平成28年2月定例県議会 発言内容(荒井武志議員)
◆荒井武志
初めに、手話言語条例の制定についてであります。
御案内のとおり、今定例会には、聾唖の皆様並びに手話の普及に携わってこられました皆様方の熱い思いを御理解、お酌み取りいただき、長野県手話言語条例案が上程されましたことに対し、まずは感謝を申し上げます。
冒頭、手話言語条例の条例化に向けた経緯を若干振り返ってみたいと思います。
私は、今から2年余り前の平成25年11月定例会において、全国の聾唖団体の皆さん方の強い要請に基づき、平成23年7月に障害者基本法が改正され、言語に手話を含むことが明記されたこと、加えて、衆議院、参議院は、その附帯決議で、国と地方公共団体は意思疎通が困難な聴覚、視覚などの障害者が手話を含む適切な言語の習得を図るために必要な施策を講じるように求めていることを申し上げ、長野県手話言語条例の制定の必要性をただしたところ、知事は、その必要性については、聴覚障害者の方々、当事者の皆様方のお考え、思いというものをお伺いする中で判断をしてまいりたいと答弁され、そのときがまさに条例化へのスタートラインであったと思っております。
その後、知事は平成26年6月に長野市で開催された全国ろうあ者大会に出席されたことを受け、9月定例会において、全国の聴覚障害の方々の手話の普及あるいは理解促進に対する願いというものを強く感じた。現在、関係部局の職員でワーキンググループをつくって検討に着手した。手話言語条例は、関係の皆様方の御意見、要望も伺いながら、県の施策の方向性を定めて、早期に制定を目指して精力的に取り組んでいきたいと答弁されました。
昨年2月には、県議会2月定例会の知事議案説明で、手話の普及に向けた手話言語条例(仮称)の検討を進めると積極的な姿勢を表明されました。昨年5月以降、健康福祉部職員、そして聴覚障害をお持ちの皆様を初め、多くの県民参加のもと、長野県手話言語条例(仮称)制定に向けての講演会や意見交換会が開催されたほか、条例制定を求めている社会福祉法人長野県聴覚障害者協会との懇談会が持たれるなど、手話に直接関係される皆様からの意見聴取も行ってこられました。
これらを踏まえ、私は、昨年の9月定例会で、条例化に向けてどのような手順、スタンスで取り組んでいくのかお尋ねしたところ、知事は、今後、条例の骨子案を早急に県民に示し、パブリックコメントを実施した上で、早期に条例案として取りまとめていくと答弁され、それらの取り組みを経て、このたびの条例案の提出に至ったものと承知しております。
そこでお伺いいたします。
一つに、条例案の制定に向け、骨子案を取りまとめ、パブリックコメントを行ってこられましたが、意見、提案等の件数や特徴的な意見、またそれらを踏まえ、手直しした項目や内容にはどのようなものがあるのでしょうか。
二つに、県の責務として、社会的障壁の除去について、必要かつ合理的な配慮を行うとしていますが、具体的にはどのようなことを想定しているのでしょうか。
三つに、市町村との連携協力は極めて重要だと思います。連携や協力の具体策をお示しください。
四つに、施策の策定及び推進に当たり、手話の普及等に関する必要な施策を長野県障害者計画に定めるとしていますが、いつどのように定めていく予定でしょうか。
以上、4点について、健康福祉部長に伺います。
また、別途提案された手話言語条例関連事業予算案では、教育委員会を含め新規事業4件を盛り込み、27年度対比1,096万8,000円の増額になっていますが、これで十分であるとお考えですか。啓発用のDVD作成やテレビCMの展開、ICT活用による遠隔手話通訳サービス、聾学校におけるテレビ会議システムの設置、そして何よりも知事の定例記者会見での手話通訳の配置も重要であると考えます。これらも念頭に、今後3年はこんなふうにやっていくんだというような推進施策について年次計画を示すことも必要ではないでしょうか。これまでの経過を踏まえた所感及び今後の方向性について、知事にお伺いいたします。
◎健康福祉部長(小林透)
手話言語条例の制定についての御質問に順次お答えをいたします。
