平成30年2月定例県議会 発言内容(石和大議員)
◆石和大
信州・新風・みらいを代表して順次質問をいたします。
長野県総合5カ年計画の基本目標「確かな暮らしが営まれる美しい信州」は、山紫水明の山や里の神々しささえ感じさせる風景をあらわし、確かな暮らしの営みは、まさに信州の自治を端的にあらわしていると感じています。
5年前につくられたこの目標は、今、もう一段階進化しようとしています。人生100年時代における未来に向けた県づくりに挑戦できることに大きな喜びと誇りを感じています。そして、光が当たりにくいところに光を当てるという知事の考えに私も共感をいたします。
豊かな自然と人のつながりが強いという長野県の特性を生かし、多様性を享受することが求められる現代における個性ある地域の力の持続、それを求めるための政策立案、そして行政には県民の皆様の共感と参加、協働が不可欠です。そんな視点をあらわしたのがサブタイトルの「学びと自治の力で拓く新時代」だと理解しています。
人はなぜ学ぶのか。人の役に立つ、社会で役に立つ人材に成長するために学ぶのだ。そのように教えられました。子供のころにはぴんとこないところがありましたけれども、年を重ねるうちにだんだんと実感してきます。現在の長野県の教育では、何のために学ぶのか、どう教えているのでしょうか。
生産性の追求から、世の中を合理的に回すことに重きが置かれ、それにより戦後の発展から始まる経済成長がありました。もちろん、そこには人口が急激にふえた人口ボーナスがありました。しかし、現在は、少子・高齢化、人口減少という状況になっています。これまでに経験のない状況に大きな不安を抱えています。長寿は着実に進展し、人生の終局までの生き方を考える必要のある時代、人生100年時代の到来が迫りつつあります。自然科学の進展とともに、幸せや生きがい、そして終局までをどう生きるかという哲学が必要なのではないかと感じます。人生100年時代、人生80年とはまた違う人生設計を信州で立てる、それを一人一人が主体的に考えることが学びだと考えます。
現在の自治の単位をいつまで維持できるのか、超高齢社会について細かい分析が必要だと感じます。自治組織の統合や集約化、市町村の合併まで視野に入れる必要も感じます。文化や伝統の維持も、全部が持続可能な地域ではなくなる可能性があります。誰も取り残さないということをどう具現化するのか考えなければなりません。
我々の会派は、県内各地域に出向き、県政対話集会を開催し、県民の皆様から直接御意見をお聞きしたり、中山間地の住民の皆様の自治活動の実例を学び、意見交換をしたり、現場に赴いてということにも力を入れています。もちろん、個々の議員もふだんの活動を通じて県民の皆様の声を県政に反映できるように活動をしています。
そのような中で感じるのは、価値観もそうですが、生き方、働き方、暮らし方の多様性であります。多様性を享受する社会を形成できる長野県の構築には、県民一人一人の学びと自治の力が必要です。そして、そのための政策も、長野モデルと言われるような独自性も求められます。急激に変革できることは少ないでしょう。しかし、誰ひとり取り残さないという国連のアジェンダにあるSDGsの理念を遂行するには、長野県としての県民総ぐるみの取り組みが必要です。そんな取り組みのスタートに当たり、会派を代表して質問をいたします。
まず初めに、平成30年度当初予算案についてお尋ねをいたします。
一般会計の総額は8,463億9,563万3,000円で、平成29年度当初予算と比べると、中小企業融資制度資金や県立大学建設費などの減少により、約162億円、1.9%の減となっています。しかしながら、国の補正予算を最大限活用して当初予算案と一体的に編成した平成29年度2月補正予算案の額を加えると8,674億7,383万4,000円で、平成29年度当初予算と比べると、約49億円、0.6%の増となっており、実質的には本年度を上回る予算額が確保されているところです。
他方、当初予算での基金の取り崩し額や県債の発行額は減少し、県債残高も引き続き減少する見通しとなっており、実質公債費比率、将来負担比率といった健全化判断比率も健全な水準を維持する見込みで、財政の健全性の確保といった点についても一定の配慮がなされており、高く評価するところであります。
予算案の内容については、当初予算案、補正予算案とも次期総合5カ年計画・しあわせ信州創造プラン2.0の実現に向けて編成されたとのことであり、とりわけ、当初予算案の発表資料には、「学びと自治の力で拓く新時代に向けて」という文言が付されております。これは、次期総合5カ年計画・しあわせ信州創造プラン2.0の基本目標にサブタイトルとして加えた「学びと自治の力で拓く新時代」からとったものであるということであります。
平成30年度はプランの初年度に当たることから、プランの実現に向けて確かな一歩を踏み出していきたいという知事の強い思いのあらわれであるというふうに推察するところであります。発表資料を拝見すると、随所に学びと自治の力を意識した記載が見受けられ、次期5カ年計画に対する知事の並々ならぬ意欲を感じているところです。
平成30年度当初予算案は「学びと自治の力で拓く新時代に向けて」として取りまとめられましたが、この言葉に込めた思いはどんなものか。あわせて、平成30年度当初予算案ではしあわせ信州創造プラン2.0の内容をどの程度具体化することができたと評価しているのか、知事にお伺いをいたします。
また、今後、しあわせ信州創造プラン2.0の内容をさらに具体化していくためには、さらなる財源の確保が必要になると思われます。高齢化の進展により、医療、介護など社会保障関係費が年々増加する中で、しあわせ信州創造プラン2.0の具体化に向けてどのようにして必要な財源を確保し、財政運営を行っていくのか。知事にお伺いいたします。
さらに、重要な財源に当たる県債については、県債残高は引き続き減少するとの見通しですが、県債残高全体では、平成30年度末においても1兆5,574億円になると試算されており、県債残高が依然として1兆5,000億円を超える高い水準にあります。これは、臨時財政対策債の残高の増加が影響しているものとも思われますが、去る12月に、地方6団体からも、今後も臨時財政対策債の残高の増加が見込まれることから、地方交付税法の法定率の引き上げや臨時財政対策債の廃止など、特例措置に依存しない持続可能な制度の確立を目指していただきたいとの共同声明が出されております。
そこで、最初の選挙の公約時から臨時財政対策債の廃止を含めた抜本的な見直しを国に求めていくというふうに発言をされていることについて、知事は具体的にどうやっていくのか、御所見を伺います。
平成30年度当初予算案等についての御質問に順次お答えを申し上げたいと思います。
まず、「学びと自治の力で拓く新時代に向けて」というこの予算に名づけたネーミングについての思いという御質問でございます。
石和議員の御質問の中にもありましたように、私とすれば、まずはこのしあわせ信州創造プラン2.0の第一歩をしっかりと踏み出す、そうした予算だということを明確にしていきたいという思いがございます。
そうしたことに加えて、今回の予算から、学びと自治というものをさまざまな政策を進めていく上での基本に据えていくということを県組織内外含めて明らかにしていきたいと。もちろん、政策の中には、そもそもそれ自体が学びという政策もありますけれども、しかしながら、ありとあらゆる政策を進めるに当たっても、やはりこの学びの観点、それから自治という観点、これは大切にしていきたいと思いますし、そういう観点を持ちながら政策を進めていきたいと、そういう思いを込めてこのタイトルをつけさせていただいているところでございます。
次に、当初予算でのプランの具体化についてということでございます。
今回、新しい総合計画と予算編成を並行して行ってきましたので、必ずしも新しい総合計画の考え方で打ち出しているものを全て今回の予算に盛り込めたわけではございません。ただ、新しい方向性を予算の中でもかなり明確にすることができたのではないかというふうに思っております。
例えば、学びの県づくりあるいは産業の生産性が高い県づくりの分野では、ICT教育の充実とかAI、IoTの活用といったような新機軸を打ち出させていただいておりますので、そういう意味では、新しいプランとこの予算を一定程度連動させることができたというふうに思っています。
他方で、今回の予算案の中には、検討のための予算にとどまっているものもございます。例えば、幼児教育支援センターの設置の検討であったり、信州地域デザインセンターの設置の検討であったり、総合計画の考え方を踏まえて具現化していくための予算というものもかなり計上させていただいておりますので、今後、さらに具体的な検討を行った上で政策の具体化を図っていきたいというふうに思っております。
次に、プランの具体化のための財源確保ということでございます。
これは、大きく申し上げて、地方税財源の充実、それから長野県としての税収の確保、そして事務事業見直しを初めとする県としての財政、財源確保の取り組みと、大きく三つの観点があると思います。
