平成30年2月定例県議会 発言内容(山岸喜昭議員)


◆山岸喜昭

   

 順次質問に入ります。林業の種苗生産拡大と安定供給について伺います。

 佐久地域はカラマツのふるさとと言われています。古い文献を見ますと、佐久地域におきましては、先人の手によって明治8年に養苗が始まり、八ヶ岳山麓、浅間山麓に自生するカラマツから採種された種を県下各地に販売し、苗木の生産を盛んにし、苗木がつくられ、植林され、育てられたカラマツ林は森林の持つ公益的機能を高度に発揮し、県土、国土の保全に貢献してきました。
 佐久地域は、カラマツの森林面積、蓄積量とも県内最も多い地域で、木材資源は成熟し、伐期を迎えているところであるが、戦後一斉に植林されたことから、樹齢は50年から70年に偏っており、持続的に木材資源を活用していくために、計画的に木材資源の平準化を図っていく必要があります。
 佐久地域の素材生産量は県内で最も多く、近年、地域の林業事業体は、間伐施業から皆伐施業にシフトチェンジし、資源の循環利用と持続的な林業、木材産業の確立を目指して、皆伐跡地に主にカラマツの植林を行っています。
 このような中で、今年度はカラマツ苗木が不足しており、予定していた時期に植栽施業ができなかった場所があると聞いています。理由としまして、林業用の苗木生産は2年の期間を要することから、植栽を行う林業事業体が苗木を注文しても、苗木生産者はあらかじめ使用量を把握していないと苗木を生産できないこと、また、苗木をつくるにしても、そのもととなるカラマツの種は5年から7年に1回程度豊作となり、それ以外はほとんど種をつけないため、種が不足していること、また、近年、苗木生産工程等の省力化から、従来の林業用苗木生産からマルチキャビティコンテナを使用したコンテナ苗木の生産に移行する生産者が全国的に増加しているが、苗木の育成に係る技術的な課題から移行がうまくいっていないため、予定していた量を生産できないなど、森林資源の成熟から、今後、佐久地域だけでなく県下各地で皆伐施業、植栽施業が増加することから、予測される中ではありますが、カラマツの種の確保、苗木の安定供給について伺います。
 林業事業体は、伐採後に適切に森林の更新を図る必要があるが、林業用苗木の生産に時間を要することから、あらかじめ需要量と供給量を調整する必要があると思うが、どこでどのようにするのか。また、優良なカラマツの苗木を生産するためには優良な種子が必要であるが、採種源は県下にどれだけあり、過去3年間でどれだけ採種できたのか。また、今後、苗木の生産に必要となる種子の確保はどのように取り組んでいくのか。苗木生産の高齢化により、従来の生産量は減少することが予測され、後継者や新たな生産者によるコンテナ苗木の生産量を増加させる必要があります。造林用優良苗木の計画的な生産と需要と供給の安定化のための課題と対策、生産基盤の整備等をどのように進めるか、以上、林務部長にお聞きします。
      

◎林務部長(山﨑明)

 

