平成30年6月定例県議会 発言内容(荒井武志議員)


◆荒井武志

 

 皆さん、こんにちは。県議会議員の荒井と申します。よろしくお願いします。このように、祝辞等の際にはできるだけ手話を交え挨拶をしてまいりました。

 初めに、手話言語条例の具現化についてであります。
 平成28年3月、聴覚障害者を初めとする関係者の大きな期待の中、長野県手話言語条例が可決、制定され、2年余りが経過しましたが、この間、条例が目指す共生社会の実現に向けて、手話や聾者に対する理解促進、手話の普及等に各種の取り組みを行ってこられたものと承知をしております。
 一方で、昨年の年末には、長野県聴覚障害者協会ほか5団体との懇談会が持たれ、8項目の要望が出され、とりわけ、手話に関しましては、県設置の手話通訳者の増員、正規化、地域における手話を通じた交流事業の継続や事業内容の見直し、圏域各地域の障害者相談支援センターへの手話通訳者の設置など強い要望が出されました。
 このような状況のもと、手話言語条例関連事業として、手話に対する理解促進、手話の普及、手話を使いやすい環境の整備、相談体制の整備、生活支援などとして総額7,400万円余りが予算化されましたが、昨年度を100万円余り下回っている状況であります。
 そこで、健康福祉部長に伺います。
 一つは、先ほど申し上げた各種施策ごとに現状と課題はどうか。手話言語の認知度を含め、お答えください。
 二つに、条例制定後の2年間を振り返り、何がどのように向上したと捉えておられるでしょうか。また、今後どのような点に力点を置いて取り組もうとお考えでしょうか。
 以上、質問いたします。
      

◎健康福祉部長(山本英紀)

 

 手話言語条例の具現化について2点御質問をいただきました。
 まず初めに、各種手話施策の現状と課題、手話言語の認知度についてのお尋ねであります。
 条例制定後の5年間は、手話及び聾者の理解促進、手話の普及に特に重点を置いて取り組んでいるところです。昨年9月に行った県政モニターアンケートの調査結果では、手話言語に関する認知度は9割を超えており、高い水準で浸透してきていると考えております。
 これまでの取り組みとして、手話に対する理解促進に向けては、手話ガイドブックの配布のほか、プロスポーツを活用した手話応援、信州山の日の登山などのイベントを通じて聾者に対する理解促進に取り組んでまいりましたが、今後は参加者の裾野を広げていく必要があると考えております。
 また、手話の普及に関しましては、初級レベルの習得を目指した県民向け手話講座を、多くの方が参加しやすいよう、休日や夜間、また役場、公民館等で開催しており、昨年度は600名を超える方に参加いただいております。事業を継続するとともに、参加者のレベルアップの支援や、特に意欲のある方を手話通訳者につなげていく取り組みも検討していく必要があると考えております。
 県内の手話通訳者については、ことしは161名の方に登録いただいておりますが、高齢化が進行し、5年前に比べ約1割減少していることから、早期に人材の養成に取り組む必要があると考えております。
 相談体制の整備、生活支援については、高齢化やニーズの変化に合わせ、実施内容の改善を図っております。引き続き関係者の皆様と連携し、手話及び聾者の理解促進、手話の普及に取り組んでまいります。
 次に、手話言語条例2年間の成果と今後の力点施策についてであります。
 条例制定2年間で、手話及び聾者の理解促進、手話の普及に取り組んできており、手話に関する関心は着実に高まってきていると実感しており、この関心の高まりを手話の理解や習得につなげていく必要があると感じているところであります。
 多くの方が手話を学び、習得する行動をとるためには、その動機づけが必要であり、その方法としては、聾者の方と接し、交流していただくことが効果的ではないかと考えております。そのため、今年度から、聾者とそれ以外の者が交流する機会を県が提供するお出かけ手話講座を新たに開催し、若い世代を中心に交流を促進することとしております。
 手話の普及には近道はないことから、着実な取り組みを続けていくとともに、関係者とも連携してさまざまな手法も取り入れて普及に努めてまいります。
 以上であります。
      

◆荒井武志

 