特に、地方税財源の充実については、これは全国知事会等も通じて県としても折に触れて強く求めてきているわけであります。先ほども少し御答弁申し上げましたが、法人関係税の偏在是正等、さらに地方税財政の充実に向けて国として取り組んでいただかなければいけないことがあるというふうに思っています。
また、特に、御指摘がございました社会保障関係費はこれから増加が見込まれるわけでありますが、この社会保障関係経費については、御承知のとおり、国が法令で我々地方公共団体に義務づけているというものがほとんどでございますので、そうした観点からは、地方公共団体の財源保障の仕組みも含めてしっかりと国が財源を確保してもらうことが大前提だというふうに思っています。そういう観点での国への働きかけということをやらなければいけません。
そして、「産業の生産性が高い県づくり」を掲げておりますように、今後とも、長野県の産業、企業が元気な状況を維持してもらって、そして税収が結果的に上がってくるというような状況を維持していきたいというふうに思っています。加えて、事務事業の見直しとスクラップ・アンド・ビルドを徹底する中で財源確保に努めていきたいというふうに思っております。
それから、臨時財政対策債についての御質問でございます。
本来、地方の財源不足は地方交付税の法定率の引き上げで解消すべきものという問題意識を強く持っております。平成13年度に臨時財政対策債が創設され、臨時という名のもとに今日に至るまで継続されている、本来の制度が私はかなりゆがめられてきているんじゃないかというふうに思っています。
現に、長野県の県債残高の約4割をこの臨時財政対策債が占めているという状況で、本来であれば交付税で交付を受けるべきものが借金に置きかわってしまっているということは、これはある意味異常な状況だというふうに思っております。
これまでも知事会等を通じて要請をしてきましたし、また、県独自にも臨時財政対策債の廃止を含めた抜本的な見直しを国に求めてきております。これからも関係する他の都道府県、あるいは市町村、こうした皆さんとも連携をしながら、引き続き国に対して強くこの見直しを求めていきたいというふうに思っております。
以上でございます。
次に、次期総合5カ年計画についてお聞きをいたします。
人口減少、少子・高齢化が急速に進み、平成26年度から国、地方を挙げて地方創生に取り組んでいるところです。本県においても、一昨年度、人口減少に真正面から対応するため、県当局と議会が一緒に信州創生戦略を策定し、精力的に取り組まれております。
本県の人口は依然減少傾向にはありますが、合計特殊出生率は増加しており、また、社会増減も減少幅が縮小してきております。豊かな自然環境と首都圏へのアクセスのよさという立地条件に恵まれていることが、積極的な移住施策の取り組みと相まって、移住したい都道府県ランキングで本県が12年連続で1位となっていることは大変喜ばしいところであります。
しかしながら、人口の東京への一極集中はとどまるところを知りません。また、地域間の格差も生じております。地方が元気でなければ日本の発展はありません。人口減少対策に特効薬はないかもしれませんが、政府においては、持続可能な国づくりのために、ぜひ場当たり的なものではなくて、将来を見据え、一貫性のある効果的な対策を講じることを望むところであります。
一方、技術革新も急速に進んでいます。今日、新聞などでIoTという言葉を頻繁に目にするようになってきました。仮想通貨などが世間を騒がせ、また、AIがプロ棋士を凌駕するなど、バーチャルとリアル、仮想と現実が混然一体となって、時代は複雑性を増しながら目まぐるしく変化をしています。
こうした状況の中で、県民に対し、県づくりの方向性や道しるべを明確に示し、未来に向けてともに歩んで強いメッセージを発していくことがリーダーには必要であるというふうに考えます。
知事は、一昨年の11月議会において、県政に切れ目を生じさせないよう、次期総合5カ年計画の策定に取りかかる旨を表明されました。以来、1年3カ月にわたって作業を進めてこられ、このたび計画案公表の運びとなったわけであります。次期計画は、阿部知事がつくる実質2回目の総合5カ年計画です。現行計画の基本目標「確かな暮らしが営まれる美しい信州」、これを継承しつつ、未来志向の計画とするためバージョンアップを図ったことから2.0としたということであります。どのような時代にあっても確かな暮らしが保障され、安心して生活ができることは極めて重要なことであり、阿部知事の政治信条の基本であると推察いたします。
しあわせ信州創造プラン2.0の特色は大きく六つあるとお聞きしています。学びと自治の力を政策全体の推進エンジンとすること、中長期的な視点でのチャレンジプロジェクトを掲げたこと、地域計画を充実したこと、国際的な目標であるSDGsを意識したものであること、信州創生戦略を引き継ぐこと、そして学ぶ県組織へ転換することです。これらは、いずれも重要であり、また、現行計画との違いも鮮明となっており、評価するものであります。
私なりに解釈すると、これらに共通する概念は、協働、コラボレーションではないかと考えます。しあわせ信州創造プラン2.0は県政の最上位計画でありますが、これは県のみで実現できるものではないというふうに思っています。長野県がいつまでも幸せな県であり続けるためには、市町村はもとより、企業や団体、大学、そして県民が協力しながら、それぞれが持つ力を最大限に発揮していくことが重要であると考えます。そういった意味で、「学びと自治の力」を計画の中心に据えたことは大変意義深いものと考えます。ぜひこれが県民の皆様に浸透し、計画が着実に推進されることを心より願っています。
とかく計画は、つくることに精力を使い果たし、実行は二の次になりがちです。今回、つくって終わりの計画にしないためということもあり、構想レベルではありながらも六つのチャレンジプロジェクトが掲げられました。このプロジェクトに取り組むことによって、次の時代につなげていく、未来に向けてのメッセージとも受け取れました。現在、現行計画も九つのプロジェクトが掲げられていますが、これとどういうふうに違うのかもあわせて、チャレンジプロジェクトの概念及びこれをどのように進めていこうと考えておられるのか、知事の御所見を伺います。
次に、次期総合5カ年計画では、学びと自治の力を全ての政策の推進エンジンとして位置づけ、技術革新や人口減少、少子・高齢化など、本県を取り巻く環境の急速な変化に的確に対応していく決意を述べられたものと理解をしています。
中でも、先ほども申し上げたとおり、中長期的視点であえて難しい課題に取り組んでいく政策の方向性を示されたチャレンジプロジェクトについては、具体的な施策など突っ込んだ記述には至っていませんが、時代の変化を先取りし、意欲的に長野県行政を前進させていこうという意気込みが強く感じられたところです。
私としては、計画そのものについては前向きに捉えておりますが、本当の意味でこの計画の真価が問われるのはこれからであることは言うまでもありません。先ほども申し上げたとおり、計画を絵に描いた餅にしないためには、県民の皆様や市町村、各種団体など多様な主体を巻き込みながら、県組織一丸となってさまざまな課題にチャレンジしていくことが求められます。
本計画では、職員一人一人が学びと自治の実践者として主体的に学び続けるとともに、そうした職員の能力を最大限に生かす機能的な組織を学ぶ県組織と定義し、いわば七つ目のチャレンジプロジェクトとして、学ぶ県組織への転換に取り組むというふうにしております。計画の成否を左右すると言っても過言ではない県組織の変革が真に県民のための変革につながるのではあれば歓迎すべきことだと考えますが、どのようにして学ぶ県組織へ転換を図ろうとしておられるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
次に、次期総合5カ年計画においては、政策推進の基本方針の一つに学びの県づくりを掲げるとともに、政策推進エンジンの一つとして学びを位置づけています。学びという視点は、私も大いに共感するところであり、私にとっても大切なものであり、私の原点だとも考えております。そこで、なぜ学びの県づくりを政策推進の基本方針に掲げ、政策推進エンジンの一つとして学びを位置づけたのか、その理由について知事の思いを改めてお聞きいたします。また、この学びの県づくりの趣旨を県民にどのように浸透させていくのかもあわせてお伺いをいたします。
この計画では、2030年を見据え、チャレンジプロジェクトの一つに、「人生を豊かにする創造的な「学び」の基盤づくりプロジェクト」を掲げています。この中で、いつでもどこでも誰もが主体的に取り組む「学び」への転換を進め、県全体を学び、学び合い、学び続けられる環境がある学びのフィールドにすると述べられていました。そのためにどのように政策を展開していくのか、知事の御所見を伺います。
しあわせ信州創造プラン2.0の学びの分野の個別計画として、第3次教育振興基本計画案が示されています。基本理念として、「「学び」の力で未来を拓き、夢を実現する人づくり」を掲げています。これまで、信州人は、厳しく過酷な自然環境の中、学びの力で未来を切り開いており、現在、これからも学びの力で未来を切り開いてほしいとの願いが込められているとのことです。
そこで、教育長にお伺いをいたします。
