平成28年11月定例県議会 発言内容(依田明善議員)


◆依田明善

   

 まず初めに、午前中の荒井武志議員による芸術文化活動推進事業の質問における答弁を受けまして、2点お伺いをさせていただきたいと思います。

 県民文化部長の御答弁では、国に対して情報収集を行い、財源確保に努めるとのことでしたが、今後、推進交付金を確保できる見込みがあるのか、企画振興部長にお伺いをいたします。

 また、財源が不確かな中において、このまま予算を可決することにはちゅうちょいたしますが、知事はいかなるお考えがあるのか、お伺いをいたしたいと思います。

      

◎企画振興部長(小岩正貴)

 

 地方創生交付金で今回不採択でした事業の今後の国補確保の見込みについてという御質問でございますが、これにつきましては、国の交付金予算の内示残額もまだあるようでございますので、引き続き、不採択となった理由や今後の取り扱いなど、国からの情報収集、また他県の状況の分析などに努めながら、事業のさらなる磨き上げも行いながら、国補の確保に向け、最大限の努力をしてまいります。

 以上でございます。

      

◎知事(阿部守一)

 

 今議会に提案いたしました予算の一部の財源として見込んでいる地方創生交付金が今回不採択という形になっておりますこと、大変残念な状況だというふうに思っております。

 しかしながら、今回私どもが提案させていただいた事業は、いずれも本県としては極めて重要なものだというふうに考えておりますし、内容等についても、精査をした上で予算案を提出させていただいております。ぜひとも実施をしていきたいというふうに考えております。

 財源につきましては、今、企画振興部長から御答弁申し上げましたように、交付金の確保について引き続き最大限努力をしていきますし、また、国補が確保できない場合には、他の財源の活用等も視野に入れて考えていきたいと考えております。

 以上です。

 

◆依田明善

 

 御答弁をいただきました。大変重要な事業でございますので、ぜひとも最大限の御努力をよろしくお願いをしたいと思います。

 次にまいります。ものづくりにおける人材育成と工業高校教育の充実について御質問させていただきます。

 ちょうど1年前、私はこのテーマについて御質問させていただきましたが、さらにその後の経過も含めてお尋ねをいたしたいと思います。

 御存じのとおり、ことしも日本人がノーベル賞を受賞いたしました。生物学者の大隅良典氏であります。昨年は物理学賞と生理学賞がお一人ずつ、一昨年は物理学賞が3人ということでございまして、一見すると日本人の快進撃が今後も末長く続くような錯覚に陥ってしまいます。

 しかし、現実はどうでしょうか。この先生方が受賞した背景には、もちろん御自身の御努力や家族の献身的な支えがあったことには間違いありませんが、彼らには若いころから師事している偉大な研究者や技術者、いわゆる恩師の存在があり、その何十年にもわたる公正無私で情熱的、開放的な子弟関係が大きく影響しているという事実を見逃すことはできません。

 ところが、こういった濃密な関係性というものは、残念ながら時代とともに薄れていってしまっている。したがって、今後はノーベル賞を受賞する日本人は減り続けるだろう。と同時に、日本の競争力や国力はますます低下していくだろう。そういった厳しい見方をする識者がおられることも事実でありますし、私も同様の危惧を抱くわけであります。

 では、身近な例として、工業高校における教師と生徒、いわゆる子弟関係はどうでしょうか。ものづくりをめぐる夢のある議論、技術の伝承システム、さらには生徒たちにやる気を起こさせるカリキュラムの編成、こういった重要なファクターが今の工業高校内にどれだけ築かれているのか、この点を再度問うてみたいと思います。

 まず、技能検定における受検者数や合格者数ですが、1年前の答弁では、平成24年度に比べて26年度は合格者が1.7倍になったとのことでありました。1.7倍と聞くと大きな成果のように思いますが、これはあくまでも24年度との比較ですし、工業高校として十分な数でないことは、当時の教育長もお認めになっております。

 資格があることにより就職率が高まるという調査結果もあるようですが、工作機械系技能検定の受検者や合格者は、全体から見ればどの程度ふえたのか。

 ちなみに愛知県では、工業について学ぶ生徒の技能検定の受検者数は増加傾向にあり、昨年度の実績では、全日制で700名の生徒が2級、または3級に合格しているようであります。

 本県では、受検者数や合格者数の目標をどの程度に設定しておられるのか、教育長にお答えいただければと思います。

 また、生徒がものづくりに情熱を注ぐように促すには、教員の熱血指導が不可欠だと思います。その裏づけとなる技術を教師はいかに習得するのか。昨年の答弁では、高校教員が大学の教員から学んだり、企業の技術者を講師として招いているといったお答えでありました。しかしながら、講習や実習を数回受けただけで、教師のやる気、腕前、仕事の段取り等が格段にアップするでしょうか。