 次に、昨年12月22日に新潟県で、ことしの2月16日には石川県で、3月16日には福井県で、3月23日には富山県で相次いで手話言語条例が成立し、いずれも、4月1日に施行されました。これまでに、ブロック内の全県で条例が成立したのは東海と北信越だけとお聞きしております。市や町の条例は、北信越域内で11の市、一つの町で成立しているとのことであります。
 北信越ろうあ連盟の代表である石倉義則さんは、長野県聴覚障害者協会の会報誌「ろうあ信州」に寄せ、長野県にはこれまで2年間の経験、実績があります。北信越の私たちは条例先行地長野県の取り組みに学び、ともに高め合い、助け合い、そして新しい時代を切り開いていきたいと思いますと思いのたけをつづっておられました。
 また、手話を広める知事の会が設立されていますが、阿部知事は副会長職にあり、去る4月25日には東京で総会が開催され、知事には所用があり中島副知事が出席されたと伺いました。総会の概要や様子はつぶさに知事に伝えられていることと存じます。
 そこで、知事に伺います。
 一つは、北信越ブロック全県が条例化されたことを踏まえ、長野県が先導役を果たしつつ、行政的にも各県と緊密に連携、連絡を図り、改善策の向上に向けて取り組むべきと考えるが、いかがでしょうか。
 二つに、手話を広める知事の会について、その目指している方向性はどのようなものでしょうか。県はどのように呼応し、どのような施策を推進しようとしておられるのでしょうか。
 次に、国際手話についてであります。
 東京オリンピック・パラリンピックが2年後に迫る中、私が手話で挨拶をすると、手話はわかるけれども、国際的に通用する手話はどうなっているのと何人かから聞かれました。それはあるよと答えたものの、詳しいことは承知していませんでした。後に調べると、国際手話として取り組まれていることがわかりました。
 そこで、健康福祉部長に伺います。
 インバウンドを積極的に取り組んでいる本県にとって、国際手話の理解は重要であり、これを普及、活用していくべきと考えるが、いかがでしょうか。
      

◎知事(阿部守一)

 

 荒井議員の御質問に順次お答えします。
 まず、北信越ブロックでの先導役としての取り組みについてという御質問であります。
 北信越ブロックでの手話言語条例の制定につきましては、平成28年3月に本県が制定して以来、平成29年の12月に新潟県、そして本年の4月に石川、福井、富山県で施行されております。県議会の皆様方の御支援、御理解を得ながら、長野県がこの北信越ブロックでの手話言語条例制定の先駆けという形になったこと、大変うれしく、ありがたく思っておりますし、と同時に、その責任をしっかり果たしていくということが重要だと思っております。
 長野県として、これまでも、手話ガイドブックの作成であったり、あるいは市町村の職員向けの手話講座の開催であったり、こうしたことに取り組んできております。昨年の10月に飯山市で開催されました北信越ろうあ者大会におきましても、県としてもブースを出して、県の取り組みを参加された聾者の皆様方にもアピールをさせていただいているところであります。こうした取り組みをしっかりと発信して、北信越全体の取り組みが相互に刺激をし合いながら発展できるように取り組んでいきたいというふうに思っております。
 それから、手話を広める知事の会の目指す方向性と、本県はどう呼応するかという御質問でございます。
 この知事の会は、手話の普及を図り、聴覚障害者の自立と社会参加の実現を目指すということとあわせて、手話言語法、仮称でありますけれども、この制定を国に求めていこうというものでございます。
 長野県は、都道府県レベルでは4番目にこの手話言語条例を制定した県であります。と同時に、条例を制定しただけではなくて、山の日と連動させて信州の山の魅力を活用しての聾者の皆さんとの交流イベントであったり、あるいは手話でJリーグ松本山雅を応援する取り組みであったり、また、私ども県庁の中でも部局長会議におけるミニ手話講座を行うなど、全国的にも先駆的な取り組みをさまざま行ってきているというふうに自負をしております。こうした取り組みを昨年の知事の会のフォーラムにおいても報告をして、全国にも発信をさせていただいたところであります。
 手話の普及は、これからも着実に行っていく必要がございます。長野県聴覚障害者協会の皆様方の思いも随時お伺いをさせていただきながら、国を動かし、この手話がさらに普及するように、そして手話言語法が制定されるように取り組んでいきたいというふうに考えております。
 以上です。
      

◎健康福祉部長(山本英紀)

 