学びの力で未来を開く人材とは具体的にどのような人材を想定し、そのような人材育成のために子供たちへの教育ではどのような方法で対応していくのでしょうか。日本中、どの地域でも実施されているような教育だけでは信州教育の優位性は示せないと考えます。信州ならではのオリジナリティー、独創性にあふれた教育、学びをぜひ実現していただきたいと考えるが、いかがでしょうか。
働き方改革の推進についてお聞きいたします。
昨年3月28日、政府は働き方改革実行計画を決定しました。主な内容は、同一労働同一賃金を導入し、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消を目指すとしております。また、長時間労働の是正として、時間外労働の限度は原則として月45時間かつ年360時間とし、違反には罰則を科すとしました。特例として、臨時的な特別の事情がある場合、労使協定を結ぶ場合の上限を年720時間としております。その後、労働政策審議会の審議を経て、現在開会中の通常国会に関連法案が提出される予定であります。法案は、今国会の最重要法案の位置づけというふうに聞いておりますが、国会での慎重な審議を期待いたします。
働き方改革は、生き方改革、暮らし方改革にもつながり、県民にとっても大きな関心事であります。そこで、県としての働き方改革に対する考え方及び県内における今後の進め方について知事にお伺いをいたします。
現下の雇用情勢は、長野労働局発表の最近の雇用情勢によれば、県内の有効求人倍率は、昨年11月、1.72倍、12月、1.74倍と2カ月連続で1.7倍台の高水準になっております。県内の多くの企業は、人手不足で苦労しているにもかかわらず人材を確保できないと聞き及んでおります。
我が国においては、今後も、人口減少に伴って労働力人口はさらなる減少が見込まれます。人手不足により、企業の事業継続が困難な事態に陥ることも懸念されます。県内産業の活力を維持していくためには、多様な人材の労働参加を促し、意欲ある全ての人が能力を発揮して働くことが可能となるような支援、環境整備をしていくことが必要と考えます。
そこで、県としての多様な人材の労働参加を促すための新年度の取り組みについて知事にお伺いをいたします。
労働力のさらなる不足が見込まれる中、専門人材や高度人材の不足による企業の競争力の低下など、県経済への影響が懸念されます。職業別では、特に福祉、介護、観光業、建設業などの分野で人手不足が顕著となっています。また、AIやIoTなどの新技術によって経済環境は急激に変化し、先端技術を活用した新たな商品、サービスが生まれてきています。国においても、こうした技術を生かしたソサエティー5.0、超スマート社会の実現を目指す取り組みも始めております。AI、IoTなどの技術の導入は、人手不足を補い、各分野の生産性の向上に大きな効果をもたらすと期待される反面、こうした技術を活用できる人材の不足は、特に県内の中小企業にとっては大きな課題となっているところであります。
そこで、技術革新の進展に対応し、県経済の活力を向上していく上で、AI、IoTなどの新技術を活用できる人材の育成確保に関しどのような取り組みをされていくのか、産業労働部長にお伺いをいたします。
脱炭素社会の構築についてお聞きをいたします。
現在策定している次期総合5カ年計画及び第4次環境基本計画において、脱炭素社会の構築に向けた県の取り組みについて伺います。
2015年12月に採択され、翌2016年に発効したパリ協定は、2018年2月現在、174カ国・地域が参加し、世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べ2度Cより十分低く保つとともに1.5度Cに抑える努力を追求するなど、これまでにない地球規模の気候変動対策であり、世界が一致して取り組む画期的なものです。また、同年9月、国連サミットでは、先進国と開発途上国がともに取り組むべき国際社会全体の普遍的な目標として、持続可能な開発目標、SDGsが採択されました。地球規模で人や物、資本が移動するグローバル経済のもとでは、一国の経済危機が瞬時に他国に連鎖するのと同様、気候変動、自然災害、感染症といった地球規模の課題もグローバルに連鎖して発生し、経済成長や社会問題にも波及して深刻な影響を及ぼします。SDGsは、こうした状況を踏まえ、途上国の開発に関する課題にとどまらず、世界全体の経済、社会及び環境の3側面を不可分のものとして調和させる統合的な取り組みであり、これまでとは異なる決意を持って取り組むべき課題とされています。
一方、世界の投資家の間では、ESG投資に関心が高まっています。これは、今日、企業が長期的に成長していくためには、環境、社会、企業統治の三つの観点が必要だという考え方で、ESGの観点が薄い企業は、大きなリスクを抱えた企業であり、長期的な成長ができない企業だということを意味しております。
また、2014年には、事業に使う電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる企業が加盟するRE100イニシアチブが創設されました。2018年2月現在で約122社が加盟しており、日本でも3社、リコー、積水ハウス、アスクルが加盟をしていると聞いております。自動車のEV化もあわせ、世界的に再生可能エネルギーの利用拡大が加速化しております。
こうした中、日本政府は、2016年5月に地球温暖化対策計画を閣議決定し、温室効果ガスを2030年度に2013年度比26%削減させるほか、2050年までに80%削減を目指すこととしました。同時に、SDGs推進本部を設置し、実施指針のビジョンとして「持続可能で強靱、そして誰一人取り残さない、経済、社会、環境の統合的向上が実現された未来への先駆者を目指す。」を掲げ、積極的に推進することといたしましたが、我が国が優先的に取り組まねばならない分野の一つとして、省・再生可能エネルギー、気候変動対策を掲げております。この中で、温室効果ガスの大幅な削減は従来の取り組みの延長では実現が困難であるとし、長期低炭素ビジョンでは、経済社会システムやライフスタイルのイノベーションの重要性や気候変動対策は、経済成長、地方創生、少子・高齢化社会対策など、我が国が抱える課題の同時解決に資するものであることが提言され、現在、2014年に策定したエネルギー基本計画においてもその見直し作業が開始されておりますが、気候変動対策で我が国が国際的に先導的な役割を果たす情報発信には至っていません。
一方、自治体では、省エネルギーの促進ばかりではなく、地域エネルギー会社を設立し、域内のエネルギー自立と少子・高齢化社会対策を同時に解決しようという取り組みが開始されるなど、省エネルギーと再生可能エネルギーの普及と拡大を目指す再生可能エネルギー100%地域の実現を目指す動きも見られ、昨年秋に県が開催した地域再生可能エネルギー国際会議の首長サミットでも、その実現に向け、長野宣言が採択をされました。
こうした中で、県は、現在、第4次長野県環境基本計画を策定中でありますが、長期的に再生可能エネルギー100%地域に向け、その実現のため、省エネや創エネに具体的にどう取り組んでいくつもりか、環境部長に伺います。
まず、チャレンジプロジェクトの概念や進め方、そして現行計画のプロジェクトとの違いについてという御質問でございます。
現在のしあわせ信州創造プランのプロジェクトは、これはいわば一般的なプロジェクトでありまして、実行の段階において部局横断的に施策を推進しようという観点で設定をしているものでございます。
他方で、今回のチャレンジプロジェクトは、これまでのものとは相当発想が違っております。まず、政策立案に重点を置いていこうというものでございます。人生100年時代、持続可能でイノベーティブな社会をつくろうといったような大局観を持ちながら、大きな枠組みで構想をつくっていくということにチャレンジをしていきたいというふうに思っております。
総合計画は5カ年の計画ということでありますが、こうした大きな構想というのは、5カ年の視点ではなかなか難しいということもありますので、中長期的な時間軸を持って、かつ、バックキャスティング的に政策をつくっていきたいというふうに思っておりますし、また、社会の変化が非常に激しい状況でありますので、この時点で政策固定ということではなくて、このチャレンジプロジェクトの部分については、今後実行しながら考え、考えながら実行していくと、そういうような形で進めていきたいというふうに思っております。
また、県組織の中だけではなくて、組織内外のさまざまな皆様方の力を結集して、いわば共創、協働ということを重視して取り組んでいきたいというふうに思っております。こうしたことを通じて、ぜひ将来の長野県づくりに向けた先駆的な政策を構築していきたいと考えております。
次に、どのように学ぶ県組織へ転換を図ろうとしているのかということでございます。
組織構造から運営システムの組織風土まで広範な検討、見直しに取り組んでいきたいというふうに思っております。職員の学びの奨励、あるいはしごと改革の推進、こうしたことに対して各部局連携して取り組んでいきたいというふうに思っております。
