平成27年 9月定例県議会 発言内容(今井愛郎議員)


◆今井愛郎

   

 県営住宅への入居率は、新耐震基準の56年を境に明らかに低下しております。建築から30年を超えている物件ですから当然かもしれません。そんな中で、建てかえや集約が可能な県営住宅はその時期を待つといたしましても、対象とならない住宅についてはいかがお考えでしょうか。

 私の近くにも、築50年を超えるものが集約されず建てかえもされないで残っているものが32戸ございます。賃料が安いということもあり、長期間にわたって居住されている方もいらっしゃいます。そのままついの住みかになる可能性も十分にあると思います。いずれ取り壊すからといっても、入居者ゼロになるのはまだまだ先のことであり、入居者ゼロになるのを待っている間に、外観は朽ち、管理費が発生してしまいます。

 ほかにも県下にはこのような県営住宅があろうかと思いますが、こういった県営住宅は市町村への無償譲渡もないようですし、私は、多少費用がかかっても、同じ団地内や他の団地に移動していただき、あいた棟から取り壊しをし、土地の流動性を確保するとともに、管理経費削減に努めることも有効な管理手法かと思いますが、建設部長の御所見をお聞かせください。

 また、職員宿舎の独身寮は、不規則な勤務がある警察官は別といたしましても、知事部局、教育部局、全ての部局合わせまして六十数%と聞きます。不人気と言わざるを得ないと思います。他方、民間アパートは、人口減も相まってか供給過剰ぎみと聞きます。アパートが少ない地域は別といたしましても、基本的に独身寮は閉鎖し、単身用あるいは民間のアパートを活用していく、そのように転換していくべきと考えますが、総務部長はいかがでしょうか。

 また、一定の役割を終えた県営住宅につきまして、職員宿舎は本来であれば計画のとおり売却して県の収入に充てていく、あるいは市町村に無償譲渡していくことが有効かと思いますが、しかし、先ほど答弁ありましたように、立地条件のよい物件や売却できる物件が非常に少ない、これが現状だと思います。

 そんな中、子育て支援をしているNPOや地域のスポーツ協会など公益性の高い団体から、事務所費用が組織の運営を圧迫しているという声を聞きます。先日、視察させていただきました北信の不登校を支援しているNPOでも、家賃7万円がゼロになればもっと活動の幅を広げられる、あるいは、宿泊可能な建物があれば不登校になった子供を引き取って更生させるような寮を運営したいという大変頼もしい声を聞きました。

 また、地方創生に取り組む長野県や市町村の政策には移住促進というものがございます。既に御存じかと思いますが、茅野市では使用されていない教職員住宅を活用してお試し移住に活用し移住者を生んだと聞いております。

 補助金という形でなくても、余剰な県有財産を無償で貸し出すことでも子育て支援やNPOへの支援が可能ですし、また、あいている県営住宅をお試し移住に活用することで移住促進につなげることができると思いますが、阿部知事の御所見を伺いたいと思います。

 

◎建設部長(奥村康博)

 

 建てかえ等の対象にならない老朽化した県営住宅等について今後どのように管理していくかということでございますが、議員御指摘のとおり、できるだけ集約、または除却を進めてまいりたいと考えております。

 特に集約につきましては、今年度から、団地戸数が50戸未満の36団地につきまして、入居者の方に移転料をお支払いして居住環境の整った他の団地に移転していただく、小規模団地集約移転事業に取り組んでおります。

 今後とも、県営住宅の管理に当たりましては、入居者の居住環境の改善を基本としながら、資産の有効活用の視点での取り組みも積極的に進めてまいります。

 以上でございます。

 

◎総務部長(原山隆一)

 

 独身寮の閉鎖についてのお尋ねでございます。

 民間賃貸住宅の充実、あるいは職員の通勤範囲の拡大、職員数の減少等、職員宿舎を取り巻く環境変化を受けまして、平成25年度に職員宿舎に関する基本方針を策定をいたしました。その中では、議員御指摘の独身寮も含め、今後県が保有していく職員宿舎につきましては三つの基本類型のみに限定して残すということにしております。

 一つは、山間僻地、県外に勤務する職員用宿舎、二つとして、居住場所が在勤公署の近接地に制限されている職員用宿舎、そして、三つ目に、災害時等の要員確保用宿舎、この三つの類型のみに限定し、これに該当しない宿舎は建物の耐用年数等を考慮し順次廃止していく予定でございます。

