう北安曇地方事務所を指導するなど、誤った判断により対応した点でございます。
また、平成27年7月の大北森林組合補助金不正受給等検証委員会の報告書では、本庁林務部の関与に関する評価の項目において、予算が現地でどのように執行されていたのかなど、実情の把握を怠っていたという点が指摘されているところがこれに該当するものと考えております。
以上でございます。
◎知事(阿部守一)
コンプライアンスに関連しまして、平成26年4月の段階での林務部の対応についての総括という御質問でございます。
大北森林組合の補助金の不適正受給に関しまして、平成26年4月の段階で北安曇地方事務所林務課から間伐事業の未完了箇所が存在しているということが報告されたにもかかわらず、林務部内で組織的にこうした状況が共有されなかったと。また、本庁担当課においては、早期完了という誤った指示を行っていたという、この対応自体、極めて遺憾なものというふうに思っております。
議員御指摘のとおり、行政経営理念であったり、あるいは行政・財政改革方針に掲げた組織風土の改革とは、私も対極なものというふうに考えておりますし、そうした旨、部局長会議でも私から発言し、各部局長にそれぞれの組織での対応のあり方についての徹底を要請したところでございます。
この後、12月の段階で、大北森林組合がさらに働きかけを行ってきたということを契機に、私どもとしては合同調査班を設置をして全容解明に向けた調査を開始したわけであります。総務部、林務部、あるいは会計局、全庁協力しながらこの事案の解明に努めてきたところであります。
こうした問題、私は、何というか、最初の対応が非常に重要だというふうに思っております。何か問題が起きたときに隠そうというような意識を職員が持つことなく、組織的にしっかり対応していこうと。この辺やっぱりチームとして協力し合いますということを行政経営理念に掲げているわけでありますので、ぜひそうしたことを組織の中でこれからもしっかり徹底をしていきたいというふうに思っております。
私も、林務部の職員とも対応させていただいておりますし、移動知事室等でも比較的若い職員に対応はさせていただいておりますけれども、これは、私の経験から申し上げれば、担当者にとっては極めて大きな問題でも、組織全体で考えれば、それは過去に経験があったり、あるいはいろんな知恵を集めればそれは十分対応可能と。1人で抱え込んだり、あるいは隠してしまうということが最も問題を大きくしてしまう要因だというふうに私は思っておりますので、コンプライアンスの推進の中で、意識改革、組織風土改革、しごと改革、こうした3本柱で取り組んでまいりますけれども、こうした点も含めて、県組織全体がこうした課題に対して正面から向き合っていくような姿勢を持つことができるように取り組んでいきたいというふうに思っております。
以上です。
◆小林東一郎
建設部長に再度お聞きをいたしますが、時効となった1,000万円余でありますけれども、これは、その関係の会社とどのような交渉をされて、それでその1,000万円余を時効であるから放棄したという結論に至ったのか。御説明をいただきたいと思います。
それから、教育長にも再度伺いますが、地区採択の調査員、決定権がないということで、教科書会社は利害関係者ではないという御説明が今ありましたけれども、調査員の方というのは、では教科書がどのようなものであるかという調査だけをされて、教科書採択についての、この教科書がいいですよというような意見は申し上げられない立場なのか。その辺を再度お願いいたします。
◎建設部長(奥村康博)
時効となりました1,000万円の徴収ができなくなった理由等についてのお尋ねでございます。
この事案、把握後でございますが、徴収漏れが始まりました10年前までさかのぼりまして、占用実績や占用料の徴収状況を確認して未徴収額を確定いたしました。その上で、法令等に照らし、法律の専門家にも相談した結果、最大限徴収可能な金額を徴収しております。道路占用料の徴収権は、道路法の規定によりまして5年の時効で消滅するため、占用料としては請求も徴収もできないことになっているという状況でございます。
以上でございます。
◎教育委員会教育長(伊藤学司)
調査員と教科書採択に関する点についての再度のお尋ねでございますが、調査員というのは、それぞれの地区において採択地区協議会からの委嘱を受けて、検定教科書の内容を比較検討して、それぞれの教科書がどういう特徴があるのかと、こういうような特徴点をまとめる基礎資料をつくると、これが調査員に課された役割でございます。
この調査員の資料の中では、どれをとるべきだとか、優劣を明確につけて出すのではなくて、あくまでその資料をもとにそれぞれの採択地区協議会、これは、地区ごとにそれぞれの市町村の教育委員長や教育長で構成をしてございますが、この採択地区協議会でそれらの資料をもとにしながら議論をして決定をしていく、そして、最終的にはそれぞれの市町村教育委員会の中で決めていくというような役割でございますので、そうした観点から見ると、先ほど申しましたように国家公務員倫理規定等に定める利害関係者ということには該当しないのではないかというふうに私は考えております。
◆小林東一郎
総務部長に再度お尋ねをいたします。
会計検査前に未完了箇所があれば、完成を急がせるのはある意味で当然のように思えます。なぜそれが誤りなんですか。私は、会計検査後も放置をした、そこに最大の誤りがあるというふうに思うのですが、もう一度お答えをいただきたいと思います。
今回の補正予算に計上された国庫補助金の返還11億5,000万円余のうち、不要萌芽除去と指導監督費4,500万円については、不正指導の原因者がその全ての責任を負うべきではありませんか。そうでなければ、県民は納得しないでしょう。知事にお聞きします。