 国際手話の普及、活用についてお尋ねをいただきました。
 日本で使われている手話は日本の文化をもとに成り立っており、言語と同様、国によって手話も違っております。一方で、聾者の世界的な交流の場、世界ろう者会議や、聾者のスポーツ大会デフリンピックなど世界各地から聾者が参加する機会では、世界共通語として国際手話が使われているとともに、2020年東京オリンピック・パラリンピックでも国際手話の活用が予定されております。
 現在、県内では、従来からなれ親しんだ手話が活用され、国際手話の活用は進んでいないところであります。国際化の時代に合わせ、外国聾者の受け入れ、国際的な会議や交流の機会がふえ、国際手話への対応も必要になると考えられることから、関係者や関係団体と連携して国際手話の普及や活用について検討してまいります。
 以上であります。
      

◆荒井武志

 

 手話に関連し、それぞれ答弁いただきました。
 手話は言語であるとの認識のもと、県、県民、聾者、手話通訳者、聾者が通う学校の設置者、事業者のそれぞれの役割、あるいは市町村との連携協力が明記されているところでありまして、県民の手話及び聾者に対する理解の促進のためにそれぞれが精いっぱいの努力を引き続きいただけますよう強く願うものでございます。
 また、昨年の2月定例会で一般質問をいたしました情報保障・コミュニケーション条例の制定要望についてでありますが、平成27年に設置された研究会で条例の制定を含めた施策について検討されていると伺っております。そろそろ方向性を出す時期ではないかと申し上げ、次の質問に移ります。
 次に、県有財産の有効活用についてであります。
 急速な少子・高齢化や人口減少社会の進展、到来によって、県民ニーズが複雑、多様化し、新たな財政需要も見込まれるところであり、県有財産の総量縮小や有効活用が非常に重要になっていると私も認識しているところであります。
 県では、平成23年から長野県ファシリティマネジメント基本方針を策定し、県有財産の利活用や施設の長寿命化などに取り組んでこられましたが、この間、国から公共施設等総合管理計画や施設ごとに個別施設計画の策定を要請されていることから、これまでの基本方針に加え、国の示す項目を追加する形で、昨年3月、長野県ファシリティマネジメント基本計画を新たに作成し、活用を図るべく取り組んでいると承知しています。
 その基本方針では、県有財産の総量縮小、県有財産の有効活用、県有施設の長寿命化、県有施設の省エネ化などによる維持管理の適正化とし、具体的な取り組み方針を定め、財産の利活用の推進を図っておられるところであります。
 とりわけ、換金可能な取り組みとして、県有財産の総量縮小では、未利用県有地の売却推進や県有施設の市町村や民間への譲渡、移管に取り組むとともに、県有財産の有効活用では、貸し付け制度の活用や遊休施設、空きスペースを活用する仕組みの構築、集約化や廃止を進める施設などがあろうかと思います。
 そこで、総務部長に伺います。
 一つに、長野県ファシリティマネジメント基本計画において、基本方針に基づくこれまでの主な取り組みとして平成27年度までの状況が明らかにされておりますけれども、基本方針中の平成28年度及び基本計画を定めてからの平成29年度の状況はそれぞれどのようになっているのでしょうか。実態がどうであったのか伺います。
 二つに、ファシリティマネジメントの今後への課題にはどのようなものがあるとお考えでしょうか。
 三つに、未利用県有財産の現状及び集約化や廃止を進めることで今後発生する見込み数量並びにそれらの換金見込み額をどのように把握しておられるでしょうか。
 知事には、ファシリティマネジメント基本計画によって県有財産の総合的な利活用の推進を図っていくことについて、計画決定時においては、資源や資産をどうやって有効に使っていくのか、もっと有効に使えないのか、使う予定がないならどうしたらよいのか等々さまざまな思いがあったのではないかと拝察するところであります。県有財産の総合的な利活用の推進を図ることについて御所見を披瀝いただきたいと思います。
      

◎総務部長(関昇一郎)

 