 また、独身寮を含めまして、任命権者の枠を超えた共同利用を進めることによりまして可能な限り空き宿舎を活用することとしていることでございます。

 この基本方針を踏まえまして職員宿舎管理戸数適正化実行計画を策定したところでございまして、平成30年度までの第1次計画では御指摘の独身寮について申し上げますと2棟32戸を廃止することとしておりまして、今後もこの基本方針にのっとり適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

 

◎知事(阿部守一)

 

 県営住宅、職員宿舎等の有効活用についての御質問でございます。

 私も、県の財産、できるだけ有効に生かしていく、有効とか効率的な行政を進める上でも、県民の皆様方の活動を支援する意味でも重要だというふうに思っております。

 そういう観点で、平成23年に、長野県として、ファシリティマネジメント基本方針というものを定めているところであります。三つの観点を基本としておりますが、県有財産の有効活用、県有財産の総量縮小、そして県有施設の長寿命化ということでありますが、その有効活用という中で、行政財産、あるいは普通財産、こうしたものを貸し付けしていこうという制度導入についての方向も明記をさせていただいております。この方針に基づきましてこれまでも県有財産の有効活用を図ってきているところでございます。

 例えば、中野市の旧職員宿舎については、知的障害者の活動のために普通財産の貸し付けということで行っておりますし、また、これは用地でありますが、教職員住宅用用地、これも、就労継続支援A型事業所、いわゆる障害者のための雇用の場ということで貸し付けをして活用していただいているところでございます。また、IT人材の県内誘致という観点でまちなか・おためしラボを進めておりますけれども、これも、場所については、職員宿舎、行政財産をまちなか・おためしラボということで貸し付けをするという形をとっているところでございます。

 さまざまこうした取り組みを行ってきておりますので、今後とも積極的な有効活用をしていきたいと思っておりますが、ただ、用途廃止をする方向で考えているような遊休施設はどちらかというと老朽化等が進んでいるわけでありまして、全ての施設が活用可能というわけでもありません。活用できる施設については、御指摘があったように幅広く情報提供を行うとともにさまざまな活用方法を検討して、積極的な有効活用に努めていきたいと考えております。

 以上です。

 

◆今井愛郎

 

 ありがとうございました。ぜひ有効活用に向けてさらに周知も広めていただきたいと思います。

 続きまして、8月17日に原案が公表されました県内小中学校教員の人事等についてお伺いいたします。

 この問題につきましては、以前から我が会派の小島副議長を初め多くの議員の方々が指摘されております。それが見直しにつながったものと考えておりますが、過去の指摘事項を踏まえまして御質問させていただきたいと思います。

 まず一つ目としまして、平成24年6月の石和議員への答弁で、阿部知事は、人事権は県教育委員会にあるのに服務監督権限が市町村教育委員会にあることに対し、責任の所在というものが非常に不明確になりやすい制度になっているのではないかと答弁されております。今回の人事異動原案作成の見直しが懸案であった責任の所在の明確化につながっていくことになるのか。阿部知事の御所見をお伺いします。

 二つ目に、平成27年2月の鈴木議員への答弁で、伊藤教育長は、広域人事を以前から行っている結果として教育研究や授業研究も地域を超えて行われる特徴があると答弁しております。とある校長経験者からも、信州教育の根底には生涯研修という側面から市街地、山間地などさまざまな状況の異なる地域や学校への異動を課してきたと聞きました。今回の人事異動方針の見直しで初任地や異動に関する見直しもされたと聞いております。地域に根差した教育にはある程度地域が固定されたほうがよいとは思いますが、反面、異動が少なくなりますと今までの異動による研修という信州教育の特徴が薄れていくと思います。伊藤教育長に御所見をお伺いいたします。

 三つ目としまして、平成25年6月の村石議員や平成26年2月の吉川議員の答弁等を要約しますと、人事権については、ワーキンググループを設置、市町村の意向を聞くとともに、人事交流が行える仕組みを構築した上で、小規模市町村等の理解を得て市町村への移譲も検討すべきという中教審の答申を引用されております。

 仮に、将来、広域単位に人事権を移行しますと、諏訪広域ですと、既に諏訪圏域外に居所を設けている教職員を含めましても必要な教職員の70%程度しか確保できない状況と聞きます。この状況は下伊那郡区や木曽郡区も同じだと聞いております。

 ワーキンググループあるいは市町村教育委員会の声を聞く中で、長野県としては人事権についてどのように考えていくのか。市町村から寄せられた声とともに、今後の方向性について伊藤教育長にお尋ねいたします。