まず、パブリックコメントについてですが、御質問の条例骨子案によるパブリックコメントでは100名の方から287件の御意見をいただきましたが、その中では、条例制定に賛同する意見や条例制定後の社会の変化に期待する声を多くいただいたところでございます。また、特徴的な意見といたしましては、身近に手話を学べる機会をつくってほしい、あるいは災害時等に必要な情報が障害者に届くようにしてほしいなど、条例施行後の取り組みについての多くの意見が寄せられました。
さらに、条文にかかわりいただいた意見と手直しした項目や内容についてでございますが、まず、手話が言語であることを明確にしてほしいという御意見に対しましては、手話が言語であるということを条例の前文及び第1条において明文化しました。また、努めるという表現を、「行う」など積極的な表現にしてほしいという御意見に対しましては、県が行う施策について、努めるという表現3カ所について「行う」等の表現に改めました。また、前文で手話の歴史的背景に触れてほしいという御意見に対しまして、条例制定に至った手話の歴史的背景について前文に盛り込んだところでございます。
次に、県の責務としての必要かつ合理的な配慮についてでございますが、具体的には、県として一定規模以上の県主催行事のほか、聾者から依頼がある場合は、手話通訳者や要約筆記者を配置することや、聾者は、会議において手話通訳と会議資料を同時に見ることができないため、事前に会議資料を送付すること、案内窓口や受付手続の際は、聾者に対して手話通訳や筆談等で意思疎通できるように配慮することなどを想定してございます。
次に、市町村との連携協力についてですが、県としては、御指摘のとおり、手話に対する理解促進や手話の普及を図るための取り組みなどにおきまして、県と市町村との連携が重要であると考え、具体的には、手話通訳者の養成確保などにつきまして、県と市町村が連携して取り組むですとか、手話通訳の派遣を行う市町村に対して県が通訳者の確保に協力することや、県と市町村がともに手話による情報発信に取り組むことに加えまして、手話の学習会や手話を通じた交流会などの開催に連携して取り組むこと、あるいは、手話による窓口対応ができるよう、県や市町村の職員を対象とした手話の研修を共同で実施することなどとともに、聾者への支援のため、災害発生時に被災地以外の市町村と連携して手話通訳者の派遣などを行うことなどを考えております。
次に、手話の普及などに関する必要な施策の策定についてですが、県の障害者施策の方向性を審議する長野県障がい者施策推進協議会に、新たに手話の普及等に関して必要な施策を専門に検討する部会を設け、この部会を当事者の意見を聞くことのできる場としたいと考えております。また、この部会において審議いただいた施策について、長野県障害者計画に反映することといたします。
条例の御議決をいただければ、部会を設置するとともに、その審議を平成28年度より開始し、平成29年度までの計画期間とする現計画との整合も含めまして議論をしていただきたいと考えているところでございます。
以上であります。
◎知事(阿部守一)
手話言語条例案について、これまでの経過を踏まえた所感、そして今後の方向性という御質問でございます。
手話言語条例案につきましては、障害者団体、あるいは県民の皆様方から幅広く御意見を伺いながら丁寧に検討を進めてまいりました。この中で、聾者の皆様からは、手話を言語として認めてほしい、手話で自由に意思疎通できる社会を実現してほしいなどの御意見をいただいたところでございます。こうした皆様の切実な思いを実現するために、早期の条例制定に向けた取り組みを進め、今回、成立すれば都道府県で4番目となります条例案を提出をさせていただいたところでございます。
この条例案にあわせまして、平成28年度予算案におきましては、手話の理解促進あるいは手話の普及に向けて重点的に取り組みを進めてまいります。具体的には、信州山の日などで手話を使って県民が登山しながら交流する事業の実施でありますとか、県民が手話を学べる入門講座の県内各地での開催、聾学校教職員の手話力向上のための研修や学校教員向け講習会の開催、簡単な日常会話や県内の地名等を学ぶ手話ガイドブックを新しく作成をいたしまして、交通事業者等へも配布してまいります。こうした事業を広範に進めてまいります。