 県有財産の有効活用について3点御質問いただきました。
 1点目のファシリティマネジメントの平成28、29年度の実施状況についてのお尋ねでございます。
 方針の一つ目、県有財産の総量縮小については、施設の有効活用、転用、集約化計画の策定に向けた施設アセスメントを実施しております。また、未利用県有地については48件、7億709万円余を売却したところであります。県有施設の市町村への譲渡、移管については、須坂青年の家や伊那運動公園野球場など9件行いました。
 方針の二つ目、県有財産の有効活用については、新たに3件の太陽光発電用の屋根貸しを行うとともに、職員宿舎の管理戸数適正化や共同利用の推進に取り組んでおります。
 方針の三つ目、県有施設の長寿命化については、県有施設の修繕・改修工事の優先度評価と中長期修繕・改修計画の策定に取り組んでおります。
 方針の四つ目、維持管理の適正化については、比較分析が可能な168施設において、他施設と比べて面積当たりの光熱水費を比較するベンチマーキングを行うとともに、課題がある施設に対して改善策を提案し、維持管理費の適正化に取り組んでおります。
 2点目のファシリティマネジメントの今後への課題についてのお尋ねであります。
 県が保有する施設は平成29年度末現在で約1,500施設あり、土地面積が約1,568万平方メートル、建物延べ床面積が約369万平方メートルと膨大な量となっておりまして、人口減少社会の到来に向け、県有財産の総量縮小や有効活用など積極的な取り組みを推進する必要があります。また、計画的な保全措置により長寿命化を進めるため、平成32年度末までに中長期修繕・改修計画を策定することとしております。
 しかしながら、これら県有施設の半数以上が建築後30年以上経過するなど老朽化が進んでいることから、建てかえ時期を迎える施設の更新や長寿命化、耐震化、そして環境問題への対応などが課題となっております。また、こうした対応のために見込まれる修繕・改修費などが大きな負担となることが確実な状況であり、財政支出の軽減及び平準化、そのための財源確保などが必要と考えております。
 最後に、未利用県有地の現状と処分見込みについてのお尋ねであります。
 県では、本来の使用目的を終えた県有財産で再活用の見込みがない土地や建物について、未利用県有地として一般競争入札等により売却を進めているところであります。
 未利用県有地の現状ですが、平成30年5月末現在で154カ所、面積にして18万平方メートル余となっておりますが、1件ずつについて時価評価が必要なことから、現時点でその売却価格の総額を推計することは困難であります。
 また、平成25年度に策定した職員宿舎管理戸数適正化計画に基づく職員宿舎の適正化や、その他の県有施設の廃止等により、今後も未利用県有地の増加が見込まれるところであります。
 なお、本年度は、未利用県有地のうち56カ所、面積にして4万5,000平方メートル余の新規物件を処分対象とすることを予定しておりまして、既存の売却物件と合わせ1億8,000万円余の売却収入を見込んでおります。
 以上であります。
      

◎知事(阿部守一)

 

 県有財産の総合的な利活用の推進についての所見という御質問でございます。
 荒井議員の御質問の中にさまざまな思いということで御引用いただきましたけれども、このファシリティマネジメント基本計画決定時の部局長会議における私の発言を捉えていただいての御質問だというふうに思います。
 私の思いは大きく二つございます。
 一つは、やはり私ども職員全体の問題意識をしっかり持つということだと思います。県有財産は、もとより県民の皆様方共有の財産でありますので、私どもそれを管理する立場としては、やはり無駄になっていないかとか、もっと有効に活用する余地はないかとか、常にそうした意識を持つということが大事だというふうに思っております。これは、財産管理者、あるいは各部局長にもこうした考え方、感覚を持ってほしいということをお願いしました。
 それから、もう1点は仕組み。例えば、各部でどういう方向で処理すればいいかというのはなかなか決めかねるところもあると思いますので、総務部を中心として、活用の方針であったり、問題の共有であったり、こうしたことをしっかり行って、的確な対応方針を定めていくということが重要だと思います。そういう意味では、有効活用するための仕組みをつくっていく。この意識と仕組みの両面が重要だということをその際には発言をさせていただいたところでございます。
 県有財産については、その有効活用であったり、あるいは縮小であったり、統合であったり、こうしたことがこれからますます重要なテーマになってまいります。関係部局がしっかり連携し、問題意識を共有すると同時に、市町村や関係団体とも同じ方向性を共有する中で、この県有財産を最大限有効に活用する方策を進めていきたいと思っております。
 このファシリティマネジメント基本計画で定めた総量縮小、有効活用、そして長寿命化と維持管理の適正化、このことを常に肝に銘じてしっかり取り組んでいきたいというふうに思っております。
 以上でございます。
      

◆荒井武志

 

 ただいまの未利用財産の状況ですが、相当な面積があり積算が困難だというお話がありました。ただ、財政がますます逼迫してくる、そういう中にあって、やはりわずかであってもこれをしっかり活用すべきだと、こういうように思うわけであります。ぜひその点も踏まえて努力をいただきたいと、こう思います。
 そして、職員の意識をしっかり持つ仕組みをつくっていく、こういうことについてもやっていただきたいと、こういうことを申し上げまして、私の質問とさせていただきます。
 ありがとうございました。