 四つ目といたしまして、人事異動原案作成の見直しには人事に奔走する学校長の多忙さも挙げられております。今回の改革案は、まず各地区の校長会で人事異動原案を作成し、さらに県の小中校長会で取りまとめ、県教育委員会が校長会の原案を尊重して人事を決定するとありますが、これでは従前と大差がなく、追認になると危惧されます。

 仮に積極的に関与するといたしましても、県下には566小中学校があり、約1万2,000人の教職員がおられます。現在、一体、何名の主幹指導主事で対応しているのでしょうか。前段の追認になる可能性、校長の業務軽減、これにあわせまして伊藤教育長にお尋ねいたします。

 最後は、過去の一般質問になかったことですが、現在、県下には県立の中高一貫校や市町村立の小中一貫校があります。中野市では市内全てを小中一貫校にしたい旨の報道があるとともに、国も小中一貫校を推奨していくという話もあります。こういった小中や中高一貫校には一般の小中学校とは違った独自の人事が必要になると思いますが、このことについてどのように対応していくか。伊藤教育長にお尋ねいたします。

 

◎知事(阿部守一)

 

 教員の人事に関連して、教員人事異動原案作成の見直し、それから、私がかつて答弁しております、責任の所在の明確化の関係についての御質問でございます。

 私が責任の所在が不明確になりやすいということで答弁した点については、これは、法律上、小中学校の教員の採用、異動の人事権が県の教育委員会にあるわけでありますが、しかしながら服務監督権は市町村教育委員会にあるという制度になっているという点を申し上げたわけでありまして、これについては国の制度が変更されていないわけでありますから引き続き課題として残っているというふうに思っています。

 今回、教育委員会が行う義務教育段階の教員の人事異動システムの見直しは、これまで校長会に委ねていた人事異動原案作成の過程に県教育委員会が積極的に関与していくというものでありまして、県教育委員会が有している人事権を適切に行使していくという観点から県教委としてこれまで以上に責任を果たすことにつながるものというふうに考えています。

 以上です。

 

◎教育委員会教育長(伊藤学司)

 

 小中学校の教員の人事につきまして4点お尋ねをいただきましたので順次お答えを申し上げます。

 まず、異動による研修という特徴が薄れていくのではないかとのお尋ねでございますが、県教育委員会では、来年4月からの小中学校の教員の人事異動から順次適用いたします新しい人事異動方針によって、東信、南信、中信、北信の4ブロックのうちこれまで3ブロックの異動経験が必要だったものを2ブロックとすることや、新規採用者の配置は本拠地を含むブロックとすることなどの見直しを行ったところでございます。

 この人事異動方針では、平成27年度以前の人事異動方針と同様に、あくまで全県人事を基本とし、他ブロックへの異動経験を必要とするだけでなくブロック内でも幅広く異動することを求めており、人事異動は教職員の資質向上のための必要な研修の機会とする基本的な考え方はこれまでと同様に引き継いでいるところでございます。

 この人事異動方針のもと、引き続き、教員が状況の異なるさまざまな地域の学校へ異動することにより資質向上を図ることができるよう努めてまいりたいと考えてございます。

 次に、市町村への人事権移譲についてのお尋ねでございます。

 人事権を市町村へ移譲するかどうかの制度の見直しについては、地方分権の要請の中で移譲をすべきという意見も出され、国において中央教育審議会等で検討が進められましたが、さまざまな意見がある中、現段階では制度の見直しには至っていないところでございます。

 本県では、平成25年5月に開催された県と市町村との協議の場で設置された、地域に根ざした教育のあり方検討ワーキンググループにおいて、この問題についても市町村の意向も踏まえ議論をしてきたところでございます。

 ワーキンググループでは全国の先進的な事例等をもとに検討いたしましたが、小規模な町村が多い本県の実情からさまざまな意見が出され、人事権移譲は将来的課題との結論に至ったものと認識をしてございます。

 同時に、地域に根差した人事が行われるよう人事異動方針の見直しを行うことが提案され、その提案を踏まえ今回の人事異動方針の見直しを行ったところでございます。

 人事権の移譲につきましては、今後の国における検討状況も注視しつつ、まずは今回見直した人事異動方針を踏まえ、地域に根差した人事を適切に行ってまいりたいと考えております。