平成29年度以降も、これらの事業に加えまして、ICTを活用した遠隔手話通訳サービスや動画によります情報発信、県独自の信州手話ミニ検定の実施など、手話に関する施策を計画的に進めてまいります。こうしたことによりまして、県民誰もが手話に親しみ、手話に対する理解を深め、こんにちは、ありがとうなど、こうした手話が広く日常生活で利用される長野県を目指してまいりたいと考えております。
以上です。
◆荒井武志
知事には私よりも先に手話を使っていただきまして、恥ずかしい限りでございます。私も今後一生懸命勉強させていただきたいと思います。
今いろいろお話しいただきました。前文に手話を明確に、あるいは歴史的なことも入れていただくということで、大変うれしく思います。そしてまた、努めるというような言葉ではなくて、行うというようなこともしっかりやっていきたいと、こういうことで、ぜひそんな点を大事にしていただきながら、これから手話が長野県の中で飛び交うような、そんな県になればいいなというふうに思うところでございます。
次に、水道事業の推進についてであります。
人間が生きていく上で欠くことのできない安全、安心な飲料水の供給は、大変重要な行政分野であり、一義的には、市町村がかかわるそれぞれの水道事業者が取り組むべきものと理解をしているところであります。しかしながら、県内には小規模水道事業者が数多く存在しており、将来の人口減少社会の到来を見据えるとき、その維持、存続が危惧される状況にあると思います。
私は、3年前の平成24年2月定例会で、昭和75年度目標の、これは平成で言いますと12年度に当たるわけですが、長野県水道整備基本構想の見直しを指摘いたしました。その後、同年6月定例会、平成26年11月定例会で、県水道ビジョンの策定要請を行いました。その際、知事からは、水道事業者相互の連携や共同化のあり方、人材を確保しその技術力を向上させる方策、災害時における対応策について、県水道ビジョンとして示していくことが必要だ、検討委員会を設け、平成29年3月を目途に策定していく旨の答弁がありました。
また、本定例会の環境部長の議案説明では、人口減少下においても安心、安全な水道を将来にわたって維持していくため、今年度、水道ビジョンの策定に着手し、有識者、水道事業者及び消費者代表からなる検討委員会を設置し、安心、安全な水道水の供給、災害に強い強靱な水道の構築、持続可能な水道事業経営を基本方針とした骨子案を策定し、現在、市町村等の御意見を伺っている。新年度は、そうした意見を踏まえ、さらに検討して水道ビジョンを策定していくと取り組み方向が示されました。新たな県水道ビジョンの推進を願っておりました私といたしましては、大変うれしく思っているところでございます。
そこで、環境部長にお伺いいたします。
一つに、検討委員会ではどのような課題が上がっているのでしょうか。
二つに、県水道ビジョンの策定に当たり、検討委員会が設置され、水道事業者も委員になっていると承知していますが、すぐれた技術力や信用力を活用し先進的な取り組みをしておられる企業局は、どのような立場で参画されているのでしょうか。また、企業局をどのように位置づけ生かしていこうとしておられますか。
三つに、策定目途の平成29年3月に向けた今後の取り組み予定はどうでしょうか。
次に、県営水道の末端給水事業についてであります。
先日の議案説明で、「地域への貢献、地域との共存・共栄につきましては、関係市町とともに、地域におけるよりよい水道の実現に向け、将来の広域化を見据え、共同、連携を進めるとの共通認識が初めて得られましたことから、水質検査の共同化など、事務の共同化に向けた具体的な検討を進めるとともに、災害時における役割分担の明確化や、合同の防災訓練の実施などを通して」とする説明をいただきました。
そこで、公営企業管理者にお伺いいたします。
長野市、上田市、千曲市、坂城町をエリアとする末端給水事業は、過去数年来、市や町への移管に向け検討がされ、地下水源調査などを行ってきたと承知しておりますけれども、それらにかかわるてんまつと今後の方向性についてどのようにお考えでしょうか。
◎環境部長(青柳郁生)
