平成28年6月定例県議会 発言内容(花岡賢一議員)
◆花岡賢一
各地域において雨の降り方の違いはあるものの、現在県内は梅雨の季節となっております。
そのような中、千曲川ではアユ釣りが解禁となり、自然の恵みをいただくべく釣り糸を垂れる太公望の姿が各所で見られるこの時にあって、我々の営みは常に自然の一部であることを実感するのと同時に、昨今のゲリラ豪雨を初め、その異常気象と言われる自然の驚異についていま一度考えることが必要となっております。
現在長野県が管理する河川は、その全てが一級河川でありますが、その管理について質問を申し上げます。
一級河川とは、国土保全上または国民経済上特に重要な水系で政令の指定したものに係る河川で、国土交通大臣が指定したものを言うとありますが、全国的な管理体制ではありますが、本県においても、県が管理する河川と国土交通省河川事務所が管理する河川が同じ流れの中に存在しています。
先ほど申し上げましたとおり、自然の中、むしろ自然の流れの中にあって、行政の監督上、国と県が管理を区分する明確な区切りは存在しているのでしょうか。そして、流れる川を監督する上で、運用上問題は発生しないのでしょうか。
また、平成9年の河川法の改正により、河川整備の基本となるべき方針に関する事項、すなわち河川整備基本方針と、具体的な河川整備に関する事項、河川整備計画に区分され、平成20年までに長野県内の全8水系において河川整備基本計画が国土交通大臣により策定されているのに対し、水系、地域性等を考慮し、県内16圏域に分割しているとある河川整備計画が策定されていない圏域が存在しています。
随時行われている感はあるものの、いまだ策定に至っていない地域は確かに存在しているわけでありますが、策定せずとも管理が可能であるとのお考えなのでしょうか。また、順次策定していくのであるのならば、その計画はあるのでしょうか。奥村建設部長にお伺いいたします。
河川の改修を計画的かつ効率を考慮して行っていくことに全くの疑いはないのですけれども、段階的に改修が行われている一方、小破修繕として緊急対策を行っている現状も存在しています。
実際に地元の区長さんや市や町、行政の方々と要望活動に同席させていただく中で、緊急性を訴えていない案件はほとんどないと言っても過言ではありません。また、私自身、地域を回っている中で直接の訴えをお伺いして現地へ視察に行くと、現状はほとんど流下能力がないであろう川が多くありました。一級河川というよりは、むしろ川の中にわずかばかりのせせらぎがあるといった感じで、近年多発しているゲリラ豪雨はもとより、この季節の多雨が集中的に襲ってきたときには、とても川としての役割を果たすことができない状況も目の当たりにしてきました。
これは一つの例かもしれませんが、お話を聞く中で、要望は確かに出しているのだが、実行してもらえる答えははっきりと聞いていないといったことや、もう10年以上も危険性を訴えてきているとの声を耳にしました。中には、実際に実行までにこぎつけたため、区長さんや地域の皆様に再度お伺いしたところ、今回は運がよかっただけですよとの答えをいただきました。
この行政に対して半ば諦めの声を聞く中、基礎市町村から要望として上がってきている全ての案件に対して明確な順序をつける必要性を感じているのですが、そのように明確に行うことはできないのでしょうか。そして、要望を精査する過程にあって、河川を巡回し監視する河川巡視員は現状足りていると言えるのでしょうかもあわせてお伺いいたします。
また、河床整理と同様に、河川内での立ち木も、豪雨が発生した際に流木となり、橋梁の破壊などにつながるリスクを含んでいます。その立ち木の除去も重要である中、長野県の取り組みとしては、奈良井川改良事務所では、事前に登録された希望者に伐採された木を無償提供している取り組みがあります。また、佐久建設事務所では、公募によって住民の方々に伐採してもらい、伐採した木を持って帰ってもらう取り組みがあります。