 林業用苗木に関しまして4点御質問をいただきました。順次お答えいたします。
 議員御指摘のとおり、伐採後、適切に森林の更新を図っていくためには、安定的な林業用苗木の供給が不可欠です。これまでも、県内の需要者、生産者及び関係機関を構成員とする長野県山林種苗需給協議会におきまして、国有林及び民有林における造林計画をもとに向こう3カ年の生産目標量を定め、需要と供給の適正化に取り組んできたところでございます。
 しかしながら、現状では、数年先の造林計画を精度よく見通すことがなかなか難しく、今後の本県での主伐、再造林の本格化を踏まえれば、これまで以上に需要者と生産者の連携強化が必要と認識しております。
 このため、来年度に、生産者、造林者、山林種苗協同組合及び関係機関等々によります検討会議を開催し、関係者の御意見をお伺いしながら、将来を見越した優良な種子の確保、苗木の需給調整、コンテナ苗木の増産及び後継者対策等に必要な仕組みづくりの検討に入りたいと考えております。
 次に、カラマツの採種源と過去3年間の採種量に関するお尋ねでございます。
 カラマツの優良な種子を確保するため、県では、4カ所、約26ヘクタールの採種園のほか、母樹林として県下21カ所、約142ヘクタールを指定してございます。過去3年間のカラマツの種子採種量は、平成27、28年度におきましては、採種園のみでございますが、15キロと7キログラムとなっておりまして、また、平成29年度につきましては、採種園のほか母樹林でも採種を行いまして29キログラムとなっておりまして、3年間の合計では51キログラムとなっている状況でございます。
 次に、苗木の生産に必要となる種子の確保の取り組みに関するお尋ねでございます。
 今後、主伐、再造林の増加が見込まれており、苗木の生産に必要な種子量が大幅に伸びると想定され、中長期的に種子を安定供給するための採種園の新規造成と母樹の更新を進め、必要となる種子量を確保してまいりたいと考えております。
 加えて、当面必要な種子量を確保するため、成長にすぐれ、幹が真っすぐであるなどすぐれた形質を持つ森林を、専門家による知見を踏まえ、計画的に母樹林として指定し、必要量の確保の強化に取り組んでまいります。
 最後に、優良苗木の計画的な生産、需要と供給の安定化対策等に関するお尋ねでございます。
 今後増加が見込まれる主伐、再造林に対応し、計画的な苗木生産を進めるには、確実な苗木の需給調整を図り、再造林に必要なコンテナ苗木の増産等による優良な苗木を確保することが必要となります。
 苗木を増産するためには、従来の山行き苗木の生産に加え、育成期間の短縮や省力化による大量生産が可能なコンテナ苗木の導入を進め、5年、10年先を見据えたこれらの施設整備への助成や生産技術の向上に向けた支援が不可欠となります。
 まずは、来年度から、林業用種苗の生産拡大に向けて課題となる苗木の需要量と生産量の見通しの精度を高め、優良な種子の確保や苗木の生産量の拡大、コンテナ苗を活用した再造林の低コスト化を総合的に進めながら、確実な再造林のための環境づくりに取り組んでまいります。
 以上でございます。
      

◆山岸喜昭

 

 次に、土地改良施設の老朽化について伺います。
 小諸市、東御市にまたがる御牧ヶ原台地は、これまで800ヘクタールに及ぶ農地が開拓されてきました。常に干ばつと向き合っていた台地に安定した農業用水をもたらしたのは、県が行った御牧ヶ原農業水利改良工事により、遠く蓼科山の麓の湧水から37キロの用水路が建設されてからであります。
 しかしながら、築造されてから50年近く経過し、幹線水路は随所で老朽化が見られ、水漏れや破管が多発しており、大きな事故になると周囲に大被害をもたらすことも危惧され、補修程度の応急対策では進行する老朽化には追いつきません。
 管理する全ての幹線水路を対象に機能診断を行いましたが、改良工事には膨大な経費負担が強いられます。長野県内には、2万キロに上る農業水路があると聞いており、特に、大きな受益を持つ水利施設は、一旦機能が停止すると、復旧のためには長時間を要し、農業被害は甚大となることが想定されるが、このような農業用水路等の老朽化についてどのような対策を講じていくのか、農政部長にお聞きします。
      

◎農政部長(北原富裕)

 

 お答えいたします。
 農業水利施設の老朽化対策についてですが、県内には、昭和30年代から40年代に整備され、耐用年数を迎える農業水利施設が数多くあり、老朽化による機能低下や破損等により補修や更新費用の増大が課題となっております。
 そのため、県では、100ヘクタールを超える受益を持つ基幹水利施設について、市町村や土地改良区などの施設管理者と連携して長寿命化計画を策定し、適時適切な補修や更新整備によりライフサイクルコストの低減を図っているところでございます。今後は、機能停止すると地域の営農に大きな影響を及ぼす頭首工や水路トンネルなどの重要構造物を持つ基幹水利施設について優先的に長寿命化計画を策定し、対策事業を順次進めてまいりたいと考えております。
 一方、突発的な破損事故の補修などについては、来年度から農業者の負担を原則求めずに早期復旧が可能な事業が国において創設されることから、これら事業を活用し、営農の継続を確保してまいります。
 以上でございます。
      

◆山岸喜昭

 