特に、私としては、机の上に座って何か構想を書くというだけではなくて、むしろ問題意識を多くの職員が持っていますので、中堅職員、若手職員も含めて多くの職員に参画してもらって先ほどのチャレンジプロジェクトを進める中で、ぜひ予算編成過程の見直しも行っていきたいと思っておりますが、そうした具体的な行政運営、行政のシステムの見直しを行う中で職員の行動が変化していくように促していきたいというふうに思っております。
次に、学びの位置づけと県民への浸透という御質問でございます。
私は、県知事としていつも考え続けているのは、長野県の強みは一体何なのか、長野県の個性は一体何なのか、長野県とは一体何なのかということを常に考えているところであります。そういう意味で、幸せな社会をつくっていく上で何が必要なのかということを考えたときには、この学びと自治ということがこれまでも重要でありましたし、これからますます重要になるというふうに思っています。特に、この二つの概念は、本県がこれまでも大切にしてきた価値だというふうに思っております。
また、特に学びについては、個人の生きがいや幸せの実現にもつながっていく。これは、社会的なテーマであると同時に、個人の幸せの実現にもつながるものでありますし、また、提案説明で申し上げましたように、大きな時代の転換点にあっては、やはり一人一人の学びというものが大きく社会を動かしていく原動力にもなり得るものというふうに考えております。
そうした観点で、より豊かで安心な社会をつくっていく上で、改めてこの学びに焦点を当てることが重要だというふうに考えたところでございます。
この学び、子供から大人まで一人一人の学びを大切にする県であり、また、受動的ではなくて能動的な学びの環境がある県であり、さらには、あらゆる政策の基本に学びを位置づける県でありたい、こうしたことを願意にしているわけでありますけれども、石和議員御指摘のとおり、こうしたことを県民の皆様方とぜひ共有していかなければいけないというふうに思っております。
県議会で御議決をいただければ、まず、この計画の考え方について、広く県民、関係者の皆様方にお伝えをして、協働して進める基盤をつくっていきたいというふうに思っておりますが、特に、この学びについては、例えばタウンミーティング等でテーマに扱っていきたいと思っております。
3月21日には、教育評論家の尾木直樹先生、脳科学者の茂木健一郎先生と私とで鼎談を行っていきたいと、この学びの県づくりに向けたキックオフイベントとして多くの県民の皆様方と一緒にその学びの県を考えていきたいというふうに思っております。
また、シニア大学、ウィメンズカレッジ、あるいは環境カレッジ等さまざまな学びの場を県としても設置をいたします。こうした実際の学びの場を通じて、県民の皆様方にこの学びの県づくりということも広げていきたいと思いますし、さらには、信州ウエブカレッジの構築に向けては、さまざまな県民の皆様方がこれまで主体的に取り組んでおられる学びの場とも連携、ネットワークをつくっていかなければいけないというふうに思っておりますが、こうした県民の皆様方の主体的な活動の場においても、この学びの県という概念を共有していただきたいというふうに思っています。さまざまなプロセスを通じて、この学びの県づくりについて皆様方としっかり共有できるように取り組んでいきたいと思っております。
それから、人生を豊かにする創造的な学びの基盤づくりプロジェクトの政策をどう具体的に展開していくのかという御質問でございます。
このプロジェクトは、県全体を時間や場所にとらわれない学びのフィールドに展開していくということにチャレンジをしていきたいというふうに思っております。
特に、子供たちの学びを支援する上で、地域と学校が一体化していく方向性、あるいは大人も含めてリアルな学びとバーチャルな学びのベストミックスを追求していきたいというふうに思っております。
本年度、このプロジェクトの第一歩といたしまして、ウエブ上のバーチャル講義とリアルな学びを融合させて双方の特徴を生かしていく信州・タウンキャンパス(仮称)の具体化に向けた検討に着手していきたいと思っておりますし、また、信州・学び創造ラボを県立図書館の中に整備をして、市町村立の図書館や公民館等とも連携して共同でワークショップを開催するなど、人、地域、情報が直接つながり合う学びの場づくりを進めていきたいというふうに思っております。これは、いずれも組織あるいは既存の行政分野の枠を超えて実施していくべきものというふうに考えております。先ほどの御質問の中にもありましたように、さまざまな組織の皆様方と協働して政策を展開していきたいと考えております。
次に、働き方改革に対する考え方、そして今後の進め方についての御質問でございます。
働き方改革とは、労働生産性を向上して柔軟な働き方を選択可能とすることで、若者も高齢者も、女性も男性も、障害のある方も、皆さんが活躍できる社会を創出するというものであります。特に、しあわせ信州を標榜している私ども長野県としては、この働き方改革を通じてお一人お一人の県民の皆様方がより充実した人生を送れるようにしていくということが重要だというふうに思っております。
県としては、これまでも社員の子育て応援宣言の登録あるいは仕事と家庭の両立ができる企業を認証する職場いきいきアドバンスカンパニー制度等の普及で働き方改革を進めてきております。今後は、こうした取り組みをさらに徹底していくということとあわせまして、社員や従業員にとって働きやすい環境をつくっていくということが、働く皆さんにとっても、そして企業の側にとってもこれからは重要であるという考え方をぜひ経営者の皆様方としっかり共有をしていきたいというふうに思いますし、また、働き方改革を進めていく上での具体的な取り組み手法、先進事例、こうしたものを幅広い皆様方と共有してこの働き方改革を進めていきたいというふうに思っております。
長野県就業促進・働き方改革戦略会議(仮称)を新年度早々設置していきたいというふうに思っておりますので、この働き方改革にオール長野県で取り組んでいきたいというふうに思っております。
次に、多様な人材の労働参加を促すための新年度の取り組みについてという御質問でございます。
平成30年度、学生、若者、子育て中の女性、高齢者、障害者、外国人、それぞれの観点で施策を進めていきたいというふうに思っております。
県外へ進学した学生のUターン就職をしっかり促進しなければいけません。そのため、県内企業へのインターンシップのマッチング等の強化をしていきたいというふうに思いますし、また、ジョブカフェ信州の相談を充実することによりまして、県内の未就労の若者の労働参加を促進していきたいと思っております。また、企業内保育所の設置や短時間正社員制度の導入等を支援することによって子育て中の女性の再就職支援を行っていきたいと思っておりますし、また、シルバー人材センターでの派遣業種の職域拡大、あるいは定年制の延長などを進めることによって、高齢者の活躍できる社会をつくってまいります。また、信州大学とも連携をして、外国人留学生と県内企業のマッチングも進めてまいります。
さまざまな方たちがその能力を十分に発揮していただくことができるように、このさまざまな支援策を通じて、県内各企業とも連携をしながら、多様な人材の労働参加をさらに促進していきたいというふうに思っております。
私に対しては以上でございます。
まず、教育振興基本計画の基本理念に基づく人材育成についてのお尋ねでございます。
変化の激しい予測困難な時代、言葉をかえれば答えのない時代を迎えておりますけれども、次世代の子供たちの時代にはもっとその傾向が強まると思いますし、ましてやAI等の進化により、ありきたりの答えなら機械のほうが早く正確に出せる時代となることは間違いないと思います。もはや答えを大量に覚えて正確に再現する、言われたことを右から左に迅速に正確にこなすということではやっていけない時代だと思います。
そして、答えがないのは生き方についても同じであります。何が幸せかということは誰も決めてくれない時代に突入したということだと思っています。何も考えなくていいからとにかくこれを覚えて実行しなさいという受け身的なあり方から、自分はどう考えるか、自分はどうしたいのか、いろいろな人とかかわって、相談して、自分が本当にいいと思うものをやっていこうという主体的、能動的な学びに転換しなくてはならないと思っております。
そもそも、自分で考え、創造していくことは、人間が本来持っているイノベーティブな力であります。一人一人が、自分の暮らしや仕事、仲間とのかかわりの中で、そのイノベーティブな力が存分に発揮できるようにすること、こういう人づくりを幼保、小、中、高、全ての段階で一貫して目指してまいりたいというふうに思っております。
このためには、学びの質の転換と、そのための環境整備が必要でございます。
まず、幼児教育の段階では、関係機関を巻き込んだ包括的な幼児教育の質向上システムの構築が必要でありまして、幼児教育支援センター(仮称)の設置を検討してまいります。また、義務教育では、さまざまな発達特性やバックグラウンドを持つ、そうした子供の多様性を前提として、主体的、対話的で深い学びに転換すべく、現場の知恵を総動員して授業デザインの変革を行ってまいります。そのための環境整備として教員の働き方改革を着実に進めてまいります。さらに、高校教育では、新たな学びの推進と再編整備計画を一体的に取り組む高校改革を推進してまいる所存でございます。