この取り組みの背景には、近年河川内にて増加傾向にあるニセアカシアの木が炭の原材料として人気があることがあるようです。人気がある材料を無償で譲り受けることが可能であるため、個人に限定していることと、転売しない旨の誓約書を記入して行われることなど、公募に際しての取り決めも行われているこの事業にあって、難点といえば、河川内に入って伐採をしていただく安全の確保のため、渇水期の中でも11月から12月までの期間でしか行えないことと、河川内で確実な足場を確保しなくてはならないため、場所が限定されてしまうことであります。ですが、このほぼゼロ予算で行うことが可能な事業が全県に広まっていくことが、いわゆる県民益につながるものと確信しております。こういった取り組みを進めていく考えはあるのでしょうか。
以上、奥村建設部長にお伺いいたします。
◎建設部長(奥村康博)
いただきました御質問につきまして、順次お答え申し上げます。
まず、一級河川において国と県が管理を区分する明確な区切りと運用上の問題に関するお尋ねでございます。
国と県の管理区分につきましては、河川法施行規則第2条の2において、国が管理すべき区間の基準が列挙されておりまして、河川のはん濫により当該河川の流域における市街地等に甚大な被害が発生するおそれのある区間などについては、国の管理する区間となっております。こうした国が管理すべき区間以外の区間につきまして、国土交通大臣により、都道府県知事が管理する区間が指定されているところでございます。
本県におきましては、国管理区間の間に県管理区間がある、いわゆる中抜け区間がございます。こうした区間につきましては、国と県が連携しながら管理をしておりますが、より一層の効率的な整備、維持管理の観点から、水系一貫管理の原則に基づき、国において一体的に管理することが望ましいと考えており、引き続き、国に対して中抜け区間の直轄編入を強く求めてまいります。
次に、河川整備計画に関するお尋ねでございます。
河川整備計画は、国が定めた河川整備基本方針に沿って、一定の区間において計画的に河川の整備を実施する必要がある河川について、当該河川の整備に関する計画を定めるものであります。
県管理河川の河川整備計画は、水系や地域性を考慮し、県内を16圏域に分割しており、このうち現在8圏域で整備計画を策定しております。一方、河川整備計画が作成されていない河川において、出水等により河床の堆積が進み、治水上の影響が大きい場合など、河川管理上早急に整備措置を行わなければならない事象が生じた場合については、整備計画策定の有無にかかわらず対応を行っているところでございます。
河川整備計画を策定していない8圏域につきましては、当該圏域の状況を踏まえ、河川改修の必要性や緊急性等を総合的に勘案し、整備計画の策定時期を検討してまいります。
次に、市町村からの要望への対応に関するお尋ねでございます。
市町村からの御要望には、護岸の整備や堆積土砂の撤去などがございますが、要望の内容により、県単独事業における河川改修事業や河川維持事業により実施しており、いずれも治水上必要性の高い箇所から順次対応してきております。
さらに、河川維持におきましては、市町村からの要望に加え、法定点検、河川巡視員による点検、出水期の緊急パトロール、河川モニターや地元の方から寄せられる情報から対応が必要な箇所の把握に努めているところでございます。
なお、河川改修につきましては計画的に行っておりますが、一方で、豪雨等の影響に伴い、河川状況は変わる場合もありますことから、総合的な判断の中で整備箇所を決定しております。
今後とも、整備に当たりましては、地域の皆様に十分御説明し、御理解をいただきながら、地域の安全、安心が図られるよう努めてまいります。
次に、河川巡視員に関するお尋ねでございます。
河川巡視員は、河川の適正な管理を目的に、河川の管理延長が比較的長い10の建設事務所に配置し、巡視を行っているところでございます。その他4建設事務所においては、職員が定期的に河川パトロールを実施し、河川の異常などの早期発見に努めているところでございます。