加算金3億5,400万円については、しごと改革の断行で加算金相当額以上の人件費を2018年度までに削減するとされていますが、行政・財政改革方針に掲げる人件費の縮減にさらに上乗せをするという考え方なのですか。
さらには、来年度及び再来年度の職員採用を抑制することも、費用捻出のための人件費削減のための具体策として挙げられていますが、そんなことをすれば組合問題とは何のかかわりもない世代にツケ回しをすることになります。まさかそのようなことを実行されることはないと信じたいのですが、知事のお考えをお聞きします。
◎総務部長(小林透)
懲戒処分の理由についての再度の御質問にお答えをいたします。
先ほど申し上げました処分の理由のうち、この件が、平成25年度補助事業であったにもかかわらず、平成26年度においてまだ未完了であったというところが一つのポイントでございまして、これは本来25年度事業でございますから、何らかの手続を経ない限り、25年度中に完了してあるべきものでございます。その後に会計検査が来るということでございますので、この26年度の時点でそこが判明した段階で、何らかの対応をすべきだったというふうに考えております。
以上でございます。
◎知事(阿部守一)
不要萌芽除去と指導監督費の不正指導については、原因者に、原因者というのは職員、個人という御質問だと思いますけれども、原因者の責任に帰されるべきではないかという御質問でございます。
組織が対応するべきか、個人が対応するべきか、非常に難しい問題であろうかというふうに思います。今回、大北森林組合等の補助金不適正受給事案におきます不要萌芽除去につきましては、補助金交付要綱の解釈を確認しないまま、意図的ではないにせよ、結果的に基準より緩い独自ルールを適用した非違行為であるというふうに考えております。そうしたことから、その責任を明確にするという観点で、昨年12月に関係職員に対しては停職、減給等懲戒処分等を行ったところでございます。
御質問は、責任というのは損害賠償請求せよという御趣旨なのかと思いますが、損害賠償請求につきましては、不要萌芽除去は野生鳥獣被害対策を目的とした指導でございます。また、関与した職員に故意または重大な過失はなく、私的な利益を得たという事実もありません。また、指導監督費につきましては、これは県が行う指導についての人件費、事務費に対する補助でございます。こうしたことから、弁護士等とも十分御相談をさせていただいた結果、損害賠償請求は行うことができないものというふうに考えております。
しかしながら、今回の事案におきまして、県職員による誤った指導等があったということを重く受けとめ、相当額については懲戒処分による給与減額等に加えまして、旅費その他事務的経費の削減により、来年度までの2カ年で財源確保に取り組んでいきたいと。そのことにより、県民の皆様方の御理解を得るようにしていきたいというふうに思っております。
それから、もう1点、加算金への対応についてでございます。
今回、指導監督の不備により県に課された加算金につきましては、これは人件費削減で対応するという方針でございます。超過勤務手当の削減と、それから新規採用職員の抑制ということで対応したいと考えております。
現行の行政・財政改革方針、これは平成28年度までの方針になっておりますが、それとの関係で申し上げれば、上乗せあるいは別枠という形で取り組む形になります。超過勤務手当につきましては、方針におきましては、28年度の目標を平成22年度比5%以上の削減ということにしておりますが、これにさらに上乗せを図っていきたいと思っております。また、採用の抑制につきましては、これは28年度までの方針でありますが、29年度、それから30年度、この2年間で抑制するということで対応していきたいというふうに考えております。
これまでも、行政・財政改革方針に沿いまして、厳しい行財政改革を推進してきておりますけれども、今回の事態を重く受けとめて対応していきたいと考えております。そのことにより、県民の御理解を得ていきたいと思っておりますし、他方で、全庁を挙げたしごと改革、これは仕事の効率化、やり方を見直すということで、効率的、効果的な働き方を促進することによりまして職員に過重な負担を強いるものとならないように配慮しながら進めていきたいと考えております。
以上です。
◆小林東一郎
知事にもう一度お聞きします。
関係のない世代へのツケ回しの件です。職員の採用を抑制するということは、6月補正に計上されている信州に人材を引きつけ県内外の若者の県内就職を促進する事業との整合性をどのように考えておられるのか伺いまして、私の質問といたします。
◎知事(阿部守一)
お答えします。
全く関係のない世代へのツケ回しというところでございますが、私は必ずしもそうした考え方には立ちません。これは、県の組織として起こしてしまった問題でありますから、県の組織全体としてやはり問題意識を共有して対応していくということが極めて重要だというふうに思っておりますし、県職員全体でこの問題をみずからのこととして対応していくということが私の方針であります。
そういう意味で、こうしたことを徹底して、要するに職員採用の削減で人件費の捻出、削減を図っておりますけれども、そうした行動を県全体で取り組むことによって、やはり今回のことをみずからのこととして重く受けとめていくということが大変重要だというふうに思っております。郷学郷就県づくりを初めとする、信州で働こう、信州で学ぼう、そうした県全体の大きな方向性と、今回の大北森林組合の問題に起因する一連の私どものとるべき対応というのは、これは決して同列で比べられるものではないというふうに私は思っております。こうした対応を真摯にとっていくことこそが県政に対する県民の理解と信頼を得ていく道だというふうに私は考えております。
以上でございます。