次に、信州ならではの教育、学びについてであります。
ただいま申しました学びの質を転換していくことは日本共通の課題でありますが、学ぶ主体である子供たちを見ますと、デジタル化社会の中で、バーチャルな人工的な体験に偏るということが懸念されます。そういう意味で、今後重要性を増してくるのが、実体験を通して頭を働かせ、感性を磨き、体を鍛えていく学びであり、ここに信州ならではの強みがあるというふうに認識しております。信州で学ぶことの強みは、豊かな自然を生かした体験的な学びや、地域と深くかかわる学びができることでありまして、これらの強みを生かした教育の充実を一層図っていくということが大切だと思っております。
一方、その強みをさらに生かすためには、子供たちが信州の強みそのものを自覚することが必要であり、県外の人々とかかわったり、海外から信州を眺めたりするなど、自分が生まれ育ったふるさとや自分が体験した学びを外から見る機会をつくることで自分自身を見詰めるもう一人の自分を育てていくことも重要だと思っております。こうしたことを踏まえ、信州が持つ強みを最大限に生かした信州ならではの新たな学びを実現してまいりたいというふうに思っております。
AIやIoTなど新技術を活用できる人材の育成確保についてのお尋ねでございます。
さきに中小企業庁が行ったアンケート調査によりますと、AI、IoT等の導入に当たって、そのための人材がいないため投資に踏み切れないとする企業が4割を超えておりまして、これら技術を活用できる人材の育成確保というものが急務になっていると認識しているところでございます。
そこで、来年度は、工科短期大学校において、ICTに関する知識、技術の教育訓練を実施いたしますほか、工業技術総合センター等で行うIoTに関する講座や、民間教育訓練機関に委託するICT関連の高度人材育成講座の開催など、人材育成のための事業を展開してまいります。また、工業技術総合センターが、関係機関や専門家の協力を得ながら実際に企業のAI、IoT等の導入を支援する中で、企業の中堅技術者の知識、技術の取得につなげていくと、そういった取り組みも展開してまいる予定でございます。
さらに、こうした県内における育成にとどまらず、ICT関連の人材や企業を首都圏等から誘致をしてくるといったことによりまして県内への確保、集積を図ってまいります。来年度、有識者の知見を得まして新たに策定いたしますAI・IoT利活用戦略におきましてもさらなる取り組みについて検討を進めてまいりたいというふうに考えてございます。
以上でございます。
再生可能エネルギー100%地域に向けた具体的な取り組みについてのお尋ねでございます。
パリ協定の発効を踏まえ、現在策定中の第4次の環境基本計画では、低炭素から一歩進め、脱炭素社会の構築を目標に掲げ、将来的に再生可能エネルギー100%地域を目指すこととしております。このためには、省エネルギーの推進と再生可能エネルギーの普及拡大を一段と加速することが必要と考えております。
省エネ対策といたしましては、新たに中小規模事業者向けに省エネ診断を実施するほか、既存建築物の省エネ性能についての簡易診断ツールを作成し、関係業界と連携した無料診断を実施してまいります。また、県有施設につきましては、ESCOの導入を拡大するとともに、照明のLED化をさらに進めることとしております。
再エネの普及拡大につきましては、新たに太陽光発電や太陽熱利用のポテンシャルを見える化するソーラーマッピングを構築し、住宅、電気自動車、金融等の業界と連携をしながら、環境への負荷が少ない屋根置き太陽光の普及拡大に取り組んでまいります。
また、開発期間の長い小水力発電やバイオマスの利活用についても、事業化しやすい場所での事業の促進や再エネの普及につながる製品やサービスの産業化に取り組む企業を支援することにより加速化を図ってまいりたいと考えております。
以上であります。
次に、信州F・POWERプロジェクト及び林業施策についてお伺いいたします。
本県の森林は、県土の保全、水源の涵養、地球温暖化の防止、木材の生産等の多面的な機能を有しており、県民はもとより都市部の人々にも生活や経済面でさまざまな恩恵をもたらしています。この豊かな森林の多くは、戦後復興期や高度経済成長期の需要に応える木材を供給するため、先人の努力により植栽、保育されてきた中で、今日、本格的な利用期を迎えており、この豊富な森林資源を循環利用することが現在重要な課題となっていると認識しているところです。
この貴重な財産としての森林資源を健全な姿で次の世代に引き継いでいくためには、利用期にある木材資源を無駄なく活用し、その利益を山側に還元し、再び森林所有者が意欲を持って山づくりを行えるようにしていくことが大切であります。このため、林業再生における先駆的なモデルとして、産、官、学、金が連携して取り組んでいる信州F・POWERプロジェクトの推進が重要だというふうに考えています。
そこで、まずプロジェクトの進捗についてお聞きいたします。
昨年の9月定例会一般質問におきまして我が会派の依田議員、11月定例会一般質問におきましては寺沢議員が質問いたしましたが、その後の状況について伺います。
製材事業の安定化を図る上で、県の役割としてどのように取り組んでいるのでしょうか。発電事業については、発電施設の発注に向けた調整が行われているとのことでしたが、現時点で県が把握している今後のスケジュールについて、あわせて林務部長にお聞きをいたします。
また、このプロジェクトの成功は、本県の林業を大きく発展させていく上で欠かせない取り組みとして県は積極的に推進されておりますが、このプロジェクトを含め、今後の林業施策の展開について、次期総合5カ年計画での位置づけと平成30年度の施策の中でどのように取り組んでいくのか、知事に方針をお伺いいたします。
次に、農業生産を支える農地や農業用水等の基盤整備についてお聞きいたします。
私の地元である東御市の祢津御堂地区では、県営土地改良事業により荒廃桑園をワイン用ブドウ団地として再整備しており、担い手の新規参入や規模拡大による所得向上、また、ワイン振興を図る上でも大きな期待が持たれているところです。
一方で、佐久、上田地域において約1,500ヘクタールの農地に用水を供給する立科幹線水路は、造成から約50年が経過する中で、管路の破損や漏水が発生し、その維持管理に多大な労力を要しています。また、塩田平や御牧原台地、八重原台地に代表される農業用ため池については耐震化が喫緊の課題となっています。農業者の減少やTPP11協定等の国際化の進展に伴う競争力強化等への対応が必要となる中で、信州の豊かな自然環境や景観を支えている農村地域の暮らしを維持し、長野県の農業を持続的に発展させるためには、農地の条件整備や農業用水を安定的に確保するための施設の長寿命化や防災・減災対策など、担い手が目指す経営展開を支える基盤整備が重要だと考えますが、今後の農業生産基盤の整備や農村地域の防災・減災対策についてどのような方針で取り組んでいくのか、農政部長に伺います。
山岳遭難防止対策について質問をいたします。
県警察では、日本一安全・安心な長野県を掲げ、さまざま取り組んでいることは評価しています。そんな中、他県警に比べ突出しているのが山岳遭難救助への対応であり、県警察は高い救助技術を有していることは承知しています。
昨年3月5日、長野県消防防災ヘリコプターが墜落し、9名の方がお亡くなりになるという痛ましい事故が発生しました。あれから1年を迎えます。改めて亡くなられた9名の御冥福をお祈りいたします。
県消防防災ヘリコプターを失った後、県警察では、県警ヘリコプターによる上空からの救助、山岳遭難救助隊による地上からの救助により活動に当たっているとのことです。県の消防防災体制は、今春から機体をリースし、民間航空会社から派遣されるパイロット、整備士により再開するとのことですが、当面警察主体とならざるを得ないのではないかと考えます。
県消防防災ヘリコプターを失った後の長野県における山岳遭難発生状況について伺うとともに、救助活動の現状と救助体制の強化及び装備の充実、人材の育成等を踏まえた今後の方針について警察本部長に伺います。
「世界級のリゾートへ、ようこそ。山の信州」、昨年の信州デスティネーションキャンペーンのキャッチコピーです。我が長野県は、豊かな自然に恵まれ、訪日外国人を初め多くの観光客が年間を通じて来県しています。中でも、日本で有数の山岳地帯である本県は、山岳観光を主たる産業の一つとしています。これからも大いに振興することを願っていますが、山岳遭難等の事故が年間通じて多発しており、憂慮しております。
特に、外国人によるバックカントリースキー遭難は近年多発しているともお聞きしています。山岳遭難に関しては、自己責任という言葉もありますが、今後、多くの観光客を受け入れる中では、受け入れ側である県や市町村、観光業者がしっかりと遭難防止対策を講じていかなければならないと考えます。
そこで、現状として、山岳遭難、特に、バックカントリースキー遭難が多発する中、県としてはいかなる遭難防止対策を講じていくのか、観光部長にお聞きをいたします。