 続きまして、浅間山防災体制の強化と恵みの活用についてお聞きします。
 草津白根の本白根山が噴火しました。この噴火を受け、地元浅間山の火山活動が心配されますが、活火山を多く抱える長野県でも、改めて火山にどう向き合うかを考える上で検証すべき点が多く、見直しが必要であります。
 気象庁では、観測体制の強化を進めているが、国内に111ある火山に関連する研究をしている研究者は330人ほどで、実際に観測を行い、火山活動の解明や噴火予知につながる研究をしている専門家は80人ほどであります。
 多くの研究者は、複数の火山観測をかけ持ちしている状態で、全ての活火山を詳細に調べ上げるのは難しいとされています。火山の監視や防災対策を担う専門家の不足が深刻化しております。
 火山学の専門家は、観測データを分析して気象庁などに助言したり、自治体の火山防災協議会のメンバーとして避難計画を検討するなど、地域防災で重要な役割を担っています。火山は、それぞれの特徴が大きく異なり、本来は一つの火山を専門に観測することが望ましいとされ、全国にある火山を観測、研究する人材育成の強化は急務となっております。
 地震や噴火の前兆現象を捉える予知の精度を高めるには、火山研究の強化が欠かせません。火山の知識は専門性が高いため、火山の多い長野県においては、火山専門家や大学、専門機関との連携が求められますが、現在はどのような連携をされているのか。長野県の火山の中でも、特に浅間山は全国でもトップレベルの火山観測網と蓄積された豊富なデータを持つ火山で、火山研究や火山防災対策の最前線を切り開いてきた火山であります。
 地元浅間山の噴火の兆候をつかむための火山観測機器の設置状況はいかがか。また、浅間山の火山防災対策の検討はどのような体制で行われ、どのような内容が検討されているのか。浅間山は、過去に大規模な噴火を経験しています。今後の大規模噴火に備えたハザードマップを作成していると伺っていますが、その状況と、ハザードマップ作成を踏まえた今後の市町村の避難計画等の策定支援、また、住民や登山者等へのハザードマップの周知を群馬県や関係市町村とともにどのように進めていくのか、危機管理部長にお聞きします。
 本白根の噴火を受け、噴火警戒レベルを3に引き上げ、しばらく続くことも予想されますが、志賀高原と草津温泉を結ぶ志賀草津高原ルートは、上信越高原国立公園の雄大な自然を感じることのできる北信を代表する観光地であります。11月から4月までの冬季閉鎖解除に向けた除雪などによるルートは確保されるのか、建設部長にお聞きします。
 今回の火山活動により幾つかのイベントが中止されたが、これからのグリーンシーズンに向けての観光誘客についてはどのような取り組みをしていくのか、観光部長にお聞きします。
 上信越高原国立公園は、日本を代表する自然風景地であり、火山地形や断層地形など自然の多様性と、温泉、火山の恵みを生かした人々の営みを学ぶ大地の遺産であります。これらを保全するとともに、教育、研究、普及に活用し、情報発信やプログラムの提供等によって質の高い利用の推進が地域の観光の振興につながると考えるが、この自然が与えてくれた大地の遺産をどのように活用するのか、環境部長にお聞きします。
      

◎危機管理監兼危機管理部長(池田秀幸)

 

 浅間山の防災体制についての御質問をいただきました。順次お答えを申し上げたいと思います。
 最初に、火山専門家などとの連携に関する御質問をいただきました。
 長野県には多くの活火山がありまして、その特徴も異なっていることから、県では、火山専門家などと火山防災協議会などを通じて顔の見える関係を構築しておりまして、火山活動に変化があったときに電話などにより迅速に連絡がとれるよう、日ごろから連携を図っております。
 また、浅間山では、毎年、市町村等が開催いたします住民向け研修会で、火山専門家に浅間山の過去の噴火活動や被害の状況などの講義をいただき、火山防災の意識向上に協力をいただいております。
 御嶽山におきましては、名古屋大学御嶽山火山研究施設において、御嶽山の観測の強化、地域での火山防災教育に協力をいただき、御嶽山火山マイスターの育成に関しても研修会で講義などをいただいております。
 いずれにいたしましても、引き続き火山専門家などとしっかり連携をして、火山防災体制の構築や防災意識の普及啓発に努めてまいりたいと考えております。
 次に、浅間山の観測体制と火山防災対策に関する御質問をいただきました。
 浅間山周辺では、気象庁や東京大学などが地震計や監視カメラなど観測機器を52点設置しておりまして、議員御指摘のとおり、全国の活火山の中でも有数の観測体制が整備されている火山となっております。
 浅間山では、昭和48年2月の噴火を受けて、浅間山火山対策会議が設置をされ、現在は、平成28年に活動火山対策特別措置法に基づきまして、警戒避難体制の整備や地域住民などの防災意識の向上を目的とした浅間山火山防災協議会に改組をされております。
 この協議会におきましては、長野県、群馬県、周辺6市町村、地方気象台、火山研究者などで構成をされておりまして、現在、火山ハザードマップや噴火シナリオ、噴火警戒レベルに応じた避難計画の協議でありますとか噴火を想定した訓練も行っているところでございます。
 次に、浅間山の大規模噴火に備えたハザードマップの作成に関する御質問でございます。
 浅間山につきましては、平成15年に作成されました中規模噴火までを想定したハザードマップに基づきまして火山防災対策を行ってきておりますが、現在、大規模噴火に備えたハザードマップが必要との火山専門家の提言を踏まえまして、火山防災協議会において本年度末の完成を目指して作成を進めているところでございます。
 今後、市町村におきましては、防災マップや避難計画を作成していくこととなりますが、これらの作成には専門的な知見も必要なことから、県といたしましても火山専門家などの助言をいただきながら作成の技術的な支援を行ってまいりたいと考えております。
 また、同じように、各市町村におきましては、ハザードマップを広報誌や住民説明会などにより周知を図っていくことになりますので、県といたしましても、ホームページを活用したり、専門家によります説明会を行うなど、群馬県や市町村、そして関係部局と連携をいたしまして周知に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
      

