平成30年11月定例県議会 発言内容(埋橋茂人議員)


◆埋橋茂人

   

 信州・新風・みらいの埋橋茂人です。通告に従い、私は主に二つ質問を申し上げます。

 一つ目は、入管難民法改正法案、新たな在留資格の創設についてです。
 11月2日、安倍内閣は、出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律案、以下、入管難民法改正案と言いますが、閣議決定しました。11月28日の衆議院法務委員会で与党が強行採決し、今国会で法案を可決、成立させようとしています。
 国内の人手不足は深刻であり、労働力の確保が重要な課題であることは共通した認識だと思います。しかし、新たに創設される在留資格「特定技能」は、人材不足とされる分野において外国人材を受け入れる制度です。基本的に整理すべき事項がいまだ多くあります。
 とりわけ、一つ、受け入れ人数上限が5年間で34万5,000人余と一応の人数は示されていますが、業種別等の内容は示されていません。
 二つ、業種は14業種とし、単純労働は受け入れないとしていますが、例示がありません。
 三つ、労働環境の整備についても、失踪者が7,089人にも及んでいますが、対応策が示されていません。
 四つ、永住権についても、新たに設けられる特定技能2号の該当者は永住権の申請が可能になると考えられますが、その後の部分が曖昧なままです。その他、健康保険制度の適用範囲や参政権の問題も明確になっていません。
 また、裁量労働制のときと同様、職場をやめる理由が、原文では「低賃金だから」となっているのを、公表データでは「より高い賃金を求めて」と、またもやデータの恣意的な改変が行われている等々です。重要な部分が法律成立後の関係各省の省令に委ねられる、いわゆる委任法になっています。事実上の移民政策であり、導入されれば国の形、社会の仕組みが大きく変わらざるを得ないものであり、省令に任せるべき事項ではありません。
 私は、長期的な展望に立った多角的な論議と哲学が必要だと強く思っています。また、日本語教育、外国語教員確保、コミュニティー対策等々、基本的に課題が多く、1市町村の手に余ることは明らかです。工場の労働力として多数の外国人が居住する市町村の事例から見ても、欠陥だらけの制度の影響を受けるのは当該市町村です。今回の改正について知事としての見解を伺います。
      

◎知事(阿部守一)

 

 入管法の改正についての私の見解についてという御質問であります。
 海外人材の活用につきましては、昨年度、県として、雇用・就業支援担当部長を座長として関係課長で構成するプロジェクトチームにおいて対応のあり方を検討してきているところであります。その際、県内に事務所を有する法人等に対してアンケートを行いました。回答いただきました454の法人等のうち約4分の1の法人等で過去3年間に外国人を採用したという回答でありました。また、従業員が不足していると回答をした209の法人等のうち、約4分の1の法人等で海外人材も含めて人材を充足していきたいというふうな回答がなされておりました。
 こうした法人等の考え方、あるいは既に長野県内においても約1万5,000人の外国人の方々が就労されていること、また、将来的には人口減少で労働力の大幅な不足が見込まれること、こうしたことを鑑みますと、省力化投資の促進等によります産業の生産性の向上や、女性や高齢者、障害者等の一層の活躍の促進とあわせて、外国人材についても一定のルールのもとで受け入れていくことは避けて通れないものというふうに考えます。
 しかしながら、外国人を受け入れるというのは、お越しいただく方々は生きた人間であります。単なる機械的な労働者ということではないわけであります。特に、特定技能2号では家族にも在留資格が付与されるということになるわけでありまして、地域社会においてもそうした方々を温かく受け入れて真の共生社会を築いていくと、そうした強い決意が必要だというふうに思っております。そうしたことから、企業での受け入れ体制はもとより、地域社会におけるさまざまな対応、お子さんの教育であったり、医療であったり、こうしたことも必要になってくるというふうに考えております。
 国の法案のみでは実際の運用がどうなるのかということが必ずしも明確ではないわけでありまして、本県の産業や地域社会への影響が明確でない部分がございます。しかしながら、現実的には、こうした対応は、市町村や我々長野県、都道府県が取り組むべきことが多く出てくるわけでありますので、国においては、外国人の受け入れ、共生のための対策を早急に示して具体化していただくとともに、我々の取り組みに対してもしっかり支援をしてもらわなければいけないだろうというふうに思います。
 また、日本人の就業促進や省力化のための投資の促進についてもより一層力を入れていただく必要があるというふうに思っております。県としても、この人材の問題は、産業分野においては緊急を要する課題だというふうに考えております。IoT、ロボット等の利活用のための戦略を早急に策定して、各分野の生産性向上に全力で取り組んでいきたいというふうに思っておりますし、また、就業促進・働き方改革戦略会議では、これまでの議論を踏まえて、若者はもとより、女性や高齢者、障害者、こうした方々の就労促進を図るための当面の方針を年度内には取りまとめて具体化していきたいというふうに思っております。引き続き関係機関と連携してこの就業の問題にしっかりと取り組んでいきたいと考えております。
 以上です。
      