21世紀は人権の世紀と言われて久しいところでありますが、テレビ、新聞等の報道を見ておりましても、世界各国における差別や人権侵害の事案は枚挙にいとまがありません。我が国に目を転じても、同和問題、障害者、外国人などを初めさまざまな人権課題が存在しており、とりわけ、我が国固有の人権問題である同和問題については、依然として結婚差別などの事象が後を絶たない状況にあるものと承知をしています。
このような中、平成28年12月には部落差別の解消の推進に関する法律が施行されましたが、同法の第1条におきましても、現在もなお部落差別が存在するとともに、部落差別は許されないものであるとの認識のもとに、これを解消することが重要な課題であることが明記されているところであります。もとより、部落差別は決して許してはならないものであり、この法律の基本理念を踏まえつつ、差別を次世代に引き継ぐことがないよう、その解消に向けた取り組みを着実に進めていくことが必要であると考えますが、知事の御所見をお伺いいたします。
続いて、児童生徒に対する人権教育を充実させることも必要だと考えます。平成23年4月に閣議決定された人権教育・啓発に関する基本計画では、女性に対する差別、障害者に対する差別など13の課題が示されているところであります。その中でも、同和問題については、平成28年12月に部落差別の解消の推進に関する法律が公布され、部落差別の解消のため必要な教育及び啓発を行うよう規定されました。同和教育の解決には、学校において十分に人権教育を行っていく必要があります。
一方で、県内の地域によって教員の同和問題に関する理解に差があるとの声も聞いております。そうした教員が人権教育の中で同和問題を取り扱った場合、子供たちに正しい知識を教えることができないのではないかとの懸念があります。県において、人権教育、特に同和問題についての教員に対する研修の状況と充実の必要性について、教育長にお伺いをいたします。
信州F・POWERプロジェクトについてのお尋ねでございます。
初めに、製材事業の安定化を図るための取り組みについてでございます。
まず、原木の安定供給体制の構築については、林業関係4団体で構成するサプライチェーンセンターと製材事業の需給調整会議を毎月開催し、原木の量、質、規格等のマッチングを図っております。原木量については、おおむね現在の需要を満たしている状況ですが、樹種や規格、納材時期のさらなるマッチングが必要なことから、製品販売や出材状況等に対応した3カ月間の需給計画を作成し、10日ごとに詳細な双方向の情報交換を図るなど、取り組みを強化しているところでございます。
加えて、今後の原木需要増大を見据え、来年度には木材の生産性向上に資する高性能林業機械14台の導入支援や森林作業道の開設支援を図るなどにより、林業経営基盤の強化に取り組んでまいる計画でございます。
また、販路開拓に向けては、無垢フローリングの付加価値向上のために、製品のよさの科学的な実証調査や展示会への出展などの支援を行っており、今後とも製材事業の安定化が図られるよう取り組んでまいります。
次に、木質バイオマス発電のスケジュールについてのお尋ねです。
木質バイオマス発電施設につきましては、現在、出資及び融資等に関する最終の契約手続を本年3月末を目途に進めており、詳細につきましては出資者間で正式決定した上で公表される予定でございます。
なお、建設工事につきましては、建設後に速やかに事業着手し、資材調達等を経て11月には現場での着工を予定しております。
また、商業運転につきましては、平成32年度を目途にしておりますが、できる限り早期の稼働となるよう建設工程の調整等を行っていくこととされております。
以上でございます。
今後の林業政策の展開について、次期5カ年計画での位置づけ、そして新年度予算の中でどう取り組んでいくかという御質問でございます。
次期総合5カ年計画の中におきましては、時代や環境の変化に柔軟に対応する足腰の強い産業が持続的に発展し、地域の活力を生み出し、県民の生活を支えている産業の生産性が高い県づくりということを目指して取り組んでいきたいというふうに思っております。
信州F・POWERプロジェクトを含めた林業の分野におきましては、この生産性が高い県づくりに位置づけ、技術革新や経済社会のグローバル化の進展などによる産業変化を捉えて、収益性と創造性が高く、森林を持続的に管理できる林業を構築していきたいと考えています。
平成30年度、具体的には、ICT等を活用して、林業政策の効率化、省力化や需要に応じた木材生産等を可能にするためのスマート林業の推進でありますとか、また、経営感覚を持って現場管理ができる林業人材を育成できるよう、林業大学校のあり方を検討していくということ。さらには、オーストリア等林業先進国からの技術導入、あるいは高性能林業機械の導入等を進めていきたいというふうに考えています。
こうした取り組みを通じて、林業の稼ぐ力を高めて、地域に雇用と所得を生み出し、持続的に発展する林業を実現していきたいと考えています。
次に、部落差別の解消に向けた県の取り組みについてでございます。
お一人お一人の人権が尊重される社会を目指した取り組みということは私ども行政の責務だというふうに考えております。県としては、かねてから人権啓発センターに専門性の高い人材を配置して、相談・啓発体制の強化等に努めてきたところでございます。
一昨年の12月、部落差別の解消の推進に関する法律の施行を受けまして、私どもも、差別の解消に向け、人権啓発センターの広報紙にこの法律の特集を掲載し、また、印刷部数もふやすなどして周知、啓発を積極的に行ってきたところでございます。
しあわせ信州創造プラン2.0におきましては、人権を尊重する社会づくりを目指して部落差別の解消を位置づけているところでございます。今後も、法の趣旨を十分踏まえつつ、国、市町村など関係機関等と密接な連携を行う中で、差別のない社会を目指した取り組みを進めていきたいと考えています。
以上です。
農業生産基盤の整備についてのお尋ねにお答えいたします。
本県農業が持続的に発展していくためには、企業マインドを持った農業者が、集積、集約化された農地で効率的で収益性の高い農業を展開することが求められており、このような農業を支える生産基盤の整備と防災・減災対策を推進することがまずもって肝要と考えております。
このため、区画が小さく営農効率が低い農地の区画拡大、またICTを活用した水田の水管理の自動化や用排水路の地中化など、担い手が使いやすい農地整備、さらには老朽化により機能が低下している農業水利施設の長寿命化を図るための補修や更新整備などを進めてまいります。また、大規模地震や頻発する豪雨等に備えたため池の耐震化、地すべり防止施設の長寿命化、排水機場のポンプ設備等の更新整備など、防災・減災対策を進めてまいります。
これら事業の推進に当たりましては、地域の要望と事業効果、また緊急性を精査し、実施してまいりたいと考えております。
以上でございます。
初めに、県消防防災ヘリコプターを失った後の山岳遭難の発生状況についてお答えいたします。
県消防防災ヘリコプターの事故があった昨年3月5日から昨年末までの山岳遭難の発生状況でありますが、発生件数は261件で、前年同期間比プラス13件、遭難者数は286人で、前年同期間比プラス14人と、発生件数、遭難者数ともに増加しております。そして、救助活動の内訳につきましては、発生件数261件のうち、県警ヘリによる救助が161件、地上部隊による救助は88件、他県からの応援ヘリによる救助が12件となっており、前年の同期間と比較して、県警ヘリによる救助はプラス22件、地上部隊による救助はプラス26件、他県からの応援ヘリによる救助はプラス11件と、いずれも大幅に増加している現状にあります。
次に、救助体制の強化についてでありますが、県警察では、平成27年3月に山岳安全対策課を新設し、航空隊、機動隊のほか、主要山岳地域を管轄している五つの警察署に合計35名の県警山岳遭難救助隊員を配置し、多発する山岳遭難に対応しております。また、里山や山菜とりに伴う遭難防止対策と迅速な救助活動を行うため、昨年までに県内の全警察署において合計110名の山岳高原パトロール隊の運用を開始いたしました。さらに、来年度は、山岳遭難の発生が多い山岳地域を管轄する警察署の体制強化を図ってまいりたいと考えております。
次に、装備の充実についてでありますが、昨年は、岩場で宙づりとなっているような遭難現場で迅速な救助活動を行うため、新たに自動式ザイルウインチを配備するとともに、増加するバックカントリー遭難に備えて山岳用スキーセットを増強するなど、山岳遭難救助装備の充実を図ってまいりました。このほか、来年度は、県警ヘリが救助活動に出動する際、松本空港が天候不良で有視界飛行が困難な場合でも、機体の姿勢、高度、位置、針路等を計器で確認しながら飛行ができる計器飛行証明の取得をさせたいと考えております。
続いて、人材の育成についてであります。
山岳遭難の現場は、登山道から外れた急斜面の現場が多い上、常に落石や雪崩等の危険にさらされながら救助活動を行わなければならないことから、実際の遭難を想定し、ヘリコプターの使用も含め、実践的な救助訓練を繰り返し実施して練度を高めるとともに、救助技術の伝承を図っております。
また、地上での救助活動に必要不可欠である山岳遭難防止対策協会の救助隊員や消防隊員との訓練を実施するなど、関係機関との合同訓練も積極的に実施しているところであります。今後も、引き続き遭難現場で有効に活用できる装備の充実を図るとともに、実践的な訓練を継続的に実施するなど二次遭難の防止に最大限の配慮をしつつ、より安全で迅速な救助活動が行えるよう努めてまいります。