 ちなみに愛知県では、技能検定に挑戦する教員が多いとのことですが、私は、やはり実際に教師が技能検定を受検し、合格するために一定期間集中的に勉強することは極めて有用だと思います。確かに、外部講師は高い技術力をお持ちですが、毎日学校に通えるわけではありません。何といっても、生徒に密着し、愛情を持って技術を教え込んでいくのは、あくまでも工業科の教師の仕事であります。

 冒頭で、ノーベル賞受賞の陰には麗しい師弟関係があることを述べましたが、工業高校においても、自分の教え子が卒業して社会人となり、ものづくり産業の中で活躍の舞台を広げていく、この晴れ姿を見ることこそが、まさに教師冥利に尽きると言えるのではないかと思います。ぜひ多くの教師の皆さんに、技能検定がいかに理にかなったすぐれた内容であるかを知っていただき、大いに挑戦していただければと思います。

 また、学校ごとに数値目標や検定結果も明確にしていくべきだと思いますが、先生方のモチベーションをどのように高めていかれるのか、教育長の御見解をお聞かせください。

 さらに大切だと思うことは、県内全ての工業高校に技能検定受検を促進させる統一したシステムをつくることだと思います。熱血先生が転校してしまったために、生徒たちのテンションが下がり、受検者や合格者が激減してしまったなどといった事態を避けるために、確かな技術を持った複数の教師が指導に当たることができる、専属の指導チーム体制ができないものでしょうか。

 また、教師陣がみずからの技術を磨くには、生徒らとともにものづくりチームなどをつくり、技術系のコンテストやイベントに積極的に参加したりすることも必要だと思います。そうなりますと、当然、時間が足りなくなってまいります。一般的な部活動に顧問などとしてはかかわれなくなることも考えられますが、工業高校という性質上、教師が生徒とものづくりに没頭できる体制の構築も必要かと思います。その点に関しても教育長のお考えをお聞かせください。

 また、技能検定を受検するにはそれなりに費用もかかります。貧困世帯もふえる中、数万円の受検料すら払えない生徒さんも多いと聞いております。検定受検に合格することによって高度な技術力が身につけば、就職も容易になり、貧困から抜け出すことも可能でしょう。昨年の答弁では、助成等について前向きな御返答も頂戴いたしました。

 ちなみに愛知県では、実習に使う資材については公費を充てているようであります。また、企業と連携して技能検定取得を目指した講座を実施しており、講座に関する資材や講師に必要な費用については、県から企業への委託費及び企業からの支援によって賄われているとのことであります。

 教育委員会としても、他県の状況を調査研究するとのことでありましたが、本県として、その後、何か進展はあったでしょうか。

 また、県下工業高校の設備は老朽化しており、定期整備の予算も乏しいようです。さらには、測定器の校正費用もなく、従来の実習メニューをこなすのが精いっぱいといった現場の声もあります。これらの現状をどのように把握され、どのような改善策をお考えか、教育長にお尋ねをいたします。

      

◎教育長(原山隆一)

 

 ものづくりにおける人材育成と工業高校教育の充実についてであります。

 まず、工業高校における工作機械系の技能検定の受検者数、合格者数の状況についてというお尋ねでございます。

 県立の工業高校におきまして、近年、技能検定の取得に対する意識は高まってきておりまして、2級、3級の工作機械系の技能検定への受検者、合格者は徐々に増加しております。

 合格者数の過去3年間の推移を見ると、平成25年度、32人、26年度、41人、27年度、54人という状況であります。愛知県の状況と比べてみますと、産業教育担当指導主事連絡協議会という会議がございまして、その調査結果を見ますと、工作機械系技能検定の平成27年度の状況を比べますと、工業科生徒に占める合格者の割合は、愛知県が0.9%に対しまして、長野県は1.3%という状況でございました。

 工業高校の技能検定の受検者、合格者の目標設定でありますけれども、技能検定等の資格取得に取り組むことは、生徒の学習意欲を高めるとともに、専門的な技術、技能の習得を図る上で有効であるというふうに考えております。

 各校においては、学校全体の目標というよりは、教師が生徒一人一人の実態や希望する進路に合わせて目標とする資格を明確にして、その取得に向けて支援を行っているところでございます。

 次に、先生方のモチベーションをどのように高めるかということでありますが、議員御指摘のとおり、工業科の教員は、生徒が学習に対する意欲を高め、専門的な技術、技能を習得するために、技能検定が大変有効であるというふうに考えております。

 先ほど工作機械系だけを申しましたが、全ての技能検定の合格者数の工業科の生徒数の比率を見ても、長野県は愛知県よりも高いという状況であります。それだけ、長野県の工業科の教員が、技能検定に対して高い意識を持っているというふうに理解しております。