◆埋橋茂人

 

 お答えをいただきました。少し重複する部分がございますが、続いて産業労働部長に伺います。
 日本で働く外国人労働者の数は、厚生労働省の「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(2017年10月末現在)」で約128万人。県の人数は今知事がおっしゃられたとおりであります。大変な人数であります。労働組合連合は、入管難民法改正案、この新たな在留資格の創設の閣議決定に対する談話を出しています。
 長いので一部を要約しますが、一つとして、社会的影響の大きな課題であり、国民的議論が必要として、2月の総理発言を契機に短期間に非公開で取りまとめられたこの法案は、専門的、技術的分野に限って外国人材を受け入れるとしてきた従来の政府方針を大きく転換するものである。新たに創設される在留資格「特定技能」は、人材不足とされる分野において外国人材を受け入れる制度だが、社会的影響の大きな課題であり、十分な時間をかけて包括的な議論を行う必要がある。
 二つ、基本方針、分野別運用方針の検討プロセスは公開すべきとして、法案は、在留資格「特定技能」制度の根幹である人手不足の判断基準、技能レベル、受け入れ分野等について基本方針及び分野別運用方針において決定すると定めている。これらの方針は、法案成立後に閣議決定または関係行政機関の長による協議によって決定されるとするが、国内雇用への大きな影響を考えれば、関係者のみの閉ざされた場で協議をすることは極めて問題がある。女性や高齢者も能力を発揮できる就業環境の整備、非正規雇用労働者の処遇改善が十分になされた上での検討であるのか、検討のプロセスを明らかにすべきである。
 三つとして、全ての外国人労働者の権利と人権の保障が重要として、長く労働関係法令違反、人権軽視の問題が指摘されてきた外国人技能実習制度においては、昨年11月に適正化のために技能実習法が施行されました。しかし、依然として最賃未満の賃金しか支払われない、労災に遭ったが労災申請できない、違法な長時間労働を強制される等の問題が後を絶ちません。日本人と同様に労災関係法令が適用されるとはいえ、多くの外国人労働者は日本語能力の問題から権利を行使することが難しい。まずはこうした日本で働く全ての外国人労働者の権利、人権を保障することが先決である。
 四つとして、国会において徹底した議論が求められるとして、連合は、今後の国会審議において、外国人労働者保護のため、日本人と同等報酬、ブローカーの排除、罰則の強化といった実効性ある施策の導入を求めていく。同時に、生活者としての外国人労働者について、日本語教育や公共サービス、多文化理解等の共生施策についても、社会的コストの負担の問題も含め徹底した議論が行われることを求める。外国人を含む日本で働く全ての労働者保護の後退や労働条件の低下を招くことがないよう、構成組織、地方連合会と一丸となり、連合フォーラム議員と連携した取り組みを強力に展開していく等々、多くの問題点を指摘しています。
 県内においても、人手不足の対策として、また、安価な労働力確保としての外国人材の受け入れ拡大策が取り沙汰されています。国内の有効求人倍率は、数字上は大きく改善していますが、不本意非正規労働者の比率はまだまだ多く、安易な外国人労働者の受け入れ増は、雇用においてその層と競合し、政府の掲げる働き方改革、一億総活躍社会、介護離職ゼロと逆行するものだと言わざるを得ません。
 そこで、以下、産業労働部長に3点伺います。
 労働不足対応は、まずは県内での働き方改革を推進し、県の重要施策に掲げた生産性の向上、女性や高齢者の就業環境の整備、非正規雇用労働者の処遇改善等に最優先で取り組むべきだと思いますが、県の考え方や具体策を伺います。
 二つとして、法案では、分野横断的な方針を明らかにするための基本方針を閣議決定し、受け入れ分野ごとの方針を明らかにするための分野別運用方針を定めることとしています。この分野別受け入れ方針の策定に当たっては、労使や外国人支援団体を含む国民各層の意見を集約する場を設け、プロセスの透明性を確保すべきであると思いますが、いかがですか。
 三つとして、多くの外国人労働者を受け入れた場合、国内労働者の労働条件の影響が強く懸念されますが、県の考え方を伺います。
      

◎産業政策監兼産業労働部長(内田雅啓)

 