水道事業の推進について、順次お答え申し上げます。
初めに、県水道ビジョン検討委員会において上がっている課題についてでございますが、検討委員会におきましては、まず老朽化した施設、管路の大規模な更新が必要とする中で、人口減少社会を迎え、給水人口、料金収入が減少することによる経営悪化への懸念、そして職員数の減少によるサービスレベルへの影響や技術継承への懸念、また、大規模災害等に対する危機管理、そして、山間地が多く小規模な水道が多いという本県の事情から、事業の統合等が困難であるなどの課題、そしてその対応策について議論をしていただいているところでございますが、特に小規模な事業者をどのように支援していくのか、これが大きな課題となっているところでございます。
続きまして、県水道ビジョンにおける企業局の位置づけでございますが、まず、企業局はこの検討委員会にオブザーバーとして参画しております。企業局の長野県公営企業経営戦略におきます過疎自治体に対する地域貢献策につきましては、検討委員会の委員からは、小規模事業者に対する支援策として有効な手法であるとの御意見もいただいております。環境部といたしましても、企業局の取り組みを、県水道ビジョンにおいて新たな取り組みとして位置づけてまいりたいと考えております。
次に、ビジョン策定に向けた今後の取り組みについてでございますが、この2月2日から18日にかけて、地方事務所単位に市町村等の水道事業者に参集していただき、県水道ビジョンの骨子案について説明をし、現在、意見を集約しているところでございます。今後、その意見も踏まえ、県水道ビジョンの素案を作成し、来年度は検討委員会を3回程度開催しながら議論していただく予定としてございます。この間、さらに市町村等の意見をお聞きするとともに、パブリックコメントも実施した上で、平成29年3月を目途に作成をしてまいりたいと考えております。
以上でございます。
◎公営企業管理者(小林利弘)
お答え申し上げます。
末端給水事業の移管のてんまつと今後の方向性についてのお尋ねでございますが、平成21年度以降、市町への分割移管を前提に、県営水道事業移管検討会において検討を進めてまいりました。その過程において、最も大きな課題であった、一つとして、水源のない市町での代替水源の確保策の有無、二つ目に、施設整備等を踏まえた給水単価の試算という2点について調査検討を行った結果、独自の水源の確保が困難であることに加え、給水単価が約60%も高額となり、非現実的であるとの結論に至ったところでございます。
加えて、私は、これまで企業局が行ってきた末端給水事業の歴史や実情を十分に考慮することなく、いわば一方的に進めてきたとの思いから、検討を休止し、市長、町長とも直接意見交換を行った上で、新たに平成26年8月に市、町とともに水道事業運営研究会を設置し、地域におけるよりよい水道事業の実現に向け、将来の広域化を見据え、まず共同連携を進めるための検討を行っていくことといたしました。
その後、各市町の水道の現状等について勉強会を行い、共通の理解を得た上で、昨年、共同化等に向けたテーマについて各市町にアンケートを実施したところ、一つとして水質検査体制の連携、2点目に料金徴収の連携、3点目に施設統廃合、給水エリアの見直しという具体的な提案をいただきましたことから、それぞれ分科会を設置することとし、まずは水質検査業務の共同化の可能性から検討に着手することといたしました。
今後、残りの二つのテーマの進め方も協議をいたしますが、将来の広域化を視野に入れつつも、決して焦ることなく、それぞれのテーマごとに一つ一つステップを踏んで関係者の合意を得ながら前へ進んでまいりたいと考えております。
また、今後の必要な施設整備につきましては、老朽化対策の計画的な実施はもとより、基幹施設、基幹管路の耐震化や企業局が独自に位置づけた病院や避難所となる学校などの重要給水施設に至る管路の耐震化、さらに安心の蛇口の整備など、地域の皆様の暮らしを引き続き支えていくため、市、町と連携を図りながら、経営戦略に定めたとおり、企業局が責任を持って計画的に進めてまいります。
以上でございます。
◆荒井武志
水道のビジョンにつきましては、今お話しいただきましたように、しっかり小さい事業者の声も聞いていただく中でお進めいただきたいと、こういうふうに思います。