さらに、平成25年に河川法が改正され、堤防や水門など水防上重要な箇所については年1回以上の点検が義務化され、本県でも、平成26年度から職員による河川の施設点検も実施しております。
これらに加えまして、地域の皆様のボランティア活動として、河川の異常を発見した場合などに建設事務所へ連絡していただく河川モニター制度がございます。現在全県で518名の河川モニターの方に活動していただいているところでございます。また、国や市町村に協力していただき、春と秋に河川の一斉パトロールも実施しており、昨年度は1,000名を超える方々に御参加いただくなど、河川巡視の充実を図っているところでございます。
今後とも、河川巡視員制度のみならず、県民の皆様を初め関係機関の皆様の御協力やさまざまな制度を活用し、適正な河川管理に努めてまいりたいと考えております。
次に、河川内の立木伐採の取り組みに関するお尋ねでございます。
近年、河川内の樹木については、大量に繁茂し、洪水時において阻害物となるなど、維持管理上支障となっている箇所が多く、限られた予算の中で効率的な河川内樹木伐採が求められております。
そのコスト削減対策として、県では、昨年度までに、伐採した幹を現地で小分けし、事前に登録いただいた方に配布する無償配布を4事務所11カ所で実施したほか、区画を事前に決め、抽せん等により希望者各自が伐採する公募型伐採を5事務所11カ所で実施いたしました。
このほか、伐採した幹を地元の方に自由に持ち帰っていただく自由使用を7事務所32カ所で実施したところでございます。
このうち、議員御指摘のとおり、ほぼゼロ予算で取り組み可能な公募型伐採については最もコストがかからない方法ですので、引き続きこの取り組みを推進し、適切な維持管理に努めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
◆花岡賢一
御答弁いただきました。より一層の取り組みを求めさせていただいて、質問を移ります。
野生獣肉の解体施設についてお伺いいたします。
2月定例会で、長野県におけるジビエの可能性と題しまして質問を申し上げました。そのときに、移動調理施設、キッチンカー的解体処理施設の提案をしたわけではありましたが、その日は2月の29日でした。その際に、適合できるか検討してまいりたいとの答弁をいただきましたが、翌日3月1日の毎日新聞の全国版で、「速さが命ジビエ処理」のタイトルで、NPO法人が移動解体車の開発に着手との記事が掲載されております。
現状では難しい見解の中での答弁であったことと推察させてはいただきますが、私がこの記事を事前に知っていた事実は全くなく、質問に立った次の日に新聞に掲載されたことに、少なからず感じるところがあります。
また、この記事の結びには、農林水産省は来年度、鳥獣対策の交付金を活用した解体車の購入費用への補助を検討しているとありますが、私が質問に立った前定例会の時点でこの状況を把握されていたのか。池田林務部長にお伺いいたします。
そして、さらに同紙朝刊東京版3月16日の記事では、「山でさばいて新鮮ジビエ 捕獲後1時間で劣化「移動解体車」を開発へ」のタイトルで、ジビエ、鹿肉の現状を掲載後、国内大手自動車メーカーがNPO法人日本ジビエ振興協議会と2トントラックを改造して移動解体車を開発中とあり、具体的な採算のとれる金額も掲載されています。
と、ここまでは全国ないし東京の話題性を重視した内容であると思い、信州ジビエ活用推進事業に取り組む本県のアンテナショップ銀座NAGANOに向かい、実情を聞くと、長野県産ジビエは思いのほか売れ行きがよいとのことでした。確かに鹿肉シーズニングや鹿肉ジンギスカンに代表されるよう、売る側の創意工夫により、消費者ニーズにわかりやすく、かつおいしく発信できている状況を目の当たりにするわけですが、まだ納得がいかず、世界中の食材が一般的に購入できるマーケットに向かい、状況を聞くと、鹿肉として仕入れていたのはほとんどがニュージーランド産で、国産鹿肉は北海道産のエゾジカで、単価が高く、現在は扱っていないとのことでした。