 生徒が技能検定に合格できるように、教員は指導力の向上を目指しているところでありまして、例えば、企業の技術者から直接技術を学ぶものづくり講習会や、先端技術研修に参加するなどして、自己研さんを図っているところです。その上で、技能検定を受検する時期には、放課後などを利用して、個々の生徒の技術、技能に合わせたきめ細かな指導を行い、生徒が合格できるように努力しているところであります。

 次に、複数の教師が指導に当たる専属の指導チーム体制についてでありますが、現在、技能検定の指導については、各校の教員が指導しているほか、厚生労働省のものづくりマイスター派遣事業を活用して、その道の達人に直接指導してもらうなど、各校が工夫して取り組んでおります。

 また、各校の指導体制については、生徒が上級の技能検定の受検を希望してもその指導に支障がないように、計画的、継続的な教員の配置を行っているところであります。

 教師が生徒のものづくりに没頭できる体制の構築ですが、県内の工業高校では、教師が生徒とともにものづくりに精力的に取り組み、資格の取得や各種コンテストで成果を上げている例も多い状況です。例えば、飯田OIDE長姫高校は、企業、大学、高専などが参加するエコカーの全国大会におきまして、ことしを含めて2回総合優勝、駒ヶ根工業高校は、マイコンカーラリー全国大会のアドバンスクラスにおいて、直近の4年間で3回優勝、松本工業高校は、第10回若年者ものづくり競技大会において、20歳以下のものづくりに携わる若年者中で第1位となり、厚生労働大臣賞を受賞いたしました。いずれも、教師と生徒が、没頭してものづくりに取り組んだ成果だというふうに考えております。

 それから、技能検定の受検費用助成ですが、全都道府県を調査した結果、福井県と岡山県の2県で、高校生に対して、技能検定取得のための受検料の補助が行われております。

 現在、長野県教育委員会では、愛知県同様、実習に使う資材については公費を充てておりますし、また、講師の派遣等については、長野県職業能力開発協会から講師の派遣や材料費の支援を受け、実技指導を行っているところであります。

 資格については、個人に帰するものでありまして、他の資格との兼ね合いもあって、技能検定の受検料についての補助は難しいと思っていますが、現在、厚生労働省が平成29年度の概算要求で受検料の減免を要求しているところでありまして、これが実現すれば大幅な負担軽減が図れる見通しです。国の動向を注視するとともに、関係部局と連携し、受検者の増加につながる仕組みづくりに努めてまいりたいというふうに考えております。

 それから、工業高校の設備の老朽化の問題であります。

 老朽化した実験・実習設備につきましては、平成25年に、地域の元気臨時交付金を活用して、老朽化した実験・実習設備を約3億5,000万で大幅に更新したところであります。平成26年度に国庫補助制度が廃止されましたけれども、その後も、県単独の限られた予算の中で一定の額を確保しながら、学習に必要不可欠な設備を、学校要望の中から優先順位をつけ、計画的な更新に努めております。

 また、老朽化した設備の点検、修繕は、更新とは別枠で予算を確保し、実習環境にできる限り影響が出ないよう、学校要望の中から優先順位をつけて実施をしております。

 それから、今後の改善策でありますけれども、設備の更新については、購入だけではなくて、リース・レンタル方式を検討するなどの工夫を凝らしたり、また次期の高校再編計画の進みぐあいを見ながら設備の更新や効率的な利用についても検討してまいりたいと思いますし、それから、当然ながら引き続き設備整備の予算の確保に努めてまいりたいと思っていますが、一方で、既に始まっております高校と地元企業の協働による学びのデュアルシステム構築など新たな取り組みで、学校の中だけではなくて、企業の最先端設備を体験するなどして、生徒の教育環境の一層の充実に努めてまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

            

◆依田明善

 

 御答弁いただきました。

 長野県航空機産業振興ビジョンでは、高度な人材を内外から呼び込むとありますが、機械系、建設系を中心に、県内からも優秀な技術者を大いに輩出できるよう、その金の卵である学校の生徒さんたちをさらに立派に育てていただきたいと思います。

 次に、建設業、とりわけ住宅産業の担い手確保育成についてお伺いいたします。

 木造住宅の担い手である大工技能者は、平成27年に全国で約37万人と、この15年間で何と半減しております。職人の減少と高齢化は、建設業において特に深刻であります。

 この中で、群馬県内の建設業団体、建設系高校、職業訓練校、県などで構成する団体では、県内の職業訓練校10校を網羅したガイドブックを作成し、県内の工業高校だけでなく、普通高校にも約3,500部を配布するとしております。本県でも、こうした取り組みを参考に、対策を講ずるべきではないでしょうか。建設部長にお伺いいたします。