さて、私は過日、県議会皆様の御賛同をいただき、宮本議員とともに東南アジア地域における県内企業の海外市場開拓やインバウンド、農産物の輸出拡大に資するため、シンガポール、マレーシアへ実情調査に行ってまいりました。シンガポールでは、人件費の高騰や地価上昇も続いており、今後はロボット関係や医療機器、高付加価値を目指す分野などが考えられること、期待できる国としては、マレーシアはもとより、ベトナムやフィリピン、ミャンマーなどが挙げられました。
企業の海外展開に当たりましては、情報収集や調査検討を徹底して行う必要性、民族性や風習、宗教などもしっかり踏まえた取り組みが重要であること、単なる企業進出にこだわり過ぎず、現地企業とのジョイント、連携も選択肢の一つではないかとの示唆もいただいたところです。
訪日外国人の受け入れ、いわゆるインバウンドにつきましては、日本の雪や温泉は見逃せないツールであること、日本政府観光局JNTOとの情報共有や現地旅行会社との連携の重要性、個人旅行がおよそ8割に上っていること、リピーターが多いことから、丁寧なおもてなしが求められること、滞在中は日本食に人気があること、そばは冷たいので敬遠されがちですけれども、まずは食べてもらうことが必要ではないかなど、率直な御意見を伺うことができました。
農産物の輸出関連では、中華系の皆さんは赤色が好みで、リンゴは丸かじりする習慣があること、宗教や民族性にもしっかり留意すべきこと、現地での長野フェアは極めて好評であること、日本酒や伝統菓子類も期待できるのではないか、さらに、輸出をふやすには付加価値をいかに高めることが重要であるかなどを学ばせていただきました。
これらを踏まえ、以下大きく4項目にわたりお尋ねいたします。
まず、企業の海外展開でございます。
一つに、新たに取り組もうとしている海外連携促進事業で国際交流員を設置していくとしていますが、有望市場と考えられるアジア地域への展開を進めることの意義づけはいかがでしょうか。また、これらにかかわる企業支援への具体策はどのようなものをお考えでしょうか。
二つに、北米地域との経済交流を推進するとしていますが、何を目的にどのような支援を想定しているのでしょうか。
以上、産業労働部長にお伺いいたします。
次に、外国人観光客の誘致についてです。
一つに、外国人旅行者延べ宿泊者数の目標と実績について、世界全体、東南アジアではどうなんでしょうか。
二つに、訪日外国人が大幅に伸びた要因をどのように分析しておられますか。
三つに、戦略的な外国人旅行者の誘致推進事業などで訪日外国人を増加させようとしていますが、とりわけ重視して取り組む誘致策は何でしょうか。また、東南アジアに対する重点実施事業には食が挙げられていません。外国人旅行者の誘客には食の魅力が大きな要素になると考えますが、どのような取り組みを行っていかれるのか。お尋ねいたします。
以上、観光部長にお伺いいたします。
もう一つは、農産物等の輸出促進であります。
一つに、農産物等の輸出は、輸出先国の制度や商慣習が異なるなど難しい面がある中で、長野の食や信州産花卉の輸出拡大への取り組みについて評価をするものです。海外へ売り込んでいく品目とその生産振興に対する御所見はいかがでしょうか。また、国によって制度や消費者の求める味や色、大きさなど需要動向が日本と違う部分があると思いますが、対応策をどうお考えでしょうか。
二つに、百貨店やスーパーでのフェアの開催も重要ですけれども、年間を通じた県産農産物や加工食品の販売対策及び消費量が期待できるレストランなどへの納入が重要であると考えますが、御所見を伺います。
三つに、長野県農産物等輸出事業者協議会の現状と将来展望はいかがでしょうか。
以上、農政部長に伺います。
農産物等の輸出促進への意気込みや期待について、知事に御所見をお伺いいたします。
次に、英語教育の充実についてであります。
今回の海外調査では、日本の英語教育の一層の充実が必要だとの示唆をいただく場面がありました。また、私も道中の実体験を通じまして、英語の重要性を強く感じたところであります。今、各般にわたり、国際化、グローバル化が一層進む中にあって、諸外国との連携や観光を含めた人的交流の拡大が求められており、英語の必要性、重要性が高まっていると思います。