 次に、人事システムの見直しに伴いまして何名の主幹指導主事が対応するのか、また、それが校長会等の追認になってしまうのではないか、校長の業務軽減はどうかとのお尋ねでございます。

 県教育委員会が、これまで校長会が行ってきた一般教員の人事異動原案作成の段階から適切に参画し、これまで以上に権限を適切に行使することは重要なことであると考え、今回、人事異動原案の作成システムの見直しを行ったところでございます。具体的には、10名の主幹指導主事が各地区の担当に分かれ人事作業にかかわっていくこととしてございます。

 しかしながら、これまで県教育委員会は一般の教職員の人事について十分な情報とノウハウを蓄積してきていないことや、学校現場の実情がわかっている校長の意見を的確に把握し人事異動を行うことは必要なことから、当面は教育事務所の主幹指導主事が校長会とともに人事異動原案を作成することとしているところでございます。

 この原案作成過程の中で、県教育委員会とし、全県的視野に立った適切な人事ができるよう、主体性を持って積極的に人事作業を行ってまいりたいと考えてございます。

 この新たなシステムによる今後の人事作業の実施状況や課題等を踏まえつつ、校長会役員に過度な負担がかからないようなシステムの見直しを適宜行ってまいる所存でございます。

 次に、小中一貫校の人事についてのお尋ねでございます。

 現行の小中一貫校は、小学校、中学校が目指す子供像を共有し、9年間を通じた教育課程を編成し系統的な教育を目指す学校であり、制度上は小学校と中学校という枠組みであると認識をしてございます。

 そのような中で、現在、施設や学年の区切りなどさまざまな形態の小中一貫校があり、人事についても各学校の課題を踏まえた配置となるよう努めているところでございます。

 具体的には、例えば小規模な小中一貫校では小学校と中学校の両方の免許を持つ教員の配置により両校で授業ができるよう配慮するなど、学校の課題により対応しているところでございます。

 以上でございます。

 

◆今井愛郎

 

 ありがとうございました。

 これから3年間、とりあえず積極的に関与する中でこの方針が守られるわけですが、1万2,000人の教職員人事にたった10人の主幹指導主事で携わること、かなり負担にはならないでしょうか。

 また、過日視察しました南信や東信教育事務所管内には、片道2時間、往復4時間かかる学校があるばかりでなく、現在の4教育事務所体制になってからは主幹指導主事が学校を訪問できるのは特に問題がなければ年に一、二回と聞きます。これで本当に県が積極的に関与した公正な教職員人事が可能になるのでしょうか。

 こういったことを踏まえますと、県が教員人事に積極的に携わっていくためにはせめて主幹指導主事だけでも地方事務所単位に常駐させることが有用ではないでしょうか。

 今さら申し上げるまでもなく、学校ではいじめや不登校を初めさまざまな問題が起こっております。そもそも、主幹指導主事の職務には、こういった学校や先生たちのよき相談員あるいは応援団として支えるという面があると思います。主幹指導主事をより身近に配置することは、もしかしたら人事考課以上の効果を発揮する可能性があるのではないでしょうか。

 さらに、わずか10人で県内566校約1万2,000人の人事を担当しなければならない主幹指導主事の現状を考えますと、4教育事務所ごとに主幹指導主事をフォローするプロパーの職員等が必要かと思いますが、伊藤教育長の御所見をお伺いして、質問を終わりにいたします。

 

◎教育委員会教育長(伊藤学司)

 

 人事に当たります主幹指導主事の配置についてのお尋ねでございます。

 教育事務所の主幹指導主事の業務には、これまで本来市町村教育委員会が担う学校の施設管理や文書管理についての指導などの業務が多かったために、これを見直しまして、市町村教育委員会に任せるものは任せ、本年度は主幹指導主事の本来業務である教員人事に積極的に携わることができるようにしたところでございます。

 また、教育事務所全体で教員人事にかかわる情報を常に共有する体制をとっており、教育事務所内で主幹指導主事が教科指導を担当する指導主事等と情報交換をするということも極めて重要であるということを考えてございまして、基本的には主幹指導主事が教育事務所に駐在していることが必要であるというふうに考えてございます。

 今年度から始まる主幹指導主事の校長会への参加による人事異動原案作成の取り組みにつきましては、これから始まるところでございますので、その際の主幹指導主事の業務内容や業務量がどの程度になるか等についてもしっかり検証し、必要があれば今後の主幹指導主事の業務のあり方や配置などについても検討していきたいというふうに考えてございます。

 以上でございます。