◎建設部長(油井均)

 

 志賀草津高原ルートの確保についてのお尋ねでございます。
 現在、噴火警戒レベル3の状況下では、本白根山鏡池付近からおおむね半径2キロメートル内の立ち入りが規制されているところであります。
 志賀草津高原ルートである国道292号の長野県側についてはこの規制の範囲外であることから、例年どおりに除雪作業を進め、群馬県境となる渋峠までの区間の冬季閉鎖を4月下旬に解除する予定であります。一方、群馬県側は、国道292号の一部区間がこの立ち入り規制区間の立ち入り規制の範囲内にあるため、群馬県側の除雪については現在検討中と聞いております。
 志賀草津高原ルートは、観光客を初め多くの方々が利用する道路であることから、県としては、群馬県と情報の共有を図り、県内区間の冬季閉鎖の解除の状況や群馬県側の道路状況について道路情報板や県ホームページ等により周知をしてまいります。
      

◎観光部長(熊谷晃)

 

 グリーンシーズンへの対応についてのお尋ねでございます。
 議員御指摘のとおり、1月の本白根山の噴火を受け、志賀高原観光協会主催のバックカントリースキーツアーと草津町・山ノ内町広域宣伝協議会主催の雪の回廊ウォーキングが、安全性を優先し、中止されたとお聞きしております。
 一方、山ノ内町によりますと、本白根山の噴火が志賀草津高原ルートの冬季閉鎖期間中であったことから、現在のところ宿泊客の減少などの目立った被害は生じていない状況でございます。火山活動が静穏化し、群馬県側において通行規制がかかることなく、この春も通常どおり両県の行き来ができることを観光面からも切に願うところでございます。
 今後も、状況を十分に注視しつつ、観光客の皆様には正確な情報を提供しながら、すばらしい信州のグリーンシーズンを楽しんでいただけるよう、関係市町村、観光協会等と連携いたしまして、北陸新幹線や高速道路も活用した観光誘客に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
      

◎環境部長(関昇一郎)

 

 上信越高原国立公園の活用策についてのお尋ねであります。
 上信越高原国立公園は、雄大な山岳景観を有する日本屈指の国立公園でありまして、また、火山の恵みを生かした温泉などを目的に年間2,600万人が訪れる一大観光地であります。
 こうした豊かな自然環境を保全しながら活用し、次世代にも引き継いでいくためには、ハード整備に加え、自然を学びながら持続可能な観光を実現するエコツーリズムの普及拡大を図ることが重要だと認識をしております。
 このため、県では、自然公園内のビジターセンター等と連携し、新年度から情報発信機能の向上や魅力的な自然体験プログラムの充実を図ることで自然環境の活用を進めることとしております。
 上信越高原国立公園の浅間山を初めとした価値ある自然をエコツーリズムに活用することにより、地域振興や観光振興につなげてまいりたいと考えております。
      

◆山岸喜昭

 

 それぞれ御答弁いただきましてありがとうございました。
 火山を抱えます観光地では、山岳高原の恵みをいただきながら、火山の魅力とともに危険を伴う面も発信して、いざというときの対策を日ごろから考えておく必要性を改めて認識しまして、質問を終わります。ありがとうございました。