教育委員会では、グローバル人材育成事業を通じ、英語教育を重視され取り組んでおられますが、改めて英語教育の必要性と取り組みについて、また、小学校低学年から英語に親しむことが必要ではないかと思いますが、小学校での取り組みの現状と今後の展望について、以上、2点について教育長にお伺いいたします。
知事には、英語教育のあり方について、現在、設立に向け鋭意取り組んでおられます県立大学における英語教育の位置づけを含め、御所見をお伺いいたします。
◎産業政策監兼産業労働部長(石原秀樹)
2点お答えいたします。
まず、海外連携促進事業についての御質問でございます。
アジア地域は、中国経済の減速が懸念されておりますけれども、全体として高い成長率が見込まれ、将来の有望な市場と考えております。また、TPP協定に複数のアジアの国々が参加もしくは新たに参加の意向を表明していることから、日本にとってこの地域のポテンシャルはさらに高まるものと考えております。そのため、来年度、アジア地域からの国際交流員を招聘し、交流員の母国を中心としたアジア地域に対する具体的な取り組みを展開し、交流員ならではの新しい視点で海外販路の拡大や企業の国際連携に挑戦したいと考えております。
国際交流員による具体的な取り組みといたしましては、現地の生の情報や文化、商習慣などにつきまして、県内企業へ情報提供をするとともに、母国における商談会等に企画段階から参画してもらい、現地企業との具体的な成果につなげたいと考えております。また、帰国後も、本県の現地のアドバイザーとして、引き続き情報提供や企業支援の面で協力いただくことも期待しているところでございます。
次に、北米地域との経済交流についての御質問です。
県の国際戦略では、今後も県内企業が世界で勝てる技術や製品をつくり続けるためには、ヨーロッパや北米の先端産業集積地との国際的な産学官連携を推進することとしております。中でも、米国は最近経済が回復局面にあり、新しい産業への大型投資が注目されております。また、県が進めている成長期待産業である健康、医療、航空宇宙などの先進地でもあり、有名大学と連携した取り組みが進められております。さらに、TPPの大筋合意もあり、今から米国との経済的なつながりを強めることが本県産業にとりましても追い風になるものと考えております。現在、幾つかの候補地を選定し、県内企業との具体的な技術提携や経済連携の可能性について調査を行っております。今後、専門家の意見を伺いながら具体化してまいる予定でございます。
以上でございます。
◎観光部長(吉沢猛)
外国人観光客の誘致につきまして三つ御質問いただいております。
1問目が、外国人延べ宿泊者数の目標と実績についてでございます。
観光庁の統計によりますと、本県の外国人延べ宿泊者の実績は、平成26年が66万480人、平成27年は11月までに87万2,060人で、前年同期に比べて44.9%増という状況で推移しており、このペースでいけば平成27年通年では96万人前後になるものと見込んでおります。
目標につきましては、長野県人口定着・確かな暮らし実現総合戦略において、平成31年の目標を平成26年の2倍の132万人と設定しております。平成27年の実績見込みの96万人は、この1年間で目標達成に必要な66万人分のうちの30万人、率にして45%を達成しているという状況でございます。
次に、本県の外国人延べ宿泊者の国・地域別割合を見ますと、台湾が全体の33%を占めており、次いで中国が17%、オーストラリアと香港が9%、アメリカを含めた欧米が9%となっております。東南アジアは全体の11%を占めており、その中でも、県としては、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシアの4カ国を重点地域として誘客に取り組んでおります。その結果、昨年1月から11月までの実績が前年同期比で53.7%の伸びとなっており、これは、全国を31.6ポイント上回っているという状況でございます。
2問目が、訪日外国人が大幅に増加した要因についてでございます。