全国的にふえてしまった鹿の有効活用が言われる中、一般に広く普及する、その道は険しいということを都内で知るわけですが、今度は4月15日の信濃毎日新聞の諏訪版に、「野生鳥獣の解体車を開発」の見出しで、移動解体車の開発に関する記事が掲載されています。タイトルと写真に違和感は感じるものの、来月納車の小見出しも掲載されています。
前定例会における私の質問に対し、食肉処理業の許可を得るためには知事が定めた施設基準に基づきとありますが、長野県としてこの移動解体車に許可はされているのか。山本健康福祉部長にお伺いいたします。
◎林務部長(池田秀幸)
移動解体車に対するお尋ねでございます。
NPO法人日本ジビエ振興協議会が移動解体車の開発に着手していたことは、事前に衛生面での相談を受けていたことから承知をしておりまして、2月定例会におきまして、食品衛生法及び信州ジビエ衛生管理ガイドラインに適合できるか検討していくという旨を健康福祉部長からお答えをさせていただきました。
農林水産省が補助を検討しているという点につきましては、各種報道がなされていることは承知しておりますけれども、県といたしましては、情報収集に引き続き努めているところでございます。
◎健康福祉部長(山本英紀)
野生鳥獣の移動解体車の許可についてのお尋ねであります。
本年4月中旬に、NPO法人日本ジビエ振興協議会から移動解体車の設計図面が示され、具体的な作業工程や設備などについて相談がございました。
内容は、おおむね施設基準に適合していたため、より衛生的な食肉処理ができるよう、手洗い設備の大きさや給排水施設の容量等について助言をしてまいりました。
しかしながら、営業許可に当たっては、施設基準への適合の有無を移動解体車両で直接確認することが必要であり、現時点では移動解体車が未完成のため、営業許可は行っていない状況であります。
◆花岡賢一
御答弁いただきましたけれども、まだ納車になっていない状況で判断ができないということは、十分理解させていただいております。
ですけれども、日本ジビエ振興協議会のホームページを見ると、移動解体処理車の試作車のお披露目の様子というのが載っています。これもかなり派手にやられたようで、いろいろな大臣の方とか参加されている様子がうかがえます。
そうなると、やはりこの移動解体車の動きというのは、全国的に当然のごとくPRされていくことが予想されます。それに対してどう対応されていくのかを再度お伺いいたします。こちらは林務部長にお伺いします。
さらに、解体処理施設を新たに建設することが困難な状況を鑑みると、この移動解体車の導入を検討していく予定はあるのか。こちらも池田林務部長にお伺いいたします。
◎林務部長(池田秀幸)
移動解体車の今後の対応についてのお尋ねでございます。
野生獣肉は、迅速に衛生的な施設で処理することが必要でありまして、移動解体車については、現地において捕獲後、直ちに内臓摘出から冷蔵までの行程を行うことで、これまで、遠隔地で捕獲され、食肉加工施設までの運搬に時間がかかることから利用できなかった野生獣肉の活用を促進する上で、有効なものと考えております。
現在開発中のものは、今後、正式な許可を待って試験運用が始まる見込みとなっておりまして、信州ジビエのさらなる供給体制の充実とブランド力の向上に資する施設として期待をしているところでございます。
そのため、県といたしましては、全国に先駆けたモデルケースとして、開発者や試験運用を行う事業者等とともに、県内での活用が進むよう取り組んでまいりたいと考えております。
◆花岡賢一
やはり信州認証ジビエという形もありますので、前向きに検討していっていただきたいと思っております。
私が今回このジビエの移動解体処理車についてもう一度質問させていただいたのは、各報道に対して反対を申し上げているのでは決してございません。一部のニーズに応えるのがジビエではなくて、山の恵みを頂戴する、その鹿のお肉、その肉自体に力が物すごくある、このすばらしさを県内のみならず県外に発信できるように広まっていくことを強く願いまして、私の質問を終わらせていただきます。