山岳遭難の防止対策についてのお尋ねでございます。
昨年の山岳遭難発生件数は前年に比べ20件増の292件となっており、そのうち、バックカントリースキーによるものが30件で全体の約1割を占め、前年比でも23件増加している状況にございます。このバックカントリースキーを初めとする冬山の遭難対策については、地区遭対協が県下25カ所の山岳地帯で開設する登山相談所に対しまして支援していることに加え、今年度は、バックカントリースキー対策として、その危険性を英語と日本語で併記した啓発用ポスターとチラシを初めて作成いたしまして、現在、県内主要スキー場やその周辺の宿泊施設等で注意喚起を行っているところでございます。
加えて、新年度は、登山者やバックカントリースキーヤーがみずから学びながら安全に関する知識と技術の向上が図れる信州山岳アカデミーを、上高地涸沢の山小屋のほか、首都圏やウエブ上においても開設をいたしまして、日ごろから遭難防止の意識を高められるよう普及啓発活動を強化してまいる所存でございます。
学校人権教育に係る教員の研修についてのお尋ねでございます。
学校人権教育につきましては、人権教育推進プランによりまして各学校における取り組みの活性化を図っているところでありますが、研修につきましては、小、中、高、特別支援学校の教員を対象に、学校人権教育研修会及び学校人権教育ファシリテーター研修会を実施して、県内全ての学校で同和問題を含めた人権教育が適切に実施されるよう、各学校における人権教育推進のリーダーを育成しているところでございます。
今後、平成28年12月に施行された部落差別の解消の推進に関する法律の趣旨を踏まえまして、学校人権教育研修会の場で地域に根差した人権課題をテーマに教員間での議論を深めるなど、研修内容の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。
ことし1月、長野県子どもと子育て家庭の生活実態調査の結果の中間まとめが発表されました。この調査は、長野県の今後の子供・子育て支援と次世代育成支援施策の参考にするため昨年8月に実施され、県内の小中高校生とその保護者、約6,000人から回答を集計したものでありますが、保護者の所得や家計状況から見える生活困難さと子供の意識や家庭及び学校での日常生活の状態などとの関係に着目した点が大変興味深いものであります。
例えば、生活に困難を来している困窮層では、過去1年間に子供を医療機関に受診させなかったことがあると回答した割合が36%を超え、子育てに困ったり悩んだりしたときに相談相手がいないと回答した割合が一般家庭の6割を超えるなど、家庭の経済的困窮が子供の健全な成長を如実に阻害しているものであると理解できます。この調査報告の最終まとめは今年度末に発表されるとのことですが、その結果に基づき、本県の子供を取り巻く諸課題の解決に向けた具体的かつ効果的な施策を推進することはもちろんでありますが、それ以前に、調査で明らかになった本県の子供の実情を県民に広く周知し、自分事として意識を高められるよう啓発していくことが重要であると考えますが、県民文化部長に御所見をお伺いいたします。
また、知事は、これまで、しあわせ信州を掲げ、子供支援や教育の充実に強い意欲を持って取り組んできましたが、この調査結果を踏まえ、子供の貧困状態を改善していくことへの強い決意をお聞かせください。
先月、我が会派の視察において京都府にお伺いをしました。京都府内でも中小企業では人材不足が顕著であることから、京都府では、中小企業等が人材確保とその定着を目的として従業員の奨学金返済負担の軽減支援制度を設けた場合、当該中小企業等の負担額の一部に対して補助する事業を今年度から始めております。支援対象となるのは、京都府内の中小企業等に勤務する就職後6年以内の正社員で、受給した奨学金を返済中の従業員です。また、京都府の支援対象者1人当たりの補助額は企業負担額の2分の1以内であり、上限は、就職後3年目までは年9万円、就職後6年目までは年6万円となっております。京都府の担当者からは、求人の際のPR、福利厚生の充実及び従業員のモチベーションアップなど制度導入のメリットを伺い、私も中小企業の人材確保定着のために有効な事業だと考えます。長野県でも同様な事業を導入することを提案いたしますので、産業労働部長の考えを伺います。
平成27年度からスタートした信州型自然保育、通称信州やまほいく認定制度は、3年目にして、県内27市町村、152園まで認定が広がっており、子供の幼児期の豊かな育ちと学びの充実と移住促進による地域活性化などの効果の点からさらなる充実が期待されるところであります。次期総合5カ年計画案では「学びと自治の力で拓く新時代」を掲げ、その柱である学びの県づくりにおいて自然保育のさらなる普及と充実が明記されており、方向性を評価するところであります。
同時に、国の新幼稚園教育要領等でも、幼児期の学びが一生涯続く学びの基盤であるとし、身近な環境に親しみ、自然と触れ合う中で、さまざまな事象に興味や関心を持つことを幼児教育の狙いとして位置づけられたように、自然保育の理念や実践は全国的にも評価を高めています。信州やまほいくの今後の展望を考えると、幼児教育におけるすぐれた実践をその後の初等教育にしっかりつなげることが極めて重要だと思っています。
第3次長野県教育振興基本計画案でも、幼児教育・保育の充実のための一つの柱として信州やまほいくの推進が明記され、また、信州の特性を生かした信州ならではの教育の推進として、学校教育における自然教育、野外教育の推進がうたわれており、初等教育でも信州やまほいくのよさを生かそうとする姿勢が感じられます
二つの計画上では、本県の豊かな自然環境を生かした学びという視点で、幼児教育と学校教育が同じ方向性で推進されるわけでありますが、初等教育は市町村の所管であることから、自然教育、野外教育に対する市町村教育委員会の理解を広げ、県と市町村の教育委員会がしっかり連携して、自然教育、野外教育を全国に先駆けて推進していくことに大いに期待しているところであります。
このように、長野県の総合計画や教育振興基本計画においては豊かな自然を生かした教育が大きな柱となっている一方、信州型自然保育認定制度は長野県独自の制度であります。近年、長野県の制度を参考に、鳥取県や広島県でも自然保育の推進を目的とする県独自の制度が創設されていると聞いていますが、こうした地方自治体の独自の動きを国に対してもっと積極的にアピールし、将来的に国としても自然保育、自然教育をさらに積極的に推進するよう、長野県が率先してその道筋をつけるべきと考えますが、知事の見解をお伺いをいたします。
子どもと子育て家庭の生活実態調査結果についてのお尋ねでございます。
議員さんから御指摘がございましたように、今回の調査によりまして、生活困窮家庭では、例えば健康状態が悪いと感じる子供の割合が高いことに加えまして、経済的な理由で医療機関を受診できなかった経験がある家庭があることなどの課題が明らかになってきたところでございます。こうした子供や家庭の実態を県民の皆様に知っていただくことは大変重要であると認識しております。
来月公表予定の最終結果につきましては、県のホームページで公表し、広く県民に周知をさせていただきますほか、官民協働組織でございます将来世代応援県民会議を通じ、子育て支援に取り組むNPOや信州こどもカフェの地域プラットフォーム等へお知らせする予定でございます。さらに、市町村、学校、大学の研究者、子供の貧困問題に取り組む民間支援者等とも調査結果を共有させていただきまして、子供の実態に対する県民の意識が高まりますように取り組んでまいりたいと考えております。
以上でございます。
まず、子供の貧困状態を改善する決意についての御質問をいただきました。
私は、子供たちにとっても、社会にとっても、この子供の貧困という問題は、我々行政として正面から向き合わなければいけない課題だというふうに思っております。
これまでも、子供の居場所づくりであったり、子ども支援センターの設置であったり、さまざまな施策に取り組んでまいりましたが、今般、しあわせ信州創造プラン2.0案の中、あるいはその個別計画としての子ども・若者支援総合計画案の中に、福祉、教育等幅広い視点で総合的に子供の貧困対策に取り組んでいく施策を盛り込ませていただいているところであります。
例えば、子供の医療費の現物給付方式の導入、あるいは低所得世帯の子供や児童養護施設入所者等に対する給付型奨学金の拡充、低所得世帯の方々に対する県立大学の授業料の減免、生活困窮家庭の子供に対する学習支援の拡充、信州こどもサポートの構築、スクールソーシャルワーカーの拡充などなどであります。
私どもは、こうした施策をしっかりと着実に進めていきたいというふうに思っておりますし、また、これは国も含めた社会全体がこの子供たちが夢や希望を持って暮らせる社会に向けて取り組みをしていかなければいけないというふうに思っております。
県としては、責任を持って今申し上げたような施策を進めると同時に、国に対しても必要な提案を行う中で、子供たちが未来に向けて前向きに進んでいくことができる県づくりに取り組んでいきたいというふうに思っております。