外国人旅行者の増加要因としては、まず、近年の円安傾向に伴う訪日旅行の総体的な割安感の定着が挙げられますが、東南アジアに代表される新興国の所得水準の向上、さらに、中国などからの訪日に伴うビザ要件の緩和が主なものとして挙げられます。
ただいま申し上げた全国共通的な要因に加えまして、特に中国と東南アジアにつきましては、本県分が昨年それぞれ全国平均を上回る伸びを見せていることから、私どもが県内の観光事業者の皆様と継続的に展開している海外プロモーション活動によりましても一定の効果が出ているものと考えております。
3問目が、重視して取り組む誘致策と食による誘客の取り組みについてでございます。
海外からの個人旅行者やリピーター、長期滞在者を獲得していくためには、行ってみたいと思っていただけるスキー、スノーモンキー、松本城など主要なコンテンツのプロモーションだけではなく、長野県そのものが旅の目的地として選ばれ続けることが必要になります。そのため、今後は、本県の強みである山、アウトドア、健康長寿の浸透と、これらに関する旅行商品の提案を強力に推し進めたいと考えております。具体的には、これら長野の強みをテーマにした滞在型ツアー商品の造成促進のため、旅行会社の招聘や宿泊数に応じた助成金の支給などを実施してまいります。
議員から御指摘がございました食につきましては、私どもも海外プロモーション上の重要な素材の一つと考えており、特に、東南アジアでは、旅行者から人気の高い果物狩りや日本酒、ワイン、そして信州プレミアム牛肉などのおいしい信州ふーど(風土)の魅力をフェイスブックなどで集中的に発信することで、誘客の強化を図ってきております。今後は、御指摘を踏まえまして、本県の強みである健康長寿とこれを支える食という切り口をさらに強調していくことで、本県への誘客活動を強化してまいります。
以上でございます。
◎農政部長(北原富裕)
農産物の輸出促進について順次お答えをいたします。
初めに、海外へ売り込む品目とその生産振興についてでございますが、東南アジアでは、安心、安全な日本の農産物の評価が高く、中でも、長野県のシナノスイートやシャインマスカットなどは品質の高さとおいしさが高く評価されており、引き合いの強いこれらの品目を牽引役として輸出拡大を図ってまいりたいと考えております。
また、一層の輸出拡大を図るためには、各国のニーズや植物検疫などに合わせた品目の選定とその生産振興が必要ですので、県の現地駐在員や本年度シンガポールに配置いたしました輸出支援員などから、各国の消費動向、所得水準、国民性等の情報を収集、整理し、品目、対象国を絞ったテストマーケティングを今後行ってまいりたいと考えております。このような取り組みによりまして、例えば、サイズの小さなリンゴの栽培など、相手国ごとに戦略的に品目や出荷規格を整理し、輸出拡大を図ってまいります。
次に、年間を通じた輸出についてでございますが、百貨店やスーパーでのフェアの効果を一過性のものにしないため、多くの販売チャンネルを持つ有力なバイヤーの県内への招聘ですとか、輸出支援員による小売店舗の売り場確保などの取り組みによりまして、継続的に販売できる販路の開拓を進めているところでございます。また、来年度からは、店舗数が増加している日本食レストランなどの業務用需要の開拓に向けて、例えばお米とみそなど、農産品と加工食品との一体的な売り込みも進めてまいります。
次に、長野県農産物等輸出事業者協議会の現状と将来展望についてですけれども、平成26年2月に設立された協議会は、農業者、流通関係業者、食品製造業者など現在64会員となっております。海外での商談会の開催とそこへの会員の派遣、また、海外バイヤーの県内招聘など、販路開拓支援に取り組んでいるところでございます。これらの取り組みの中から、海外商談会に参加した会員自身が百貨店やスーパーなどへの新たな販路を開拓したり、会員の農業者と卸売業者が連携して果実の輸出に取り組む事例などが出てきております。今後は、こうした会員相互の意欲的な取り組みをさらに広げ、一層の輸出拡大につなげてまいりたいというふうに考えております。
以上でございます。
◎知事(阿部守一)