 また、県の技術専門校3校の木造建築科への入校状況は、こうした大工技能者不足が深刻化する中にあっても、依然として定員を満たしていない状況が続いております。県では、11月に長野県産業人材育成プランを策定いたしましたが、木造建築科の入校生確保や、若者に魅力ある技術専門校としていくための具体的なビジョンや対策をお考えでしょうか。産業労働部長にお伺いをいたします。

 最後に、大工技能者不足を解決するためには、若者を雇用する県内の中小零細工務店への支援が不可欠だと思います。県でも、平成28年度から、信州健康エコ住宅助成金の中で、工務店が若手大工を育成する現場には、基本額30万円に加えて10万円加算する制度を創設いたしましたが、それだけでは不十分だと思います。

 鳥取県では、県産材を活用した住宅への助成の中で、伝統的な建築技能を活用する場合に20万円を加算し、上限100万円まで助成する制度を行っております。他県の制度も参考に、経営基盤の脆弱な中小零細工務店への支援を拡充するべきではないかと思いますが、最後に建設部長にお伺いをし、一切の質問といたします。

      

◎建設部長(奥村康博)

 

 いただきました御質問に対しまして、順次お答え申し上げます。

 まず、住宅産業の担い手の確保に関するお尋ねでございます。

 議員御提案のガイドブックは、群馬県建設業協会が事務局となります建設産業人材確保・育成に関する協議会が作成したと伺っております。

 本県におきましても、長野県建設業協会が事務局となり、建設産業の人材確保、育成を目的に、建設産業団体、教育機関、職業訓練機関及び長野県で構成します地域連携ネットワーク協議会を昨年度設置いたしました。

 その中で、工業高校生を対象にした2級土木建築施工管理技士の資格取得への支援や、建設産業の魅力を発信するDVDを3,000枚作成し、市内市町村や高校等へ配布しているところでございます。

 また、今年度から、大工技能者の人材確保の取り組みとして、木造建築の魅力を伝え、後継者の確保を図るため、中学校へ技能者を派遣する木造建築担い手育成啓発事業に着手しました。今年は、県内3中学校に大工技能者を派遣し、13クラス383名の生徒が、木材加工や伝統木造工法に触れる体験をしたところでございます。

 また、大工技能者の仕事に興味を持つ中学生に対しまして、関係団体と連携して工務店を中学校に紹介し、今年度は10人の中学生が職業体験をいたしました。

 今後とも、他県の取り組みを参考にしながら、建設団体や関係部局と連携し、住宅産業の担い手の確保を図る啓発活動に取り組んでまいります。

 次に、若手大工を育成する工務店への支援に関するお尋ねでございます。

 県内で新築される持ち家住宅は、その9割が木造で、県民の木造住宅志向は高く、良質な木造住宅建設の担い手である大工技能者の確保育成は重要な課題であると認識しております。

 本県では、県産木材を活用し、県内の地域工務店が建築した新築住宅への助成制度を平成17年度に設け、平成27年度までに延べ2,221件の助成を行いました。現行制度の助成額は最大で80万円で、同様の助成を行っている27府県の中で4番目に高いものと承知しております。

 また、工務店が若手大工を育成する現場を助成金の加算対象としたところでございますが、その申請件数は9件で、申請総数112件の一部にとどまっております。本年4月から若手大工育成現場への助成を始めたところでありまして、その効果の確認も必要でございますので、制度の周知を図るとともに、必要な見直しを図っていく所存でございます。

 以上でございます。

 

◎産業政策監兼産業労働部長(石原秀樹)

 

 技術専門校の生徒の確保と魅力ある学校づくりについての御質問でございます。

 県では、長野、松本、飯田の技術専門校に建築に関する学科を設置し、即戦力となる若手の大工職人や建築技術者の養成を行っております。最近3年間の定員充足率は約6割と低迷しておりますが、就職率は95%と高い実績を維持しており、地元建設業界の人材づくりに少なからず貢献しているものと考えております。

 今後も、魅力ある地域に貢献できる学校づくりといたしましては、まずは入校生の確保が第一の課題と認識しており、現在、技術専門校の認知度アップについて取り組んでおります。この認知度アップのためには、地域との連携強化と効果的な情報発信が重要と考えます。

 そこで、具体的には、地元高校生や保護者を対象とした見学会や高校の進路指導者を対象とした学校説明会の開催、地元イベントとタイアップした木工教室などの開催、さらには地元小学校、中学校、高校における職人の魅力の発信事業などに取り組んでおります。

 今後も、時代にマッチしたカリキュラムづくりはもちろん、地域との連携を密にしながら、さまざまな機会を捉えて技術専門校の情報発信を行い、魅力ある技術専門校づくりを進めてまいります。

 以上でございます。