 労働力不足対応について御質問をいただきました。
 ただいま知事からも申し上げましたが、県としては働き方改革と就業促進を図るため、まずは業務の効率化等による生産性の向上を進めるとともに、女性、高齢者、障害者にとって働きやすい環境の整備を行い、労働参加を促し、あわせて人手不足が深刻な分野などで外国人材を活用することが適当と考えております。
 国でも、本年6月に閣議決定されました骨太の方針2018において、設備投資、技術革新、働き方改革などによる生産性向上や国内人材の確保を引き続き強力に推進し、その後、一定の専門性、技能を有し即戦力となる外国人材を受け入れていくとしてございます。
 具体的に、県では、県委託のアドバイザーが年間3,000社を超える企業を訪問し、多様な働き方制度の導入について助言をしたり、仕事と家庭の両立ができる職場環境の改善に取り組む企業を県が認証いたします職場いきいきアドバンスカンパニー制度などにより働きやすい職場づくりを推進し、就業につなげてまいったところでございます。
 今後は、現在行っております長野県就業促進・働き方改革戦略会議での各界からの御意見をもとに、人手不足に短期間での効果が期待できる当面の取り組み方針を取りまとめ、構成団体等と連携をいたして速やかに実施してまいります。
 次に、分野別運用方針の策定についてでございます。
 国では、新たな外国人材の受け入れについて、入管法改正案成立後、政府基本方針を閣議決定し、その後、法務省と関係省庁において分野の特性を考慮した分野別運用方針を決定することとなっております。同方針においては、人手不足の状況、生産性の向上や国内人材確保のための取り組み等が記載されることとなっており、外国人材に求める技能や日本語能力の水準、人手不足状況の変化への対応など非常に重要な項目が多いことから、さまざまな意見を踏まえて策定されることが望ましいと認識しております。
 最後に、国内労働者の労働条件の影響についてでございます。
 外国人材の受け入れにつきましては、国が7月に中間取りまとめを行った外国人材の受け入れ・共生のための総合的対応策の中で、適正な労働条件と雇用管理の確保・労働安全衛生の確保に取り組んでいくとしております。人手不足分野での多数の外国人材の就労により、国内労働者の賃金の低下、雇用情勢の悪化等が懸念されておりますが、国では、国内労働者への影響を考慮し、外国人材受け入れ人数を制限するため雇用への悪影響は少ないとし、また、賃金については、経済動向などさまざまな要因が影響するため一概に答えることは困難としております。
 県といたしましては、こうした国の見解も踏まえ、外国人材受け入れ後の国内労働者の影響について、経済団体、労働団体、労働局等と情報共有を図り、動向を注視するとともに、不適正な事案が生じた場合には連携して対応してまいります。
 以上でございます。
      

◆埋橋茂人

 

 お答えをいただきました。以下は意見でありますが、今後、政府は5年間で34万5,000人を迎え入れるということを言っておりますが、2012年の12月から2018年の6月までに203万人から264万人と既に61万人の増加を見ております。上限とする35万4,000人で解消するかどうか極めて疑問であります。
 就業者予測でありますけれども、2015年から20年までには120万人減る、20年から25年までには203万人減ると言われています。これを、外国人労働者だけで今の34万5,000人では全く焼け石に水でありますから、国内の雇用対策を含めてもっと大きな政策を国にとってもらいたいということを県からも申し入れていただきたいと思います。
 ちなみに長野県は、私もこの場で触れましたが、2012年までの15年間で、全国で下から3番目というか、多いほうから3番目といいますか、7万7,000人の就業者が減っております。日本で稼げるのは月に平均1,000ドルというレベルでありますから、台北やソウルと同じレベルであります。2017年のスイスの国際経営開発研究室の調査によりますと、外国人材から見た日本の魅力度ランキングは、63カ国中51位、2015年の移民統合政策指数では、総合性、38カ国中27位、差別禁止規定では38カ国中37位と言っています。果たして日本が選ばれるのでしょうか。大変疑問なところでございます。
 続いて、長野県主要農作物等種子条例関係について申し上げます。
 生産者、流通業者、消費者の皆さんから心配の声が出ている主要農作物種子法廃止に対して、知事は、主要農作物等に係る県条例を定め、守るべきものは守っていくとの方針を示されました。御英断に深く敬意を表するところです。
 9月定例会において、我が会派の竹内議員の代表質問における条例制定のスケジュールに関して、2月県会で骨子案を提示し、6月県会で条例案を県議会に諮るとのお考えが知事から示されました。
 種子法が廃止されたことについて各地で自主的な研修会、勉強会が開かれ、多くの県民の皆さんが参加されています。私も幾つかの集会に出ていますが、国会での議論が衆参両院でわずか12時間という短さであったことや農業競争力強化法案のパッケージであったために、さまざまな論議が交わされています。
 そこで、条例制定に当たって、県の基本的な考えを示し、広く県民の意見、要望を聞くため、県として県民の意見を聞く機会をどのように設けるのか。また、関係機関や消費者からどのように意見を聴取するお考えか、お聞きします。
      

◎農政部長(山本智章)

 

 種子条例制定に当たっての意見聴取についてのお尋ねでございます。
 現在、農業者や種子生産者、農業団体、消費者などさまざまな立場の皆様から意見交換やアンケート調査の実施などにより御意見をお伺いしているところでございます。
 今後、いただいた御意見を踏まえまして、来年1月までに条例の骨子案を作成し、パブリックコメントを行うとともに、その内容を詳しく説明し、御意見を伺う機会を設けてまいりたいと考えております。
 さらに、2月には、農業者や消費者の代表、食品流通業界、学識経験者などの委員で構成される長野県食と農業農村振興審議会におきまして議論していただくこととしております。
 以上でございます。