私には農産物等の輸出促進への意気込みや期待についてということで御質問いただきました。
人口減少でどんどん国内市場が縮小する中で、長野県の農業を振興していく上で、また、世界への貢献ということをしあわせ信州創造プランに掲げていますが、長野県の良質な農畜産物を海外の方にも味わっていただく上では、この農産物等の輸出にしっかり取り組んでいくということが重要だと思っております。
信州創生戦略、あるいはTPP対応方針の中でも、輸出の拡大をしっかり位置づけております。産業イノベーション本部に輸出促進タスクフォースを設けますとともに、生産者団体、流通業界、金融機関、経済団体等で構成いたしますネットワーク会議を新たに設置をいたします。今後は、ネットワーク会議を中心として、長寿世界一NAGANOの食として、リンゴ、ブドウなどの農産物のみならず、日本酒、みそ、リンゴジュースなどの加工食品も含めて一体的に海外への売り込みを積極的に行ってまいります。
それからもう1点、英語教育について御質問をいただきました。
グローバル化の進展の中で、国際共通語としての英語のニーズは、加速度的に高まっております。将来を担う若者の英語力の養成は長野県の発展にとっても大変重要な課題であります。特に、話す力、書く力、こうした発信型の英語力の育成はますます重要だと考えております。こうしたことから、小学校での英語の教科化を見据えながら、小学校段階から英語に親しみ、中学校、高校と発達段階に応じて英語を活用する能力を育み、世界中の多くの方たちとコミュニケーションがとれる力を育成していくことが重要だと考えております。
御質問にありました新しい県立大学におきましては、グローバルな視野を持って活躍できる人材を育成するということが基本的な考え方でありますので、ツールとしての実践的英語力の習得が重要だと考えております。現在、金田一学長予定者を中心に具体的な検討をしていただいているところでありますが、入学者選抜におきましても英語力を重視いたしますとともに、1年次から英語集中プログラムを必修として集中的に英語力を鍛えていきたいと考えています。また、2年次に予定しております全学生が海外を体験する海外プログラムとあわせて、卒業後に実践的に生かすことができる英語力が身につくよう取り組んでいきたいと考えてます。
以上です。
◎教育委員会教育長(伊藤学司)
英語教育の必要性及び小学校の英語の教育の現状と今後の展望についてのお尋ねにお答えを申し上げます。
グローバル化がさらに進展するこれからの社会においては、コミュニケーションツールとして英語を使いこなす能力は必要不可欠な力であり、県教育委員会としても、英語教育の充実をグローバル人材育成事業の重要な要素として位置づけ、聞く、話す、読む、書くの4技能のバランスのとれた英語力を養成できるよう授業改善などに取り組んでいるところでございます。
小学校での英語教育につきましては、現在は、学習指導要領に基づき、高学年において年間35時間の外国語活動を実施をしており、英語を使って積極的にコミュニケーションを図ろうとする児童を育成しているところでございます。また、本県では、約8割の小学校で第1学年から国際理解活動を位置づけ、その中で英語に親しむ学習を実施しているところでございます。
次の学習指導要領では、高学年での英語の教科化、中学年での外国語活動の実施が予定をされてございますので、これに先駆けて、県教育委員会では、小諸市教育委員会と連携し、今年度から小諸市内の全小学校で次期学習指導要領に対応した授業開発に取り組むとともに、小中高一貫したカリキュラムの作成を進めているところでございます。
今後、この研究の成果を広く県内に発信するとともに、現在行っている教員の指導力向上研修を着実に進め、英語教育の一層の充実を図ってまいりたいと考えております。
以上でございます。
◆荒井武志
それぞれ御答弁いただきました。私、海外へ行かせていただきまして、やはり百聞は一見にしかず、まさにそのとおり。そしてまた、それぞれの地域にはそれぞれの思いを持ち、十人十色という状況でございます。現地の状況をしっかり見、それをまた生かす、こんな取り組みをこれからもしていっていただきたい、こんなことを申し上げまして、私の質問を終わります。