それから、信州やまほいくの今後の展望についてでございます。
本県では、全国に先駆けて信州型自然保育認定制度を創設して、現時点で152園の認定をさせていただき、着実に広がってきているところであります。ことしの1月には、少子化対策担当の松山政司内閣府特命担当大臣に本県へ御訪問いただき、信州やまほいく認定園の御視察もいただいております。子供たちの生き生きとした様子にじかに接していただき、大臣からは、大変すばらしい取り組みであり、今後の参考とするとともに全国にも発信していきたいという御趣旨で感想をいただいたところでございます。
これまでも、国に対しては、信州やまほいく等自然保育の促進につながる新制度の創設を要望してきておりますし、また、先般、「いいね!地方の暮らしフェア」を将来世代応援知事同盟13県の知事と一緒に東京で開催しましたが、その際、この自然保育に取り組んでいる鳥取、広島の知事と私で、自然保育のアピールを一緒に行わせていただいているところでございます。
また、その際に、お二人の知事とは、この自然保育を全国に広げていく運動、あるいは国の制度の中にも積極的に位置づけてもらえるような運動をぜひ連携して取り組めないかという相談もさせていただいているところでございます。この自然保育の先駆けであります本県がリーダーシップを持って、今後、国へのアピールや他県との連携を強化して、この信州やまほいく、自然保育が日本全国に広がるように取り組んでいきたいというふうに考えております。
以上です。
奨学金の返還に対する支援についてのお尋ねでございます。
全国では、御紹介のございました京都府の取り組みを含め、27府県が奨学金返還支援制度を設けてございます。このうち20県は、人口減少対策等を目的とした国の地方創生・奨学金返還支援制度を活用したもので、これは、道府県等と地元産業界等が連携して基金を造成し、この基金を財源として地方の企業へ就職した若者等の奨学金の返還を支援する制度でございます。本県においても、この制度につきまして産業界などと検討した経緯がございます。その際には、費用対効果に疑問を呈する御意見もございました。また、この制度につきましては、県の出捐金に対して特別交付税措置があるものの、対象となるのが基金への出捐総額の50%までというふうにされておりますことから、国に対し支援の拡充について要望を行っているところでございます。
一方、京都府を初めとした残りの7府県につきましては、個人ではなくて企業に対して助成をするといった、国の制度とは別に独自の制度を設けてございます。いずれの制度も、ここ一、二年に創設されたものでございまして、今後、こういった他県の制度内容やその実施効果といったものを調査、検証いたしまして、県内企業の皆様の御意見もお聞きしながら研究をしてまいりたいというふうに考えてございます。
今回、会派を代表して、次期総合5カ年計画を念頭に置いた質問を行ってまいりましたが、最後に、総合計画と今後の県政運営について知事にお伺いいたします。
信州大学人文学部の三谷尚澄准教授の著書に、「哲学しててもいいですか?」というものがあります。副題は、「文系学部不要論へのささやかな反論」というものです。これは、2015年6月8日に、通知で、「人文社会科学系学部・大学院については、18歳人口の減少や人材需要、教育研究水準の確保、国立大学としての役割等を踏まえた組織見直し計画を策定し、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めることとする。」ということに反論したものです。哲学を専門とする著者は、著書の中で、過度の悲観的な余談を持ち込みたいわけではない。しかし、当たり前を支えてきた社会制度やシステムにひびが入り、きしみやがたつきが生じ始めたことは控え目に言っても間違いがないだろう。考えたくない問題を真剣に考え始めざるを得ない時代に足を踏み入れつつあるとしています。
少子・高齢化する日本、消滅する地方、環境破壊の現状、AI時代の到来に伴う大失業時代の予測、この国がテロリストたちの攻撃の対象になる日がやがて来ること、その他、悲観的な未来を予想させる問題の具体的なリストを挙げることは余りにもたやすいとした上で、こんなときに、困ったことになったけれどもどこかに道はあるはずだ。何とかしてみよう。一言そう言い残しては立ち上がることのできる強靱な生活習慣を、柔軟な生き延びの戦略をみずから探し求めるたくましさを備えた思考の様式を、これからの30年の社会を下支えする重要なる力量、哲学的には市民的器量を身につけた人間を育成することが求められるとしています。まさに、今、世代を問わず、さまざまな課題を解決できるような力をみずから身につける学びの重要性が高まっている時代であると言えるのではないでしょうか。
信州学や郷学郷就に始まり、学びと自治の力で拓く新時代、そこには、信州で生きる哲学が必要です。オール信州で信州を守り抜く、力強い、たくましい考え方、住民自治、県行政を初め県組織においても、困難でも何とかしてみようという器量が求められていると思います。
こうした観点を踏まえ、5カ年計画を取りまとめる中で知事が念頭に置いた理念についてお聞かせください。また、この計画をもとに、今後の県政運営にどのような覚悟で臨まれるのか、お伺いをいたします。
お答え申し上げます。
5カ年計画を取りまとめる中で念頭に置いた理念、そして、今後どういう覚悟で県政運営に取り組むのかということであります。
今回、学びと自治という概念を前面に出しているわけでありますが、冒頭申し上げたように、確かな暮らし、希望が持てる社会、安心感がある社会、こうした社会を長野県でしっかり形づくっていくということが極めて重要だというふうに思っておりますし、そのことをこれまで県知事として常に目標として持ちながら県政運営に努めてきたところであります。
そうした中で、今お話がありましたように、例えば、先ほどの格差、貧困の問題、これはある意味資本主義経済のひずみが弱い人たちのところにあらわれているというふうに思っておりますし、また、AI、IoT時代を迎える中で、近い将来の確実な姿すら見通すことが難しい不確実な社会に我々は差しかかってきているというふうに思っております。
そういう中で、私は、個人もそうですし、社会もそうですが、やはり未来の姿というものを描くことができなければそうした社会は実現できませんし、逆に、明確に描くことができれば人々が力を合わせて実現していくことは可能だというふうに考えています。ある意味、今のような不確実な時代、そして資本主義、経済システムのゆがみ、ひずみというものが出てきているような社会にあっては、やはり、いわゆる民主的な社会をつくっていくということが重要だと思います。
もとより、我が国は、制度上は民主的な社会であることはこれは論をまたないわけでありますけれども、運用や実態、こうしたことも含めて、やはり一人一人の国民、長野県にとってはお一人お一人の県民の皆様方の意思が尊重され、そして実現していく社会をつくっていくということが大変重要だというふうに思っています。また、そうした社会をつくっていく主体となるのが、石和議員から御指摘がありましたいわゆる真の市民という存在だというふうに思っております。
こうした社会をつくっていく上では、私は、学びと自治という価値、これは長野県が長い間大事にしてきた価値でありますし、そして未来に向けてますます重要になる価値だというふうに思っています。ぜひ、この学びと自治という概念をしっかり持ちながら、県民の皆様方お一人お一人の意思を明確に我々が受けとめさせていただき、ともに明るい未来に前進をしていく、そうした県にしていきたいというふうに思います。
こうしたことは、SDGs、持続可能な開発目標の精神にも合致するものというふうに思っております。経済、社会、環境、さまざまな分野の課題を統合的に解決していく、そして、誰ひとり取り残さない社会をつくっていく、こうした世界的な目標も私どもはしっかりと共有しながら新しい時代に向けて着実な歩みを進めていきたいというふうに思っております。
私としては、県民の皆様方とこれからもともに歩む、共創、協働の姿勢をしっかりと堅持しながら県民の皆様方の確かな暮らしの実現に向けて全力で取り組んでまいりたいというふうに思っております。
以上です。
これまでの質問で、知事の、来年度に向けて、さらには新総合5カ年計画への思い、決意をお伺いいたしました。心強く感じるところであります。ここからは実践、実行であります。そこに向けて、総合5カ年計画についてさらに深堀りした突っ込んだ議論が必要であります。我々の会派においても、県民起点の議論を重ねています。来週の一般質問には、会派から12名の議員が質問をいたします。議論が深まり、よりよい計画に磨きがかかるように期待をしているところであります。
本日は、私の地元から大勢の皆様が傍聴に来てくださいました。感謝を申し上げます。しかし、ふだんの傍聴席は閑散としていることも少なくありません。もっと県政を身近に、身近な声を県政にと心がけ、実践し、県民の皆様と協働できる県政を目指してまいります。光が当たりにくいところに光を当てる、そんな政治を目指し、新年度に向けて決意を新たにすることを期して、一切の質問を終わります。御静聴ありがとうございました。